日誌 1/1 , S.C . 0
今日は人類史にとって最も偉大なる日となるだろう。
母なる大地たる地球から近傍の惑星へと入植したのが約140年前
軌道上居住地の建設、それと本格的な地球外移民が125年前、 地球外コミュニティの独立、統合による紛争
その結果引き起こされた最初にして最後の宙域惑星間戦争、「太陽戦争」は80年前に始まり、50年後に終結した。
そこからの25年間は各居住地の復興、入植惑星のテラフォーミングをもって人類は太陽系を掌握した。
2年前には太陽系外探査船の開発、搭乗者の募集、そして今に至る。
私はこの探査船「エクスプローラー」の3号機の艦長として人類の大きな一歩を踏み出す名誉を与るとともに、我々が見つけた未知と進んだ冒険を後世に残すためにこの日誌を執筆する。
日誌 2/3 , S.C . 0
あれから3星系ほど回ったがなかなかに未知にはお目にかかれない。恒星間航行には時間を要するため、我々の仕事のほとんどは待つことが求められる。超光速移動はトランスドライブを使って移動する。
これにはおよそ1週間のチャージ時間が必要であり、そのエネルギーは恒星によるソーラー発電、恒星の放つプラズマの回収や水素の回収による核融合などで、トランスドライブ以外にも船内設備に使われる。
船内設備は大きく分けて居住、ライフサポート、研究、管理と分けられ、各施設には十分な人手がそろっている。
しかし新たな発見がない限りライフサポートスタッフ以外は暇だろう。かくいう私も次の目標星系への座標入力以外は仕事はない。
書くこともないのでここで今日の日誌は終わることにする。
日誌 2/15 , S.C . 0
一週間をちょっと過ぎ、前回の日誌から次の探査先でようやく興味深いものを見つけた。
星系「pirfan」と名付けられたここには、おそらく人工衛星、その残骸が浮かんでいたのだ。研究スタッフによるとかつてこの星系内にある古代の文明が使用していたとみられ、せいぜいバクテリア類しかないと思われる岩石惑星に信号を送っていた。この惑星を調査したところ、廃墟と化した施設があり、この遺跡の発掘許可を求められた。
この事実は我々がこの銀河において唯一の知的生命体ではないことを知らしめることになるだろう。
日誌 2/19 , S.C . 0
発掘チームより進展があった。
この古代遺跡は恒星が放つ光の波長を計測し、彼らの言語に翻訳を行っていた。恒星そのものが生きていること、また自分たちにとって新たな指導者あるいは神であるとする文化があり、いわばこれは神の声を聴く施設だったのだ。
人類の太陽にはそのような挙動を行った事実はなく、この恒星特有の反応であると研究者たちは予想している。遺跡はさらに奥まで続いており、発掘と恒星の調査を同時に行う計画を立てた。
日誌 2/20 , S.C . 0
さらに発掘チームから報告が上がった。
この文明の生命体は紫外線に非常に弱く、それ故に恒星の放つ光を畏怖していたようだ。恒星の光を受け取る器官の発達も見られたことからいわばこの恒星とともに進化してきたともいえるだろう。しかし文明が発展していくとやがて、この星はほかの恒星と大差のない存在であるという見方が強まったようだ。
この後に起こったことは言わば宗教戦争である。この恒星を神とする教会派と単なる星に過ぎないとする科学派が互いを異端者とする聖戦が起こったのだ。
日誌 2/22 , S.C . 0
発掘チームはこの遺跡のすべてを掘り起こしたようだ。
この遺跡には奇跡的にこの文明の顛末を語る文献や芸術などが見つかった。これらによるとどちらの派閥も科学の発展具合に差はなかったようで、ブレイクスルーが起きなかった結果泥沼に陥ったようだ。
そして彼らの戦争は陳腐な結末に終わった。つまりどちらかが全滅するまで核兵器で吹っ飛ばすという結末だ。本国の三流ライターですら書かないような終わりによってこの文明は二人を残して滅びた。
この二人はそれぞれ敵対していた両派閥であり、遺跡でこの終末を記した文献や芸術を残して亡くなった。
両派閥は最期の時に和解したのだ。
発掘チームはこれらの歴史的資料の写し、あるいはそのものを収集して帰還した。
日誌 2/23 , S.C . 0
今まで影の薄かった観測チームは今になって不可解な報告を行ってきた。
この古代文明を絶滅戦争に駆り出した元凶であるこの恒星は、
我々の観測機では実に正常な波長を発していた。
観測チームによると特別に言語的な波長を発した形跡はこの調査中においてみられなかったそうだ。また彼らの使用した観測機を再現したものでも、未だ生きてた彼らの観測機もどれも同じ結果を示した。
啓示を実際に行ったのか、最初から何の特異性もなかったか、我々はそれを知る術はない。
確かなのは「太陽」が喋ることはないだろう。