魔道具の効果です!と言い張るフィジカルモンスター系ダンジョン配信者 作:匿名
「それでは冒険者発掘会議を始めます」
六本木にある高層ビルの最上階。大きな窓から都内の様子が見渡せる会議室に集まっていたのは日本冒険者協会の職員とA級冒険者達だった。
ファシリテーターは若くして日本冒険者協会教育局の局長を務める神城イリス。
会議室のプロジェクターは彼女のノートPCに繋がっており、全国の冒険者協会の職員や冒険者から集まってきた「有望な冒険者」の情報が、一覧形式で表示されている。
表示順は期待度だ。ランクが低く、高い成果を上げている冒険者が上にくる。
「一番上はC級冒険者の雪村カズキ。まだ十八歳なのに単独でのダンジョン完全攻略を達成……。流石はA級冒険者、雪村ユズルの弟と言ったところね」
神城が対面に座る若い男に向けて視線を送る。
「あぁ。カズキは俺が十八歳の頃よりも強いかもしれない。自分の弟だから推すわけではないが、今最もA級に近い若手冒険者だろう」
ユズルは得意げな表情で語る。神城も反論は無いようで、深く頷き返した。
その後も有力な若手冒険者の一覧を見ながら、神城やユズルがコメントを加えていく。
一時間が経過し、ようやく一覧表の最後に到達した。
最終行に記載されていた名前は「棟田ゴンゾウ」。年齢は十八歳で登録したばかりのE級冒険者だ。成果の欄には「自作の魔道具を使用して湯島ダンジョンのヒュージスライムを多数討伐」と書かれてある。
「E級冒険者がヒュージスライムを……? 自作の魔道具で……?」
神城が首を傾げ、他の職員に尋ねる。話を振られた初老の男性職員は少し困った顔をしながら、答え始めた。
「……えーとですね。このゴンゾウという冒険者は『魔道具師』を名乗っているらしくてですね、自作の魔道具を使ってヒュージスライムを多数討伐したそうです。粉々に破壊されたコアを大量に所有していたとか……」
神城の表情が険しくなる。
「魔道具師? 自作の魔道具? 人間が魔道具を作れるわけないでしょ? 魔道具はモンスターのドロップや宝箱からしか入手出来ないものよ?」
「ええ。それは勿論、私も存じております。ただ、そのように報告が上がってきておりまして……」
初老の職員はなんとも歯切れの悪い言い方で返す。
「たぶん、スキルか魔法を使っているんでしょ? 『魔道具師』って名乗った方が目立つから、言ってるだけじゃないかな? 今の若い冒険者ってバズるのを目的にやってる子も多いし」
職員に助け舟を出すように、ユズルは語る。しかし、神城の表情は緩まない。むしろ鋭さを増す。
「実際のところはそうでしょうね。私はそんな簡単なことも調査せずに報告資料に載せてきたことを問題視しているの。私達、教育局は未来の冒険者を育てる役割を担っているのよ? この会議はこんな承認欲求だけで行動している冒険者を取り上げる場ではないの」
「も、申し訳ございません! 以後、気を付けます!」
これ以降しばらくの間、冒険者発掘会議の場で「棟田ゴンゾウ」の名前が挙がることはなくなった。
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「えっ……!」
家賃三万の限界アパート。声を出せば全部屋に響く壁の薄さの中、俺は思わず声を上げた。
平日深夜に湯島ダンジョンに潜って【巨人のグローブ(ただの軍手)】でヒュージスライムを倒す生活を二週間ほど続けていたら、驚くことが起きていたのだ。
「俺のアカウントをお気に入り登録している人が100人になっている……!!」
冒険者登録して一か月、ダンジョン配信を開始して二週間でこれは素晴らしい成果なのではないだろうか……!?
しかも最初は「はぁ? 魔道具? ただの軍手じゃん!」みたいなコメントが多かったが、最近は「ゴンゾウの作る魔道具凄くね? 売って欲しい!」みたいなコメントが増えてきている。
確実に「魔道具師ゴンゾウ」の認知は広がっているし、それにつれてスパチャの額も増えてきているのを感じている。
初日はヒュージスライムのコアを完全に破壊していたせいで、冒険者協会に買い取りを拒否されていたが、よーく狙いをつけることで「玉砂利をコアに掠らせる」技術も身に付いてきた。
小さな傷があるだけなら、魔石は買い取ってもらえる。ヒュージスライムの魔石はそこそこ買い取り額がいいので、それだけで家賃と食費はなんとかなりそうだ。
「とはいえ、もっとダンジョンの先に進んでいろんな魔道具を披露しないと、人気者になってスパチャは稼げないな……。そろそろ、第二階層に進むべきなのかもしれない」
湯島ダンジョンの第二階層はどんなモンスターが出るのだろうか? それに合わせて魔道具も考えていく必要がある。
俺は情報収集のため、Dtubeを開いて「湯島ダンジョン」のライブ配信を探し始めた。