〜イルネティア島近海〜
イルネティア島に向かう、1つの艦隊があった。その艦隊が掲げる旗は、十文字の白線で区切られた赤円…グラ・バルカス帝国の軍旗である。
その艦隊は、グラ・バルカス帝国海軍本国艦隊第2艦隊空母機動部隊だ。彼等は、レイフォル沖の制海権を取り戻す為に本国より派遣された艦隊だ。だが、彼等は本国と植民地防衛を主としている為、実戦経験に乏しい。何処まで戦えるのかは不明だ。
彼等は、正規空母2隻、軽空母1隻、戦艦2隻、重巡洋艦6隻、巡洋艦6隻、駆逐艦24隻、補給艦6隻の艦隊だ。
だが、もう"空母機動部隊"等とは名乗れない様な状態だ。何故なら、空母"出雲"から発艦したステルスジェット戦闘機"富士"から放たれた"83式空対艦誘導ミサイル"によって正規空母と軽空母共に撃沈されてしまったからだ。
迎撃に"アンタレス"を出そうにも、出す前に空母の甲板が使用不可能にされてしまい、敵航空機を攻撃する事が出来なかった。敵航空機は高射砲で対応したが、戦果を挙げることは出来なかった。
「空母を失ったが、イルネティア島を失陥する訳には行かない!このまま進め!」
空母を失った時点で海戦は負ける可能性が高く撤退した方が良いのだが、イルネティア島を失陥すればパガンダ島も攻撃に晒されている以上、レイフォルまでのシーレーンを失う事になる。そればかりか、ムー大陸の入植者や陸軍兵士が孤立するだけではなく、ムー大陸を失い、天文学的な経済損失を生み出しかねない。それが分かっているだけに、司令官であるアケイルは撤退するべきだと思っていても、軍略的に撤退する事は出来なかった。
現在、日本国の航空攻撃によって空母3隻と駆逐艦10隻を失っている。それに、戦艦や巡洋艦、重巡洋艦の一部には対空兵器や主砲塔を使用不能にされている艦もある。まだ日本国艦隊を目視でも確認出来て居ない以上、航空攻撃が来ると考えて上空の警戒を密にしていたが、それは無駄に終わる。
日本には、射程200kmを誇る
因みに、1隻は空母"青龍"が指揮するレイフォリア攻撃にあたっている。
誘導弾に対する対抗策もロクにないグラ・バルカス帝国が誘導弾ですら対処が難しい
"オリオン級戦艦"は
2隻の"木曽型巡洋艦"から放たれた
中央第2艦隊はレイフォル沖の制海権を取り戻す事なく全滅した。
◆
ーグラ・バルカス帝国領イルネティア島経済都市ドイバー
グラ・バルカス帝国領イルネティア島は制空権を完全に喪失していた。"05式空対地誘導ミサイル"や"85式巡航ミサイル"によって滑走路は勿論、基地やトーチカが破壊され航空機を離陸させる事は出来ない。
そして、何よりの問題は補給の問題だ。海上戦力の大半が壊滅して、制海権も奪われてしまったので補給物資は届かない。補給が届かない中で幾多もの爆撃を食らって、将兵達は確実に疲弊していった。連日の爆撃によって死者も出ている。そして、最も問題なのが現地住民の反乱機運の高まりである。
グラ・バルカス帝国は現地住民に対して低賃金の長時間労働と言うスタンスが一般的であり、奴隷同然の待遇で酷使している企業、或いは個人もいる。そんな彼等に良い感情など湧くはずもなく、不満は募るばかりだった。そんな中で、日本国の爆撃だ。自分達が到底敵わなかったグラ・バルカス帝国の飛行機械を飛ばす事もさせず、滑走路を破壊し豆粒程の高高度から攻撃をする様に、イルネティア島の住民は沸き立った。地下組織だった"イルネティア解放民族戦線"は表立った行動には移さなかったものの、着実にその刃を研ぎ澄ませていた。実際、サボタージュやテロ行為に走る者も一定数いた。
これに対して、グラ・バルカス帝国の対応は苛烈な弾圧であった。大日本帝国の武断政治の様な統治方法によって生まれた抵抗運動を武力で抑え込めばその反動は更に大きくなる。そんな事をすれば火に油を注ぐ結果になるのは明白だ。現地住民の抵抗といつ来るかも分からない敵部隊と言う内と外の戦線を抱えたグラ・バルカス帝国領イルネティア守備隊が疲弊するのは明らかだった。
そんな中、日本国に援護されたムー国は経済都市ドイバに作られた軍港に上陸しようとしていた。正確には、ドイバ近郊の砂地だが。
グラ・バルカス帝国のイルネティア島にある軍港は、イルネティア王国海軍時代にグレードアトラスターによって破壊されたが、再建の際に戦艦も駐留出来るように改造されている。だが、軍港都市ドイバの代名詞とも言える軍港は、日本国海上自衛隊の"85式巡航ミサイル"によって無惨にも破壊されている。駐留していた地方艦隊も"92式艦対艦誘導ミサイル"によって撃沈されている。
この軍港に勤めていた兵士達は空爆を生き残った僅かな兵器を用いて此方に向かって来る上陸部隊を待っていた。
先鋒を担うのは、海上自衛隊水陸機動団だ。彼等は少し前までパガンダ島で任務に当たっていたが、橋頭堡を確保して、補給を万全にしたので残存兵の対処を他部隊に任せて、イルネティア島に配置替えされていた。彼等がイルネティア島に上陸した後で、現在向かっているムー統括軍と共闘してグラ・バルカス帝国と戦う予定だ。
"78式水陸両用車"や"86式機動舟艇"に搭載された"12.7mm重機関銃"の銃弾がばら撒かれ、"86式機動舟艇"によって運ばれた"12式戦車"の主砲が火を吹く。
これによって砂浜に展開していたグラ・バルカス帝国の兵士が多数殺られる。だが、仕返しとばかりに生き残った戦車や自走砲、野戦砲、高射砲が火を吹く。しかし、高い装甲技術に守られた"86式機動舟艇"や"12式戦車"には効かない。まあ、砲弾が来たとしても、稲荷神の狐火で迎撃するので問題は無い。
砲弾が燃えると言う異常事態に臆することなく応戦したグラ・バルカス帝国の"2号戦車ハウンドⅠ"や"2号戦車ハウンドⅡ"、"2号戦車シェイファーⅡ"、と言った機甲戦力に対して、水陸機動団は戦車の主砲攻撃や"04式自爆型ドローン"による攻撃を行った。
装甲の薄いグラ・バルカス帝国の戦車は、どんどん撃破される。そこに、稲荷神の意志1つで人体及び戦車にいきなり発火される狐火の前にグラ・バルカス帝国に対抗策があるはずも無かった。
いや、稲荷神の神力を減らせば勝機はあるかもだが、地球世界の信仰と第三文明圏及び第二文明圏、そして何より日本国民の信仰を途絶えさせなければ、核兵器でも生きている稲荷神だ。どの道勝機はゼロに等しい。
稲荷神と共に戦場を走る水陸機動団の士気は絶好調だ。その快進撃にグラ・バルカス帝国は敗走。橋頭堡を確保して、日本国自衛隊イルネティア派遣部隊は無事に上陸に成功したのだった。
◆
ー第二文明圏圏外グラ・バルカス帝国領イルネティア州州都キルクルスー
旧都キルクルスはイルネティア王国の王都だったが、グラ・バルカス帝国によって滅ぼされイルネティア州の州都として、ムー大陸への補給基地であり現地民反乱の抑止を担う中心部である。ここには、飛行場や軍民用の港など近代的に整備されていた。
そんな都市の一角に作られたイルネティア島司令部では混乱が広がっていた。
「日本軍の部隊が上陸しただと!」
基地司令官であるランフ少将は怒鳴る。部下は少し怯えながら話す。
「はっ。州市ドイバ近郊に戦車を伴った中規模部隊が上陸したとのことです。尚、これは有線連絡でありその後の連絡は届いていません」
その報告に、ランフ少将は顔を真っ赤にさせる。日本軍によるイルネティア島攻撃はグラ・バルカス帝国イルネティア守備隊を劣勢に追い込んでいた。ここキルクルスの飛行場は破壊され、軍港は使用不能になり、地方艦隊は壊滅。本国よりレイフォル沖の制海権を取り戻すべく来ていた中央第2艦隊も壊滅、レイフォリアの統合基地ラルス・フィルマイナに駐留していたレイフォリア防衛艦隊も戦力の4分の1を消失している。
つまりは、イルネティア島を巡る制海権及び制空権は日本軍に握られているのだ。
「パガンダ島やムー大陸から航空援護は期待できないのか!」
「パガンダ島は現在日本軍が上陸しており、援護は不可能であり、ムー大陸も先程から援軍を要請していますが繋がりません!」
「クソっ!」
現在イルネティア島に配備されている戦力は、ムー大陸に派遣される予定だった第10師団および11師団、そしてイルネティア島守備隊の12師団、最後に現地民警備部隊だ。
現地民警備部隊とは、一種の警察機構の様な物だ。現地民が犯罪をしたり、グラ・バルカス帝国に不利益を齎した場合に対して通常の警察より大きな権限を持っている。だが、その戦力は軍隊に遠く及ばない。故に、戦力として数えても日本軍を追い返すには不安が残るだろう。
そして、一番の懸念は『敵が戦車を用いて上陸した』この一点だ。前世界ユグドでは、ケイン神王国が塹壕突破に用いる原始的な戦車を持っている程度だった。魔法があるとは言え、前世界より遅れているこの世界に戦車は極一部の国にしか無いと考えられており、"2号戦車ハウンド"は無敵の戦車とされている。日本軍の戦車がどれ程の力を持つのか未知数の為に、ランフ少将は自分の知識を元に第10師団ならば勝てるだろうと言う確信があった。
第10師団は、ケイン神王国との戦闘を何度も経験したイルネティア島に配備されている戦力の中で一番の精鋭だ。ランフ少将は、第10師団をドイバに派遣した。
◆
第10師団を率いるルザワ少将は自信を持っていた。第10師団は不完全ながらも機械化を推し進めており、自国の戦車に絶対の信頼を寄せている。だが、今回はケイン神王国以来となる敵戦車との接敵だが、問題は制空権を握られている事だ。如何に戦車が強くとも空からの攻撃に戦車は弱い。だが、彼は『夜襲』をすれば制空権が無くとも敵を殲滅出来ると考えていた。
何故なら、敵航空機は航空母艦から発艦していると考えられる。理由として、基本夜間飛行は危険だからだ。危険を冒す必要は無いので夜間ならば勝機はあると考えていた。同様に戦車についても問題無いと考えていた。
彼等は意気揚々と出発した。
◆
そして、3日後に第10師団はドイバで日本国水陸機動団と戦闘をしていた。時間は真夜中であり、空は星空が輝くものの、地表の一部は明るい。
この明かりは火災によるものであった。ドイバに派遣された第10師団は混乱の真っ只中にいた。何故なら、敵の戦車が見えない中で次々と自分達の戦車が爆発したのだ。そして、どうやってかは知らないが敵戦車は暗闇で視認が悪い中正確に此方の戦車を撃ち抜いているのだ。
ならば白兵戦を…と接近すれば此方の位置が判っているかのように弾を撃ち込んで来るのだ。
そして、何より恐ろしいのが狐の獣人だ。奴は馬鹿正直に戦車の編隊に突っ込んできたのだ。夜の襲撃もあって気付くのに遅れたが、近くまで接近されればさすがに気付く。小銃の弾を撃ち込むが素手で弾を掴んでいる。戦車砲を撃ち込もうにも砲弾は青い炎で燃やされ戦車は細い腕で持ち上げられて捨てられる。
そして、何処から捕捉したのか移動中にも攻撃を受け、戦車、自走砲、トラック、自動車と言った機械類が破壊されている。
ルザワ少将の自信は木っ端微塵に砕け散った。彼の慢心が仇になった形だ。部隊の半分以上を失った状態での戦闘の継続など不可能だ。
「撤退!総員撤退しろ!」
彼の精一杯の大声で混乱した部隊員のどれだけが反応出来るか謎だが、1人でも生き残りを増やすために声を出す。そんな時、彼の乗る前線指揮車に獣人が向かっているのが見えた。そして、抵抗する間もなく前線指揮車は横転。彼は当たりどころが悪く頭を強く打ち、意識を失った。
イルネティア島を巡る攻防戦は佳境を迎えようとしている。
〜コラム〜
イルネティア解放民族戦線
元ネタは勿論東南アジアのあの国。この組織はグラ・バルカス帝国に対する嫌がらせをしてきたが、元ネタの国より劣っているので精々が竹槍とかマスケット銃での戦闘であり、殆ど活動していないが情報収集はしている。また、構成員だけは多い。
では、何故しょっぴかれないかと言えばイルネティア独自の言語を用いているからだ。世界共通語はグラ・バルカス帝国も分かるが、イルネティアの言語は一部の知識人のみ知る所だが、その知識人が協力しているので怪しまれる事はあれど、大規模な摘発は受けていない。
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これから登場する兵器について
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