ー第二文明圏圏外グラ・バルカス帝国帝都ラグナー
第二文明圏圏外に存在しながらその存在感を世界に轟かせてきた転移国家、グラ・バルカス帝国は神聖ミリシアル帝国が主催する先進11カ国会議で世界征服宣言を発表。
その手始めに彼らはムー大陸の征服に乗り出した。しかし、その戦局は破竹の勢いで敵を駆逐…ではなく後退を重ねていた。
グラ・バルカス帝国から見て真反対に位置する第三文明圏圏外に現れた転移国家、日本国。彼らにグラ・バルカス帝国の東部方面艦隊は敗北。ムー大陸西岸の制海権を奪われる事態となった。そして、続けざまに属領としていたパガンダ島とイルネティア島を奪われてしまった。それにより、本土とムー大陸勢力圏が切り離されてしまったことで、帝国経済に悪影響が出ると考えた上層部は、すぐに中央第2艦隊や潜水艦群を送り込んだ。しかし、そのいずれもが撃破されてしまい、再奪取出来なかった。
故に、ムー大陸に展開している陸軍は蛮族共による反攻作戦によって窮地に陥っている。この戦局を打開するため、帝国に残っている艦隊を駆使して、作戦続きで消耗している筈の日本国艦隊を打倒し、ムー大陸西岸の制海権を再び手にしようとしているのだ。
帝都ラグナに隣接している港には、海が見えなくなる程の大小様々な数の艦艇が、そこかしこに集まっている。特に、戦艦や航空母艦と言った主力艦が集まる様は圧巻だ。
ラグナ港に集まっているのは、北部方面艦隊と西部方面艦隊の連合艦隊だ。内訳は、戦艦6隻、空母14隻、重巡洋艦20隻、軽巡洋艦26隻、駆逐艦148隻の大艦隊だ。これだけで、この世界の複数の国を壊滅に追い込める程の戦力だ。
そして、この艦隊の空母に搭載されているのは、新開発された戦闘機、"アンタレス07式艦上戦闘機改"だ。"改"とついているが、見た目が似ているだけで、全くの別物だ。
時速660kmと、大幅な速度上昇を可能とし、武装の面では"アンタレス"と同じ20mm機関砲2門に加えて、"アンタレス"の7.7mm機銃から12.7mm機関銃2門の火力向上を果たしている。防弾装備もしっかりしており、模擬空戦では中級パイロットが熟練パイロットが操る"アンタレス"に楽々勝利している事からもこの機体の凄さが窺える。
集まった艦艇に搭乗する将兵と軍艦を一目見ようと集まった群衆に向けて、帝王グラ・ルークスがラジオを利用して演説をしていた。
『諸君は世界に冠たる帝国の未来を担う若者であり軍人だ!如何なる敵をも粉砕する諸君らなら、帝国の威信を内外に広く知らしめるため、必ずや活躍すると余は信じている!我が帝国は覇道を突き進むのだ!』
勇ましい演説に将兵は一糸乱れぬ敬礼で返し、群衆はそれに沸き立つ。そして、出港を知らせるラッパがこだまし、艦隊が動き出した。駆逐艦が先導し、戦艦や航空母艦を巡洋艦や重巡洋艦が護衛する形だ。この大規模な艦隊はグラ・バルカス帝国臣民からは大規模軍事演習と銘打っており、ムー大陸での戦局悪化に伴う大規模反攻と言う事実は伏せられていた。
だが、目敏い一部の者や知識人、文学者達はこの大規模軍事演習がムー大陸での戦局悪化に伴う物だと見抜いていた。しかし、見えない集団圧力によってそんな考えを言い出せる訳もなく、殆どの者達が沈黙した。そんな事をつゆ知らない一般の臣民達は『帝国万歳』『帝王グラ・ルークス陛下万歳』と万歳で彼等を送り込んだのだった。
時を同じくして、帝都ラグナの2つの港からも艦隊が出撃していた。出撃するのは、南部方面艦隊だ。彼らは艦隊を2つに分けて行動する予定だ。1つは大規模な艦隊で敵を挟み撃ちにする艦隊と、補給艦や輸送艦の護衛艦隊だ。護衛艦隊は基本的に後方待機となるが、2つの艦隊を合わせても、戦艦4隻、航空母艦16隻、重巡洋艦15隻、軽巡洋艦8隻、駆逐艦68隻の艦隊だ。
こちらもこの世界の複数の国家を滅ぼせる程の艦隊だ。これ程の艦隊を投入するのだから、今回の反攻作戦の気合の入れようが分かると言うものだ。
高級将官達は、戦闘続きで修理が満足に出来ていない。或いは、弾薬や燃料が足りないと考えられる日本国艦隊を撃破するベく闘志を燃やしていた。
◆
ー第二文明圏グラ・バルカス帝国領レイフォル州都レイフォリアー
レイフォリアに作られた前線統合基地ラルス・フィルマイナ。ここは、ムー大陸戦線の頭脳である。そんな基地の一角に、帝国情報局レイフォル出張所があった。
出張所で顔を青褪めさせていたのは、情報技官のナグアノであった。彼の手には、日本国で出版された軍事関係雑誌があった。彼が見ていたページは陸戦兵器の一覧であった。
「なんだ?!この"12式戦車"と言うのは!厚さは分からないが、複合装甲とか言うのであり得ない防御力を実現している様だし、主砲口径は44口径122mm。ハウンド中戦車でも57mm砲だ。これでは、この戦車の装甲を貫けない。こんな戦車が出てくれば、我が軍の戦車が配備された部隊がやられる訳だ。この、複合装甲は大型榴弾砲や野戦高射砲の直射でも撃破出来るか怪しいぞ…」
ナグアノは、現在グラ・バルカス帝国が保有する戦車のいずれもが日本国の戦車を撃破出来ないと考えていた。
現在、"2号重戦車ワイルダー"が走行試験をクリアしたと聞いたが、彼はワイルダーでもこの戦車を倒す事は出来ないと感じていた。
「それに、このムー国の戦車だ!ムー国までいつの間にか戦車を用意してやがる!」
彼が見つめるのは、ムー国の戦車だった。この戦車は日本国の技術供与やライセンス生産などを通して、量産化を進めている"イ・ロク式戦車"であった。これは、20世紀に入ってからに製造こそされたが、使われなかった戦車、"10式戦車"であった。(史実の61式戦車)
グラ・バルカス帝国は日本国の進軍こそ止められていないが、その他の国はその限りではなかった。日本国の空爆によって兵器がなくなる中、残った兵器で何とか北部や中部の進軍を少し止めた事があった。
その時に放棄されたムー国の戦車を回収した結果、驚くべきことが分かった。
「ムー国の戦車は前面装甲55mm、側面装甲は33mmだからこの戦車を倒すには側面で至近弾を叩き込むしか無い。だが、搭載している砲は52口径90mm砲だ。我が国の戦車は容易に撃破される…」
そして、何よりも恐ろしいことがあった。
「こんな無敵の戦車と呼ばれたハウンドを容易に撃破出来る戦車が数的主力を担う戦車になりつつあると言う事実だ!数的主力はシェイファーだ。ハウンドでさえ、精鋭の部隊にしか配属されていないと言うのに…」
ナグアノ含め、彼らは自国兵器が無敵であると信じて疑わなかった。事実、日本国が参戦するまでは連戦連勝だったのだ。
ナグアノは客観的に分析する。
「"アンタレス07式戦闘機"も、グレードアトラスター級戦艦も、ハウンド中戦車も無敵ではなくなったんだな…」
だが、日本国やムー国以外にも彼を悩ませる物があった。ナグアノは巨大な金属リングの写真を見る。
「南部の被害が広がっていると思ったが、コイツが厄介すぎる。パル・キマイラ!」
ナグアノは前線からの情報を精査した限り、神聖ミリシアル帝国の蜘蛛のような自走砲と装甲が殆ど無い人形など、相手にならないと考えていた。しかし、パル・キマイラの登場ですべてが変わった。
「陸軍の高射砲では撃墜不可能なほどの防御力に圧倒的な連射速度と正確な精度の機関砲のせいで航空戦力は近づない。それでいて、海軍の巡洋艦クラスの砲弾を沢山撃ってくる。どうやって戦えば良いんだ!」
パル・キマイラは脅威だが、撃墜出来ることは証明されている。しかし、グレードアトラスター級戦艦クラスの砲塔など陸軍が持っている訳がない。そもそも、あったとしてもそんな巨大な砲塔で命中させる技量がある筈がない。
結論から言って、陸軍がパル・キマイラを撃墜させるのは不可能だ。
ナグアノは頭を悩ませるのだった。
◆
ー第一文明圏列強神聖ミリシアル帝国帝都ルーンポリスー
ミリシアル8世が約160代先の孫と遊んでいた所に、軍務大臣シュミールパオと国防大臣アグラがやって来た。
皇帝の時間をプライベートを割いてまで報告に来るとは余程の事だとミリシアル8世は理解出来たが、孫と遊んでいたので少し機嫌を損ねた。
「日本国から外交部を通して連絡がありました」
「ほう?」
「グラ・バルカス帝国がレイフォル沖の制海権を取り戻すべく大艦隊を派遣したとの事です」
「やつら…あれ程日本国に叩かれたのにまだ余力があるのか…」
ミリシアル8世はグラ・バルカス帝国の物量に呆れていた。
「いえ、日本国によると、グラ・バルカス帝国の艦隊は全部で5つであり、バルチスタ沖とロデニウス大陸南方海域で2つの艦隊を撃破しているので、残り3つの艦隊全てを動員するそうです」
「ほう。やつらも戦力の全てを動員する程に追い詰められたのか…」
アグラは頷いて続けた。
「ムー大陸での反攻作戦も順調です。ヒノマワリ王国を解放し、レイフォル各地の工場を空爆しているそうです。日本国は、わが国に対して『レイフォルに迫りくる敵艦隊を撃破するまでの海上封鎖をお願いしたい』と要請して来ました」
レイフォルに向かう敵艦隊を日本国が迎え討つ間、イルネティア島やパガンダ島周辺の海上封鎖が疎かになる。その間に輸送船が通らないとも限らない。その間の海上封鎖を神聖ミリシアル帝国に頼んできたと言うわけだ。
しかし、神聖ミリシアル帝国がただ指をくわえて待っている訳には行かないとミリシアル8世は考えていた。
「それで、準備は整っているのだろうな?」
「勿論です。我が神聖ミリシアル帝国も迅速に展開可能だと言う事実を世界に見せつける必要があります。既にグラ・バルカス帝国に対して優位に戦いを進める事が可能な最高練度の混成艦隊をムー大陸南方に待機させています。日本国の要請があればすぐに動かせます」
彼が言うには、魔導戦艦3隻、重巡魔導巡洋艦4隻、魔導巡洋艦6隻、航空魔導母艦2隻、補給艦3隻で海上封鎖を行い、その後レイフォリアを攻撃するとの事だ。
「頼もしい。今回の作戦はグラ・バルカス帝国に対して大打撃を与える作戦だ。艦隊の名は?」
「はっ!艦隊名は混成魔導艦隊デス・バールで御座います。艦隊デス・バールはイルネティア島及びパガンダ島で交代して入港、日本国がグラ・バルカス帝国艦隊を撃破した後、レイフォリアへ向かいます。なお、今作戦は国の威信を掛けた作戦のため、先日実戦配備した最新鋭艦を旗艦とします」
その言葉にミリシアル8世の機嫌は多少良くなる。
「あの魔帝の技術をふんだんに取り入れた戦艦か?」
「はい。オリハルコン級魔導戦艦コスモなら古の魔法帝国との戦いでも十分に通用すると確信しています。グラ・バルカス帝国の艦隊と遭遇しても必ず撃退いたします!」
軍務大臣シュミールパオと国防大臣アグラの自信は大きい。それもそのはず、オリハルコン級魔導戦艦は今までの神聖ミリシアル帝国の艦艇とは一線を画すのだ。
対魔性装甲材をこれでもかと使用し、
兵装も充実している。魔導砲の威力も向上しているが、特筆すべきは対艦及び対空兵器だ。神聖ミリシアル帝国は今までの常識であった『戦艦は航空戦力では倒せない』その常識を覆した航空戦力に対抗するため、副砲を少なくし、対空火器を充実させた。そして、一番重要なのは誘導魔光弾だ。
神聖ミリシアル帝国は魔帝の誘導魔光弾や日本国からの技術提供を受けて国産の誘導魔光弾の類似品を作り上げるまでに成功した。だが、技術的、金銭的な問題で量産に手間取っていた。
誘導魔光弾はエネルギー弾ではなく、物理的なコアが必要だ。そのコアに飛翔魔力と爆裂魔法を込める必要がある。そのコアには、この世界ではあまり必要とされない資源、レアメタルが必要なのだ。そのため、市場への供給量が少なく、金がかかっていた。
しかし、オリハルコン級魔導戦艦コスモには"ウルティマⅠ型艦対艦誘導魔光弾"と"クウ・ウルティマⅠ型艦対空誘導魔光弾"が搭載されている。
彼らは、ムー大陸からイルネティア島及びパガンダ島へ向かうのだった。
◆
ー第二文明圏圏外イルネティア島日本国駐屯地ー
今や世界から注目されるこの地に異国の軍隊が多数駐屯していた。その中でも一際目立つのは、海上自衛隊であろう。
そんな海上自衛隊の駐屯地では、隊員が一糸乱れぬ姿勢で壇上を見つめていた。やがて、壇上に上がってきたのは日本国民なら誰もが聞いたことがある至高の存在の1柱…稲荷神であった。
稲荷神はグラ・バルカス帝国の反攻作戦の出鼻を挫き、自衛隊員の命を守るために今作戦に参加する構えだった。
「皆さん。敵は最後の力を振り絞って反撃に転じようとしています。そこで、我々は奴らの差し向けてきた艦隊を撃滅し、世界に平和を齎す必要があります!情けは不要です。彼らは軍人です。ならば、死ぬ覚悟があるという事です。我々は心置きなく彼等を撃滅し、誰一人欠けることなく、生還しましょう!」
「「「はっ!」」」
世界に覇を唱えたグラ・バルカス帝国への葬送曲が鳴り響こうとしていた。
〜コラム〜
61式戦車
20世紀に入って生産された戦車。スペックは以下の通りだ。
全長…8.19m
全幅…2.95m
重量…35t
時速…45km
行動距離…200km
主兵装…61式52口径90mm砲
副武装…7.62mm機関銃その他機関銃
装甲…前面装甲55mm
側面装甲33mm
後方装甲35mm
乗員…4名
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グラ・バルカス帝国の今後
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日本国本土近海に軍を派遣する。
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レイフォル沖制海権を取り戻す
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その他(経緯をメッセージボックスにて)