稲荷様は平穏に暮らしたかった。   作:味八木

80 / 94
日間ランキング入賞ありがとう御座います!

お気に入り登録、高評価、誤字報告ありがとう御座います!


先制雷撃

 

 

ー第三文明圏外チエイズ王国ー

 

チエイズ王国は第三文明圏外に属する国だ。港には5級国家に相当する国には似合わない鋼鉄製の軍艦が停泊していた。それは、第三文明圏外や第三文明圏を中心に旧式艦の生産販売やライセンス生産、技術支援をしている日本国の軍艦とは異なる。

 

そう、チエイズ王国はグラ・バルカス帝国の軍門に降り、グラ・バルカス帝国海軍特務軍艦隊第一艦隊はチエイズ王国で補給を行っていた。

 

何故こんな所にグラ・バルカス帝国の艦隊がいるのかと言うと、日本国を叩くためだ。グラ・バルカス帝国は日本国がムー大陸に艦隊を派遣している事を確認していた。

 

しかし、情報収集やフォーク海峡戦で日本国は対空能力や一部の軍事技術が帝国を凌駕している事を確認した。帝国が初めてとなる自分達と同程度の敵か、それ以上の敵を相手にする必要がある。しかし、日本国は情報収集をした結果、帝国ほど物量があるとは考え難いと結論付けた。

 

そして、現在日本国の主力部隊をムー大陸に派遣した以上、本土は手薄になっていると考えた。そこで、グラ・バルカス帝国帝王府は、本国艦隊と同等の練度を持つ特務軍艦隊なら勝算はあるとの考えだった。仮に日本国を撃破出来れば、日本国本土からの補給が届かなくなり、ムー大陸に派遣された部隊は補給不足に苦しむし、帝国…ひいては帝王グラ・ルークスの野望の実現に近付く事になる。

 

特務軍艦隊の編成は戦艦4隻、空母26隻、重巡洋艦14隻、軽巡洋艦46隻、駆逐艦300隻、輸送艦150隻の計540隻だ。駆逐艦が多数を占めているのには理由がある。

 

神聖ミリシアル帝国主催の先進11カ国会議で宣戦布告した後に、グラ・バルカス帝国は駆逐艦を中心に生産して来た。理由として、この世界は駆逐艦すら撃沈するのが難しい国が多いがためだった。また、一部旧式艦も動員しているので、この多さになった。

 

帝国三将で唯一の女将であるミレケネス少将は特務軍艦隊司令官兼第1分艦隊司令官として旗艦はグレードアトラスター級戦艦"スピカ"である。

 

「補給はどれくらいで終わる?」

「はい。後1時間程で完了します」

 

軍艦は補給時は非常に弱い。故に、艦隊が補給する際には"アンタレス07式艦上戦闘機"が編隊を組んで警戒に当たっている。不意に此方に迫ってきた帆船を撃沈する。

 

先程から飛行禁止区域に侵入してくるワイバーンを既に13騎撃墜している。帆船についても事前通告の無い帆船が向かってきたので撃沈している。

 

「早く済ませてさっさと進みましょう。補給が終わるまで弾の無駄撃ちをしたくないわ。鬱陶しいもの」

 

そう言いつつ、ミレケネスは今後の作戦を復習する。特務軍艦隊は二手に分かれ、ミレケネス率いる第1艦隊計270隻がある。その他にもアウロネス准将率いる第2艦隊270隻がグルート騎国で補給を行っている。

 

その後、ニューランド島東北東沖にて合流しロデニウス大陸を右回りで迂回して日本国を攻める予定だ。目標地点は、博多、名古屋、那覇、東京、仙台のいずれかである。博多は商業都市として繁栄しており、名古屋は製造業の一大拠点、那覇には大きな基地がある事を確認している。東京は言わずもがな日本国の首都でありここを攻めれば心理的、物理的な圧迫を強いることが出来る。仙台も製造業の拠点として栄えている。

 

攻撃拠点は自由だが、帝王府は東京を攻めることを目標としている。ミレケネスは今後の戦いで戦死する事になる将兵の身を案じていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

ーロデニウス大陸南方海上ー

 

グラ・バルカス帝国特務軍艦隊司令ミレケネス中将は戦艦や空母、駆逐艦といった艦が陣形を組んで乱れずに行進している。それを見て、彼女は物思いに耽った。

 

「司令、外周警戒戦闘機隊から入電です。南方約300kmの海上で、ワイバーン40騎が艦隊へ向けて進行していたため、全騎撃墜したとのことです。なおこちらの損失及び被弾機無しです」

 

艦長であるキユカ大佐が報告を上げる。

 

「ふむ…また弾薬の無駄遣いね」

「まったくです。異世界の連中は夜間飛行が出来ないので脅威にもなりませんので、今回ので今日最後の空襲でしょう。まあ、警戒訓練にはなりますよ」

 

ミレケネスの興味なさげの言葉にキユカ大佐は同意する。ニューランド島を出発した特務軍艦隊は日本国に針路をとっていた。これ以後、グラ・バルカス帝国の予想に反して帆船での攻撃は無くなった。これは、グラ・バルカス帝国の艦艇の速度に帆船が追いつかなかったのが実情である。だが、帆船の代わりにワイバーンが五月雨の様に攻撃を仕掛けてきたが、帝国の防空網に引っ掛かり次々と撃墜されている。

 

「圧巻の行進ですな。これを見て怯まぬ者は居ないでしょう」

「…そうだな。小賢しい作戦は物量で押し潰す」

 

そう意気込むミレケネスだが、一途の不安を隠せずにいた。日本国は主力の艦隊をムー大陸に送っている。故に、グラ・バルカス帝国本国艦隊と同等の練度を誇る精鋭揃いの特務軍艦隊を相手にするのは2線級の部隊だと考えていた。負ける筈が無い。そう考えていたミレケネスやキユカ大佐、その他将兵はそう考えていた。

 

しかし、ニューランド島で受け取った電文に特務軍司令部は騒然とした。

 

『帝国東部方面艦隊、日本国に敗北。損耗率9割超え。空母全滅。カイザル大将の生死不明』

 

これはまさに青天の霹靂であった。帝国の三将と数えられるカイザル大将が生死不明で、東部方面艦隊は軍事的用語では無く、文字通りの壊滅に追い込まれたという。であれば、日本国は想像を超えた力を持つことになる。でなければ、カイザル大将が負けるなど考えられないからだ。

 

ミレケネスは何か重要な見落としをしているのではないか。そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーロデニウス大陸南方海中ー

 

グラ・バルカス帝国特務軍第2艦隊は日本国に向けて第1艦隊より先に進んでいた。しかし、それを密かに見ている者達がいた。

 

グラ・バルカス帝国が所有する潜水艦よりも深い水深にいるのは、日本国海上自衛隊の潜水艦群"依10型原子力潜水艦"の群れだ。

 

彼らは、日本に迫る艦隊を防ぐ為に潜水艦による戦力の削減を狙ったのだ。

 

日本の技術を結集して生産したこの潜水艦は原子力潜水艦でありながら極限までの静音性を実現させている。これを見破れる軍隊は地球世界でもごく僅かだ。ましてや、技術が劣っているこの世界で見つけられる軍隊など居ないだろう。

 

それは、グラ・バルカス帝国も同様だ。彼らは水中に潜む潜水艦を認識すらしていなかった。故に、潜水艦からの攻撃に気付く筈もない。いや、直前に気付くことは出来た。

 

「水上レーダーに反応確認!距離…」

 

そう言ってレーダーを担当する士官が報告しようとした時だった。突如として、旗艦スピカの横で航行していた空母"ケルベロス"が爆発炎上したのだ。

 

日本の"依10型原子力潜水艦"が放った"87式潜水艦発射型誘導弾"は水中を飛び出すと低空を飛行しグラ・バルカス帝国のレーダー網を掻い潜った。そして、直前で急上昇し空母の飛行甲板を叩いたのだ。

 

"ケルベロス"は炎上し、航空機を発艦させる余裕など無い。それどころか沈没に向かっている。

 

「今の爆発は何だ!機雷か!?」

「はい。いいえ。空母"ケルベロス"は飛行甲板が炎上しています!機雷でも魚雷でもありません!」

「ではあの攻撃はなんだ!」

「レーダーに反応があった直後に爆発がありました!これは敵の攻撃です!」

「そんな事はわかっている!総員戦闘準備!敵はすぐそこにいるぞ!」

 

第2艦隊の司令官であるアウロネスの命令によって、将兵は慌ただしく動き始めた。各員が戦闘配置につき、空母から順次艦載機が発艦する。艦隊上空を警戒していた"アンタレス"は更に警戒範囲を広げる。

 

対空レーダーに反応は無い。それは水上レーダーも例外では無く、海中も同様に反応無しだ。そこに、通信士が報告をする。

 

「第31航空隊から報告!艦隊2時の方向、低空を飛行物体接近中!距離30km!時速約1000km以上、航空隊による迎撃は間に合いません!」

「時速1000km以上だと!各艦の判断で対空戦闘を開始せよ!」

 

アウロネスの命令で多くの艦が空中に黒い花火を大量に散らす。しかし、海面スレスレを飛行する物体を撃ち落とそうにも、近接信管は海面に反射して正常に機能しない。だが、飛行物体は上昇し、それに合わせて対空砲火も上空に打ち上がる。

 

やがて、奇跡的に1発の飛行物体がグラ・バルカス帝国の近接信管が作動し、爆発した時の圧力で後方部分を削られ、"87式潜水艦発射型誘導弾"は海面に落下する。

 

これを見た将兵達は歓喜の声を上げる。しかし、それとは対照的に司令部の者達は冷や汗を流している。

 

「副長、発射元の割り出しは?」

「既に当たらせています。対空レーダーに反応はなく付近に水上艦も見当たらないので、遠くから発射されたか潜水艦と見て間違いないでしょう」

「これはマズイぞ…海面スレスレを飛んだ所を見ると日本国は近接信管の弱点を知っている。その上、恐ろしく命中率が高い。夜間攻撃能力があるとすれば…」

「確かに不味いですな。しかし、帝国の防空網も未知の兵器に対応出来る証明では?」

「だと言いがな」

 

フラグ構築をした代償か、更なる絶望が彼等に迫った。そう、"87式潜水艦発射型誘導弾"のおかわりが大量に来たのだ。

 

報告を聞いたアウロネスは撃墜するように命令する。グラ・バルカス帝国に現代兵器が襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

グラ・バルカス帝国特務軍第2艦隊の司令官アウロネスは精神が磨り減っていた。無理も無い。所在不明の潜水艦と思われる攻撃によって駆逐艦、軽巡洋艦、重巡洋艦、戦艦、空母が短期間の間にみるみる減っているのだ。しかし、アウロネスは司令官としての義務がある。

 

「被害報告!」

「はい!敵攻撃20!命中艦20!轟沈8隻、大破10隻、中破2隻!航行可能なのは中破艦2隻のみです!」

「くそ!全弾命中だと!?」

「はい。しかし戦艦には命中しましたが中破に留まっています。敵の攻撃は戦艦の装甲を貫く事は出来ません」

「そんな話をしてるんじゃない!戦艦だけ残っても意味がない!」

 

防空網は簡単に突破され発射元の割り出しも出来ない。司令部どころか一般の将兵も恐怖に包まれていく。

 

「漂流している兵士救助に駆逐艦5隻で当たれ!他艦は全力で発射元の割り出しを行え!」

「帝国をコケにした事を後悔させてやりましょう!」

 

そう言って士気を高めるが、攻撃の手は緩まず一発、また一発とロケットがやってくる。恐怖の攻撃は数時間に渡って続き、今や空母はもともとの13隻から3隻程にまで減少している。

 

しかし、"依10型原子力潜水艦"は攻撃の手を緩めない。射程内に入ったグラ・バルカス帝国特務軍第2艦隊に向けて91式魚雷を放ったのだ。

 

91式魚雷は射程50kmを超える。誘導魚雷である91式魚雷は残った空母3隻の内の1つである空母"カペラ"に向かい巨大な水柱を上げる。その後、もう一発の魚雷が命中しカペラは急速に傾いていく。

 

彼らは近くに潜水艦がいる事を確信し潜水艦を探す。しかし、彼等の常識では無誘導空気魚雷の最大射程は25km程だ。しかし、日本国の純酸素魚雷は50kmを超えるのだ。アクティブソナーでもないパッシブソナーで捉えられる筈もない。

 

だが、魚雷のスクリュー音は聞こえる。グラ・バルカス帝国特務軍第2艦隊に向かう魚雷を彼らは探知したのだ。この事に安堵する一同。旗艦"クウェーサ"が回避運動を始めた時、ソナー担当者が驚愕の報告をする。

 

「敵魚雷、進行方向を変えました!我が方変わらず直撃コースです!」

「なんだと!おのれぇぇぇ!」

 

旗艦"クウェーサ"に無慈悲に魚雷が突き刺さり爆発する。水が瞬く間に艦内に広がり傾いていく。同じような運命を辿っている駆逐艦や軽巡洋艦、重巡洋艦、戦艦もある。

 

トドメとばかりに、ナハナート王国から発進したステルスジェット戦闘機富士に搭載された"95式空対艦ミサイル"が面制圧の様に放たれ、グラ・バルカス帝国特務軍第2艦隊は第1艦隊に連絡を取ろうにも無線封鎖と電波妨害で無線もレーダーも使えない中、全滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

グラ・バルカス帝国特務軍第1艦隊の司令官ミレケネスは落ち着きがなかった。その理由はレーダーと無線が使用不可能になったからだ。

 

全ての艦のレーダーと無線が一斉に使えなくなった理由が自然現象とは考え難い。磁気嵐という可能性もあるがそれならば数秒のタイムラグはある筈なのだ。彼女は異変を察知すると各方面に偵察機を派遣し情報収集に勤しんでいた。

 

「司令!偵察機が帰還します!」

 

部下にそう言われ空を見上げると確かに帝国の偵察機が帰還していた。方角的に第2艦隊方面だと当たりをつけたミレケネスは偵察機の報告を待った。

 

偵察機は空母に着艦する前に旗艦上空を飛行し発光信号を発信する。無線が使えないので光を利用した情報伝達の方法である。

 

「『ダイニカンタイゼンメツ』…第2艦隊全滅!?」

 

この報告にミレケネスは伝達ミスを疑うが、練度の高い帝国軍人がそんな初歩的なミスをするはずが無い。それは、帝国軍人を長く経験している彼女の経験から来るものだった。

 

この突拍子な報告に困惑する第1艦隊司令部の面々。だが、彼らの受難はこれからである。

 






〜コラム〜

グレードアトラスター級戦艦

グラ・バルカス帝国の大和型戦艦に酷似した戦艦。本作では今まで3隻登場しているが、その内2隻が鹵獲または撃沈されている。

史実日本では2隻建造され、計画で終わった残り2隻の戦艦があるのですが、それに習って後1隻登場させた方が良いでしょうか?

お気に入り登録、高評価宜しくお願いします!

グラ・バルカス帝国の今後

  • 日本国本土近海に軍を派遣する。
  • レイフォル沖制海権を取り戻す
  • その他(経緯をメッセージボックスにて)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。