稲荷様は平穏に暮らしたかった。   作:味八木

77 / 94
お気に入り登録、高評価、誤字報告ありがとう御座います。

今回は各国の反応をお送りします。


神竜の影響

 

 

 

ー第一文明圏列強神聖ミリシアル帝国帝都ルーンポリスー

 

皇城アルビオン城にて、皇前会議が行われていた。日本国とムー国によるグラ・バルカス帝国への反攻作戦の結果報告書を閲覧したミリシアル8世は言う。

 

「日本国の技術は凄まじいな。世界連合艦隊がなし得ぬ事をやり遂げるとは…」

 

ミリシアル8世の呟きに、帝国情報局長アルネウスが答える。

 

「はい。我が情報局が掴んだ情報でも日本国の技術は軍民問わず高いです。第三文明圏外等という括りに入るレベルではありません」

「そうだな。日本国はレイフォル沖の制海権を取り戻した。これで、奴らの補給路を絶った事になる。アグラよ」

「はっ!」

「ムー大陸における侵攻作戦準備は順調か?」

「はい。海軍につきましては、陸軍派遣部隊を護衛する為に第4魔導艦隊の派遣準備が整っております。また、2つの地方艦隊もここルーンポリスに向けて出港しております。あと3日から4日で到着予定です。そして、陸軍ですが、第1・2師団の遠征準備が完了しています。両部隊は既にここルーンポリスに集結しており、陛下の1言で派遣可能です」

「よかろう。日本国やムー国との連携を忘れるな」

「は!」

 

続けて、ミリシアル8世は外務省統括官リアージュに目を向ける。

 

「第二文明圏及びムー国との連携を密にせよ。特に、ムー国と日本国だ。この二カ国が反攻作戦の主軸になるのは間違いない」

 

そして、対魔帝対策省古代兵器分析戦術運用部部長ヒルカネに顔を向ける。

 

「空中戦艦パル・キマイラの整備は終わったか?」

「はっ!後1週間程で終わる見込みです」

「ムー大陸での反攻作戦に使う可能性もある。しっかりと整備しつつも、早急に終わらせよ」

「承知いたしました」

 

神聖ミリシアル帝国はグラ・バルカス帝国がカルトアルパスでの攻撃に遭って以降目立った功績がない。一方で、日本国はグラ・バルカス帝国海軍艦隊を全滅させたり、ムー大陸西方の制海権を獲得するなど、華々しい功績を挙げている。神聖ミリシアル帝国の影が薄くなる事に危機感を抱いたミリシアル8世は、今度のムー大陸侵攻で世界に列強神聖ミリシアル帝国の名を今一度取り戻そうとしている。故に、気合が入っていた。

 

これからの行動の概要が決まり、それぞれが自らの役目の為に動き出そうとした時だった。

 

会議室の扉がノックされ、外務省職員が入って来た。そしてリアージュに耳打ちする。話を聞いたリアージュは驚きを顕にする。職員が去っていく中、リアージュが皇帝に報告する。

 

「陛下、日本国が我が国を含め数カ国に助力を求めております」

「なんだ?侵攻作戦に不備でもあったのか?」

「いえ、イルネティア島を奪還した際に同島に神竜を発見したとのことです」

「何だと!?それで、日本国は何と?」

「我が国は魔法技術が未熟な為、魔法に造詣の深い国々に専門家を派遣してもらいたいとの事でした」

 

この報告に、ミリシアル8世は直ぐ様決断する。

 

「では、直ぐ様イルネティア島に技術者を派遣せよ。神竜の力を少しでも解析すれば誘導魔光弾を開発出来るやも知れぬ」

 

ミリシアル8世は思わぬ幸運に感謝した。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー第一文明圏列強エモール王国竜都ドラグスマキラー

 

エモール王国の支配者ワグドラーンが住まうウィルマンズ城では、建国以来大規模な騒ぎが起こっていた。その理由は、日本国外交官が持ち込んできた情報にあった。

 

『第二文明圏外イルネティア島にて神竜を確認。専門家を派遣して欲しい』要約するとこの様な文書であった。

 

これに、エモール王国上層部は荒れに荒れた。何故、竜人族ですら見たことがない神竜が第二文明圏外なんぞにいるのか。なぜ神竜がこの地に現れないのか。そして、下等な人族が何故神竜を使役できるのか。その3点だった。

 

中には、神竜をこの地にお招きする様にすべきと言う者もおり、その中には力尽くでもやるべきとの過激な意見もあった。また、日本国が狂言を言っているのでは?と主張する者もいたが、"正誤を問う占い"で判断した所本当だと判断された。

 

この、"正誤を問う占い"は直近の過去の出来事を『はい』『いいえ』で判断する占いであり、国家の非常時或いは特別な式典、竜王の選出に使われたりする。また、この占いは使い勝手がいいと言えず、明確に正しい事でない限り反応しないのだ。神竜がいると言う事実も明確な場所や種族などを指定しないと反応しないのだ。それに、魔力を『空間の占い』程では無いとは言え消費するのが難点だ。

 

兎も角、本当だと判断された以上イルネティア島には専門家や外交官を派遣するべきだろう。そう考えた竜王ワグドラーンは、外交貴族モーリアウルと数名の専門家を派遣した。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー第一文明圏アガルダ法国首都ピールビーー

 

アガルダ法国上層部も荒れていた。理由は何度も説明した通り神竜である。

 

現在、神竜は狐耳に尻尾、モフモフ毛並みと言うおかしな状態である。故に、日本国は、個人魔法に長けているアガルダ法国に個人魔法で解決出来ないかを判断する為に打診したのだ。

 

「まさか神竜が現存していたとは…」

 

そう言うのは、学院連合総長で法王の肩書を持つヴィンセントである。彼はグラ・バルカス帝国よりもよっぽど重要な議題と考えていた。科学の文明であるグラ・バルカス帝国より、神竜の魔法の方が自国の発展に繋がるからだ。後、神話の存在が気になると言うお茶目な一面もあるが。

 

「これは要請通り、専門家を派遣すべきでは?」

 

そう言うのは、外務卿であるリピンである。

 

「しかし、専門家を派遣するとしても、イルネティア島までは距離があるぞ」

「神聖ミリシアル帝国に要請しましょう。何かしら対価を付ければ彼の国も頷くのでは?」

「う〜ん」

 

その後も会議は続いたが、結局は専門家を派遣することで決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー第一文明圏中央法王国ー

 

この国は、古代魔法の研究に力を入れている国だ。古代魔法とは、魔導師の能力を引き出し魔法の威力を高めたりする魔法の事だ。勿論、それだけではないのだが有名なのはファルタス提督のイクシオンレーザーだろう。

 

イクシオンレーザーは、古の魔法帝国の魔導アーマーを日本国の助力ありとは言え、壊すことに成功している魔法だ。これに驚いた魔法と科学の両立を図っているマギカライヒ共同体は最近、留学生を多く派遣しており経済も上向きだ。

 

そんな中での日本国の要請があった。この要請を聞いた中央法王国のダール・デラ城では緊急会議を開いていた。

 

「さて、神竜が居たとの事だが、誰を派遣するか…」

 

そう言うのは法王アレンデラ6世である。これに答えたのは、外務卿であった。

 

「ファルタス提督はどうでしょう?彼は魔導師として知識を多く持っています。また、対外受けも良い。何より、日本国の関係者と面識を持っている点でも申し分ないかと」

「それはいい提案だ。他に意見のあるものは?よし、では解散!」

 

なんとも呆気なく会議が終わったが、結局中央法王国はファルタス提督他数名の専門家をイルネティア島に派遣することになる。

 

 

 

 

実際の所、神聖ミリシアル帝国以外は移動に時間が掛かるので、神聖ミリシアル帝国の旅客機である"ゲルニカ"数機が運用された。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー第二文明圏外イルネティア王国王都キルクルス郊外ー

 

イルネティア島を取り戻してから数日後、日本国の要請を受けて、神聖ミリシアル帝国の旅客機である"ゲルニカ"によって要請を受けた各国の技術者や外交官が数機に乗ってやって来た。

 

第二文明圏外の国であるイルネティア王国にとって、第一文明圏の列強が2カ国もいるのだ。イルティス14世は即位してすぐに責任重大な外交を担うことになった。

 

自衛隊が戦闘機を離着陸できる距離にまでグラ・バルカス帝国の作った飛行場を改造した滑走路に各国外交官や専門家が降り立った。対して、イルネティア王国側は宮廷音楽家や軍の音楽隊が出迎えをし、イルティス14世自ら出迎える待遇だ。

 

列強であるエモール王国や神聖ミリシアル帝国、その他第一文明圏の国もいる。これに、出迎えに来たイルネティア王国の上層部は緊張を隠せないが、日本国は涼しい顔だ。

 

「初めまして。私が先日即位しましたイルティス14世です。わざわざこの様な僻地まで来て頂き感謝申し上げます」

 

イルティス14世の対応にシワルフは気を良くする。彼はレイフォリアにあるグラ・バルカス帝国の外務省レイフォル出張所で外交官ダラスに失礼な物言いをされ、不快な気分に陥っていた。だが、イルティス14世の対応に自身のひいては、神聖ミリシアル帝国を重く見ていることに満足していた。

 

一方で、エモール王国の外交貴族であるモーリアウルは、苛立っていた。彼の目的は神竜である。故に、一刻でも早く神竜にお目にかかりたかった。外交上必要なことなので我慢はするが、馴れ合いをする気にはなれなかった。だが、同席していた日本国のトップである稲荷神を見た瞬間、彼の思いは沈静化した。

 

「では、早速ですが神竜様の所に向かいましょう」

 

イルティス14世が日本国の方に頭を下げると、稲荷神が引き継いだ。

 

「移動には、我が日本国の人員輸送トラックを使います。お手数かけますが、ご容赦ください」

 

そう言うと、人員輸送トラックを運転する自衛官が案内を始める。それを横目に稲荷神は桜さんに耳打ちする。

 

「これでいいですかね?」

「バッチリで御座います。稲荷神様」

 

稲荷神は、稲荷神特別車両に乗って先導した。

 

 

 

 

 

 

 

 

一行は、王都キルクルスの現王城にやって来ていた。

 

「神竜様は、この城の中庭にいらしておいでです」

 

グラ・バルカス帝国外務省レイフォル出張所に出向いたことがない者達は、壊れている箇所があるとは言え、グラ・バルカス帝国の建築技術に驚いていた。

 

イルティス14世が神竜に関する話をして、移動時間を潰していると、中庭が見えてきた。

 

「今回、第一文明圏の皆様から専門家を派遣してもらったのは他でもありません。神竜様がとある問題を抱えているのです。病などではないのですが、我々や日本国の方でも分からないらしく、ご助力をこの場にいる皆様にお願いしたいのです」

 

そう言って、イルティス14世が背の後ろにある中庭を見せると、そこには…

 

 

 

 

狐耳と尻尾、モフモフ毛並み竜がいた。この光景を見た一同は目が点になった。さもありなん。神々しい竜の姿を連想していたら、実際は狐耳と尻尾、モフモフ毛並みの竜が出てくるなんて想像する方が無理な話だ。

 

状況が理解出来ない面々を置いて、稲荷神が説明を始める。

 

「実は、彼女らと会った時はグラ・バルカス帝国の航空機による攻撃で負傷していました。そこで、私が彼女の提案を受けて私の力を分け与えました。その影響なのか…あんな姿に」

 

稲荷神の説明がフリーズ中の一同の脳内に入ってこない中、一番最初に復帰したのはエモール王国外交貴族モーリアウルである。

 

「稲荷神殿、貴殿の力を分け与えたと言うが、どういう事かね?」

「はい。実は私の体は我が国の最新鋭医療設備を使っても全く実体が掴めないのです。第三文明圏のパンドーラ大魔法公国に依頼して魔法の観点から何か分からないかと調べてみましたが、成果は芳しくありませんでした。ですが、仮説として魔法や科学を内包する上位の法則、若しくは全く別の原理からなると言う2つの仮説が生まれました。どちらが正しいかは分かりませんが、私の力を取り込んだのが原因だと思われます」

 

稲荷神の言葉に一同は疑問符を浮かべた。魔法が一般的な第一文明圏の者達に上位の法則やら未知の法則と言われてもピンと来ないのは仕方がない。

 

正解を言ってしまうと、上位の法則が正しいだろう。神々は天地開闢の卵を作り、そこから宇宙が生まれ、この星や地球が生まれたのだ。地球には魔法は無いが、神々の作りし法則に沿って生まれたのが魔法と科学である為、神ならざる身で神の法則を扱うなど無理な話である。

 

そんな事を稲荷神含め全員知らない。神竜の体の変化も心配だが、調べない事には何とも言えないので、取り敢えず神聖ミリシアル帝国が魔導工学の観点から、エモール王国が竜の知識観点から、アガルダ法国が個人魔法の観点から、中央法王国が古代魔法の観点から神竜の体を徹底的に調べた。

 

その翌日、神竜ーイルクスーは人型をとって会議室の椅子に座っていた。騎手であるライカも一緒に上座に座っている。上座に座るのは稲荷神であり、上座のすぐ近くにモーリアウルやイルティス14世、下座に色んな国々の技術者、専門家、外交官がいる。

 

「では、合同会議を行いたいと思います」

 

稲荷神が言うと、列強上位順に説明を始めた。

 

「神聖ミリシアル帝国からですが、神竜様の体を我が国の魔導医療設備で調べましたが、魔力と同等以上に未知のナニカがある事が分かりました。しかし、これ以上の成果は有りません」

「エモール王国からだが、神竜様の症状について詳しいことは分からないとの事だった」

「アガルダ法国からですが、魔法で調べられる限りでは

神竜様と稲荷神殿のお力が原因と考えられますが、それ以上は何とも…」

「中央法王国では、魔法や科学とは異なる力では無いかと考えられます。しかし、その力が何かは分かりませんでした」

 

シワルフやモーリアウル、リピンにファルタス提督が結果を報告したが、総合すれば日本の出した結論と似たり寄ったりであり、調べた結果は『分からない』である。

 

これには、皆が頭を抱えてしまった。だが、モーリアウルが1つ提案をした。

 

「結局調べても何も分からなかったのだ。ここは、神竜様の判断に委ねてみては?」

 

要は、『神竜様が問題無いと言えば良くない?』と言うことであった。皆の視線が集まる中、イルクスは答える。

 

《そうだね。力が増している気はするけど十分に制御出来ていないだけで、体におかしな点はないよ》

 

イルクスの言葉に幾人かは、「外見が既におかしい!」と言いたかったが、イルクスが言うのは体の内部の話だろうから声を上げるのは堪えた。

 

「まあ、問題が無いなら良いのでしょう。所で…神竜様少しよろしいでしょうか?」

《な〜に?》

「神竜様の症状を調べる時に採血した血やその他データを我が国に持ち帰って今一度詳しく調べてもいいでしょうか?」

《勿論いいよ!ボクはイルネティア島の防衛を日本国の人と一緒にするから、用があるなら来てね》

「分かりました」

 

シワルフは、本国からの無茶振りが成功して内心ため息をついた。何故なら、神竜からデータを取り自国の魔導兵器の開発に役立てるためにデータ採取を神に等しい皇帝からの勅命で申し付けられたのだ。無理も無い。

 

兎も角、イルネティア島に派遣された者達は大した成果を挙げることは無かったのだ。勿論、神竜を自国に連れて行こうとしたエモール王国のモーリアウルも神竜とライカの仲と、何より稲荷神を見てそんな気は失せたのだった。






〜コラム〜

神力

科学で調べても何一つ分からない稲荷神の体を構成する要素。これは信仰するものが少ない程力が減るのだが、神竜を少なくともエモール王国に住む竜人族が信仰しているし、その他各国の者も信じている者の信仰があるので、実は今のほうが強かったりするが力を完全にモノにできていない。

本作や作者の別作品のお気に入り登録、高評価、宜しくお願いします!

グラ・バルカス帝国の今後

  • 日本国本土近海に軍を派遣する。
  • レイフォル沖制海権を取り戻す
  • その他(経緯をメッセージボックスにて)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。