前話に続いてオリジナル展開が続きます。それでも良い方はどうぞ。
ー第二文明圏圏外グラ・バルカス帝国帝都ラグナー
今日も機関車や工場の煤煙、自動車やトラックの煙がスモッグを作り、空は薄汚い。
そんなラグナの一角に設置されているのは、帝国軍特殊殲滅作戦部の司令部である。
グラ・バルカス帝国軍特殊殲滅作戦部は特殊な位置づけにある。彼等は航空機を用いるが、空軍とは別枠として扱われている。それは、彼等が利用する航空機に起因する。
この帝国軍特殊殲滅作戦部が使用する航空機は新型の重爆撃機"グティマウン"である。
全長46m、全幅63mの巨体を持つ。それでいて、6000馬力のレシプロエンジンを6発備え、過給機を取り付けることで"アンタレス07式戦闘機"よりも高高度を飛行できる。それでいて、最高速度780kmの化け物だ。
この"グティマウン"は、かつて自衛隊で製造されたものの、使用される事は無かった"富嶽"と酷似している。
閑話休題
こんな性能であるがために、一般には伏せられている為に帝国軍特殊殲滅作戦部のみが運用している。そんな彼等の元に1つの指令が届いた。
「司令、皇帝陛下並びに軍本部からの出撃命令です」
「皇帝陛下が?空中戦艦でも出てきたのか?」
「いえ、攻撃目標はイルネティア島です」
「イルネティア島は我が国の勢力圏ではないのかね?」
「はい。いいえ。現在、イルネティア島からの連絡が取れない状態にあります。これは、イルネティア島に敵部隊が上陸した事を示しています。パガンダ島は既に陥落しているので、イルネティア島までも失えば、ムー大陸戦線の劣勢は明らかです」
「なるほど、だからこそ制海権が必要無い我々にお鉢が回ってきたのか」
「その通りです」
「では、速やかに援軍を送るとしよう」
こうして、特殊殲滅作戦部から75機の"グティマウン"が敵部隊に絨毯爆撃をお見舞いする為に派遣されることが決まった。
だが、この巨体の爆撃機の出撃は衛星によって日本側には筒抜けだった。この情報は速やかに稲荷神によまで届けられた。
「この爆撃機がイルネティア島に向かっていると?」
「はい。恐らくキルクルス周辺に展開している我々を高高度から爆撃するためでしょう。最悪の場合、キルクルスの街ごと灰にする可能性すらあります」
「しかし、我が国の戦闘機なら迎撃も容易いのでは?」
「はい。しかし、懸念があります。この爆撃機に"核兵器"が積まれていた場合です」
その単語を聞いた途端、稲荷神の眉間に皺が集まる。日本含め世界で核兵器が開発された事は無いが、その破壊力と副作用は知れ渡っている。それがイルネティア島に投下されれば、自衛官の命やムー統括軍人、イルネティア人が被害に遭い、イルネティア島は死の島になってしまうだろう。
「イルネティア島に接近する前に、この爆撃機を破壊して下さい」
「了解しました!」
稲荷神の幼く可愛らしい声色でありながら、威厳ある物言いで命令する。これに、安井司令官は元気よく返事をした。
◆
ー第二文明圏圏外グラ・バルカス帝国領イルネティア州西方ー
この世界では異質な科学で出来た巨大な爆撃機が編隊を組んで東に進んでいた。グラ・バルカス帝国の重爆撃機"グティマウン"である。大量の無誘導爆弾を積んだ75機がイルネティア島に向かって飛行していた。
攻撃目標はイルネティア州都キルクルスである。基本的に通信出来ない事があったのだが、稀に通じる事がありそこから断片的な情報を繋ぎ合わせた結果、キルクルスで敵部隊と交戦中と言う事が分かった。
そこで、この"グティマウン"はキルクルスの街ごと焼き払うつもりだ。軍本部はイルネティア島にいるグラ・バルカス帝国兵士を見捨てるつもりである。
そんな"グティマウン"の1番機に乗るランボー中佐は部下に命令する。
「高度1万mまで来る航空機があるとは思えんが、念の為下方を警戒しろ」
「了解しました」
自分達より高く飛べる飛行機など無い。その固定観念の元、彼等は下方ばかり警戒して更に上空を警戒しなかった。
未だ敵機無く、順調にイルネティア島に近付いていた所で、異変が起こった。
急に4機の"グティマウン"が高度を急激に下げたり、火達磨になる。これに、"グティマウン"の乗組員達は無線が使えないので、統制を取ることも出来ず大混乱になる。だ
「我が方より上空に敵影確認!」
「何だと!」
自分達より高い位置に機影があることなど想定していなかったランボー中佐は驚く。しかし、直ぐ様防御機銃を撃ち込む様に指示する。
空に機銃の雨が下から上に向けて放たれるが、音速を超える日本国のステルスジェット戦闘機に肉眼で銃弾を放っても当たる筈が無い。
空対空ミサイルを撃ち込んでも良いが、機動性能が高い零戦ーアンタレスーがいるならまだしも、"アンタレス"の限界高度より上空を飛行している"グティマウン"に護衛機などある筈もない。
"日本国海上自衛隊の空母から発艦したステルスジェット戦闘機富士は、"グティマウン"より高い高度1万5千m以上の高さから"02式空対空レーザー"を放ったのだ。
富嶽程の防御力だと一瞬で撃墜する事は出来ないが、数秒もあればレーザーの熱によって機体の骨組みが溶かされ、墜落する。
この一連の攻撃で、グラ・バルカス帝国の秘密兵器である重爆撃機"グティマウン"はイルネティア島の島影すら見ることなく、洋上で撃墜された。
その後、日本国とムー国による対空、対水上、対潜水を念入りに調べ、敵勢力が確認されなかった事から、第二次バルチスタ沖海戦から始まった一連の作戦は完遂した事を日本国本土、第二文明圏連合軍司令部、稲荷神に報告された。
ここに、グラ・バルカス帝国領になっていた地を世界で初めて解放され、イルネティア王国が再興された。
◆
ー第二文明圏圏外イルネティア王国王都キルクルスー
グラ・バルカス帝国から解放されて数日後、イルネティア島では、第一王子エイテスがイルネティア王として即位したが戦時下を考慮して即位式が行われることはなかった。
第一王子エイテス改めてイルティス14世は稲荷神と面会していた。王都キルクルスは灰燼…とはならなかったものの、ある程度の建物は半壊或いは全壊している。
今更グラ・バルカス帝国様式の建物を取り壊し元の建物にする訳にも行かないので、イルティス14世は建物をそのまま使用するつもりらしい。そんな彼等は、イルネティア島支配の行政府だったイルネティア征討府の無事な部屋を会談場所に選んでいた。
イルティス14世は、エイテス王子時代にグラ・バルカス帝国に対する援軍派遣要請をする旅に付き添ったビーリー外務大臣が一緒だ。対する稲荷神は近衛とお世話係の桜さんと一緒だ。そして、リモートで日本国外務大臣と急遽ムー国から来たガンドルフも参加している。
ガンドルフが参加しているのは、ビーリー侯爵と面識がある有能な外交課長だからだ。
議題は、『今後のイルネティア王国について』である。
まず、ビーリー侯爵が始める。
「まず、我がイルネティア島を奪還して下さったムー国及び日本国に深く感謝申し上げます」
そう言って、ビーリー侯爵は頭を下げる。それに、ガンドルフが答える。
「いえ、こちらこそイルネティア島奪還が遅れてしまい申し訳ない。そして、稲荷神様。此度はイルネティア島奪還にご協力頂き感謝します」
「いえ、我が国に火の粉が来る前に先手を打ったたけです」
そう言う稲荷神に続けて、日本国外務大臣広瀬が続ける。
『しかし、安全という訳には行きません』
「そうですね。いつ、グラ・バルカス帝国が奪還する為に軍を派遣するか分かりませんから」
広瀬の言葉をビーリー侯爵が補足する。この会談に参加する者達で一番軍学に精通しているのは、日本国の者だろう。しかし、この会談に参加している面々は表面的な事しか知らない。故に、広瀬外務大臣は専門家を呼んだ。自衛隊幹部である。
『では、私が今後の対グラ・バルカス帝国戦略についてご説明します。現在、イルネティア島及びパガンダ島東部にかけては第二文明圏連合軍の制海権下にあります。しかし、それより西に掛けては依然としてグラ・バルカス帝国の勢力圏にあります。しかし、ムー大陸は奴らの本国から取り残されています。そこで、ムー大陸から奴らを叩き出します。その後、グラ・バルカス帝国本土を攻撃する予定です』
『ここからが、イルネティア王国にも関係のある話なのですが、ビーリー侯爵殿が仰られた通り、いつ軍がやって来るか分かりません。なので、我が国を中心にイルネティア島に駐留します。ここイルネティア島を基地としてグラ・バルカス帝国の勢力拡大の阻止及び攻撃基地として利用する予定です』
『ありがとう御座います。詳細はこれから煮詰めますが、これらを承認して下さるなら我が国は貴国に技術支援及び復興支援をお約束します』
これを聞いたイルティス14世とビーリー侯爵は驚く。文明圏外国の国に文明圏の国が技術支援をする事はあれど、復興支援など前例がないのだ。
その後も、稲荷神はお飾りになりながらもイルネティア王国についての取り決めを協議した結果、以下の事が決定した。
・日本国及びムー国はイルネティア王国を防衛する。
・日本国はイルネティア王国に対して技術支援と復興支援をする。
・グラ・バルカス帝国の脅威が取り除かれるまで陸海空自衛隊がイルネティアに基地を建設し、駐留する。
・イルネティア王国は日本国に対して駐留費の2割を現金若しくは現物で支払う
・暫くの間、イルネティア王国に対してムー国及び日本国は食糧支援をする
以上をもってイルネティア王国を巡る取り決め、『キルクルス条約』が締結された。
◆
条約が締結された次の日、稲荷神とイルティス14世は旧征討府、現イルネティア城の中庭で、フランクに会話していた。
そして、ゲストとしてこの場にはライカとその騎竜である神竜イルクスもいた。だが、おかしな点があった。
それは、神竜であるイルクスの頭と尻尾だった。頭には稲荷神と同じ狐耳が、尻尾はモフモフの狐の尻尾が。そして、体の鱗はモフモフの毛並みに変わっていた。竜の要素は羽根しか残っていない。そして何よりイルクスは竜形態から人形態に変わっており、その背丈は女子高生位ある。
神竜は自然発生する個体の為雌雄の区別はない。だが、ライカが話しやすいように女性の姿をとっているに過ぎない。
そんな彼女達をイルティス14世に紹介していた。
「彼女達ですが、話を聞く限りここイルネティア島を守護する神竜だそうです」
「…はは。神竜ですか…神話の存在がこの島に居たとは…」
イルティス14世は事前に聞いていたとは言え、驚きの余り声が余り出てない。だが、それだけではない。人の形態をしているのもそうだが、問題は何故竜が狐耳と尻尾があるのか?と言う点であった。
「この狐耳と尻尾ですが、恐らく分け与えた私の力を完全に取り込めず体に影響が出ているのでしょう。完全に物に出来れば更なる強さを得て、姿も元に戻るでしょう」
《そうだね。ボクも力を完全に物に出来てない気がするよ。でも、成長していけば誘導魔光弾モドキも撃てるかもね》
「誘導魔光弾!」
イルクスの言葉にイルティス14世は驚愕する。誘導魔光弾。それは、古の魔法帝国であるラヴァーナル帝国の恐怖の代名詞だ。ワイバーンや帆船に必ず命中させる兵器だ。あの神聖ミリシアル帝国ですら実用化出来ていない程の超技術なのだ。
日本国は科学製の誘導魔光弾を実用化しているらしいが、魔法製の誘導魔光弾は実用化出来ていない。それなのに、第二文明圏圏外の小国が第一文明圏の竜人族の国、エモール王国にも住んでいない神竜がいて、誘導魔光弾を実用化一歩手前にいる。
たった一体とは言え、その衝撃は各国には無視出来ない物だろう。第一王子として帝王学を学んでいたイルティス14世はリスクとリターンが目まぐるしく頭の中を巡っていた。
「イルクス!イルネティア島は日本国の人達が守ってくれるから、ちゃんと休んで島の人達を守れるように頑張ろうね!」
《勿論だよ!ライカ!》
そう意気込む2人だが、実のところ稲荷神の力を取り込んだ以上、体に目に見える形で変化している。だが、日本国は魔法研究を始めているとは言え、まだまだ新参である。ならば、その筋の専門家に頼むのが筋である。
日本国は、魔導技術が世界一である神聖ミリシアル帝国、竜の事ならとエモール王国、個人魔法で有名なアガルダ法国、古代魔法の観点から中央法王国に呼びかけた。
その反応は次回にお送りするとしよう。
〜コラム〜
グラ・バルカス帝国について。
グラ・バルカス帝国がイルネティア島の現状を把握できたのはイルネティア島で勤務していた無線手のお蔭です。彼は無線が使え無い状況下で原作でもあるような周波数を変えて本国に短いメッセージを断続的に送信しました。その結果、本国は何とか現状を把握して奥の手を使う手段に出たと言う訳です。
何気に陰の功労者ですね。無線手の人。
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グラ・バルカス帝国の今後
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日本国本土近海に軍を派遣する。
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レイフォル沖制海権を取り戻す
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その他(経緯をメッセージボックスにて)