稲荷様は平穏に暮らしたかった。   作:味八木

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第二次バルチスタ沖海戦〜前編〜

 

 

ー第二文明圏ムー大陸西岸バルチスタ海域ー

 

日本国海上自衛隊の艦隊とグラ・バルカス帝国海軍東部方面艦隊は夜も明けない内から互いに索敵機を飛ばしていた。

 

しかし、違いがあるとすればグラ・バルカス帝国海軍東部方面艦隊が飛ばしているのは、偵察として飛ばしている"リゲル型雷撃機"に対して、日本国海上自衛隊が飛ばしているのは、"87式無人偵察機"だ。

 

"リゲル型雷撃機"は巡航速度時速263kmだが、"87式無人偵察機"はステルスジェット機故に、巡航でも音速を超える。

 

如何に対空レーダーを密にしていようと、電波を異なる方向に反射あるいは電波を吸収してしまうステルス機では意味が無かった。複数の電探方法を用いれば見つけられたかも知れないが、そんな事情を知らない東部方面艦隊は"87式無人偵察機"の存在を探知できなかった。

 

それに対して、"87式無人偵察機"は音速で飛行できるので、広範囲を短時間で捜索できる。グラ・バルカス帝国が目視による確認に対して、夜間でも赤外線とレーダーによる捜索が出来るので圧倒的に有利と言っても過言ではない。

 

素早くグラ・バルカス帝国の艦隊を発見した日本国海上自衛隊は"87式無人偵察機"を引き揚げさせるのと同時に、ステルスジェット戦闘機"富士"が空母"出雲"、"青龍"から発艦した。それから程なくして、グラ・バルカス帝国の偵察機として活動していた"リゲル型雷撃機"が日本国艦隊を発見したものの、妨害電波によりこの情報を本国に伝えることなく"02式対空レーザー"によって撃墜された。

 

しかし、『ある担当区域の偵察機との連絡が途絶したから、敵艦隊はこの区域にいる』と言う断片的な情報は与えてしまう。後手に回っても同格か格下の相手だったらその区域に攻撃隊を飛ばせば良かっただろう。しかし、日本国はグラ・バルカス帝国とはこの世界の第一文明圏と第三文明圏外並みかそれ以上の技術格差があるのだ。

 

東部方面艦隊の上層部は即座に攻撃隊を出すべきだとカイザルに迫った。しかし、カイザルの答えはNOだった。理由としては、日本国の兵器の前では帝国最速の"アンタレス07式戦闘機"でさえこの世界のワイバーンに変わり無い。ならば、奴らの攻撃隊が接近してから艦隊を守るべきだと考えたのだ。

 

実際、グラ・バルカス帝国の偵察機である"リゲル型雷撃機"は263kmだ。だが、ジェット戦闘機は1000km超えているのは当たり前だ。故に、攻撃隊を派遣しても数時間かかる距離でもステルスジェット戦闘機"富士"からすれば数十分で行けるのだ。

 

だが、何もせず敵航空機を待っていては後手に回ってしまうので、"アンタレス"を発艦させ艦隊防衛に力を入れる事にした。そうして、第二次バルチスタ沖海戦の航空戦が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー第二文明圏バルチスタ海域グラ・バルカス帝国海軍東部方面艦隊ー

 

 

グラ・バルカス帝国海軍東部方面艦隊は偵察機として派遣していた"リゲル型雷撃機"の内の1機が消息不明となったことを受けて、日本国艦隊を発見したと結論づけた。やって来るであろう敵航空機から艦隊を守る為、直掩に当たらせていた。

 

それからすぐの事だった。突然"ペガサス級航空母艦"の一隻が爆発したのだ。これを見た"アンタレス"のパイロット達は周囲を警戒する。しかし、もう一隻の"ペガサス級航空母艦"が爆発したのだ。それと同時期に"アンタレス"数機が撃墜される。

 

"ペガサス級航空母艦"の爆発はロケットが低空から激突したのが分かった。しかし、"アンタレス"が撃墜された攻撃は何をされたのか分からなかった。しかし、この未知の攻撃に"アンタレス"のパイロット達は冷静に対処した。何故なら、予めカイザル司令長官から指示を受けていたのだ。その内容というのが、『諸君らは敵のロケット弾を撃墜してもらいたい。奴らのロケット弾は驚異的な命中率を誇る。これが艦艇に被弾するのを阻止してもらいたい。多少の損害は許容する。そして、余裕があれば敵航空機を攻撃してくれ』だ。

 

この命令を守るため"アンタレス"のパイロット達は低空飛行して突っ込んでくるロケット弾を発見し、機関砲を撃つ。しかし、音速を超える"83式空対艦誘導ミサイル"

には無力だ。

 

無情にも"83式空対艦誘導ミサイル"は"ペガサス級航空母艦"に命中する。これで、3隻の航空母艦が炎上したり傾いたりしている。一目で戦線復帰は難しいと分かる姿だ。この様子を"アンタレス"のパイロットは苦々しく思っていた。日本国の航空機を遥か上空に見つけている。しかし、カイザル司令長官の命令を守る為に無理には突撃をしていない。だが、航空機を無視するとは攻撃を阻止できないと言う事だ。

 

"アンタレス"は"02式空対空レーザー"による不可視の攻撃で撃墜される。"83式空対艦誘導ミサイル"が空母を撃破していく。連携を密にしようとも、妨害電波をされてしまい艦との連絡が取れない。それは、航空隊も同様だった。カイザルが予め航空隊に命令していたのが不幸中の幸いだろう。

 

そうしなければ、日本国の航空機に向かって無駄死にするだけだったからだ。もっとも、命令を予め受けていても結果は変わらないが…

 

 

 

 

 

 

 

 

夜明け前の日本国による航空攻撃が一区切りついて、東部方面艦隊は状況整理に努めていた。その結果は、『最悪』そのひと言に尽きるだろう。

 

日本国は、空母を集中的に狙った結果"ペガサス級航空母艦"を始めとする空母や、"タウルス級重巡洋艦"、"レオ級巡洋艦"、"エクレウス級駆逐艦"や"キャニス・ミナー級駆逐艦"が被害を受けた。

 

"ペガサス級航空母艦"含む軽空母が5隻が撃沈確実又は航行速度低下、"タウルス級重巡洋艦"含む2隻の撃沈又は一部損壊、"エクレウス級駆逐艦"や"キャニス・ミナー級駆逐艦"を含む20隻の撃沈が判明した。"レオ級巡洋艦"の被害は3隻の撃沈だ。

 

そして、"オリオン級戦艦"含む6隻が一部砲塔の破壊や航行速度低下になっていた。そして、直掩に当たっていた"アンタレス"42機中27機が撃墜される事態となった。そして、日本国航空機に対する損害は無い。この結果が日本国の技術力を物語っている。

 

しかし、こんな所でへこたれては"軍神"の名が泣くとばかりにカイザルは諦めていなかった。此方が受け手に回っても日本国艦隊に接近する前に此方の損害が多くなる。ならば、焼け石に水でも戦力を削減するしかない。そう考えていたカイザルは既に攻撃隊を派遣していた。

 

音信不通の"リゲル型雷撃機"の担当区域に攻撃隊を派遣していたのだが、カイザルは大きく迂回して日本国艦隊の背後を取ろうとした。日本国の対空兵器の前では焼け石に水でも一定の効果がある事を信じて。そして、"シータス級潜水艦"多数を派遣していた。

 

潜水艦に対する備えもバッチリであろう日本国には、潜水艦による魚雷攻撃も意味を成さない可能性が高い。しかし、何度も言うようだが、ある程度の損害を許容しても日本国の被害を少しでも大きくして、この後に起こるであろう艦隊決戦に備えなくてはならない。彼は、攻撃隊が一機だけでも戦果を挙げ、無事に帰ってくれることを祈っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

夜明け前の攻撃から数時間経った頃、東部方面艦隊から発艦した攻撃隊は日本国艦隊の姿を発見した。彼等は先程の攻撃の仕返しとばかりに艦隊に突撃する時だった。

 

日本国の艦艇から白い煙を出しながらロケット弾が次々と発射された。それは"アンタレス"や"シリウス型爆撃機"に向かう。勿論、狙われた航空機は回避するが、ピッタリとくっついて被弾。爆散する。このロケット弾は日本国の艦艇には標準装備である"05式中距離艦対空誘導弾"によるものだ。

 

沢山打ち込まれる"05式中距離艦対空誘導弾"の他にも、青い炎によって沢山の航空機が炎上して墜落していく。

 

それを何とか回避した"リゲル型雷撃機"や"アンタレス07式戦闘機"、"シリウス型爆撃機"はそれぞれの役割を全うすべく次の行動に移る。

 

"リゲル型雷撃機"は日本国艦隊に迫る。しかし、日本国の巡洋艦に搭載されている127mm単装砲によって正確に1機、また1機と撃墜されていく。この時点で15機あった"リゲル型雷撃機"は10機も撃墜されていた。残った5機は日本の最新防空兵器、"02式艦対空レーザー"の出迎えを受けることになった。

 

空母めがけて接近していた"リゲル型雷撃機"は空母や巡洋艦、駆逐艦にまで搭載されている"02式艦対空レーザー"が打ち込まれる。

 

"02式艦対空レーザー"による瞬きに等しい時間で1機の"リゲル型雷撃機"が撃墜されていく。しかし、奇跡的に2発の魚雷を投下できた。

 

だが、"88式魚雷"に搭載された対魚雷防御機能によってグラ・バルカス帝国の空気魚雷は破壊されてしまい、被雷する事は無かった。

 

"シリウス型爆撃機"や"アンタレス07式戦闘機"も同じく"05式中距離艦対空誘導弾"や127mm単装砲、"02式艦対空レーザー"による攻撃を受けて全滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も、日本国艦隊とグラ・バルカス帝国東部方面艦隊の航空戦は散発的に行われた。

 

グラ・バルカス帝国東部方面艦隊の航空隊は日本国艦隊に大きな損害を与えるどころか軽微な損害すら出せなかった。しかし、日本国の攻撃隊にグラ・バルカス帝国東部方面艦隊は大きな損害を被った。

 

なんと、空母を日を跨ぐ前に2隻が損害を受け、7隻が撃沈又は航行不能になった。損害を受けてないのは3隻で航行速度低下になったのが1隻だ。それ以外は撃沈されるか、パガンダ島に修理する為帰投している。

 

他にも、重巡洋艦は5隻程が戦力外になっている。戦艦は撃沈こそしていないが、航行速度の低下や兵装の一部破損が見られる。巡洋艦や駆逐艦の損害は半分以上に上るほどだ。

 

最早、半壊といっても過言ではないが東部方面艦隊は撤退していなかった。夜も耽ってきた頃、カイザルは部下とともに作戦の見直しを図っていた。

 

「カイザル司令長官、意見具申よろしいでしょうか?」

「何だ?」

 

カイザルの許可が下りた部下は提案する。

 

「夜間攻撃を提案します」

 

これを受けて、カイザルは却下しようとして思いとどまった。夜間での艦載機の発着は危険が伴う。これを理解出来ていない筈が無いのだ。しかし、それを承知で意見具申したとなるとそのリスクを補うメリットがあると見るべきだろう。

 

…そこまで考えてないのであれば、無事帰還出来たらこの無能を予備役に送ろうと決心するカイザルだった。

 

そんなことなど知らない部下はカイザルに説明を始める。

 

「残りの"アンタレス"を可能な限り出撃させ陽動に充てます。その間に艦隊を接近させて艦隊決戦に持ち込むのはいかがでしょう。敵の航空機、対空能力は出撃させた攻撃隊が音信不通になっていることからも我々以上なのは明らかです。ならば、艦隊で攻撃すれば良いのではないでしょうか?それに、カイザル司令に見せていただいた書籍によれば、日本国の艦艇は装甲が無いに等しいのてしょう?ならば、戦艦の榴弾砲を浴びせればいいのです。戦艦の厚い装甲なら航行速度が低下することはあってもそう簡単に撃沈されることは無いはずです」

 

この説明に一理有るとカイザルは思った。日本国の技術は日本産の書籍で知っているつもりだったが、やはり知識と実際に体験した事では認識に違いがあると思った。ならば、損害覚悟で刺し違える位の勢いでなければ、レイフォル沖の制海権を維持することは出来ない。此方が開発出来た着艦誘導灯を日本国が開発していないとは思えないが、夜間攻撃が成功すればコラテラルダメージだ。カイザルは、若干の不安もあったもののそれ以外に日本の超兵器に対処する方法が思い付かないのも事実。

 

そう考えをまとめたカイザルは部下の意見を受理することにした。

 

「分かった。貴官の意見を採用しよう」

 

そう言って、カイザルは生き残った艦隊に無線連絡を入れる。

 

『私は、東部方面艦隊司令長官のカイザルだ。本艦隊はこれより、敵艦隊との艦隊決戦に挑む。厳しい戦いになるだろう。しかし、我々が今までの訓練や実戦で培った技術を存分に生かせ!勝てるかは分からない。しかし、負ける訳には行かない!諸君らの奮戦に期待する!』

 

そう言って、カイザルは無線で今後の作戦を連絡する。将兵達の反応は様々だ。自信アリげな者、不安に駆られる者達。カイザルはそんな将兵達を申し訳無く思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー同時刻、日本国艦隊ー

 

「稲荷神様、敵艦隊の無線傍受に成功しました」

「では、聞かせてください」

 

そう言うと、安井司令が頷き同席していた山本艦長がスイッチを入れた。

 

すると、カイザルが振り分けた艦隊決戦についての役割から作戦概要までが放送された。一通り終わってスイッチを切ると安井司令が言う。

 

「この様に、敵艦隊は艦隊決戦なら我々に一矢報いる事が出来ると考えた様です」

「…艦隊決戦の勝算は?」

「はい。接近されて主砲どころか副砲を雨あられに撃ち込まれると厄介ですが、遠距離からの砲撃なら砲弾の対処は可能です」

「分かりました。この戦いを1人の犠牲も出ることなく無事に乗り切れる事を期待します」

「はっ!お任せ下さい!」

 

安井司令の敬礼に山本艦長が続く。

 

日本が海上自衛隊創設以来、大規模な艦隊決戦をすることになった。その時まで後少し…

 






〜コラム〜

現在の両艦隊の被害状況

日本国

空母…0隻
巡洋艦…0隻
駆逐艦…0隻
原子力潜水艦…0隻

グラ・バルカス帝国

空母…"ペガサス級航空母艦"(正規空母4隻中3隻撃沈又は 航行不能)
    軽空母6隻中3隻撃沈

戦艦…"オリオン級戦艦"及び"ヘラクレス級戦艦"9隻中兵装破損、航行速度低下艦6隻
"グレードアトラスター級戦艦"第1砲塔使用不能

重巡洋艦…"タウルス級重巡洋艦"4隻撃沈、航行速度低下艦3隻

巡洋艦…"レオ級巡洋艦"10隻中7隻撃沈

駆逐艦…"エクレウス級駆逐艦"や"キャニス・ミナー級駆逐艦"合わせて75隻中45隻撃沈

潜水艦…"シータス級潜水艦"多数撃沈

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これから登場する兵器について

  • 核兵器
  • 光学兵器
  • その他(生物兵器、化学兵器、宇宙兵器等)
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