稲荷様は平穏に暮らしたかった。   作:味八木

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パールネウス王国の反撃

 

 

ー第三文明圏リーム王国王都ヒルキガ地下壕ー

 

リーム王国のグラ・バルカス帝国軍基地に本部から派遣されていたムルノウは万が一を考えて作られた地下壕にいた。

 

地上では爆撃が行われている事実にムルノウは怒りと恐怖を覚えていた。

 

「司令、わが基地が攻撃されていると言うことは…日本国への打撃作戦は…」

「ああ、失敗と見て良いだろう。この基地に攻撃を加えたと言うことは、リーム王国海軍はともかくとして、特務軍艦隊への対処が出来ていると見て間違いないないだろう…今はとにかくこの情報を本国に持ち帰らねば…」

 

彼はグラ・バルカス帝国軍人として本国のために尽力する…

 

 

 

 

 

 

 

 

ー第三文明圏パールネウス王国王都エストシラントー

 

「何だと?!」

 

そう言ったのは元パーパルディア皇国時代に第三外務局長として勤務していたカイオスだった。

 

彼は皇城に突撃した第1空挺師団によって拘束され、日本国本土に輸送されていた。しかし、彼の住居を家宅捜索した結果、情状酌量の余地があると考えて釈放された。その後、彼はパーパルディア皇国…いや、パールネウス王国に戻り職を探そうとしていた。しかし、そこで思わぬ運命の巡り合わせがあった。

 

本土に戻った時、彼を知る良識派の皇族(汚職や選民思想の低い)の出迎えを受けたのだ。彼は次期王として即位するのが決まっており、政治に造詣の深い人物を探していたのだ。

 

尚、旧パーパルディア皇国時代の高官は大なり小なり汚職や選民思想の強さ、人道的でない植民地運営に関与したりとマトモな人材が揃っていなかったのだ。

 

そんな中でのカイオスの帰国の知らせを聞いて彼をスカウトしにきたのだった。カイオスはスカウトを承諾。この世界でもパールネウス王国の宰相として奔走していた。

 

そんな彼は、部下から受け取った知らせを聞いて驚きより怒りが勝った。

 

「リーム王国の奴ら、我が国の領土を攻撃するとは!」

 

その内容とは、リーム王国のワイバーンロードがデュロの商船を攻撃したと言う物だった。

 

パーパルディア皇国時代に工業都市デュロとして繁栄したデュロだが、一時的にドーリア共同体と言う都市国家に組み込まれた。しかし、デュロの工業製品が日本の工業製品に太刀打ち出来る筈もなく独立して間もなく失業者が溢れ、経済が低迷した。軍事物資を求める国もいたが、日本が輸出する軍事技術の方が圧倒的に品質が良かった。

 

質を選ぶか、安価な量を選ぶかで各国の反応はマチマチだった。デュロに住む住人もパールネウス王国への帰属を求め民意のもとパールネウス王国に吸収された。

 

日本国から事前に攻撃される可能性があると言われていたが、竜騎士団が集まる前に攻撃が行われてしまった。攻撃は退けたが、戦後のドタバタに紛れて少なくない技術者やワイバーンロードが流出した結果、リーム王国の竜騎士団は第三文明圏内でも上位の実力を持つようになった。

 

「竜騎士団及び艦隊に出動命令!リーム王国王都に攻撃を加えろ!」

「グラ・バルカス帝国の基地からの攻撃は大丈夫でしょうか?」

「日本国から事前に攻撃済みとの情報を得ている。奴らの補給を絶ち、我々の強さを知らしめろ!」

 

パールネウス王国はパーパルディア皇国から国名や体制が変わってもその技術や力を少しずつ取り戻してきた。旧列強の恐怖が再び第三文明圏に現れる…

 

 

 

 

 

 

 

 

ー第三文明圏外列強日本国首都東京ー

 

防衛省の作戦司令部は通信士の報告を待っていた。

 

「リーム王国のグラ・バルカス帝国軍基地の爆撃に成功。機能停止したのを確認しました。なお、リーム王国海軍の消滅と航空戦力の消滅も確認しました」

 

その言葉に防衛省作戦司令部は拍手に包まれた。しかし、それは次の報告で止むことになる。

 

「パールネウス王国から飛行物体150が発進。リーム王国首都に向かっています。速度から見てワイバーンロードなのは間違いないでしょう」

 

リーム王国はデュロにある日本国関係施設を狙ったようだが、パールネウス王国の攻撃によって多少の被害はあったが、殆どが撃墜されている。

 

続けて知らせが入る。

 

「外務省経由でパールネウス王国より入電!『リーム王国から攻撃を受けたので、報復として敵基地へ竜騎士団と魔導戦列艦による攻撃を行う』とのことです!」

 

これを聞いた皆がパールネウス王国に対して疑問を抱く。

 

「別に普通のことでは?」

「ええ。攻撃を受けた国が攻撃をした国に対して攻撃する。至極当然かと」

 

わざわざ知らせてきたパールネウス王国の意図がよく分からなかった。だが、パールネウス王国からすれば、日本国は圧倒的な技術と軍事力を持つ国なのだ。ゆえに日本国の対パールネウス王国感情を悪化させない為の行動だったが、この世界の常識が分かってきている日本国政府高官達からすれば当然だと判断されて黙認された。

 

これが地球ならすぐに実力行使は問題なのだが、この世界では核のような大量破壊兵器は無いのだ。日本国高官はパールネウス王国に対して思う所はなく、強いて言うのであれば、軍民の区別がついているのか。と言う点である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー第一文明圏列強神聖ミリシアル帝国帝都ルーンポリスー

 

世界各地から情報を集め精査する情報局に、重要な情報が入って来た。

 

「失礼します。ライドルカです。日本国とグラ・バルカス帝国の戦いの経過報告に参りました」

「入り給え」

 

入室の許可を得て、ライドルカは情報局局長室に入る。彼は書類の束を沢山持っていた。

 

「第一文明圏外の南方海域を通過したグラ・バルカス帝国の件の追加報告です」

「やはり目的は日本国本土か?」

「はい。我々の分析に間違いはありませんでした。グラ・バルカス帝国はニューランド島に寄港して補給をしたのち、日本国本土に向かいました。補給艦や輸送艦を残したグラ・バルカス帝国艦隊はロデニウス大陸南方で襲撃されたとのことです」

「まて、『襲撃された』とはどういう事だ?」

 

それに、ライドルカは言葉を詰まらせていった。

 

「それが、諜報員の言葉がどうにも理解に苦しむのですが、恐らくは、誘導魔光弾の攻撃です。それにより、小型艦や魔導巡洋艦クラスの艦は1発で撃沈し、大型艦も中破や大破に陥っているとの事です」

「誘導魔光弾か…日本国からの情報提供から見てもその戦力は凄まじい物だろう。それで、交戦結果はどうだった?分析では最低でも街1つは火の海になるとの予測だったが」

「いえ、日本国本土に被害は出ていません。しかも、日本国側の被害は全くなく、精々が誘導魔光弾の消費くらいです」

「何だと?」

 

ライドルカは書類の一部をアルネウスに見せていった。

 

「日本国本土に潜入していた諜報員が送ってきた情報データです」

 

それは、日本国で有名な新聞だった。その一面にはアルネウスも見知った軍艦の姿があった。

 

「これは…グレードアトラスターじゃないか!」

「はい。これは、日本国によって撃沈され、沈没する最中を撮った物だそうです」

「なんと…」

 

アルネウスは言葉が出ない。しかし、ライドルカは続ける。

 

「また、グラ・バルカス帝国がニューランド島に撤退した艦の追撃を第三文明圏外国を中心に行いました。更に、ニューランド島のグラ・バルカス帝国基地を我が国の空中戦艦パル・キマイラと合同で攻撃を行いました。結果として、ニューランド島でグラ・バルカス帝国に降伏していたチエイズ王国とグルート騎国の基地は壊滅、艦隊も壊滅し、両国はわが国と日本国に降伏しました」

「驚いたな。しかし、事前の予測とは違うな」

「それですが、諜報員が日本国の軍事特集をしている雑誌を発見しました。こちらが、その雑誌になります」

 

そこには、グラ・バルカス帝国の技術士官ナグアノも見た雑誌があった。その雑誌を一通り閲覧したアルネウスはこう言う。

 

「本当に日本国には驚かされるばかりだ。誘導魔光弾や超音速機にも驚いたが、その性能も驚く物ばかりだ。特に潜水艦やその武装、艦載兵器…どれをとっても我が国の兵器を超えている」

「はい。にわかには信じられません」

「いや、この新聞記事が事実なのは裏が取れているんだろう?なら、この兵器も現実の物と見て間違いないだろう。これは皇前会議に掛けておく。引き続き頼む」

「はっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ー第三文明圏フィルアデス大陸ー

 

パールネウス王国は、リーム王国による竜騎士団の攻撃の報復として、魔導戦列艦とワイバーンロードによる竜騎士団を出撃させた。

 

パールネウス王国が派遣した魔導戦列艦の編成は以下の通りだ。

 

・竜母…5隻

・80門式戦列艦…84隻

・蒸気戦艦…2隻

 

かつて第三文明圏の列強として名を馳せていた列強パーパルディア皇国時代からすると悲しくなる程の軍艦の量である。だが、パーパルディア皇国の後継国家であるため、リーム王国に多少技術や知識人を引き抜かれようとここまで軍備拡張をする余力があるのだ。まあ、日本国が駐留費を抑えたい為に、最低限の自衛を許したと言う面もある。

 

100門式戦列艦や装甲戦列艦は軍事費に国税を圧迫するという理由で作られていない。また、日本国からの軍事技術支援も必要最低限であり、日本国から設計図を高額で買い付けて蒸気戦艦を生産したのだ。これは、国境を接するリーム王国に対する警戒や、日本国の支援を受けた第三文明圏外からの侵略に対抗する苦肉の策である。

 

日本国との戦争を経験し圧倒的な質の前には量は問題にならないと分かったからこそ、上記で取り上げた100門式戦列艦を生産していないのである。

 

しかし、かつての列強が第三文明圏外の侵略に警戒する程に落ちぶれたところを見ると、パーパルディア皇国国粋主義者は悲しくなるだろう。まあ、彼らの殆どは牢屋にいるのでクーデターの心配もないが…

 

さて、そんなパーパルディア皇国改めてパールネウス王国はリーム王国首都ヒルキガに向けて帆を進めていた。対して、リーム王国海軍の殆どは日本国本土攻撃に参加しており、残っているのは2軍クラスの練度や質、量の軍艦達であり、パールネウス王国海軍でも互角かそれ以上に戦えるだろう。

 

リーム王国海軍が王都に駐留している艦は精々が80門式戦列艦が10数隻であり、その大半は50門式戦列艦が多い。竜母はグラ・バルカス帝国があるだけ出せと要請したので王都にはなく、陸上のワイバーン基地から発進する必要がある。

 

そんな両軍はヒルキガ沖で激突した。

 

まずはワイバーンロード同士が制空権を争った。同じワイバーンロード種なので、一進一退の攻防になると思いきや意外にもパールネウス王国が優勢だった。その理由は、リーム王国の練度不足である。リーム王国は戦力を拡充してきたが、長年ワイバーンを操ってきた騎手の技量は、ワイバーンロードを操ってきたパールネウス王国の騎手に劣っていたのだ。

 

制空権を得たパールネウス王国海軍はワイバーンロードをリーム王国海軍艦隊に差し向ける。リーム王国海軍の対空兵器はバリスタでありお気持ち程度だ。当然撃ち落とせる筈もなく戦列艦に導力火炎弾が撃ち込まれる。これにより、戦列艦は炎上し、中には魔石庫に引火した所もある。

 

しかし、リーム王国海軍も接近しパールネウス王国海軍との砲弾の撃ち合いに移行した。撃ち合いは結果的にパールネウス王国が辛勝し、パールネウス王国はリーム王国首都ヒルキガをワイバーンロードと共に魔石や砲弾が尽きるまで攻撃を加え、ヒルキガは炎に包まれてしまったのであった。

 

ちなみに、グラ・バルカス帝国の指揮官ムルノウは地下壕の防火壁の内側にいたので無事であった。

 

その後、生き残っていた軍関係者の高官が降伏宣言を発表。降伏は受け入れられ、後日講和会議が開かれた。

 

ヒルキガは焼け野原と化したので、日本国の仲介の元、パールネウス王国首都エストシラントで行われた。エストシラント条約は以下の通りだ。

 

・リーム王国はパールネウス王国に賠償金を支払う

・リーム王国は旧パーパルディア皇国から拉致した技術者及び知識人を解放する

・王国を解体し、パールネウス王国に編入する。

・リーム州は日本国の援助の見返りとしてパールネウス王国内の経済特区とする。

 

条約の内容を見る限り一見パールネウス王国より日本国が得をしたように見えるが、これはパールネウス王国は自国の開発で手一杯であり他国に援助する余裕がないこと。支援を受けて発展したリーム王国改めリーム州の税金とは別にパールネウス王国に賠償金が入るのでお得である。

 

こうして、第三文明圏を巡る戦いは、パールネウス王国の存在感を高めて終わった。

 

 

 

 






〜コラム〜

パールネウス王国の戦力

パールネウス王国は日本の兵器の様な質の前には量は無意味と知り、ある程度の量と質を目指して戦力拡張を無理のない範囲で進めていた。その結果が蒸気戦艦や80門式戦列艦の拡張です。

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私事ですが、更新ペースが大幅に落ちます。ご了承下さい。

グラ・バルカス帝国の今後

  • 日本国本土近海に軍を派遣する。
  • レイフォル沖制海権を取り戻す
  • その他(経緯をメッセージボックスにて)
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