適性不足で戦闘員にすらなれず捨てられた俺、それでもしぶとく生きてます   作:ダブル亮禅

2 / 4
第2話 潜入!悪の秘密基地

給食毒薬事件を阻止して、一週間が経った。

 

テレビでは連続連夜この話題で持ちきり、

かと思えば当日にチラッと放送されただけだった。

間違って農薬が混入したかもみたいな軽い扱いで。

関東地区全域にある小学校を狙った毒混入事件だぞ!

こんなの大騒ぎになってもおかしくないのに、

今では誰も噂にすらしない。

 

おかしい。

もしかして、この組織、予想以上に大きな組織なんじゃない?

それこそ権力やメディアの上の方まで影響あるような。

だとしたら、極力関わりたくは無い。

俺はただの一庶民だぞ!

でも薬がいるから全く関わらないのは無理。

ああ、でも報道統制出来る規模の組織とか

俺、絶対消される!

でも薬が!

と頭の中で堂々巡り。

 

このままでは精神衛生上宜しくない。

薬が切れる前に、脳が焼き切れる。

とりあえず薬の在庫か組織の弱点とか。

そもそも自分は本当に安全なのか?

実は泳がされているだけなんじゃ無いのか?

薬があってもある日自爆スイッチとか押されたらとか、

とりあえずなんでも良いから安心材料を

なんか見つけない事には夜も眠れない。

という事で、今日も秘密基地に忍び込んでみた。

 

「いやぁ、警備がザルなんだよな」

と独り言。

実際、秘密基地はかなり大きめの工場なので敷地が広い分、目が行き届かないのだろう。

あと、実際に周辺の住民には製薬工場って説明してるらしい。

だからあまりに度を越した警備システム入れられないのだと思う。

それに警備システムと言っても対人間用である。

2メートルの壁を助走もなく飛び越えられる改造人間には通用しない。

という訳で、今回も無事潜入成功出来た。

早速、先日大量に薬を手に入れられた幹部の部屋を目指す。

途中、何度か見回りの戦闘員を見かけるが、前回同様、天井に張り付きやり過ごした。

 

無事、幹部の部屋の前にたどり着く。

しかし、幹部の部屋は以前来た時とは違い、

大型トラックにでも突っ込まれたのかってくらい

ボロボロになってなっている。

部屋の中を覗くと、瓦礫が散乱している上、

辺り一面血まみれだった。

「これは、いったい…どうしたんだ?」

そこにタイミングよく通りかかる戦闘員。

「それにしても凄かったな〜この部屋にいた幹部の粛清」

「薬を大量に無くしたらしいぜ。

俺らの命かかったんだからしっかりしろよなあ」

「全くだぜ。まあ粛清されて当然だな。」

「つか粛清担当した怪人エグかったな。あれ関西支部のサイ怪人、林さんだよな?」

「口デカかったし、サイって言うかカバ…」

「バカ!それ、絶対林さんの前で言うなよ、林さん滅茶苦茶気にしてるらしいぞ…」

とか言いながら通り過ぎて行く。

 

自分が薬を盗んだ事でこの部屋の幹部の人は殺された。

その事実に俺は、意外にもあまりショックを

受けていない事に気付く。

本来なら自分のせいで人が死んだらショックを

受けるはずなのに、俺はどうしてしまったんだ?

「俺のせいで、死んだ」

あえて口に出して言ってみた。

が、やっぱり罪悪感はない。

まあ、俺自身勝手改造されて捨てられて、

薬がなきゃもう死んでる。

俺が捨てられた所にも沢山死体があった。

幼稚園バスの子供達も殺し、小学生も殺そうとした。

それが奴らだ。

そんな奴らに罪悪感、どころか同情すら感じない。

考えてみれば当たり前だ。

やらなきゃこっちが死ぬ。

もう、それが俺の日常なんだ。

今更、奴らの1人が死んだからどうだって言うんだ。

薬が飲めずに死ぬ奴がいるなんて

薬を奪った時に覚悟はしていた。

「そんな事より…」

この部屋はもうダメだな。

薬はもちろん、めぼしい資料は他の場所に

移されているだろう。

ひとまず、この秘密基地のどこかにあるはずの

他の幹部か、新しい幹部が使っている部屋を探そう。

以前、休憩室から失敬させてもらった

戦闘員の服を着て秘密基地内を探った。

 

しばらく基地内を歩き回っていると、数人の戦闘員を連れた何となく態度が偉そうな戦闘員を見つける。連れられている戦闘員はなんだか大きな四角い箱の様な荷物を大勢で運ばされている。

俺は、その戦闘員に紛れ込んだ。

荷物は大きな部屋に運び込まれた。

大きな部屋は前面にステージの様なものが会議室だった。

ステージには組織のお偉いさんと思われる戦闘員。

さらには恐らく怪人と言われる異形のバケモノも1人?いる。

あれは、蝶、なのかな?

蝶の怪人、あまり強そうに思えないけど、

どうせ何か凶悪な力を持っているんだろうな。

とにかく大きなミーティングが始まる様だ。

俺は運が良い!

と思ったが、拉致られ改造され捨てられた俺が運が良いとか滑稽だなとか考えていたらミーティングが始まった。

 

ステージにある大きなスクリーンに6月度実績と表示される。

なんだか普通の会社の会議の様だ。

ちなみにタイトルのところに日本支部関東方面軍と書いてある。

ちょ、ちょっと待て、日本支部って事は

この組織、海外にも展開しているのか?

思ってた以上に大きい組織の様だ。

その後も幼稚園バスのバスジャックの成功や

埼玉県の議員の暗殺など、それぞれの担当が

報告をしている。

その後、スクリーンに小学校毒薬混入作戦と出た後、

失敗と大きく表示される。

するとステージ脇から戦闘員服に勲章のついた戦闘員が両脇を抱えられてステージ中央に引き摺られてくる。

司会の戦闘員が、

「この者は今回の小学校毒薬混入事件の担当者だ。

皆もご存知の通り、この作戦には多額の費用と人員が

割かれていたのだが、結果はこの有様だ!」

と参加した戦闘員達を煽る。

戦闘員達も

「組織の面汚しが!」

「無能は組織にいらねえぞ!」

「いつも偉そうにしやがって!」

と、担当へ罵声を浴びせる。

「諸君!この担当者にはどの様な処罰が望ましい?」

と司会者が更に問う。

「殺せー!」

「失敗には死で償えー!」

戦闘員達は口々に担当者の死刑を叫び、

ついには

「殺せ」

「殺せ」

と殺せコールが始まる。

それを聞いて先ほど蝶の怪人が立ち上がり、

担当者の所までやってくる。

戦闘員達は興奮の絶頂という様子でステージに集中する。

「助けてくれ!嫌だ死にたくない!」

と命乞いをしたが、

蝶の怪人はストロー状の口を伸ばすと、

そのままストローが脳天にブッ刺さる。

ズゾゾゾゾッ

という音をたてながら何やら吸っている。

担当者の戦闘員は音がする度にどんどん細く

小さくなっていく。

そのまま担当者はミイラの様になって死んでしまった。

うおおおぉぉ!

と戦闘員達が沸く。

ミイラの様になった戦闘員はそのまま他の戦闘員が回収される。

その後は何もなかったかの様に、

会議が続けられる。

 

司会者が合図をすると、

先ほど戦闘員と一緒に運んだ大きな箱が

ステージ中央に運ばれてくる。

箱を覆う布を外すと、

中には鉄格子の檻に入れられた数名の人たちが現れた。

よく見ると見覚えのある人達だ。

どうやら檻の中の人に、

テレビでよく見るタレントと、

資産家で有名な大きな会社の経営者

がいるようだ。

他にも知らない人もいたが、

多分、それなりに地位のある人達なんだろう。

そのうち1人が椅子に縛り付けられる。

俺を改造してた白衣の男が、変な器具を持って

ステージに登場する。

その変な器具を顔に被せる。

そして家具の反対側に戦闘員を座らせる。

白衣の男が器具のスイッチを押すと、

ゴキッ、ゴキッ!、バキッ!

ゴキュ、ジュルルルジュルー

と捕まえられていた人の顔に着けられた器具が

豪快な音を立て、その後機械の中を何かが通る音がする。

その後、戦闘員につけられた器具が

ゴキッ、バキッ!ベリベリ!

と音を立てる。

その後白衣の男が器具のスイッチをもう一度押すと

会議室の中が一瞬静まる。

そして戦闘員の顔から器具が外される。

「おおお!!!」

見ていた戦闘員達から歓声が沸く。

恐らく拉致されて先ほど椅子に座らされていた人の顔が

そこにはあった。

顔の持ち主である拉致られた人の方を見ると、

ダランとしてピクリとも動かない。

何よりも頭のついてるべきところに何もない。

どうやら亡くなっているのだろう。

そうやって連れてこられた檻の人全ての顔が奪われる。

総勢5名の人の顔が戦闘員に移し替えられる。

恐るべき科学力だ。

スクリーンに5名の人物が紹介される。

タレント、望月あかね

アナウンサー、守下衞

沼川信用金庫支店長、津田健太郎

昼日テレビプロデューサー、金村光一

株式会社AHAHCITY社長、米澤良太

その後、日時と場所が表示される。

そして大きな字でバーンという効果音と共に現れる。

 

"電波ジャック、暴徒化計画"

 

「おお!」

と喜ぶ戦闘員達を制止し

白衣の男がマイクを持ち計画を説明し始める。

簡単に要約すると、

人間の凶暴性を増幅させる特殊な光信号をある番組で流す。

というもの。

しかし、この凶暴化信号は10分間継続して

見続けないと凶暴化の効果が出ない。

そこでスポンサーやら、出演者やら、

制作スタッフを抑える。

番組を好きに作り変えた上で、

一番視聴者が増えるタイミングで凶暴化信号を流す。

そして、凶暴化した人達を各政府機関に誘導し、

暴徒と化した人達に政府要人を殺させ、

無政府状態になった日本を怪人や戦闘員の武力で

支配しようという計画だった。

暴徒化以降の計画がなかなかに杜撰だったが、

改造されるとその辺の思考が鈍くなるのかもしれない。

ただ暴徒化については成功するかもしれない。

そうなれば、多くの犠牲者を出す事だろう。

ただ、この計画は正直、直接俺には関係なさそうだった。

普通の人間が暴徒化しても俺なら難なく対処できるし。

 

次の議題がスクリーンに表示される。

"脱走怪人の探索"

俺はギョッとなって思わず声を上げそうになる。

自分の存在がバレてしまったのかと戦闘員の服の中は冷や汗でびっしょりとなった。

心臓もバクバクといつもの数倍の速さで鼓動する。

しかし、司会の説明を聞くと俺ではないようだ、

「東海方面軍の怪人が、洗脳手術前に脱走した」

と司会の戦闘員が言ったからだ。

関東方面軍の戦闘員すら務まらない廃棄品の俺ではなかった。

その怪人は将来組織の幹部として人間社会でも

働く予定だった為に怪人から人間に変身する能力まであるらしい。

並の怪人なら一撃で殺せる力もあるとか。

スクリーンに適性値の目安が表示されている。

適性値1.99〜3.99 一般戦闘員

適性値4.00〜5.99 隊長級 一般戦闘員5人分

適性値6.00〜6.99 幹部級 一般戦闘員10人分

適性値7.00〜7.99 怪人級 一般戦闘員50人分

適性値8.00〜10.0 将軍級 一般戦闘員200人分

司会者はそれを指しながら、

「一般戦闘員でも普通の人間の7〜10倍の筋力を持つ、

その戦闘員の200倍の力を幹部級の怪人は持つ。

しかも、今回脱走した怪人は、我がナーガマラの

次期総統候補として作られた特別性らしい。

くれぐれも個人の判断で戦闘行為を行わない様に」

と注意していた。

正規の戦闘員でも200人か。

適性値1.7の俺じゃあ300人はいるかもな。

とか思いながらもこれはチャンスだと思った。

 

スクリーンがその怪人の顔写真と名前を映し出す。

10代後半の好青年、名前は若井翔太。

 

若井翔太…

俺はこいつを仲間に引き込む事に決めた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。