稲荷様は平穏に暮らしたかった。   作:味八木

8 / 94


今回は稲荷神様の描写を多くしましたがちょっと難産でした。ですので口調が可笑しいとかがあるかもです。それでも良い方はどうぞ!

お気に入り登録、高評価宜しくお願いします!


外伝
日本との接触


 

 

時は日本とクワ・トイネ公国が接触して直に遡る。

 

―クワ・トイネ公国外務局―――

 

第三文明圏外国や一部文明圏を中心にやりとりを行うこの場所では、新たに現れた新興国家日本国と国交を開くための事前準備のため使節団派遣準備を進めていた。

 

「ヤゴウ!日本って言う新興国家に使節団として行くらしいな!俺も行ってみたいよ」

 

ヤゴウの同僚である1人が話しかけてくる。使節団派遣はこの世界にとっては珍しいことではない。数多の国が存在するこの世界では存在を確認されていない国もある。国の頭が入れ替わり国名が変わることは珍しい事ではない。文明圏外国や文明圏の覇権主義国家では良くあることだ。また、大国が分裂して中小国になることも珍しくはない。ただ…治安が悪いことが多く使節団に被害者が出ることも珍しくは無い。よって使節団派遣の任務にあたるのは皆が嫌がる仕事になるのは自明の理であった。さらに、クワ・トイネ公国のあるロデニウス大陸は第3文明圏の影響を多少は受けている。しかし、文明圏からは【蛮地】と馬鹿にされるが、【蛮地】と呼ばれる中では上位の生活レベルを維持。食事に関しては文明圏に負けないほどの良い食事をしていると自負している。

 

使節団派遣となる地域はクワ・トイネ公国よりも生活水準が極端に下がる場合も珍しくない。衛生面でも問題があり疫病に感染する使節団員もおり、治安も悪い。しかし、今回の使節団派遣がされる国は注目を浴びている。使節団に配布された事前資料に目を通すと信じられない事が記載してある。事の始まりは中央歴1639年1月24日の朝、第六飛龍隊の竜騎士マールパティマが公国北東方面の海上を警戒飛行中に金属で出来ていると思われる飛龍を発見した。しかし、全く追いつけずに引き離されたという。その鉄龍を迎撃するために出撃した第六飛龍隊はワイバーンの武器の主力武装である導力火炎弾の射程に捕らえる事無く引き離されたという。全く信じられない事にその鉄竜は目算で時速600キロを超えていたとある。しかも、相手はワイバーンより遥かに大きいにも関わらず…さらに、海からの接触時には約250mクラスの金属製で帆が無い巨大船で来たという。

 

それを聞いた時はヤゴウは「信じられん…」と漏らした程だ。

 

ワイバーンとは高価な兵器だ。竜騎士はエリート中のエリートだ。兵なら誰しも一度は憧れる空の覇者なのだ。歩兵より騎馬隊の騎士が格上であり騎士よりも竜騎士は圧倒的に格上だ。ワイバーン1騎で1個騎士団を翻弄できるとされているからだ。時速230キロの高速で飛翔し弓の届かない高空からワイバーンの人間とは隔絶した魔力によって放たれる火炎弾は並の武器より威力が高く硬い鱗は弓をも跳ね返す。対人用の刃物を通さないほど強靭だ。攻守共に優れた兵器なのだ。ワイバーンよりも強力な生物は三大文明圏で作られていると聞くワイバーンロードくらいしか思い浮かばない。いや、人間が制御できない存在なら各種属性龍、古龍、神龍がいるが人間が扱うのは無茶無謀、天災のような存在だ。そんなワイバーンを超える物を実用化し異常に大きい飛行物を飛ばすなど第2文明圏の列強ムーでも無理だろう。日本の飛行物が経済都市マイハーク上空に達したのは事実だ。そんな規格外の国、日本にヤゴウは非常に興味を持ち始めていた。

 

ヤゴウの考えは使節団団長により打ち消される。

 

「これより使節団派遣の概要を説明する」

 

小さな会議室で使節団団長が説明を始める。今回派遣される使節団は5人だ。全員外務局の肩書きがあるが軍務局の将軍ハンキも外務局への出向という形で使節団に入っている。

 

団長が話し始める。

 

「今回の我々の目的は日本が我が国の脅威となるかを判断する事だ。皆の知るところだが我が国の防空網が日本の鉄龍によってあっさりと破られた。現在、我が国に鉄龍を撃墜する手段は無い。日本は我が国と国交を結びたいとの意思を示しているが、鉄竜を所有している国が何故国交を結ぶのか考えても解らないというのが正直なところだ。覇権国家なのか、ロウリア王国のように亜人に対して極端な差別意識を持っているのかも不明だ。何のために我が国と国交を結びたいのか真意を調査する必要がある。」

 

これは皆の共通認識であった。団長は皆を見渡してから続ける。

 

「日本がどんな国なのかは不明だが、高い軍事力を持っていると思われる。理解していると思うが、毅然とした態度で接して相手を刺激しないよう言動には十分配意する様に。そして可能なら日本は何が強くて何が弱いのかを調べ我々が彼らに対して優位に立てる部分を探してほしい

では、皆に配布された資料を見てほしい」

 

資料に記された一文に使節団員は困惑する事になる。

 

「皆の言いたい事はよく分かる。荒唐無稽だが、彼らの言い分によると国家ごとこの世界に飛ばされたと言っているそうだ。これについては真意を考えても無駄だ」

 

日本の主張する国土のある位置は群島はあれど海流や風が乱れる海域で無人だった。いきなり新興国家が出来上がったとしても高度文明がいきなり育つとは思えない。

 

第2文明圏の列強ムーには1万2千年前に【大陸転移】が起きたと神話が残っている。正式な当時の政府記録として残っている為にムーの人々は信じているが他の文明圏の人々はただの御伽噺として認識していた。そのムーの様な転移が日本に起きたと考えるべきだろう。

 

「日本側の説明によると今回は日本が移動手段と船舶を提供する様だ。出発は1週間後の昼だ。準備をしっかりしておく様に。そして、出発から2日後の夕方には日本の西側に位置する福岡市に上陸。宿で3泊する予定だ。福岡市の宿で日本で行動する上での常識を教える様だ。日本の外務省によると日本の常識を知らずに勝手に外出すると、車と呼ばれる馬車に踏まれて死んでしまう可能性があるからとの事だ。上陸から5日後の昼には福岡市を出発してリニアと呼ばれる輸送システムを利用してその日の昼には日本の首都東京に到着して散策。翌日に日本国政府の人間と会談が行われる」

 

ヤゴウ含め使節団員は訝しんだ。

 

時系列がおかしい…と。配布資料によると出発から2日後の夕方には日本の南に位置する島の地方都市にたどりつく様だ。しかし、日本とクワ・トイネ公国は1000km以上の距離がある。船でたった2日で到着する距離ではない。さらに、福岡市から東京都までの距離も1000kmを軽く超えているにもかかわらず、昼過ぎには到着とはどうゆう事だ?我が国の上空に現れた鉄龍ならば話は解る。しかし、リニアは地上を走る乗り物だと資料にはある。

 

しかし、はっきりと分かるのは常識の埒外にある国だと言うことだ。

 

―1週間後―

 

使節団の面々は、クワ・トイネ公国で一番大きい港町であるマイハーク港に集まっていた。

 

日本国から来たスーツを着た男性が話し始める。

 

「使節団の皆様。本日は日本へ来て頂く事になり感謝申し上げます。私は皆様の案内を本国より任された日本国外務省の田上です。不便な点があればどうぞお申し付け下さい」

 

ヤゴウ達はこれから始まる船旅を苦々しく思いながらも日本が用意した船に向かった。

 

使節団の皆は船の大きさに驚愕した。日本国と接触した際に臨検した者の話で250メートル級の船と聞いて覚悟はしていたが実物を見ると予想以上の大きさだった。使節団は驚きながら小さい船で大きい船に乗船、福岡市に向かうことになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

―2日後―

 

使節団は無事に福岡にある博多港に到着。使節団が見たのは見たこともない高層建築物の多さだった。顔を限界まで見上げないと先が見えない建築物の数々だ。

 

しかし、それより気になったのは街の至る所に狐の顔が描かれていた事だ。

 

「田上殿、あの狐の絵は一体何かね?」

「はい。あれは我が国に約500年前に降臨され現在も日本国を導いて下さる稲荷神と呼ばれる神様のマークです」

 

使節団は?マークを浮かべたが田上の話を聞く。

 

「我が国は稲荷神様の御蔭で発展を遂げてきました。なので我が国にとって稲荷神様は分かりやすく言うと国教の主神…と言ったところでしょうか」

 

使節団は何となく凄さを実感した。それから2日間日本の常識や自衛隊の交流会で民間技術と軍事技術共に驚愕。第1文明圏に迫る勢いだと使節団は呆然とする事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

―日本国首都東京東京駅―

 

この日、外観は近代のヨーロッパの様な赤レンガだが、枠組みは日本の宮大工の技術が詰まった東京駅では多くの人がごった返していた。

 

野次馬はスマホのカメラアプリを或いはデジカメを持って騒ぎの中心となる人物を見ていた。その人物は多くの男性と女性を引き連れて東京―博多間のホームでリニアを待っていた。

 

もう分かると思うが、東京駅に来ていたのは稲荷神その神である。稲荷神はいつもはお世話係と近衛の家族の子供という設定で街に出るのだが今回は狐耳と尻尾を出していた。

 

稲荷神はリニアで来るクワ・トイネ公国の使節団を待っていた。

 

「後、どれくらいで使節団は来るのですか?」

「はい。現在博多から出発してもうすぐ2時間ですのでもう間もなくです」

 

そう言ってる間にもホームに博多発のリニアがやって来るとアナウンスがあった。そして、速度を落としていたリニアが駅のホームで完全に停止。中から外務省の田上とクワ・トイネ公国使節団がやって来た。

 

「稲荷神様!わざわざ東京駅までお越し下さりありがとう御座います!」

「いえ、私も異世界の住人には興味があったもので」

 

そう言ってクワ・トイネ公国使節団を見たが稲荷神は内心凄くワクワクしていた。前世オタクであった稲荷神にとって生のエルフを間近で見れる機会を逃すわけにはいかないのだ。一行は稲荷神と一緒にホテルに行くのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

(異世界でもエルフは耳が長いんだ…)

 

稲荷神はクワ・トイネ公国の使節団の面々を見てそんな事を思った。

 

「あの…稲荷神殿…」

 

ヤゴウの問いに思考の渦から離脱して受け答えをする。

 

「はい。何でしょう?」

「あの、日本は人間が沢山いるとの事でしたが、貴方は獣人なのですか?」

 

稲荷神はその質問に?マークが付いたが少しして質問の意味を理解した。

 

「いえ、私は獣人ではありません。確かにそう思われるのも無理は有りません。しかし、外務省の方からも言われたでしょうが、元の世界に獣人やエルフはおらず創作上の存在です。私は500年前から日本にいる為、日本の最高統治者をやってます」

「なるほど…しかし、田上殿の話では【天皇】なる方がいると聞きましたが」

「日本の宗教観では神は魂の存在となった時に神の土地を踏めるのですが、私は肉体を有してる為に帰ることが出来ません。その為、日本は統治者が2人いるのですが、私は名目上の存在であり国家元首は天皇陛下ですよ。何故か国民は私を持ち上げるんですよね…」

 

「私は退位したいのに…」そんな悩み事を漏らした稲荷神だったが周りの者には聞き取れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

―日本国首都東京稲荷大社謁見の間―

 

稲荷神と雑談をした使節団は東京を散策した次の日、歴史が古い稲荷大社の謁見の間で国交樹立に関する会議を行っていた。

 

「今回は、我が国に使節団として来て頂き感謝します」

 

そう言って稲荷神は頭を軽く下げた。それを見た使節団もつられて頭を下げた。そして稲荷神は話を続ける。

 

「我が国が転移国家というのは聞いていると思います。我が国は食糧を生産していますが国民や家畜の食糧を全て賄えるだけの生産量は無いのです。ですので、我が国としては食糧や各種産業に必要な資源を輸入したいと考えてます」

 

嘘が嫌い…つまり腹の探り合いが嫌いな稲荷神は直に本題を話した。話を聞いたヤゴウ達は早速日本国に優位に立てる情報を見つけた。使節団はとても高い文明を持っている国が食糧の不足を苦手としている事に意外に思った。

 

「食糧を輸出してくれるなら我が国としてはインフラ…つまりは輸出手段の提供や各種生活技術を提供します」

 

それはヤゴウ達使節団隊にとって福音であった。日本国の優れた技術を提供してくれるならロウリア王国との戦いや国力を増強することが出来る。使節団はその条件を了承。本国へと情報を報告、国交を結ぶ事になる。

 

小難しい話が終わって不意に稲荷神が話しかけてきた。

 

「…そう言えば異世界ですから魔法とかってあるんですか?」

「魔法ですか?ありますよ」

 

ヤゴウはそう言って水球を出した。この様子に稲荷神含めた政治関係者、お世話係や近衛も目を丸くした。

 

「魔法って本当にあるんですね…私のも魔法なのでしょうか?」

 

そう言って稲荷神は手元に青い炎を出現させた。ヤゴウはそれを見てしばらく考えて言った。

 

「いえ…私の認識ではその様な青い炎を出す魔法など聞いた事が無いですな…第1文明圏や魔法に詳しい国の者なら話は別でしょうが…失礼ですが、日本国には魔法を使えるものはいないのですか?」

「ええ。魔法は創作上の存在であり使える人はいませんね。私の青い炎を魔法と言うなら使えるのは私一人です」

 

使節団は再び驚きに包まれた。こんな高度な文明を持つ国が魔法を扱えない事、魔法を扱わなくても高度な文明を築く事ができる事実にだ。クワ・トイネ公国はこの情報を受けて日本国に魔法の基礎的な知識の提供等を行うことが決まったのである。

 

この結果、日本国独自の魔法兵器が誕生することとなる…

 






―コラム―

日本国民は稲荷神が大好きな為各家庭、企業に稲荷神のグッズが溢れかえっている。稲荷神降臨記念日の祝日には日の丸ではなく稲荷大社の紋章と何処に隠してたんだ?!となるほどのグッズが街に溢れかえる。稲荷神のペイントされたグッズは外国でも高額で取引される。特に初版の稲荷神が刷られた一万円札などは…

10評価、9評価、8評価を下さりありがとう御座います!
5や1を下さった方が納得出来るような執筆にしていきたいです!


稲荷神視点をもっと描くべきか?

  • ペロリストとしてはもっと書いて!
  • 書かなくて結構!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。