私用で投稿が遅れて申し訳ありません。今後とも今作品や作者の別作品も高評価宜しくです。
開戦前夜
―第二文明圏グラ・バルカス帝国領レイフォル州州都レイフォリア―
バルチスタ沖海戦から数日後、帝国外務省レイフォル出張所に客人が来ていた。
「…我が国はグラ・バルカス帝国、帝王グラ・ルークス陛下の軍門に降りたいと思います。どうか、国民の命と衣食住は確約して頂きたく思います」
独特な民族衣装を着ている一団がグラ・バルカス帝国外交官ダラスに頭を下げる。グラ・バルカス帝国の領土がまた1つ増えた瞬間だった。
彼はいつもの様に冷酷な目で現地人を見つめて言う。
「帝王グラ・ルークス陛下の御言葉は絶対であり真実だ!お前達現地人でも陛下は理由なく処刑などしない。そこは安心するがいい!」
彼は続けて言う。
「では早速、征統府員を受け入れる準備をしろ。丁重に扱えよ」
ムー大陸中央に位置する第二文明圏の小国、ヒノマワリ王国は国の主権やプライドを捨てて、戦わずにグラ・バルカス帝国の軍門に降る決断をした。結果、国民の命を守る事が出来た。ヒノマワリ王国の使者たちは安堵した表情で退出する。
(やはり圧倒的な"力"を見せつければ仕事はやりやすいな)
ダラスは思う。バルチスタ海域で起こった神聖ミリシアル帝国主導の世界連合艦隊とグラ・バルカス帝国艦隊が戦った。その際、神聖ミリシアル帝国は空中戦艦を持ち出してきたが、帝国はこれをグレードアトラスターの46センチ三連装砲で破壊、撃墜した。敵が絶対の自信を持っていた空中戦艦が撃墜されたのを聞いて、各国はグラ・バルカス帝国には勝てないと思ったのだろう。帝国と領土を隣接或いは近しい国々は軍門に降っている。賢い選択だと思う。
この世界に転移した時、前世界ー惑星ユグドーの植民地を全て喪失したグラ・バルカス帝国。しかし、今世界では前世界よりも植民地を早く形成している。この世界には、"魔法"と言う奇妙な存在があるとは言え、前世界より技術は低い。故に、簡単に領土拡大が出来た。自分達に対抗出来るのは神聖ミリシアル帝国と日本国だけだと思っている。(日本国のグレードアトラスター鹵獲は情報統制によって軍高官や政府高官、一部外交官にしか知られていない)
故に、グラ・バルカス帝国の国民は帝国の未来は明るいと信じて止まない。しかし、グレードアトラスターに乗っていたシエリア外交官はそんな考えに疑問を抱いていたが、同調圧力と言うべきか、国の雰囲気がそんな事実を言い出せずにいた。
更に言うと、彼等の統治体制は"恐怖政治"でありアメとムチを使い分けているわけでもない。只々、現地人を奴隷同然として扱い、あらゆる産業で酷使し、資源を徴発する。パーパルディア皇国となんら変わり無いのである。紅茶好きな日本の友好国が見たら駄目だしを山程するだろう。つまり、武力に物言わせたガキ大将と言う訳だ。パーパルディア皇国より技術が高い分、質が悪いが…
そんな彼等も一枚岩では無いのである…
◆
ー第二文明圏圏外グラ・バルカス帝国帝都ラグナ郊外、高級料亭"ミルトコウモ"
地球世界で言う第二次大戦レベルの科学文明を有するグラ・バルカス帝国は、帝国主義と他国に勝る国力を手に入れる為に経済発展を第一に行動している。それ故に、地球世界同様に環境問題に無頓着どころか、知識すらない。それ故に、工場の煙や自動車、機関車が排気ガスを排出し、土壌汚染と大気汚染が深刻だ。
そんな汚染が比較的少ない帝都郊外に建てられた高級料亭"ミルトコウモ"では、帝国政府要人や皇族御用達となっているこの料亭で2人の男が会話していた。
「…と言うわけで、これが東方艦隊からの報告書だ」
テーブルに並んだ高級料理の数々を前にグラ・バルカス帝国帝王府副長官オルダイカが、2枚の書類を差し出した。これを受け取ったのは対面に座る男、グラ・バルカス帝国有数の軍需企業の1つ、"カルスライン社"の役員のエルチルゴだ。
「何々…『フォーク海峡戦及びバルチスタ沖海戦で多数の航空機を撃墜された。戦力補充の為の航空機生産或いは新型機開発と、駆逐艦及び輸送船、巡洋艦の増産を希望する』これは本当ですか?オルダイカ様」
「事実だ。神聖ミリシアル帝国が空中戦艦なんて珍妙な兵器を投入したらしいが、それに対抗する為に多数の艦艇と、航空機を要求しているらしい。その問題の空中戦艦も撃墜している以上、こんな事をしても無意味だと思うがね」
「…仰るとおりかと」
エルチルゴが若干の不満を表す。彼はとある事を懸念していた。
「安心しろ。兵器生産には応じるとも」
「!それでは」
「勿論、"アンタレス"や"リゲル"、各種駆逐艦の増産もな」
エルチルゴが安堵の表情を漏らす。そう、現在グラ・バルカス帝国は好景気に沸いている。戦争に必要な砲弾、艦艇、航空機、それらを製造する工場で働く労働者達は多額の賃金を貰って買い物をする。景気は戦争特需と言うべき様相だった。カルスライン社も例に漏れず軍需企業である為、儲けに儲けていた。役員であるエルチルゴはそれらが打ち切られる事を恐れたのだ。
「ありがとう御座います。バルチスタ沖海戦による損耗補充による利益が増えております。今後、各種駆逐艦や航空機が増産されるとなれば我が社の利益も鰻登りでしょう。その見返りと言ってはなんですが…」
懐から小さな箱を取り出し、オルダイカに渡す。箱を開いくと、そこには腕時計があった。しかし、ただの腕時計ではなく、フレームは金製で各所に宝石が取り付けられた、謂わば成金趣味満載な悪趣味な腕時計だった。
オルダイカの頬が緩む。
「これは…素晴らしいな?エルチルゴよ。今回の戦争は世界が相手だ。当然損耗も生まれるだろう」
「オルダイカ様、今後とも良しなに…」
恭しく頭を下げるエルチルゴ。そう、彼等は癒着しているのだ。エルチルゴが所属しているカルスライン社に対して、オルダイカは帝国帝王府副長官の立場を利用して兵器生産を優先的に依頼したり、兵器採用、予定価格のリークと言った行為を行い、それで得た利益をオルダイカはエルチルゴから受け取っていると言う訳だ。今後、戦争が激化すればカルスライン社に国から大量の発注が舞い込む。これで、エルチルゴは儲かり、エルチルゴからの賄賂でオルダイカも儲かる仕組みだ。
因みに、日本の独占禁止法にモロにアウトな行為だが勿論、これはグラ・バルカス帝国でも違法行為だ。そんな事はどうでも良いとばかりに彼等は賄賂で儲かっている。しかし、彼等は知る由もない。日本国の兵器にかかれば、金になる鉄も唯の棺桶になるという事を…
◆
ー第二文明圏列強ムー国ー
第二文明圏の人々は、グラ・バルカス帝国の影に怯えていた。無理もない。自分達が最も力を持っていると思っていた第二文明圏列強のムー国がフォーク海峡戦やバルチスタ沖海戦に精鋭艦を多数派遣したのだ。それなのに戦果は挙げられずに敗れ、神聖ミリシアル帝国でさえも魔導艦隊が壊滅、空中戦艦と言う古の魔法帝国の遺産をも撃墜されたのだ。
この結果を前に、中小国はグラ・バルカス帝国と戦って勝てるのか?降伏した方が良いのでは?と言った意見が多数を占めるようになった。
しかし、そんな中で頼りになる存在が現れた。
日本国である。バルチスタ沖海戦と同時期に、グラ・バルカス帝国が派遣した艦隊にマイカル沖とオタハイト沖で衝突したマイカル沖海戦とオタハイト沖海戦。オタハイト沖海戦では、日本国で改造を施された"ラ・カサミ改"と攻撃機が奮戦し、グラ・バルカス帝国艦隊を撃破。マイカル沖海戦では日本国艦隊が損害を1つも出さずに壊滅させている。
東の列強であったパーパルディア皇国を撃破した日本国は、パーパルディア皇国よりも強大な敵であるグラ・バルカス帝国軍を破っている。ムー国を中心とした第二文明圏の国々が期待するのも無理は無いだろう。
現在、日本国陸上自衛隊はエヌビア基地やドーソン基地、キールセキ駐屯地に展開している。海上自衛隊もオタハイトとマイカルに展開し、航空自衛隊も各基地に展開している。
ムー国西部の大陸縦断鉄道駅の1つがある要衝の街キールセキのムー統括陸軍の駐屯地にある会議室の1つに多数の人々が集まっていた。いずれも軍の指揮官クラスの人間だ。未だ独立を保って、グラ・バルカス帝国に抵抗しているムー国、ニグラート連合、マギカライヒ共同体、ソナル王国。そして、グラ・バルカス帝国に祖国を滅ぼされたが、王位継承者がムー国に支援を求めていた為に難を逃れたイルネティア王国からエイテスが参加している。
何故ここにイルネティア王国の王子がいるのかと言うと、グラ・バルカス帝国がイルネティア王国に対して、『植民地になれ』と言っても過言では無い恫喝をされ、ムー国に支援を求めるべく来訪した。支援の取り付けには成功した。その後、ムー国の手配で神聖ミリシアル帝国に向かうも、間に合わず祖国は滅ぼされてしまった。失意に沈んでいると、日本国がマイカル沖海戦でグラ・バルカス帝国艦隊を被害1つなく撃破した事を聞いた。それを聞いて、ここぞとばかりに、ムー国に戻り接触したと言う事だ。
そして、紹介が遅くなったがペロリストの国、日本国も勿論参加している。
「それでは、これよりムー統括軍総司令部が作成した、グラ・バルカス帝国基地攻撃作戦『剣閃作戦』をご説明いたします」
ムー統括軍の幹部が話し始める。
「今作戦の目標は、旧レイフォル領でも我が国に近い位置にあるグラ・バルカス帝国の最前線基地です。敵方は、バルクルス基地と呼称していますが、その攻略を目指します。これは、日本国で考案されているグラ・バルカス帝国への反攻作戦の先陣となります」
ムー国が列強となって久々の反攻作戦。しかも、第二文明圏が集まって行う合同作戦だ。そのせいか、ムー統括軍の面々にも緊張が見られる。今回の目標は、グラ・バルカス帝国がムー国との国境の西方30キロ地点に建設しつつある最前線基地、グラ・バルカス帝国の呼称バルクルス基地の攻撃だった。幹部は説明を始める。
「まず、ドーソン基地に展開している日本国航空自衛隊がバルクルス基地に対地攻撃を行います。これにより、敵基地の滑走路、レーダー塔、航空機格納庫、燃料タンクと言った目標を破壊します。また、日本国航空自衛隊の戦闘機がバルクルス基地上空の敵戦闘機を撃破、制空権を確保します。その後、日本国航空自衛隊とムー統括空軍が支援する中、日本国第1空挺師団が同基地を制圧します。"マリル型戦闘機"や"マウン型爆撃機"合わせて300機、"ラ・カオス型旅客機兼輸送機"による空挺隊輸送機多数、第二文明圏からワイバーンロード300騎、ワイバーン400騎、大型火喰い鳥1600羽、空挺増援部隊 6900人が参加します。空挺作戦後、大型火喰い鳥は帰投しますが、竜騎士団はバルクルス基地上空に待機して、日本国航空自衛隊やムー統括空軍と協同して制空権確保、導力火炎弾による上空支援、及び敵増援兵力に対する見張りに当たって貰います」
これ程の国々が協同して行う作戦は有史稀に見るどころか無いのでは無いだろうか?その為、会議室は騒がしい。
「すいません。質問いいですか?」
そう言ったのは、日本国所属の稲荷神だ。かの女神様も会議に参加している。
「大型火喰い鳥を用いると言う事でしたが、確か大型火喰い鳥は航続距離も速度もワイバーンに劣る筈です。それらを用いるのは何故でしょうか?」
"火喰い鳥"とは、地球とは違って人を乗せて飛ぶことができる大型の鳥類のことだ。口から炎を吐くことができるため、古くから長く空戦兵器の主力として君臨してきた。しかし、火喰い鳥の最高速度は時速110キロと、ワイバーンに比べても遅く、火炎放射の射程距離もワイバーンの導力火炎弾とは比較にならない程短い。故に、ワイバーンを空戦に使用する国が勢力を伸ばすと、徐々に各国の航空戦力もワイバーンに移行し、火喰い鳥は戦闘目的では使用されなくなっていった。
この鳥は世界各地に生息域があり、よっぽどの高緯度帯でなければ生息している。そして、ワイバーンが主戦力になりつつある頃、アニュンリール皇国より北の南方で火喰い鳥に似た大型の鳥が発見された。その鳥は、大型ではある物の生態系や見た目が火喰い鳥そのままだったので、"大型火喰い鳥"と命名された。(筆者は名付けのネーミングセンスに文句でも言ってやりたい…分かりやすいが…)この大型火喰い鳥は、従来の火喰い鳥に比べても大型で翼面積も広く、各国が『これなら使えるんじゃ…』と考えて戦場に登場したこともあったが、小回りりが効かず、航空戦力として使用する国家は減っていき、今や無いに等しい。ただし、大型火喰い鳥は火喰い鳥やワイバーンよりも多少は重い物を運べるため、現在は商用の輸送鳥として各国の商人の御用達とされている。
「仰る通りです。ですが、これらは戦闘用では無く輸送用に使う予定です。本来なら輸送についてもワイバーンやワイバーンロードでも良かったのですが、バルチスタ沖海戦で第二文明圏連合竜騎士団が壊滅し、各国の竜の個体数が減少しています。しかし、竜騎士の多くは残っています。なので、竜騎士には大型火喰い鳥を操って欲しいと思います」
「ありがとう御座います」
そう言って稲荷神は狐耳をピョコピョコさせた。
「日本国の方にお聞きしたい。グラ・バルカス帝国には貴国同様にレーダーを利用した航空機の索敵システムで厳重な警戒網が作られているはずですが、貴国はどうやってこれを破るのでしょうか?」
そう言うのは、航空機のチェックをしにきた技術士官マイラスだ。彼はこの際、日本国の航空機の詳細を聞こうとしていた。
それを聞いて、稲荷神は傍に控える自衛隊幹部に目配せする。
「はい。我々はグラ・バルカス帝国のレーダーをジャミング…つまりは利用不可能状態にします。その後、我が国の爆撃機が目標を破壊します。我が国の航空機は音速を超えますし、対空砲は届きません。また、精密爆撃も可能なので撃墜される可能性は万が一にも無いでしょう。そして、皆様に共有しておきたい情報が有ります。此方を見て下さい」
音速を超えると言う言葉に一同は騒然となったが、テーブルに広げられた写真に更なる驚愕が飛び込んできた。
それは、衛星写真だった。各国の軍関係者はどうやってこの写真を撮ったのか疑問が尽きない。この写真は航空写真では無く衛星写真なので、衛星についての知識が無い彼等が不思議がるのは無理もない
「そして、我々が爆撃をするのですが竜騎士団やムー国が何処を攻撃するのか事前に決めておきたいと思います。これは、我が国が撮影した同基地の写真です。滑走路や格納庫、対空砲陣地、レーダー搭に司令部、宿舎や陸上兵器の格納庫も見られます。これら目標を何処の国が攻撃するのかを決め、作戦を有利に進めるようにしたいです」
その後、話し合いの末にムー国が対空砲陣地と司令部、ニグラート連合が滑走路と格納庫、マギカライヒ共同体が宿舎や陸上兵器格納庫に決まった。第二文明圏の国々は、グラ・バルカス帝国に対する反撃に討って出る。
〜コラム〜
今日はお休み
お気に入り登録、高評価宜しくお願いします!
これから登場する兵器について
-
核兵器
-
光学兵器
-
その他(生物兵器、化学兵器、宇宙兵器等)