稲荷様は平穏に暮らしたかった。   作:味八木

82 / 94
お気に入り登録、高評価、誤字報告ありがとう御座います!


伝説の再来

 

 

ー第三文明圏外チエイズ王国ー

 

チエイズ王国のグラ・バルカス帝国軍基地司令官は日本国による空爆に晒されたあと、被害確認とグルート騎国のグラ・バルカス帝国軍基地への相互連絡をする為に無線を確認していた。そんな時、部下が血相を変えてやって来たのだ。

 

「どうした?」

「司令!この無線を聞いてください!」

 

部下が示した無線は耳障りな砂嵐を響かせていると思ったら徐々に砂嵐は鳴りを潜め、代わりに声が聞こえてきた。

 

『グラ・バルカス帝国軍基地及びチエイズ王国、グルート騎国両国に告げる。私は神聖ミリシアル帝国、帝国対魔帝対策省古代兵器分析戦術運用部所属、空中戦艦パル・キマイラ艦長メテオスという。単刀直入に言う。我々に降伏せよ。私は一方的に相手を虐殺するほど悪趣味では無い。我が国の力は、古の魔法帝国の力は理解しているだろう?魔法を使わない君たちでも勝てる勝てないの判断はつくと思うよ』

 

チエイズ王国のグラ・バルカス帝国軍基地司令官であるエスファ少将は背筋の凍る思いがした。脳裏に浮かんだのは、第一次バルチスタ沖海戦で投入して来た超兵器だ。

 

本国から伝えられたスペックとしては、全長250mの飛行戦艦であり、軽巡洋艦クラスの主砲多数と精密かつ速射可能な機関砲多数、そして投下式の超大型爆弾を保有しているという。防御面では対空機関砲や近接信管の攻撃を物ともしない装甲を有しているという超兵器だ。

 

『あと一つ、現在日本海軍も此方に向かっている。1時間以内に到着するだろうね。航空機隊も確認しているよ。こちらも1時間以内に来るだろうね。今のうちに降伏を勧めるよ。しかし、戦うようならパル・キマイラの強さを見せてあげよう。最後の勧告だ。1時間以内に降伏したまえ。白旗を上げ給え。諸君の懸命な判断に期待するよ』

 

一方的に通信が繋がれ、一方的に通信は切られた。エスファ少将は冷や汗が沢山出てきた。

 

神聖ミリシアル帝国の空中戦艦は第一次バルチスタ沖海戦で1隻撃墜する事に成功したが、それはグレードアトラスター所属の砲術士の神がかった手腕による物だ。唯の地方艦隊にその様な技術を持つ砲術士はいない。何より、パル・キマイラの装甲を破ることが出来る大口径砲の戦艦など無い。しいて言えば"オリオン級戦艦"だが、戦えるかは微妙な所だ。そして、日本国の艦隊も向かっているという。

 

奴らは、カイザル大将率いる東部方面艦隊どころか、同等の練度を誇る特務軍艦隊を壊滅に追いやっている。潜水艦だけでこれ程の被害なのだから水上艦が来れば壊滅は必至だ。迎撃しようにも付近に潜伏している日本海軍の潜水艦にも警戒しなくてはならない。エスファ少将は決断する。

 

「全員戦闘配置!港湾内の艦艇は給油を全て中止して港湾外で対空、対水上戦闘に当たれ!駆逐艦は対潜捜索及び撃破に向かえ!動けない艦はその場で砲台となれ!滑走路を最優先で修理しろ!」

 

そして、こう付け加えた。

 

「チエイズ王国とグルート騎国両国の軍も動かすよう圧力を加えろ!弾除けにでもなってもらえ!」

 

それから、グラ・バルカス帝国両基地は大急ぎで修理をする。対してチエイズ王国とグルート騎国も戦力を整えるが、彼らの装備は剣・槍・弓であり、水上艦はバリスタを装備した木造帆船であり良くて射程1kmに登るかどうかの魔導砲を装備した小型戦列艦、航空戦力はワイバーンロードですらない通常のワイバーン種というありさまだが、無いよりマシであった。

 

そして、約30分後には神聖ミリシアル帝国の空中戦艦パル・キマイラが見える様になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー第三文明圏外グルート騎国近海ー

 

グラ・バルカス帝国軍基地があるグルート騎国近海にこの世界では独特な設計の軍艦が来ていた。彼らは白地の布に赤い丸を描き、赤丸からは16条の声条がある。

 

そう、彼らは日本国海上自衛隊の艦隊だ。空母1隻、巡洋艦3隻、駆逐艦5隻の計9隻の艦隊はチエイズ王国とグラ・バルカス帝国の基地及び艦隊を叩くために来ていた。

 

艦隊の司令官である林司令官は3Dスクリーン上に映る仮面をつけた怪しげな雰囲気の相手に話していた。

 

「我々は予定通りグルート騎国基地に攻撃を仕掛けます。メテオス艦長、申し訳ありませんがチエイズ王国基地への攻撃をお願いします」

『お安い御用さ。所で軍港にいる敵艦隊も殲滅してしまっていいのだろう?』

「良いのですか?」

『もちろんさ。この、パル・キマイラなら簡単さ』

「では、よろしくお願いします。予定通り攻撃は我々がグルート騎国の基地及び軍を殲滅してからよろしくお願いします。何度も言うようですが、我々より200kmは、離れてください」

『それじゃあ君たちの活躍を見学させてもらうよ』

 

そう言うのは、メテオス艦長だ。メテオス艦長は日本国が自分達から離れろと言うのは手の内を見せたくないのだろうと思っていた。しかし、そんな距離はパル・キマイラなら問題にならない。超望遠魔導波検出装置によって遠方の光景は手に取るように分かるからだ。

 

メテオスは高みの見物をし始める…

 

 

 

 

 

 

 

 

ーグルート騎国近海ー

 

ミサイルや魚雷を在庫のある限り使用した海上自衛隊潜水艦群は既に撤収し、今来ているのは空母"朱雀"を旗艦とした艦隊だ。

 

彼らはグラ・バルカス帝国軍基地とグルート騎国軍に攻撃を開始しようとしていた。

 

グルート騎国は"騎"と付くだけあってワイバーンを第三文明圏外にしては、多く出撃させたが、グラ・バルカス帝国の"アンタレス"すら敵わないステルスジェット戦闘機富士に、ワイバーンが勝てる訳もなく日本国海上自衛隊に近付くことなく"02式空対空レーザー"によって蹴散らされた。

 

また、グラ・バルカス帝国の艦隊に対してもステルスジェット戦闘機富士は"83式空対艦誘導ミサイル"で駆逐艦や軽巡洋艦、正規空母や軽空母は1発から2発程度で大破や轟沈にまで追いやられる。輸送船や補給艦はなおさらだ。

 

装甲の厚い戦艦や重巡洋艦は超電磁砲(レールガン)の速射によって破壊される。また、シオス王国から発進した航空攻撃を受け最早グルート騎国に駐留していた地方艦隊は死に体だった。基地へ運ぶために輸送された戦車なども破壊され、グルート騎国のグラ・バルカス帝国基地は沈黙した。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー空中戦艦パル・キマイラ内部ー

 

艦長であるメテオスは、日本軍の力を見ようと魔導電磁レーダーを起動させ、日本軍の動向を見学しようとしていた。しかし、次の瞬間魔導電磁レーダーは沈黙してしまった。

 

「とうした?何があった?」

「妨害電波です!妨害電波が流れています!」

 

メテオスは魔導電磁レーダーの科学版をグラ・バルカス帝国と日本国が実用化しているのを日本国からの情報提供で知っているので、レーダーに造詣が深いのは疑っていない。そして、妨害電波についても驚きはしたが重くは捉えていなかった。何故なら、空中戦艦パル・キマイラには妨害電波対策装置を備えているからだ。

 

「どうした!?早く妨害電波対策装置を作動させたまえ!」

 

レーダーが復帰しない理由が職員の仕事の遅さと考えて苛立ちをぶつける。しかし、レーダー技師は慌てて釈明する。

 

「既に作動させています!しかし、効果がありません!自動診断システムでは異常ナシとのことです!」

「それは本当か?にわかには信じ難い。しかし、現にパル・キマイラのレーダーが使えなくなったと言うことは、日本国は魔帝のレーダーを妨害する事が可能と言う事だよ…」

 

メテオスは信じられないように呟き、目視による監視を始めることになった。

 

そして、戦闘が始まってからと言うもの、メテオスは驚きの大洪水に包まれていた。

 

日本国の空母やシオス王国から発進した航空機の速度が音速を超えているのを聞いて驚き、その航空機がいる高度や日本国の航空機に向かったグラ・バルカス帝国の航空機が次の瞬間には墜落を開始している事などあったが、一段と驚いたのは誘導弾だ。

 

誘導弾自体は日本国からの技術開示や提供によってある程度の開発の目星はついていた。しかし、完成形の誘導弾が航空機から、艦艇から雨のように発射される様子に驚きを隠せない。そのどれもが正確にグラ・バルカス帝国の艦艇に命中し、炎上していく。

 

彼は古の魔法帝国の兵器である誘導魔光弾の前には、神聖ミリシアル帝国の第零式魔導艦隊を破ったグラ・バルカス帝国の艦艇でも敵わないと言うことが証明されていく。

 

神聖ミリシアル帝国の魔導戦艦でも古の魔法帝国に少しは善戦できると思っていたが、グラ・バルカス帝国ですらこの有様なのだ。復活した魔法帝国に神聖ミリシアル帝国ですら敵わないかも知れない。その事実に彼は震え上がった。

 

そして、一番の問題は日本の魔導船から放たれた攻撃だった。目視では捉える事は出来ず、スローにすることでようやく理解できた。

 

日本の魔導船が攻撃をした瞬間、グラ・バルカス帝国の戦艦に命中したのだ。弾丸は装甲を貫通している。これを見て、メテオスは更なる混乱に襲われた。

 

その攻撃は、海上要塞パルカオンに搭載された兵器だと言うことだ。機能や性能、原理はよく分かっておらず、唯一分かっているのは神聖ミリシアル帝国が持つ"ミスリル級魔導戦艦"の主砲よりも長射程だと言うことだ。その兵器と日本国の兵器が同一の物とは限らないが、あれ程の射程を持つ兵器をメテオスは知らなかった。

 

彼は、古の魔法帝国とそれと同等かも知れない日本国に震えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーチエイズ王国上空ー

 

メテオスは日本国の力に震えるが、仕事はしっかりとこなさなくてはならない。

 

彼は、日本国に大見得を切った手前責任を持って殲滅すべきだと考えていた。

 

日本国側から攻撃終了まで待機してくれたお礼を林司令官から述べられ、彼らのターンが始まった。

 

まず現れたのはワイバーンだった。しかし、魔導電磁レーダーでその存在は手に取るように分かる。彼は指示を飛ばす。

 

「アトラタテス砲起動準備、装甲強化はしなくてよろしい」

「了解。魔力充填…」

 

魔導電磁レーダーやスクリーンにはチエイズ王国の冒険者や軍のワイバーンが向かってくるのがはっきりと映っていた。魔力充填はすぐに終わり、発射可能状態となった。

 

「古の魔法帝国の兵器の力を見せてあげよう」

「敵ワイバーン上中下の三方向に分かれて接近中」

「アトラタテス砲発射したまえ」

「了解。アトラタテス砲発射」

 

その瞬間、空中戦艦パル・キマイラから雨のように光弾が飛び出した。第三文明圏どころかグラ・バルカス帝国ですらこんな密度の対空砲は無い。光弾の一発一発が魔導電磁レーダーの反応をもとに自動で弾道を調整し発射される。

 

毎分3000発の光弾は第一次バルチスタ沖海戦のグラ・バルカス帝国の航空機にすら通用したのだ。ワイバーンに通用しない道理はなく、あっという間にチエイズ王国のワイバーンは殲滅された。

 

だが、空中戦艦パル・キマイラの周囲に張られた魔導防壁に波紋が広がる。これは、グラ・バルカス帝国の対空砲火だ。生き残ったほんの僅かな対空砲陣地や艦艇の対空砲が撃ち込まれたのだ。

 

「降伏すればよかったのにね…殲滅したまえ」

「了解。目標敵対空砲陣地及び敵艦。主砲攻撃開始」

「敵戦艦の主砲には注意したまえよ」

「了解」

 

次の瞬間、パル・キマイラ下部にある6基18門の15㎝三連装魔導砲がグラ・バルカス帝国軍基地及び艦艇に降り注いだ。攻撃開始から1時間あまりで、グラ・バルカス帝国軍基地や艦艇は瓦礫や海の藻屑となった。

 

彼らは、チエイズ王国にも圧力を加えるため、6基18門の15㎝三連装魔導砲をチエイズ王国首都近郊にも発射した。

 

圧倒的な力の差を見せつけられたグルート騎国とチエイズ王国は日本国と神聖ミリシアル帝国の連名で提示された降伏文書を受け入れ、第三文明圏外のグラ・バルカス帝国勢力圏は消滅した。

 

空中戦艦パル・キマイラは用事は済んだし、日本の兵器について一刻も早く情報共有と研究をするべく帰還した。

 

後日取り決められた条約で以下の事が決められた。

 

・チエイズ王国及びグルート騎国はグラ・バルカス帝国から独立する。

・両国の王は退位し、親日派あるいは親ミ派の王家の者が即位する。

・両国の鉱物資源採掘権を日本国は得る

・神聖ミリシアル帝国は両国の古の魔法帝国の遺跡調査権を得る

・調査は日本国との合同で行う

・復興支援は日本国が主体として行い、食糧支援はクワ・トイネ公国を通して行う

 

舞台は第三文明圏に移る…






〜コラム〜

海上要塞パルカオン

神聖ミリシアル帝国にたった1隻存在する空中戦艦パル・キマイラより貴重な超兵器。様々な条件をクリアしてようやく実戦投入が許可される。原作でも詳細は明かされておらず、誘導魔光弾やアトラタテス砲の搭載が予想される。

本作では、超電磁砲の魔法版を搭載している。しかし、神聖ミリシアル帝国の技術ではフレミングの左手の法則(詳細はwikiで)を含めた物理学や化学を知らないので調査は難航している。

お気に入り登録、高評価宜しくお願いします!

グラ・バルカス帝国の今後

  • 日本国本土近海に軍を派遣する。
  • レイフォル沖制海権を取り戻す
  • その他(経緯をメッセージボックスにて)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。