稲荷様は平穏に暮らしたかった。   作:味八木

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※今回、大幅なオリジナル展開及び設定が入ります。それでも良いよ!と言う方はどうぞ。


イルネティア島解放戦〜後編〜

 

 

〜第二文明圏圏外グラ・バルカス帝国領イルネティア州州都キルクルスー

 

旧イルネティア王国の経済都市ドイバに上陸した日本国水陸機動団とムー統括軍イルネティア派遣部隊は緩やかにだが着実に同島の勢力圏を広げていた。

 

これに対して、グラ・バルカス帝国は何もしなかった。いや、何も出来なかったが正しいだろう。第11師団はイルネティア島に入植したグラ・バルカス帝国人の避難誘導をしている。第12師団は州都キルクルスの防衛の為に動けず、現地民警備部隊は反乱防止と治安維持が目的である為に練度が軍より一段も二段も劣る。そんな部隊が正面から戦うなど不可能である。彼等はただ飯食らいにまで落ちぶれている。

 

何故なら、イルネティア島の住民が反乱を起こしたからだ。彼等はグラ・バルカス帝国の抑圧的な統治に反感を持っていた。パーパルディア皇国の様な統治方法なのだから当然である。是非とも大英帝国の統治方法を見習ってもらいたい。

 

だが、グラ・バルカス帝国の軍事力の前に屈服する他なかった。だが、今はどうだろう。空を飛ぶのはワイバーンでもグラ・バルカス帝国の飛行機械でもない。日本国の航空機だ。それも首が痛くなる程に見上げなければ分からない程の高い位置にいる。陸軍基地も瓦礫の山にされるなど、目に見える形でグラ・バルカス帝国の劣勢は明らかだった。これを好機と見た”イルネティア解放民族戦線"の構成員は本格的な武力行使を検討していた。だが、そこに待ったを掛けた者達がいた。

 

日本の別班である。別班はイルネティア解放民族戦線に小型火器の提供と即席武器の作り方の見返りに情報収集を頼んできた。

 

現地民を雇って情報収集をするのは近代国家では割とある話だ。現地のことは現地民に聞くのが筋なため、協力を求めたのだ。だが、彼等は別班の予想以上に働いてくれた。

 

サボタージュなどは当たり前、稲荷神がかの織田信長などの武将に広め、オーストラリアでも実績があるゲリラ戦を展開したのだ。ここまで来ると立派なベトコンである。

 

そんな彼等は、夜襲、焼き討ち、食糧の焼却など補給を重点的に狙っていった。勿論、グラ・バルカス帝国も負けじと現地民警備部隊を投入する。だが、日本国から供与された火器は拳銃から火炎瓶まで選り取りみどりだ。火炎瓶を出されては戦車を無闇に出す訳にもいかず、結果としてどんどん反乱はエスカレート。軍で一番重要な食糧と燃料を失ったグラ・バルカス帝国は疲弊する。

 

そこに、日本国自衛隊とムー統括軍イルネティア派遣部隊のジェット戦闘機や"04式自爆型ドローン"に、ムー統括軍の単葉機の"マウン型爆撃機"が空を舞う。高射砲などの対空兵器は日本国によって破壊されており、ムー統括軍でも安全に活動可能だった。

 

碌な抵抗も出来ず、グラ・バルカス帝国はイルネティア島での勢力圏をどんどん縮小していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーイルネティア島内の村ー

 

グラ・バルカス帝国の勢力圏からイルネティア島に点在する街や村は日本国及びムー国によって解放されつつある。

 

そんな村を、日本の最高統治者にして自衛隊の指揮権を有する稲荷神が訪れていた。何故、稲荷神が前線から離れているのか?それは休息のためである。如何に稲荷神が世界最強と言えど、好き好んで戦場に行くほど戦争狂(ウォーモンガー)では無い。

 

休息なら本陣でするべきなのだが、稲荷神の要望でグラ・バルカス帝国から解放した村に立ち寄っていた。別にこの村に稲荷神が興味を唆る食べ物がある訳でもない。そんな村に立ち寄る事に近衛やお世話係は不思議に思っていた。

 

近衛は基本的に稲荷神より劣るので護衛の意味は少なく、戦場でも稲荷神の後を追うだけだ。しかし、人よけには十分に使える。グラ・バルカス帝国から解放してくれた事に感謝して押し寄せる村人達から稲荷神を近衛が護衛しながら村内である人物を探していた。

 

(う〜ん。ここに強い神力を感じたんだけどな〜)

 

稲荷神が感じたのは神力であった。日本では神様や悪魔と言った神魔が来日するのだが、神を騙る人間か本物かの区別が稲荷神しか付かないのだ。神力を感じ取れるのは神魔に属する者達のみだからだ。だが、日本とは真反対のこの島に神に属する存在がいる事が気掛かりだったのだ。

 

取り敢えず、村長さんや村の知識人に聞こうかな…と足を進めようとしたその時だった。稲荷神目掛けて少女が走ってきたのだ。当然これに近衛は手を広げで少女を押さえつける。それでも尚抵抗する少女を稲荷神から離れさせようとした時だった。

 

「その少女と話がしたいです。通して下さい」

 

稲荷神が近衛に向かって告げたのだ。そう言われたら従う近衛達は少女を通した。

 

「どうしたんですか?」

「私の友達に会ってほしいんです」

「友達ですか?その方の所まで案内してください」

 

姉妹程の身長差がある少女と稲荷神だが、少女のお願いに稲荷神は会ったほうが良いと考えていた。何故なら、勘がそう告げるからだ。

 

少女の案内に従って、村の裏山を登っていくと途中で洞窟があった。少女は洞窟の中に案内すると、そこには一体の竜がいた。翼とは別に前脚を持つ竜であり白い光沢が目立つ鱗に甲殻を有している。翼は1対だがその大きさは凄まじい。そして、その額には独特な紋章がある。

 

「イルクス!お客さん連れてきたよ!」

 

少女ーライカーの言葉に眠っていた竜ーイルクスーは目を覚まし、ライカに続いて稲荷神、そして近衛を見る。

 

《凄い神力…キミは神竜なの?》

「いえ、私は稲荷神です。狐の神様です」

《へー!凄いね!僕はイルクス。この島を守護する神竜だよ!》

 

イルクスとライカ曰く、イルクスはワイバーンの上位種の風竜の更に上位種たる神竜だと言う。神竜と言っても一概には色んな種族があり、イルクスは"ヴェティル=ドレーキ"と呼ばれる空戦を得意とする種族の幼体らしい。ここ、イルネティア島の守護神だと言う。

 

では、そんな守護神がこんな辺鄙な洞窟内部にいるかと言えば、グラ・バルカス帝国が原因だ。グラ・バルカス帝国がイルネティアの人々に危害を加えた事に憤慨し、ライカを乗せて単騎で突撃。その後、"アンタレス07式艦上戦闘機"2機と"シリウス型艦上爆撃機"1機を撃墜したが、数の多さに苦戦しライカを庇って被弾、再生能力と治療を受けて徐々に回復しつつあった。

 

だが、イルネティア王国はグラ・バルカス帝国に滅ぼされ雌伏の時を過ごしていたのだ。約2年かけて、イルクスは全快し攻勢に移ろうとした矢先、イルクスは驚愕した。自分が今まで感じたことも無い神力を生体レーダーで感じ取ったのだ。

 

そこでイルクスはライカに調査を頼み対象人物を無理のない範囲で連れてきて欲しいと頼んだ。それが稲荷神という訳だ。

 

「それで、私を呼んだのは?」

《うん。実はボクの力を引き上げるのを手伝って欲しいんだ。ライカの為にも、もっと強くならないと!》

 

イルクスの主張はこうだ。稲荷神が持つ膨大な神力を分けて欲しいというものだった。近衛はその意見に否定的だったが、稲荷神はどちらでも良かった。だが、イルクスが長時間神力を行使出来るか。その1点に尽きる。

 

戦国時代に桔梗さんと言う甲斐国の女の子に奇病にかからない様に稲荷神が着用していた巫女服を着させると、細菌を肉眼で捉えることが出来たりと人間を辞めていた。ただ、その後巫女服を脱いだので人間を辞めずに済んだが、もう少し遅かったら寿命が少し延びたかも知れない。

 

兎も角、短時間着用するだけで、大幅に能力は伸びるがその分能力の行使時間も少ないのだ。だが、仮にも名称に"神"竜と呼ばれているのだ。能力向上と使用時間はもっと延びるだろう。そこまで考えて稲荷神は考えるのを辞めた。『取り敢えずやってみてそれから考えよう!』と

 

だが、神力を分け与える方法が分からなかった。

 

「別にいいですが、神力をどう分け与えるのですか?」

《う〜ん。ボクに触れて直接分け与えれば良いんじゃない?》

 

稲荷神は、やってみるだけタダと手で触れる。そこに狐火を出す要領で力を流し込んだ。すると、イルクスに注入された神力は魔力に変換される。こんな真似はそんじょそこらの生物や機械では不可能だ。神竜だからこそなし得る方法だろう。イルクスの魔力量は、幼体の域を超え、その凄まじい魔力量を感じ取れる程になった。

 

その膨大な魔力量を抑え込めるように体が急激に成長する。30m程だった体長は50mにまで成長した。これに驚きの声を漏らす。

 

「凄い!カッコいいよ!イルクス!」

《ありがとうライカ!そして、稲荷神様、ありがとう!》

「どういたしまして」

 

イルクスとライカが喜んでいる所で、稲荷神が質問する。

 

「それで、2人はどうするのですか?」

「それは勿論…」

《反撃…だよね?!》

 

2人は祖国を滅ぼし、住民を奴隷の様に扱うグラ・バルカス帝国への報復を決意していた。

 

「それなら、私達と協力しましょう」

「本当?!ありがとう!」

《こちらからも宜しく!》

 

そして、早速ライカとイルクスは反撃に出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー第二文明圏圏外グラ・バルカス帝国領イルネティア州都キルクルスー

 

グラ・バルカス帝国が併合したイルネティア王国がある島、イルネティア島でのグラ・バルカス帝国の戦局は絶望的だった。

 

最精鋭の第10師団は壊滅し、残る戦力は半壊した第11師団と防衛用の第12師団。そして、現地民警備部隊だ。最精鋭の師団が壊滅した以上、戦力分散は愚策だ。だからこそ、総戦力をキルクルスに集めて市街戦に持ち込もうとしていた。降伏する事も検討されたが、出来る限り日本軍に被害を与えて本国の勝利に貢献すべきと言う考えから、キルクルスの住民を人質に取り、自国民は分散して作った簡易シェルターに匿っている。

 

住宅の家財を道路に引っ張り出して即席のバリケードを形成し、家屋の至る所に兵士が待機している。こんな所に攻め込めば多大な被害を被るだろう。だが、そこで役立つのが身体は成体になっても精神は幼体の現在世界で唯一の神竜だ。

 

神竜は風竜よりも高性能な生体レーダーを有している。これは、魔帝が有する魔導電磁レーダーと似たような物である。だが、決定的に違うのは神竜が持つレーダーは生物をも認識可能なのだ。

 

これにより、イルクスは何処に何人の人間がいるかを把握し、ライカに念話で伝え、ライカに渡された無線を通じてムー国側に伝達。件の場所にムー統括軍の兵士を日本国が貸与した手榴弾や閃光手榴弾ースタングレネードーを利用して軍民問わず一時的に戦闘不能状態にしてグラ・バルカス帝国兵のみに銃弾を放つ。

 

ムー統括軍は日本国の兵器に驚愕すると共に、更に神竜がいる事に驚いていた。無理も無い。日本人からすれば馴染みが無いが、神竜は神話にも登場する存在なのだ。

 

その神竜も生体レーダーで感知できる人間で、明らかにイルネティア人では無いとわかる風貌の人物や戦車、高射砲といった生き残った兵器を誘導収束レーザー(風竜の空気圧縮弾を強化したような物)で破壊していく。その温度は軽く6000℃を超えている。

 

一方で、日本国はそんなまどろっこしい事をしなくても良い。何故なら、日本国には"88式狭隘(きょうあい)(屋内など)型偵察ドローン"がある。

 

これは屋内運用可能な小型ドローンだ。これや屋外用の偵察ドローンと組み合わせて敵兵の位置を把握し、武装が施された攻撃ドローンで住宅の窓の外から銃弾を撃ち込む。そして、水陸機動団とパガンダ島が降伏したことで応援に駆けつけた陸上自衛隊、及び本国から派遣された増援部隊が家屋を一軒一軒クリアリングする。

 

また、スネークカメラを用いて効率的に兵士を対処している。グラ・バルカス帝国の戦車などの機甲戦力は"03式対戦車誘導弾"などの対戦車兵器やイルクスの誘導収束レーザーによって破壊されていた。

 

だが、グラ・バルカス帝国も黙っていない。パガンダ島に加えてイルネティア島まで失陥すれば、ムー大陸戦線の劣勢は確実だ。グラ・バルカス帝国イルネティア島守備隊を援護する為にグラ・バルカス帝国本国は行動に移る事になる。

 

 

 






〜コラム〜

神竜

イルクスは神竜と稲荷神同様"神"と言う文字が入ってるので神力を分け与えても問題無いと言う判断です。ですが、問題なのは神力は信仰心によるものであり、イルクスが使うのはあくまでも魔力です。ですが、神力は霊力、神通力、魔力よりも上位の力です。

その神力でも神竜ならば変換可能だろう。変換した魔力は凄まじい量なのでそれに適合出来るように体が成長する。と言う判断からこのような展開になりました。

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グラ・バルカス帝国の今後

  • 日本国本土近海に軍を派遣する。
  • レイフォル沖制海権を取り戻す
  • その他(経緯をメッセージボックスにて)
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