稲荷様は平穏に暮らしたかった。   作:味八木

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今回は難産でした。また、兵器の名前を正式に付け始めました。基本的に旧日本軍の命名規則を採用しています。

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剣閃作戦〜中編〜

 

 

ー第二文明圏グラ・バルカス帝国領ヒノマワリ州バルクルス基地ー

 

バルクルス基地にはその一報が届くことはなかった。『ドーソン基地爆撃部隊全滅』この一報を彼等はバルクルス基地に無線連絡するどころか、持ち帰ることすら出来なかった。

 

故に、基地の雰囲気は呑気な物だった。しかし、定刻になっても一報も寄越さない爆撃部隊に基地上層部は困惑していた。

 

本来であれば、基地爆撃の成功の報が入った段階でバルクルス基地に程近い国境の街アルーに侵攻する予定なのだ。その為、基地内ではグラ・バルカス帝国の陸軍第四師団が出撃準備をしていた。陸軍第四師団長ボーグ少将が乗る前線指揮車他、戦車、装甲車、輸送車、燃料補給車を始めとした各種待機していた。

 

グラ・バルカス帝国で唯一と言っていい完全機械化師団である第四師団にあるのは、帝国で"無敵の戦車"と呼ばれた"2号戦車ハウンド"である。この戦車は対歩兵戦闘を意識した18口径57mm砲を搭載した"2号戦車ハウンドⅠ"と敵装甲戦力を想定して作られた"2号戦車ハウンドⅡ"がある。

 

因みに、この戦車に似た幕末から明治初期にかけて製造された"九七式中戦車"通称"チハたん"は軍事機密とされ諸外国に秘密にされていた。しかし、イギリスが秘密裏に輸入、第一次世界大戦で中央同盟国相手に猛威を振るった。しかし、第二次大戦頃になるとこの"チハたん"は主砲口径では対戦車戦闘には心許なく、親日国イギリスと言えど使わなくなった。まあ、つまりは対歩兵戦闘用としては優秀と言う事だ。しかし、対戦車戦闘となると"最強"の二文字には疑問符が付く。

 

他にも、"2号戦車シェイファーⅡ"と呼ばれる軽戦車も配備されており、第四師団の数的主力である。

 

そんなグラ・バルカス帝国の戦車師団には、この後壮絶な運命が待っているのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

異変に気付いたのはレーダーマンだった。突如として先程まで正常に作動していたレーダーモニターが真っ白になってしまったのだ。定期点検では何も不備が無かった為にレーダーマンはこの事実を空軍司令官であるパースに報告した。

 

この報告を受けたパースは技術者に連絡しようと無線を手に取った。

 

しかし、無線はザーザーと砂嵐を発するばかりであり使えなかった。

 

これを不思議に思ったパースだったが、次の瞬間に彼は理解することになる。

 

ズドガーン!!!

 

司令部の外から爆発音が響いたのだ。彼は事故を疑った。しかし、その音が立て続けに起こるので彼はこの爆発を敵の攻撃によるものだと結論づけた。彼は直ぐ様万が一に備えて付けられた伝声管で"アンタレス"の出撃を命じた。だが、それはもう遅かった。

 

バルクルス基地の遥か上空高度1万5000メートル以上高い位置から日本国航空自衛隊のステルスジェット戦闘機"富士"が侵入していたのだ。彼等は迎撃機や対空砲を警戒して高高度からやって来ていた。

 

"富士"が高高度から発射した"05式空対地誘導ミサイル"が精密爆撃によって滑走路を破壊し、待機中の"ベガ双発爆撃機"、発進命令を受けて滑走路を走っていた"アンタレス07式戦闘機"を"02式空対空レーザー"で破壊する。

 

"05式空対地誘導ミサイル"は、次に対空砲陣地を破壊する。対空砲に関しては、ジェット戦闘機のカモでしか無いのだが、ムー国や第二文明圏の航空戦力であるワイバーンに取ってみれば無視できない脅威だ。

 

この攻撃に、基地にいた者達は上から下まで大騒ぎだ。無線も使えない為、統制も取れない。だが、彼等はこの爆発は敵によるものだとは認識していた。故に、教範通りに対空陣地で敵航空機を待つ者を始め、各々が自分の持ち場につく。だが、非戦闘員や基地司令部の人間は、万が一の為に作られた地下壕や地下に作られた臨時司令部に逃げ込んでいた。

 

地下司令部には、伝声管が張り巡らされている。そこから、驚くべきの情報が立て続けに入ってくる。

 

『滑走路破壊されました!航空機発着不能!』

『格納庫も全滅!格納中の航空機は全滅!』

『対空陣地半壊!』

『レーダーサイト全て大破!使用不能です!』

『宿舎も全壊!』

『通信施設、破壊されました!外部との連絡が不可能です!』

『燃料タンク破損!燃料が漏れ出て…爆発した!』

『第4師団、戦力の5割を喪失!生き残った戦力は避難中!』

 

ほんの短時間で基地機能を喪失してしまった。その事に呆然としつつも、ガオグゲル中将は命令を下す。

 

「第18番倉庫にある"移動式対空機銃"で対空陣地の代わりとしろ!無いよりはマシだ!」

 

この"移動式対空機銃"はその名の通り牽引式の対空機銃だ。口径は小さく、20ミリ未満と攻撃力が低い。その為、倉庫でホコリを被っていたのをガオグゲル中将は思い出して、使用指示を出したのだ。

 

しかし、失った被害は取り戻せない。特に、第4師団の完全機械化師団は、つい最近になって充実して来たばかりだ。そもそも、グラ・バルカス帝国は島国と言うこともあって陸軍は基本的に後回しにされていたのだ。

 

その為、戦車自体は陸軍各部隊にある程度配備されているが、随伴歩兵を自動車や装甲車で運ぶ事が可能な部隊は第4師団が唯一の部隊なのだ。

 

そんな貴重な部隊が半壊した事もあってガオグゲル中将は嘆いた。

 

そんな時に、監視塔から連絡が届いた。

 

『こちら、監視塔!"アンタレス"が未知の攻撃で撃墜されています!』

「何だと!もっと具体的に報告しろ!」

 

ガオグゲル中将にとっては信じられない事だった。"アンタレス"は機動力と速度を確保するために機体の防御力は多少低いが、低文明のこの世界に"アンタレス"を破ることが可能な兵器があるとは思っても見なかった。

 

『はい!"アンタレス"が上昇していくと、次の瞬間には撃墜されていきます!…あれは!』

「何だ!どうした!」

『敵機です!敵機が"アンタレス"の遥か上空にいます!目測ですが…高度1万メートルは超えています!』

 

その言葉に今度こそガオグゲル中将は絶句した。信じられないとばかりに外が見えるペリスコープを覗く。

 

すると、ガオグゲル中将の目にも"アンタレス"がまた1機と撃墜されていく光景が映し出された。そして、ペリスコープを更に上の角度に向けると、奇妙な形の機体が映っていた。

 

それは、矢の楔の様な形状をした機体でありプロペラが無い。代わりに、機体後部から火を噴いている。確かに、敵機は高度1万メートルを超えている。"アンタレス"の限界高度は1万メートルが限界だ。つまりは、"アンタレス"に敵機を撃墜する事は出来ないと言う事だ。

 

その事実にガオグゲル中将は至ったが、地上の対空陣地は殆ど沈黙し、迎撃の"アンタレス"もいない。完全に制空権を取られてしまっている。今も尚爆発音が鳴り響く。そんな時、新たな情報が入ってくる。

 

「報告!敵機多数が東より接近中!複葉機や単葉機ですが、その数は300を超える模様!」

 

その報告にガオグゲル中将は悔しさを滲ませた。基地機能が生きていれば複葉機等直に撃墜出来た。しかし、迎撃機や対空砲が無ければ撃墜することも出来ない。

 

バルクルス基地はグラ・バルカス帝国からしたら中規模拠点と言っていい。そんな基地に時代遅れのムー国の複葉機が多数押し寄せる。ムー国は、安全保障の観点からこの基地を落とすつもりだ。ガオグゲル中将の頭にはそんな考えが浮かんだ。

 

そうしている間にも、基地の外では爆発音、落下音、機銃掃射、複葉機のエンジン音が鳴り響く。彼は、初めて複葉機のエンジン音が怖いと思った。

 

地上ではムー国の戦闘機や爆撃機が動く物全てに爆弾や機銃弾をお見舞いしていた。それに対して、バルクルス基地は滑走路を破壊され戦闘機を出せない。そもそも、出す戦闘機も破壊されたのだ。迎撃も不可能だし、対空砲も沈黙し無抵抗だった。

 

伝声管も破壊され伝令兵がひっきりなしに入ってくる。

 

「滑走路が使用不能!重機も全滅!修復は不可能です!」

「第4師団戦車全滅!」

「対空砲陣地高射砲及び移動式対空機銃含め全滅!」

「格納庫にあった戦闘機及び爆撃機は全滅!」

 

対空砲も、迎撃機も出せない。これでは、高度1万メートル以上にいる敵機どころか複葉機すら攻撃することすら出来ない。最早挽回の手段など無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間もせずにバルクルス基地への日本国航空自衛隊とムー統括空軍の爆撃は終わった。

 

攻撃が終わった後のバルクルス基地。そこには地獄が広がっていた。地上構造物は全ての建物が炎上するか全壊している。対空砲陣地の高射砲と対空機銃は全滅。地面は大小様々な大きさの穴が出来ており、滑走路は誰が見ても使用不可能と断言する程にボコボコにされていた。直そうにも重機を破壊され復旧にはどれ程の時間がかかるか見当もつかない。

 

帝国最強の戦闘機も地上では唯の的に過ぎない。"アンタレス"の成れの果てと思われる残骸が至る所にある。それらは、燃えている。その熱気が風によって基地全体に広がってくる。

 

そして、つい1時間程前には一緒に基地内で働いていた兵士達の亡骸が無惨にも転がっている。それらは、部位欠損した遺体だったり、丸焦げになっていたり、肉塊になっているものもあれば、人の形を保った物もある。

 

最早、バルクルス基地は基地機能を喪失し、瓦礫が散乱した状態だった。しかし、そんな中でも一部の兵士達は生き残っていた。

 

生き残ったたった数人の兵士達は、地下司令部に連絡を入れるべく歩いていたその時だった。

 

自分達の戦闘機とは異なる音が鳴り響いたのだ。それは、鳥の羽ばたきの様な音だ。しかし、通常の鳥はここまで羽ばたき音は大きく無い。つまり、この音は航空機では無くこの世界の一般的な航空戦力であるワイバーンだ。

 

ワイバーンやワイバーンロードは、生き残った兵士を見つけると導力火炎弾の発射準備をする。これに対して、グラ・バルカス帝国兵士は、持っている小銃で対抗しようとする。

 

グラ・バルカス帝国には日本で言う"突撃銃"、広義的にはアサルトライフルの様な自動小銃は有るにはある。しかし、この世界に転移し、各国の技術を見てもそんな最新兵器でなくとも、ボルトアクションの小銃で十分という判断から全兵士にまで行き渡っていない。生き残った兵士達の小銃もボルトアクション式であった。

 

そんな単発で、しかも狙撃銃の様なスコープも無いので時速200キロを超えるワイバーンに対しては、対空効果は極めて低い。それは、その上位種であるワイバーンロードなら尚更だった。応戦している間にワイバーンの導力火炎弾が発射され、生き残りは悲鳴を上げて転げ回る。生き残りを攻撃するワイバーンやワイバーンロードもいるが、残りの竜騎士団は基地に導力火炎弾をそこかしこに発射している。

 

この様子を地下司令部に続く扉越しから見ていた幹部は、声を抑える。前線勤務が然程多くない彼は気分が良くないものを見たが、彼は直ぐ様ガオグゲル中将にこの出来事を伝えた。

 

「大丈夫だ。トカゲの炎は貫通性能は全くない。地下にいれば安全だ。屈辱的だが、今は耐えるんだ」

 

そう根拠の無い励ましをするガオグゲル中将に…いや、バルクルス基地の生き残り全員に危機が迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー第二文明圏ムー国キールセキ駐屯地ー

 

バルクルス基地の基地機能が停止する少し前、キールセキ駐屯地には屈強な男達が大荷物を背負って航空自衛隊の輸送機前に集まっていた。彼らは隊列正しく並び、目の前にいる指揮官の言葉を待っていた。

 

いや、正確にはその隣にいる狐耳と尻尾を付けた少女に視線が集まっている。

 

もうお分かりだろう。彼等は、自衛隊1の精鋭部隊ー第1空挺師団ーであり、最早この世界に来てから一種の慣例となりつつある稲荷神との作戦だった。

 

「中山さんから聞いていると思いますが、今回の作戦は爆撃が済んだバルクルス基地への空挺降下です!今までの作戦と違って敵は高い技術を持っていると思いますが、私の力と皆さんの力があれが大丈夫と確信しています!皆さん!無事に生き残りましょう!」

「「「はっ!」」」

 

そう言って第1空挺師団の面々は誇りを胸に輸送機に乗り込み、アルーに近い旧ヒノマワリ王国国境のバルクルス基地に向けて離陸した。

 

そんな彼らを見送ったのは陸上自衛隊第2師団だ。彼等は、ムー国の支援のために編成された部隊であり12式戦車を始めとして、"52式レーザー搭載型コンバットフレーム"や誘導弾をもつ部隊の1つだ。彼等はキールセキ駐屯地に滞在していた。本来なら、第1師団が駐屯していたのだが今作戦に向けて第1師団はバルクルス基地近くの街アルーに既に出発、到着している。

 

空挺降下に伴い彼等もバルクルス基地に突入して制圧作戦に従事する予定だ。

 

バルクルス基地は爆撃によって破壊されている。彼等はこんな技術も戦力も桁違いの軍を相手に勝てるのだろうか?

 






〜コラム〜

チハたん

皆さんご存知チハたん。ガルパン知ってる人なら知ってますよね?

これですが、幕末から明治に掛けて製造、運用されました。大正時代、とりわけ第一次世界大戦前にイギリスにお友達価格で販売したチハたんは当時イギリスが開発していた戦車の性能を上回っていた。

搭乗していた部隊は揃って『チハたん! ばんじゃーい!』と謎の歓声を挙げ、第一次世界大戦の際にはキツネのペイントをしたこの戦車が猛威を振るい、中央同盟国に『イナリ部隊』として恐れられた。

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これから登場する兵器について

  • 核兵器
  • 光学兵器
  • その他(生物兵器、化学兵器、宇宙兵器等)
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