ー第三文明圏リーム王国王都ヒルキガー
時は、グラ・バルカス帝国海軍特務軍艦隊壊滅前に遡る…
総務を任されていた王都諸侯キルタナは流れる汗を隠せずにいた。その理由は、彼の目の前に足を組んで座るグラ・バルカス帝国外務省外交官ベイダートが渡した文書にあった。
「これは…どういうことです?」
「どういう事も、書いてあるとおりだ。リーム王国に貸し出している駆逐艦は全てここ、王都ヒルキガに集結。その後、本日夜にヒルキガに停泊した駆逐艦を全て帝国に返還し、その後日本国本土攻撃に向かう。他に王都郊外の基地から陸軍航空隊が向かう」
何処か見下した言い方には何も言わず、キルタナは意見する。
「その件は、国王陛下が受諾されたので私としては異論ありません。しかし、この最後の一文にある『リーム王国海軍は出撃し、ワイバーンと共に日本国を攻撃せよ』とありますが、海軍はともかくワイバーンの航続距離では…日本国本土には…」
「…お前達の立場で我が国に楯突くのか?我々なら貴様らなど簡単に滅ぼせるのだ。なんの代償なしに利益を享受出来ると思ったか?そんな前提は理解している。貴様らは竜母を持ってるだろう?それにワイバーンを詰めるだけ積んで、艦隊も出せるだけ出せ。それならパールネウス王国のデュロと言う街に停泊する日本の商船や領事館を攻撃しろ」
キルタナは日本国に滅ぼされたとはいえ、元列強の強さは知っている。ゆえに、やすやすと首を縦に振る訳には行かなかった。
「お待ちください!今でこそ列強の座から転落しているとは言え、パールネウス王国は強力な竜騎士とワイバーンロードを使役しています!パールネウス王国に宣戦すれば、日本国との二正面作戦です!国が滅びます!ご再考を!」
「我が国についていけば国は滅びん。我々からすれば貴様らと何ら変わらん国の1つに過ぎん。これは帝王府の命令だ。愚かな王に伝えよ。『グラ・バルカス帝国に協力せぬ国は不要だ。帝国の作戦に参加できないようなら、滅びか受け入れるかの二択だ』とな」
グラ・バルカス帝国に与しているだけあって脅威はかつてのパーパルディア皇国を上回る事を目に見えて理解出来た。だからこそ、帝国に楯突く事は出来ずこの要請と言う名の命令文書を受け入れる事になった。
その日の夜、国王バンクスは泣き叫び錯乱していた。何故なら、神聖ミリシアル帝国に加えて日本国とパーパルディア皇国の後継国、パールネウス王国との戦争に突入してしまったからだ。
パールネウス王国だけなら良かったかも知れないが、相手は列強第一位の国、神聖ミリシアル帝国とパーパルディア皇国を下し、存在感を放っている日本国だ。
リーム王国は、日本国とムー国に対して外交官の国外退去と資産凍結をした。その後、グラ・バルカス帝国の軍用艦が親善用と言う名目でリーム王国旗を掲げ、リーム王国内でグラ・バルカス帝国旗を掲げて道中の安全を測るつもりだったが、神聖ミリシアル帝国は親善用の艦艇が他国を攻撃した場合リーム王国をグラ・バルカス帝国の同盟国と判断して攻撃する旨の魔信を受け取っていたのだ。
今更取り決めを反故にすれば、グラ・バルカス帝国の艦艇はリーム王国を攻撃するだろう。国王バンクスは後に引けず、この魔信を黙殺したのだ。それは、第一次バルチスタ沖海戦で疲弊している神聖ミリシアル帝国は攻撃してこないと考えての黙殺だった。
だが、日本の商船やパールネウス王国をグラ・バルカス帝国艦艇が攻撃すれば、リーム王国は神聖ミリシアル帝国から攻撃を受ける事になる。
国王バンクスは眠れぬ日々を過ごす事になる…
◆
ー第三文明圏外列強日本国西方海域ー
グラ・バルカス帝国特務軍艦隊が、日本国海上自衛隊潜水艦群に翻弄されていた頃、この海域でも戦闘が起こっていた。
相対するのは、日本国の海上自衛隊とリーム王国及びグラ・バルカス帝国駆逐艦群である。
リーム王国及びグラ・バルカス帝国駆逐艦群は日本国本土に攻撃を加えるべくやって来ていた。当然、それを察知した日本国側も空母"玄武"、巡洋艦3隻、駆逐艦5隻、その他にも補給艦、対潜艦などもある。合わせて13隻程だ。
それに対して、リーム王国及びグラ・バルカス帝国駆逐艦群の戦力は、以下の通りだ。
80門式装甲戦列艦…10隻
80門式戦列艦…30隻
50門式戦列艦…30隻
竜母…3隻
輸送船…50隻
護衛50門式戦列艦…30隻
数の差ではリーム王国の圧勝だが、それとは比較にならない程の技術力の差がある。
戦いはまず制空権争いから始まった。だが、ワイバーンにステルスジェット戦闘機富士の速力や限界高度まで到達する力は当然ない。直掩であるワイバーンロード15騎は日本国海上自衛隊所属の戦闘機富士の"02式空対空レーザー"によって撃墜され、制空権争いはものの数分も掛からずに終わった。
ちなみに、なぜリーム王国がワイバーンロードを有しているかと言うと、パーパルディア皇国が滅んだ際に混乱に乗じてワイバーンロードや技術者を拉致…ゲフンゲフン…誘致した結果ワイバーンロードの飼育及び使役に成功したのだ。
日本国の迅速な対応にリーム王国海軍は混乱する。当初の予定ではグラ・バルカス帝国の特務軍艦隊が敵を引き付け、リーム王国海軍は何の障害もなく日本国本土に攻撃を仕掛ける手筈だった。
その前に、パールネウス王国の都市デュロに停泊する日本の船舶を攻撃する予定だったが、彼らはこちらの手の内を知っているかのように集団で撤退してしまい、速力で劣るリーム王国海軍は彼らを追跡する事が出来なかった。
しかし、現実として日本国は迎撃部隊を派遣し、グラ・バルカス帝国の航空機より高高度を飛行して、一方的に直掩のワイバーンロードを攻撃していった。
そして何より、リーム王国の船舶は軍民問わず木造船だ。しかも、戦列艦という艦種である以上、魔導砲の弾である魔石を大量に積み込んでいる海に浮かぶ火薬庫に等しい。そして、日本国海上自衛隊所属の航空機に搭載された"02式空対空レーザー"は高熱を射出している。
いくら木造の船は熱伝導率が低いとは言え、一点に収束させたレーザーを数秒も当てられれば、発火するかレーザーが船体を貫くのだ。船体を貫いたレーザーは運が悪い艦だと魔石集積場に命中して爆発炎上してしまう戦列艦もいる。
一方で、ステルスジェット戦闘機富士に搭載された"77式機関砲"で攻撃すれば良いという意見もあるだろう。しかし、現代において、機関砲の対艦攻撃は非常に危険と言わざるを得ない。しかし、リーム王国の軍艦は木造船であり、対空火器であるバリスタと比べたら圧倒的に機関砲の射程の方が勝っている。だが、速度を落とし、接近する必要があるなら時間がかかっても一方的に攻撃した方が安全と判断して、時間をかけてリーム王国海軍を攻撃していた。
海戦が始まって約30分程でリーム王国海軍主力の8割を喪失し、リーム王国海軍は撤退し始める。しかし、輸送船がある以上移動は遅い。そもそも、木造船にステルスジェット戦闘機を振り切れる可能性など皆無だが…
輸送船は戦列艦同様に片っ端から撃沈されていく。中には降伏してくる艦もある程だった。
結果として、約1時間の海戦(一方的な撃沈)で生き残ったリーム王国海軍は降伏した僅か数隻の戦列艦や輸送船だけだった。竜母は真っ先に攻撃の対象となりワイバーンロードは全て海に沈んでいった。
それに対して、日本国側の被害は無し。強いて言うなら、電気代コストくらいである。
因みに、リーム王国海軍を囮として日本の商船を狙っていたグラ・バルカス帝国の駆逐艦群もステルスジェット戦闘機富士や護衛として同行していた日本国海上自衛隊駆逐艦によって全て撃沈され、商船に被害はなかった。
◆
ー第三文明圏外列強日本国本土近海上空ー
第三文明圏リーム王国はグラ・バルカス帝国の同盟国と言う名の隷属下に置かれた。そんなリーム王国から発進した"アンタレス07式戦闘機"や"ベガ型双発爆撃機"からなる陸軍航空隊は日本国福井県あわら市に攻撃を仕掛けることで作戦が決定された。製造業の要である名古屋を攻撃する案もあったが、流石に大都市を攻撃するのはリスクがあるうえに、日本国本土を横断する必要がある。
そんな事をしては撃墜される可能性があるので、日本海側の都市を攻撃する事にした次第だった。
彼らは意気揚々と飛行する。
◆
ー第三文明圏外列強日本国首都東京ー
突然だが、防衛省の部署について話したい。この世界の日本国防衛省には現実の防衛省には存在しない部署が存在する。
その名を『コントロール室』この部署は自衛隊の運用を行う中枢も兼ねているのだが、その中でも航空機に関する物がある。
日本の航空機は実を言うと有人飛行機は少なくなっており、本土の防衛網に関して言えば殆どが無人操作機になっている。その無人操作機を操作する部署がコントロール室にあるのだ。とは言っても、この部署は全国に存在しており、防衛省の判断や現地の判断でミサイルや航空機の迎撃が可能なのだ。
そして、防衛省はリーム王国から発進したグラ・バルカス帝国の陸上航空隊の存在も人工衛星を通じて既に把握していた。この情報は敵航空隊から一番近い福井県鯖江駐屯地や近隣の航空自衛隊基地に伝達される。
防衛省からの情報を受けて福井県の航空機自衛隊基地ではコントロール室が慌ただしく動いていた。こちらに向かって来るグラ・バルカス帝国の航空機を迎撃する為に、現場の責任者である山田は無人操作型戦闘機の発進を指示した。
この無人操作型戦闘機は文字通り遠隔操作で操作する戦闘機だ。もちろんステルス化が施されている。無人なので撃墜されても人的被害は無い。技術的観点からもこの機体は他国での運用は想定されておらずもっぱら本土付近での活動に含まれており技術が盗まれないよう徹底している。その他、ハッキングといった対策も二重三重に施されている。
そんな機体だが、ステルスジェット戦闘機富士をモデルとしている。この機体の群れが福井県の航空自衛隊基地から発進し、グラ・バルカス帝国に刃を振るうべく向かう。
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ー第三文明圏外日本国本土近海ー
日本国福井県あわら市に攻撃を仕掛けるべくリーム王国から発進した陸軍航空隊は適度な緊張感を持ちつつ警戒を続けていた。しかし、突然爆発音が響いた。
"ベガ双発爆撃機"を護衛するべく同行していた"アンタレス"1機が煙を出しながら急速に高度を下げていたのだ。それに続くように3機の"アンタレス"が爆発する。
彼らは無線で連携しながら敵機の方向や数の確認を取る。しかし、無線が通じずそれぞれが前後左右を確認するがいない。上下を探した時敵影の姿を見つけると同時に驚愕する。敵機は明らかに"アンタレス"よりも高高度を飛行していたのだ。それを見抜いた各々は慌てる。しかし、隊長機が上昇するのを見て"アンタレス"は僅かな護衛を残して上昇する。
しかし、上昇途中を"02式空対空レーザー"が命中しどんどん数を減らしていく。やがて限界高度を迎えても敵機に近づける距離ではなかった。生き残った僅かな"アンタレス"も撃墜され、残るは護衛の"アンタレス"と"ベガ双発爆撃機"だけだった。"アンタレス"と比べて"ベガ双発爆撃機"は遅い。
"ベガ双発爆撃機"が撃墜するのを阻止するために"アンタレス"は奮闘しようとするが、"02式空対空レーザー"の不可視の攻撃にどう対応すると言うのか。そう嘲笑うようになす術なく陸軍航空隊は全機撃墜されてしまった。
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ー第三文明圏リーム王国王都ヒルキガー
リーム王国の王城であるセルコ城で国王バンクスは大将軍リバルと共に王城の近くにあるグラ・バルカス帝国軍基地をみていた。
国王バンクスは件の基地が騒がしいと言うことを察していたが、グラ・バルカス帝国の事情など知るはずも無く呑気に呟いていた。
彼はグラ・バルカス帝国の技術について大将軍リバルから説明を受けていた。魔帝の魔導電磁レーダーと似た兵器である電探や高射砲について説明し、魔帝や神聖ミリシアル帝国に並ぶか超える技術を持ちながら圧倒的な物量を誇るグラ・バルカス帝国に付いている事に絶対の安心を得ていた。
バンクスがフィルアデス大陸を支配し、滅んだ日本国をも支配する領土拡張の野望の達成が現実味を帯びてきた事に高笑いをしていると、突然グラ・バルカス帝国の魔導電磁レーダー(電探)が爆発した。
それを皮切りに高射砲や航空管制塔が破壊される。続けざまに燃料タンクや直掩の航空機、地上にあった航空機も破壊される。
一足遅れて鳴る不気味なサイレンにバンクスの感情は恐怖に染まった。グラ・バルカス帝国の航空機より滑走路を必要としない自国のワイバーンロードが出撃するが、離陸する暇すら与えず攻撃が加えられる。
リーム王国海軍を滅ぼした日本国海上自衛隊の空母"玄武"から発艦したステルスジェット戦闘機富士は"02式空対空レーザー"や"87式空対地誘導ミサイル"を発射し、基地にある高射砲や滑走路、航空機を破壊していく。
それは、リーム王国王城セルコでも同じだった。セルコ城はリーム王国の中で一番高い建物だったのだ。それは王権を示すためにも当然の事だが、それが仇となった。
セルコ城にはグラ・バルカス帝国のアンテナが張られていたのだ。電波は日本国に傍受され敵基地として容赦なくミサイルを発射したのだ。
石造りの城にミサイルを防ぐ力と技術があるはずも無くセルコ城はミサイルの力によって崩壊、バンクスやリバルを始めとするリーム王国要人やその家族は城と共にその運命を共にしたのだった。
〜コラム〜
グラ・バルカス帝国の目的
グラ・バルカス帝国特務軍艦隊→東京や名古屋を目標とし、壊滅
リーム王国海軍→特務軍艦隊を囮として安全に日本国本土を攻撃しようとするが、壊滅
グラ・バルカス帝国陸軍航空隊→あわら市攻撃を敢行するも無人操作型戦闘機によって壊滅
本命はリーム王国海軍や陸軍航空隊だったが、特務軍艦隊が予想以上に早く壊滅した結果彼らは負けてしまった。尚、特務軍艦隊の壊滅が遅かったとしても結果は変わらない。
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グラ・バルカス帝国の今後
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日本国本土近海に軍を派遣する。
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レイフォル沖制海権を取り戻す
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その他(経緯をメッセージボックスにて)