稲荷様は平穏に暮らしたかった。   作:味八木

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剣閃作戦〜終幕〜

 

 

ー第二文明圏グラ・バルカス帝国領ヒノマワリ州バルクルス基地ー

 

ムー国への侵攻拠点としてグラ・バルカス帝国が建設した星型のバルクルス基地は今や、黒煙をそこかしこにまき散らしていた。

 

建物の殆どが航空自衛隊の"05式空対地誘導ミサイル"によって破壊された。他にも、滑走路や戦車格納庫、レーダーに対空砲陣地、果ては航空機までもが破壊された。結果、この基地は基地としての機能を完全に喪失していた。

 

そんな基地上空を飛行しているのは、多数の竜だ。いずれも、ニグラート連合、マギカライヒ共同体、ソナル王国のワイバーンやワイバーンロードからなる第二文明圏竜騎士団だ。ムー国の爆撃機は既に帰投しているのだが、竜騎士団はこれから行われる空挺降下の為に上空直掩をしている。

 

これから、第1空挺師団が"85式輸送機"に乗って空挺降下を行う。もう既に稲荷神を乗せた"85式輸送機"はバルクルス基地上空に到達している。

 

そして、次の瞬間"85式輸送機"から第1空挺師団は次々と自由落下運動に身を任せていく。彼等は第1空挺師団用に調整された"03式スラスターユニット"で落下運動を調節することで風に流される事なく着地が可能だ。パラシュートなど不要なのだ。

 

彼等は、バルクルス基地近くの平地に着陸して素早く身を隠す。そして、武器を手に取る。それは、"80式5.56mm小銃"だった。他にも、"59式5.56mm機関銃"や"03式対戦車誘導弾"、果ては"02式対重歩兵レーザー"まである。そして、トドメとばかりに稲荷神も参加している。これをオーバーキルと言わずに何という。

 

彼等は手早く武器を持つとバルクルス基地に足を踏み入れた。周囲に動くものはなく、"05式空対地誘導ミサイル"やワイバーン、ワイバーンロードによる導力火炎弾による攻撃で焼き払われている。有機物である人間の死体からの臭いが鼻につくが、第1空挺師団が足を止めることもない。稲荷神もグロ耐性はあるので、問題無い。

 

そして、赤外線スコープで地下室の入り口を見つけると突入前に暗視ゴーグルを取り付ける。

 

そして、C4爆弾を取り付ける。彼等は骨伝導イヤホンで連携を取りながら地下室への鉄製の扉を破壊した。地下室へ皆が突入しようとした時だった。

 

キャタピラ音が鳴り響いた。それは、周囲を警戒していた隊が戦車を発見したのだ。そう、あれだけの爆撃でも生き残っていた戦車がいたのだ。それも2輌も。まさに奇跡としか言いようがない。

 

上空ではワイバーン達が導力火炎弾を放つが、貫通性が無いに等しい導力火炎弾では"2号戦車ハウンドⅠ"の天板を焦がす程度だった。そんなワイバーン達を車載機関銃で牽制しながら進む。

 

彼等は侵入者を見つけると"2号戦車ハウンドⅠ"に取り付けられた対歩兵用の車載機関銃を放った。車載機関銃の弾丸は自衛隊第1空挺師団に向けて放たれるが、"02式強化外骨格"を着用している第1空挺師団の者達は全員が重武装兵の様なものだ。攻撃力が足りない。しかし、好き好んで当たりに行く訳でも無いので、素早く隠れた。稲荷神は、深く考えるのが苦手なので"2号戦車ハウンドⅠ"に突撃する。

 

勿論、"2号戦車ハウンドⅠ"も馬鹿正直に突撃する稲荷神に弾丸を浴びせる。しかし、稲荷神は弾丸を摘める程の動体視力と反応速度を誇る。しかし、今回は弾丸が次から次に襲ってくる。面倒だと考えた稲荷神は、手刀で弾丸を切断しながら進んだ。そして、"2号戦車ハウンドⅠ"を持ち上げてもう片方の"2号戦車ハウンドⅠ"に放り投げた。戦車はその衝撃で横転してしまい、もう片方は戦車が宙を舞ったことに驚きのあまり機能停止してしまった。それは一瞬だったが、そこを見逃す第1空挺師団ではない。

 

"03式対戦車誘導弾"を素早く発射した。"2号戦車ハウンドⅠ"は反応が遅れ炎上、撃破された。

 

グラ・バルカス帝国の"2号戦車ハウンドⅠ"は歩兵戦闘において有効だ。故に、空挺部隊にも十分対処出来るとの判断だったが、それは誤りだ。第1空挺師団は、対戦車兵器を豊富に持っている。装甲が薄い"2号戦車ハウンドⅠ"には、耐えるのは無理な話だろう。

 

運良く生き残った者もいたが、銃を突きつけられてはどうすることも出来ず、降伏して捕虜となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

後顧の憂いを絶った稲荷神を含めた第1空挺師団は、バルクルス基地地下司令部や地下壕に続く道に突入していた。

 

第1空挺師団は、暗視ゴーグルによって敵の位置を正確に読み取り攻撃をしていく。

 

グラ・バルカス帝国の兵士達は地下室という狭い空間ではボルトアクション式の銃では無く、拳銃の様な取り回しの良い武器を装備している。それに対して、第1空挺師団は自動小銃や軽量化された携帯式の機関銃を所持している。更に、レーザーサイトを搭載しているので暗闇でも照準をしっかりと定められるのに対して、グラ・バルカス帝国は単発式で、しかも連射性能、射撃性能も劣る拳銃では、地の利があるとしても突破は時間の問題だった。

 

ならば、扉の近くで待ち伏せをしようにも、スネークカメラで内部状況を確認できる。そんな手間を掛けなくても、部屋毎に手榴弾やスタングレネードを放っている。それによって制圧を容易に進めていた。そして、遂に地下室の最奥に辿り着いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

地下室に張り巡らされた伝声管から日本国の空挺師団が降下している事を知ったガオグゲル中将以下基地幹部は、地下室にいて難を逃れた歩兵を配置につけて空挺師団を迎え撃とうとする。

 

ガオグゲル中将の頭には、技術と練度で勝る帝国陸軍が負ける筈が無いという思いこみがあった。しかし、どんどん状況が悪化してきた。

 

伝声管からは、部隊の壊滅の報告が徐々に多くなっていく。やがて、銃声が伝声管を通さなくても聞こえるようになっていった。それに呼応して、どんどん近づいてくる足音にガオグゲル中将やパース少将は恐怖を覚えた。

 

彼等の認識としては空挺降下の部隊にはパラシュート等の装備を持つ関係上、重装備は持てない。小型の火器や短機関銃を所持しているだろうが、火力と練度の面では上だと思っていた。しかしどうだろうか?

 

高い練度を誇る帝国陸軍が数分もしないで壊滅に追い込まれ、暗所から奇襲しようにも暗視ゴーグルを装着している第1空挺師団は適切に対処する。

 

ガオグゲル中将は自分の自信が崩れているのを実感した。グラ・バルカス帝国の空挺降下では、重量の問題から重装備が出来ない。機関銃やボルトアクション式銃を所持出来ず、専ら拳銃等の小型火器で行うのだ。故に、空挺降下を行うのは懲罰大隊の役目であり最低限の訓練をして敵地に放り込まれるのだ。

 

とは言っているものの、実際に空挺降下が行われたのは両手で数える程だ。そもそも、前世界でも今世界でも各国が自分達より劣っていたグラ・バルカス帝国は余り空挺降下を実施したことが無いのだ。

 

ガオグゲル中将が日本国の空挺師団の装備が軽装だと判断したのは、自国の空挺師団の現状を鑑みた物だった。

 

しかし、第1空挺師団は自衛隊最精鋭の部隊だ。体術、銃器、陣地構築術、潜伏術、サバイバル術、破壊工作に至るまでトップクラスの実績を誇る。更に、稲荷神への圧倒的な忠誠心と言う日本でも随一のペロリスト達を小型火器なんぞで倒せる訳もなかった。

 

グラ・バルカス帝国は史実日本が持っていた大和魂(この世界では稲荷魂?)を前に呆気なく潰走していった。

 

戦闘が始まって15分もすればガオグゲル中将以下幹部が集まっていた最奥の司令部のすぐ近くまで足音が聞こえてきた。司令部にいた者達は自分達が持つ拳銃等の得物を扉に向ける。1人でも道連れにするつもりだ。

 

だが、その考えは呆気なく散ることになる。突如として扉が青い炎によって塵も残さず消え去ったのだ。有り得ない事態を前に一瞬固まる。だが、拳銃の引き金を引こうとする。しかし、それより早く投げ込まれたスタングレネードが爆発した。

 

第1空挺師団の面々はスタングレネードによる光を暗視ゴーグルに取り込まない様に視線を逸らしたり、目を瞑って対応する。だが、スタングレネードの存在を知らないグラ・バルカス帝国の将校達は手榴弾かと思い、近場にいた者が投げ返そうとする。だが、それよりも早くスタングレネードは閃光と音を撒き散らす。

 

思わぬ効果に目と耳がやられたグラ・バルカス帝国の将校達は無力化された。その間に突入した第1空挺師団は"80式5.56mm小銃"や"59式5.56mm機関銃"を向ける。最早抵抗も出来ないと判断したガオグゲル中将は降伏した。

 

ガオグゲル中将達には拘束具として手錠をはめられた。そして、彼等が所持していた拳銃や短剣は没収された。

 

実は、スネークカメラで彼等が扉にブービートラップを仕掛けていた事に気付き、ブービートラップごと扉を破壊する、その他抵抗の意志を挫くパフォーマンスの為に稲荷神の狐火に頼ったと言う事だ。

 

こうして、グラ・バルカス帝国のバルクルス基地は基地機能及び司令部を失った。頭を失ったグラ・バルカス帝国陸軍歩兵部隊は組織だった行動を取れずに各個撃破ないしは、捕虜となった。

 

日本国第1空挺師団の降下から約1時間と少しで第二文明圏各国の『剣閃作戦』参加部隊がバルクルス基地に空挺降下を開始した。

 

ムー統括軍の空挺部隊が"ラ・カオス型旅客機兼輸送機"から最初に降下を開始した。彼等は、日本国から輸入した"4式自動小銃"を手にして降下する。それに続いてニグラート連合、マギカライヒ共同体、ソナル王国の兵士達が"大型火喰い鳥"から降下する。その際、マギカライヒ共同体の新人兵士バラスター二等兵がパラシュートを規定より早く展開してしまい、風に流されると言うアクシデントもあったが、どうでも良いので割愛する。

 

日本国航空自衛隊による攻撃から約3時間程経過した。グラ・バルカス帝国陸軍歩兵部隊は全て排除された。バルクルス基地には日本国やムー国の国旗の他、第二文明圏の国旗が翻った。

 

兵士達は大喜びだった。これまでグラ・バルカス帝国には勝てたことが殆ど無かった。しかし、今回の『剣閃作戦』では日本国の支援があったとは言え、侵攻部隊を基地ごと壊滅させたのだ。この情報は直ぐ様『剣閃作戦』参加国に伝達された。

 

 

 

 

 

 

 

 

マギカライヒ共同体やニグラート連合、ソナル王国、ムー国や日本国全ての国の重鎮がバルクルス基地攻略を喜んだ。特に、ソナル王国は抵抗せずに降伏することも視野に入れていたので、喜びも人一倍大きいだろう。

 

そんな中…

 

ー第三文明圏圏外日本国首都東京首相官邸ー

 

「総理。『剣閃作戦』は成功、捕虜を約300名程確保したとの事です。また、此方の被害はゼロとの事です」

 

その言葉に参加していた大臣達は安堵の息を漏らした。戦死者が出ないことは良いことだ。主に、遺族や負傷兵士への福祉に金がかかるのだ。酷い様だが、それらの経費が無かったのは喜ぶべきだろう。そんな彼らを待ってから別班統合隊長が続ける。

 

「鹵獲した兵器もあるそうですが、稲荷神様は、『私達には不要な兵器なので民間の兵器解説書と共にマギカライヒ共同体等の受け取りを希望する国々に譲渡する』と言う考えだそうです」

 

その考えに『流石は稲荷神様ですね…』等と言った稲荷神を讃える声が出る中、別班統合隊長が防衛大臣に聞く。

 

「防衛大臣にお伺いしたいのですが、今後の対グラ・バルカス帝国戦に関する作戦等はありませんか?我々も自衛隊の皆様が欲する情報を入手する必要がありますから」

「分かりました。この際、大まかな作戦を皆様にもお教えしましょう」

 

そう言って、防衛大臣は資料を配った。そして、話し始める。

 

「今後の予定として、ムー大陸西岸の制海権を奪取します。それに並行してグラ・バルカス帝国領レイフォルに繋がる海域にて通商破壊作戦を仕掛けます。相手が仕掛けたのですから、我々がしてはいけない道理はありませんから。その際、グラ・バルカス帝国に対して、人道上の理由から事前通告をするかは外務省に任せます。話を戻しまして、制海権を奪取した後、海運の要衝たるイルネティア王国及び海軍基地となっているパガンダ島を奪還します。その後、ムー大陸から奴等を叩き出す考えです」

「それはやはり、補給線を断つためですね」

 

疑問形の形をとった確認に、防衛大臣は頷く。

 

「その為に、ムー国に派遣された原子力潜水艦と艦隊が制海権及び補給線を断ち切ってムー大陸にいるグラ・バルカス帝国を…」

 

防衛大臣が話している途中にドアがノックされ、入ってくる者がいた。その者は防衛省のタグを身に付けており、現地で何かあったことを察せられる表情だった。

 

「衛星からの情報です!ヒノマワリ王国首都ハルナガ京からグラ・バルカス帝国陸軍部隊がバルクルス基地に向けて接近中です!恐らく、バルクルス基地の奪還かと思われます!現地に連絡し、至急防衛陣地を構築するべきと思われます!」

「それはいけない!早く現地に連絡しろ!稲荷神様を煩わせる訳にはいかん!」

 

そう言うと、職員は戻っていった。

 

「稲荷神様なら怪我されることもあるまい」

 

総理のその言葉が彼等の本音だったが、怪我されなくとも危険な目に遭わせるわけには行かない。自分達が後方にいるのが腹立たしく思う者もいた。尤も、そんな彼らを責める者など、稲荷神は勿論この場には居ないが。

 






〜コラム〜

"02式対重歩兵レーザー"

携帯式の対重歩兵用のレーザー。レーザーを照射する為、弾は電気だ。故に、充電するにも莫大な時間と電気代を擁する。なので、基本的に充電が切れた場合は充電するまで再度使用不可になる兵器だ。だが、その威力は申し分ない。

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これから登場する兵器について

  • 核兵器
  • 光学兵器
  • その他(生物兵器、化学兵器、宇宙兵器等)
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