稲荷様は平穏に暮らしたかった。   作:味八木

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※前話にてパガンダ島沖海戦を前後編で分けるつもりでしたが、後編が思った以上に短く終わってしまったので、1本に纏めました。後編を見なくとも今話とは関係ありませんので、お好きな方からご覧ください。お手数おかけします。


イスタン沖海戦

 

 

ー第二文明圏列強ムー国地方都市イスタンー

 

ここ地方都市イスタンは港町ではあるが、北方の物流拠点の1つとして、マイカル程ではないが繁栄を享受していた。物流拠点を守るためにムー国の海軍基地や飛行機地も整備されている。故に、物流拠点でありながら、ムー国の北部の一大海軍拠点として機能していた。

 

こんなムー統括海軍の拠点とも言える港町は約1〜2年程前からピリついた空気が漂っていた。しかし、それを住人が理解することはなかった。何故なら、フォーク海峡戦の数日後、夜中に、グラ・バルカス帝国のグレードアトラスター級戦艦が密かに入港していたからだ。

 

そのため、軍事施設には厳重な警戒網が敷かれている。しかし、グラ・バルカス帝国は苦労してグレードアトラスター級戦艦がこの町にあると言う情報を手に入れたのか、何回も破壊工作が行われた。その度に警戒網を広げているが、日本国の支援ありきであり、ムー国単体では限界があった。

 

そして今回、グラ・バルカス帝国がムー大陸西岸の制海権を得るために、出撃したとの報告を受けて、日本国艦隊は出撃している。そのため、この港にはムー国の艦隊しかない。更に悪いことに、グラ・バルカス帝国の艦隊の別働隊がムー大陸を北上していると連絡を日本国からもらっている。

 

そのため、彼らは日本国から教えてもらった敵艦隊のおおよその位置を航空機を使って索敵していた。すると、このイスタンにグラ・バルカス帝国の艦隊が向かって来ているのが確認できたのだ。

 

これにムー統括軍はてんてこ舞いだ。とにかく、迎撃をするべく航空機を飛ばしていた。

 

ムー国が飛ばした戦闘機部隊は少数の"マリン"と数的主力を担う"マリル"であった。因みに、"マリル"は史実日本の九六式艦上戦闘機である。

 

因みに、何故日本国航空自衛隊の戦闘機が出撃していないかと言うと、ムー大陸戦線に付きっきりだったからだ。だが、対空兵器として"02式地対空レーザーシステム"と"05式中距離地対空誘導弾"を配備してある。

 

閑話休題

 

ともかく、ムー統括空軍はグラ・バルカス帝国の戦闘機を撃破するべく向かっていた。やがて、グラ・バルカス帝国航空部隊と接敵した。ムー統括空軍の機体は55機。それに対してグラ・バルカス帝国の機体は60機と数の差はあまり無い。

 

接戦に持ち込めるかと思えば、ムー統括空軍の戦闘機部隊が押され始めたのだ。

 

「なんだあの機体は!?」

「アンタレスじゃないぞ!」

 

敵機の速度が九六式艦上戦闘機である"マリル"より速いのだ。そう。グラ・バルカス帝国が繰り出したのは"アンタレス"ではなく、"アンタレス07式艦上戦闘機改"なのだ。余りの速さに彼らは為すすべもなかった。

 

少数の飛行機械以外は…

 

 

 

 

 

 

 

 

ムー国の統括空軍に所属するパーテリムは新型航空機に乗り込んでグラ・バルカス帝国航空部隊を相手取っていた。

 

彼が乗っているのは彼が愛用していた複葉機"マリン"ではない。日本国のドルフィンやジェット機黎明期に使用された"震電改"を元に開発された"マデン"だ。

 

ムー国は日本国から多数の技術支援を受けて"震電改" の試作機を設計、生産していた。それが第二次バルチスタ沖海戦頃の話だ。そこから改修を重ねて少数だが生産にこぎつけたのだ。

 

この"マデン"は震電改を参考にしてはいるが、日本国の技術支援や助言により、ジェット機黎明期にある設計思想のばらつきを排除し、ジェット機の理想的な形に仕上げている。また、日本国の冶金技術やエンジンを利用している関係で高コストなのがネックだが、性能はグラ・バルカス帝国の航空機でも容易に落とせるとの結論が下されていた。

 

彼は持ち前の技量を生かして戦闘機部隊を次々と撃墜していく。しかし、ムー国の戦闘機部隊の数的主力は"マリン"や"マリル"であり、グラ・バルカス帝国の航空部隊が数的優位を獲得しつつあった。しかし、パーテリムは戦意を滾らせていく…

 

 

一方で、グラ・バルカス帝国もムー国の新型航空機に驚愕していた。グラ・バルカス帝国が掴んでいた航空機は複葉機の"マリン"と金属製の"マリル"だ。しかし、これら2つの航空機はグラ・バルカス帝国の"アンタレス"の敵ではなかったのだった。しかし、今回現れたのは違っていた。

 

レシプロ機ではないナニカを付けた航空機は、速度、上昇速度、旋回能力、攻撃能力共に新型機である"アンタレス改"を上回っている。だが、性能の殆どが上回っているとは言え、数は圧倒的に"アンタレス改"が上回っている。

 

徐々に"マリル"と"マリン"は姿を消し、残るは"マデン"だけとなっている。パーテリムも数機もの敵機を撃墜したが、数の差には勝てなかった。そんな時だった。

 

敵航空機がいきなり制御を失い墜落していったのだ。それからと言うもの、幾多もの機体が墜落していく。この光景にパーテリムは唖然としていた。

 

そう、これらはムー国の連絡を受けて駆けつけた航空自衛隊による"02式空対空レーザー"であった。驚く間にもグラ・バルカス帝国の航空機はハエのように撃墜されていく。

 

やがて全ての敵機が撃墜されるまで、そんな時間は掛からなかった。パーテリムは日本国との技術力の差を実感するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

技術の差を実感したのはパーテリムだけではなかった。戦闘機部隊によって護衛されたグラ・バルカス帝国の攻撃部隊による攻撃に晒されていたムー統括海軍も同じだった。

 

彼らは、日本国からの技術供与で建造した"ドレットノート"級戦艦や防空巡洋艦に搭載された対空機銃を駆使して攻撃機を多数撃墜している。しかし、対空砲火が如何に密度が高いとは言え、ムー統括海軍の被害も大きかった。

 

空母数隻が被害を受け、対空火器が少なくなっていた。覚悟を決めていた所に、何故か急にグラ・バルカス帝国の航空機が墜落していくのだ。何事だと思っていると、通信士から連絡が来た。通信士によると日本国の航空攻撃だと言う。

 

彼らは日本国の凄さを実感すると共に、グラ・バルカス帝国への攻撃部隊を発艦させたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ムー大陸北部の海域に展開していたグラ・バルカス帝国中央艦隊第1艦隊の司令部には激震が走っていた。

 

彼らは南部方面艦隊がムー大陸西岸の制海権を奪取している頃、本国艦隊第1艦隊はムー国の北部の海軍拠点であるイスタンに軍を進めていた。イスタンにはグレードアトラスター級戦艦が鹵獲されている事もあり、グレードアトラスター級戦艦諸共イスタンを火の海にするつもりだった。

 

中央艦隊には第1艦隊と第2艦隊の2つの艦隊だったが、中央艦隊第2艦隊が解体され、1つの艦隊に統合された。そうやって再編された中央艦隊第1艦隊の編成は以下の通りだ。

 

戦艦…3隻

正規空母…5隻

軽空母…2隻

重巡洋艦…5隻

軽巡洋艦…10隻

駆逐艦…60隻

 

本土防衛を担う艦隊であり、飛行機乗りの練度も高い。そんな彼らが連絡をする間もなく消息を絶ってしまった。

 

司令部は想定外の事態に慌てていた。そもそも、中央艦隊は練度こそ高いものの、本土防衛を担っている関係で実戦経験は少ないのだ。もともと、グラ・バルカス帝国は他国より隔絶した技術を持っていたが為に、自国より劣った国しか相手にしてこなかったのだ。それが裏目に出た形だ。

 

不毛な議論が続く中、突然爆発音が響いた。その音の正体は飛翔体であった。空母がその飛翔体によって爆発し、飛行甲板にも大きな被害が生じた。また、戦艦の艦橋にも飛翔体が直撃する。

 

軽巡洋艦や駆逐艦は悲惨だった。当たりどころが悪い艦は魚雷発射管に飛翔体が命中し、艦全体が燃えている。重巡洋艦も爆発で大なり小なり被害を受けている。

 

爆発がおさまった時、被害を受けていない艦はなかった。重巡洋艦や戦艦はまだマシだが、軽巡洋艦や駆逐艦は多大な被害を受けていた。

 

その光景を空から見ていた直掩機のパイロット達は恐怖に震えていた。彼らは自分の技量に自信を持っている。だが、そんな彼らでも自分達が乗っていた空母が飛翔体相手に撃沈された様に自分達も撃墜されてしまうのではないかと考えていた。

 

それは正しい。日本国航空自衛隊は直掩隊の機体を攻撃し始めたのだ。"02式空対空レーザー"によって直掩隊である"アンタレス改"は全滅してしまった。

 

空襲が終わった時、残っているのは戦艦3隻、正規空母2隻、重巡洋艦3隻と言う有様だった。グラ・バルカス帝国の艦隊には直掩機もなく、護衛艦もなく、艦載機を新たに飛ばすことも出来ない。彼らはもう撤退を視野に入れ、実行に移そうとしていた。

 

だが、その撤退も簡単な事ではなかった。艦隊から見て南…つまりイスタン方面から航空機の群れを視認したのだ。既に対空レーダーは破壊され、目視での確認が求められる。見張員が見たのは、20機程のレシプロ機だった。

 

「ムー国か!?それとも別の国か?!」

「そんな事はどうでもいい!対空戦闘用意だ!」

 

残り少ない対空火器の配置に就くと、対空弾幕を展開する。しかし、何時もの対空弾幕は何処へやら。まばらに空に黒い花火が展開されるばかりで、お世辞にも対空弾幕とは呼べない様な有様になっていた。

 

敵航空機はグラ・バルカス帝国中央艦隊に接近すると艦艇に向かって急降下を始めた。

 

対空機銃の攻撃をすり抜けたムー国の"マウン型爆撃機"はグラ・バルカス帝国の空母に向けて爆弾を投下する。空母は必死に回避運動を行うが、日本国航空自衛隊の攻撃によって機関出力が落ちていた空母は爆弾の直撃を食らい、爆弾は飛行甲板を貫通し、格納庫で爆発する。その他の空母も艦橋で爆発したりと大きな被害を受けている。

 

これだけでも瀕死の重傷を受けた空母だったが、戦艦にも大きな危険が迫っていた。戦艦には、ムー国の"スター型雷撃機"ー日本の97式艦上攻撃機ーが迫っていた。

 

日本国航空自衛隊の攻撃でダメージを多少負っていたオリオン級戦艦は対空射撃をするが、これが当たらない。理由はムー国の雷撃機が高性能と言うのが挙げられる。ベースは97式艦上攻撃機だとは言え、使われている冶金技術などは現代技術なのだ。防弾性能もしっかりしているので、命中しても大したダメージにならないのだ。

 

彼らは海面スレスレに飛行し、魚雷を投下した。投下した魚雷は魔導魚雷だ。科学立国であるムー国ならグラ・バルカス帝国と同じく空気魚雷が普通だが、日本国から供与されたこの魚雷は"風神の涙"によって生じる空気圧を水車の要領でスクリューを動かしている。そのため、空気が水と混じって気泡とならず、航跡が立たないのだ。

 

その他にも、爆裂魔法を組み込んだ魔石や小型爆弾を内包した事により、日本国の過酸化水素式魚雷には及ばないが、純酸素魚雷と似た性能を有しており、空気魚雷を開発する必要がなかったので、高性能の"風神の涙"を輸入したりして魔導魚雷を生産している。

 

今回、それを実戦投入したという事だ。投下された魚雷は戦艦に向かって進む。魚雷は航跡が残ると言う固定観念に囚われていたグラ・バルカス帝国の将兵達は油断した結果、戦艦に魔導魚雷が命中。急速に傾き始めていた。

 

結果として、グラ・バルカス帝国中央艦隊第1艦隊の残存艦艇は空母2隻だけであった。しかも、その空母も戦闘不能状態であり、文字通りの壊滅と言っても過言ではない状況に追い込まれたのであった。






〜コラム〜

チェルノブイリ原発

チェルノブイリ原発が事故を起こしたのを確認した日本政府は、稲荷神の思いつきのもと、使い捨てのゴテゴテのロケットエンジンを取り付けて燃料がなくなったらポイ捨てする機構を取り付けた機体で稲荷神が直行。

空中分解どころか空中爆発の危機を迎えつつも無事に機体から脱出した稲荷神は自由落下運動をしながら狐火で放射線ごと焼却した。

次回は航空自衛隊で使われる機体の小話をご紹介します。

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グラ・バルカス帝国の今後

  • 日本国本土近海に軍を派遣する。
  • レイフォル沖制海権を取り戻す
  • その他(経緯をメッセージボックスにて)
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