楽しめるか否か。それが問題だ。   作:ジェバンニ

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もう三月も半ば過ぎているのに作中ではクリスマス。不思議!

※今回他者視点注意。


疑わしき人物について

クリスマスのその日、僕たちはようやく本格的に動き出すことにした。

この日、ポリジュース薬がやっと完成したのだ。

正直な話、ハーマイオニーがこの作戦について言い出した時は「何て穴だらけな」と思ったものだけど、ひょっとしたら上手くいくのかもしれない。

ハリーと僕は耐え難い味に耐えて、あのゴイルとクラッブに変身して女子トイレを出た。

あの味を思い出しただけで、ちょっと吐き気がしてくる僕たちは泣いて良いと思う……。

全くもって世の中クリスマスだって言うのに、今朝から酷い目にしか遭っていないような気がする。

こんな日だって言うのに去年と同じく何十缶ものシュールストレミングの箱(自動で中身が飛び出るサービスが付いている)がまた今年も送られてきて、うっかりプレゼントを開けてしまった僕と、近くに居たハリーとハーマイオニーに臭いが付いて作戦決行の少し前まで取れなかったし。言い訳をするなら、まさか今年もあんなプレゼントが来るとは思ってもいなかったんだ!

……ポリジュース薬を飲みに行った女子トイレに居た、嘆きのマートルは「貴方たち臭いわよ!」って大喜びだったけど。

誰だか知らないけどこんな酷いことをする奴なんて、スリザリンの継承者よりももっと酷い目に遭わせてやらないと……!

さて、ハーマイオニーだけ何で一緒に行けないのかは分からないけど、さっさとマルフォイの元に行かないと。

 

廊下を歩いていたら途中で頭が大きなマリモのように見える髪型になったスネイプとすれ違って(後でハリーがあれはマグル風の「アフロ」という髪型だって教えてくれた)思わずハリーと一緒に噴いてしまい、睨まれたりしたけどその時ちょうど良くマルフォイの奴が現れて助けてくれたのははっきり言って運が良かった。

「先生……その髪型はどうされたのですか?」

流石にマルフォイも笑いを堪えるのが大変らしい。

だって言葉遣いこそ何時も通り厭味ったらしかったけど、あいつの体全体がちょっと震えていたんだもの。

「これは何者かが吾輩の私室に送ってきた魔法薬がかかってしてしまった結果だ。

このような真似をしたのが生徒であれば絶対に退学にしてやるが、賢明なるスリザリン寮に所属している諸君らは、このような真似は絶対にしないと吾輩は信じている。……何故『消失呪文』を掛けた瞬間に魔法薬が吾輩の髪に向かって生き物のように飛んできたのかは理解不能ではあるが……」

後半は呟くように言っていたので良く聞こえなかったけど、本来は素晴らしいこんな日に酷い目にあったのが僕たちだけじゃないって分かると何だか安心できた。

こんな愉快なことができる奴とは仲良くなれそうな気がするけど一体誰なんだろう?

「誰だか知らないが命知らずなことだな。おい、それよりお前たちに面白い物を見せてやる。付いて来い」

僕のそんな素朴な疑問を他所に、スネイプが去った後でマルフォイに先導され、意外なほど簡単にスリザリン寮の談話室へと僕たちは入り込むことに成功したのだった。

そこで色々と予想外の事実を僕とハリーは知ることになる。

 

とても陰気臭い全てが緑色のスリザリン寮に入った僕たちは、その談話室で待つようにマルフォイに言われた。僕たちに見せたいものというのは一体何なのだろう。

ん、これは新聞……?

パパが五十ガリオンの罰金!?

ハリーに渡して読み終えると不自然では無いように、僕と同じように無理に笑っていた。

聞くに堪えないマルフォイのパパに対する悪口を何とか聞き流しながらこの日最初に驚くことになる事実を僕たちは聞いた。

 

「もっとも僕の従姉殿はアーサー・ウィーズリーについては別の意見を持っているようだけどね」

 

え?

「君の従姉?」

気が付いたら思わずそう口にしてしまっていた。マルフォイの奴に従姉が居たっていうのは初耳だ。

それは僕と一年以上ずっと一緒だったハリーも同じだったんだろう。ちらっと盗み見ると不思議そうな顔をしたゴイルが、要するにハリーが居た。

そして僕の呟きを聞きつけたマルフォイが何処か戸惑った様子で

 

「いや、いくらお前でもこんな大事なことを忘れるなんて冗談だろう?僕の従姉のハッフルパフ生のティア、あのユースティティア・レストレンジのことじゃないか」

 

ええ!?という声を上げなかった僕自身を誉めてあげたい。隣に居たハリーはと言えば口を開けて驚いているようだった。……僕にはゴイルの何時もの間抜け面にしか見えなかったけど。

「全くゴイルもお前が忘れていることに驚いているようじゃないか」

マルフォイはハリーが驚いた理由については勘違いしているようだった。

だけどティアがこいつの従姉だったなんて……そんなこと聞いたことが無かったぞ。

一体どういうことなんだろう?

「まあいい、話を戻すぞ。こっちがティアから来た手紙だ。これと同じ切り抜き付きだったな」

そういって手渡された彼女の手紙を読ませてもらったところ彼女らしい几帳面な字でこう書かれていた。

 

「ドラコへ

 

お友達のクラッブとゴイルは元気ですか?風邪など決してひいたりすることのない二人であるとは思いますが念のため。

このアーサー・ウィーズリーという人は去年コンパートメントで一緒になったロナルド・ウィーズリー(吠えメールでちゃんとした名前を知れたのは良かった気がします)の父上殿なのでしょうね。

こんなことになって魔法界の一員として恥ずかしくは思いませんがとても残念に思っています。

テッド叔父様から噂で聞いたことがあるのですが、この人の仕事ぶりは非常に熱心で、少ない予算と限られた人数の中しっかりとやる方だと聞き及んでおります。

それなのにマグルに私たち魔法族の正体を明かすようなことをするなんて……。

まあマグルの自動車に魔法を掛けるなんていうのは実はごくありふれたことだというお話がありますから、それ自体は責める気がまるでありません。

以前私たちの間で議論の的になったホグワーツ特急ですら当時の首相が無断で永久に拝借して来た代物ではあるものの、乗り心地と言い機能性と言い申し分のない一品であるというのは私たち双方が納得できた事柄ではないですか。

だからマグルの物品に魔法を掛けていたとはいえ、この方を馬鹿にするのは止めておいてください。そもそもこの件に関しては」

 

 

そこまで読んで僕は一度読むのを中止した。

そうだよね、僕たちだって出会いは突然だったし、マルフォイなんかと従姉弟同士だなんて初めて知ったけど、それでも僕たちにとってはハーマイオニーの次に頼りになる女の

 

「考え無しで無鉄砲な男の子にも動かせるような場所に自分の愛車を放置して置いたのが最大の間違いであったと私は考えます。咎められるべきは実際に動かしていたロナルド・ウィーズリーであって彼の父親ではないはずですよ。

だからこそ彼に会うことが叶ったら『ロナルド・ウィーズリーというバカな息子さんを持ったことは不幸でしたね』とでも同情の言葉を掛けて、是非慰めるように肩を叩いてあげるべきだと思います。

 

 

                          ティアより」

 

 

――子だと思っていたけどそんなことなんて無かった。

……ごめん、続きを読んだらついさっきまでティアの事を頼りになる女の子の友達だと考えていた自分をぶん殴りたい気持ちで一杯になっちゃったよ。

ハリーもちょっと微妙な表情になっていた。

「まあ、実にティアらしい台詞だ。理知的で毒舌的で博愛主義的な……。僕には到底真似できない」

マルフォイの奴だけは何だか納得していた様子だったけど。

というか今の手紙からだと要するにティアは今までこいつと接触があったのか。今まで僕たちに話さなかったのはなんでなんだろう?

「おまけにティアはスリザリンの継承者についても僕とは全く異なる意見を持っているようだしな」

来た。これが僕たちの聞きたかったことの本命だ。マルフォイがそうなのか、またそうでないなら何か知っているんじゃないか?

「『貴方自身もハリーも継承者でないと言うのなら誰か別に蛇語を話せる者がいることになりますね(しかし同時代にそんなに存在するものなのでしょうか?)。まあ私もハリーが継承者でないという意見に賛成です。というのも手段を明かさず、決定的な証拠も見られずに三名の犠牲者(前回のように死者が出ていないと言うのは良いことだと思います)を出した人は紛れも無く狡猾でしょう。頭に血が上りやすい典型的なグリフィンドール生の彼ではありえないと思っています。

犯人探しには興味がわきませんが、なるべく早く終わってほしいですね。ハッフルパフの創設者は魔法の力を示した者全てを受け入れるべきと言い、私もそれに賛同しているのですから』だったかな。……全く何時もその点だけにおいては譲らないようだな。僕に授業の事で的確なアドバイスをくれるくらい成績は良いんだから、せめて劣等生の寮なんかじゃなくてレイブンクローに入ればよかったのに」

呆れたように言うマルフォイに僕たちは顔を見合わせた。

……聞く分にはティアはそれなりにこいつと親しいようだ。しかしマルフォイが継承者じゃないし、前回開かれた時は死んだ人が居たって?

これじゃあ振り出しに戻っちゃったじゃないか。

何か……何かないのか?

とそこで僕は気が付いた。

クラッブの頭がハリーになりかけている!……時間切れか。

僕たちは大慌てでスリザリン寮から脱出した。

 

マートルの女子トイレに辿り着いた僕たちはすごく驚いた。

だってハーマイオニーが直立している人間大の猫とハーマイオニーが混ざった姿になっていたんだから。

「私、こんな姿になるなんて……!」

今にも鳴き出しそう……もとい泣き出しそうな彼女だったけど必要なことを言うのが先だと思った僕たちは、ハーマイオニーにマルフォイが継承者じゃないらしいこと、ティアとマルフォイの意外な関係を伝えた。

「そんな……ティアがマルフォイの従姉だったなんて」

驚いていた様子だけど微かにそこには納得したような気配があった。聞けばティアが去年マルフォイの筆跡を知っていたことがその理由らしい。僕としては何で彼女があいつの筆跡で手紙を書けたかの方が気になるんだけど……。

「それにしても僕たちも驚いたよ」

スリザリンの継承者を突き止めるつもりが、とんだ藪蛇だった。ハーマイオニーは彼女と友達だけど、これからはそんな関係も止めにした方が良いんじゃないだろうか?

「だけどティアは僕が犯人じゃないと思っているみたいだった。他に蛇語を話す人が居るんじゃないかって考えているようだったから」

考えが纏まらない顔でそれでもハリーはそう述べた。

「だけどハリー……もしもティアが嘘をついていたらどうする。あいつは確かに僕たちの助けにはなってくれたこともあったけどあのマルフォイの従姉だよ?」

「それでも彼女はスリザリン生じゃない!信じて良いはずだ」

僕たちのやり取りを聞いていたハーマイオニーはふと思いついたように言った。

どうでも良いけど、猫の顔をしている人が真面目ぶった顔をしていると、何だかとっても変な感じだって思わない?

「ねえ、ならティアはどうして私たちを避けていたのかしら」

それは僕たち全員が感じていることだった。

ハーマイオニーはもう一か月以上彼女の話をしていないってぼやいていたし、僕たちが見かけた時も大抵彼女の何時ものハッフルパフ生の友達と一緒だ。まるで誰か他の寮の人に関わることが怖いみたいだった。

本人は純血だって言っていたし、今まで襲われたのはスクイブのペットとマグル生まれの子だけ。

ハリーを疑っているなら僕たちと話したくないのもまあ、分からないでもない。

だけど疑っていないなら話は違う。

何か理由があるんだろうか?もしかしてティア自身がスリザリンの継承者で自分の正体がばれないように必死だったとか?

「ありえないわね」

「ありえないよ」

ハーマイオニーとハリーには一発で否定されちゃったけど可能性は無くは無いんじゃないのだろうか?

「マグル生まれの子は皆石にしちゃいましょうねぇ」

とか言ってスリザリンの怪物と一緒になって石にした後で、クスクス笑っていたりするとかすごくありそうじゃないか。

僕の疑念は深まった。

 

その後で猫人間になったハーマイオニーを医務室に連れて行ったり、マダム・ポンフリーに対する言い訳に拍子抜けと言えるほど苦労しなかったり、と色々あったがその日の夜のうちにティアに接触することができた。

というのもクリスマス・ディナーの残り物と言った様相の、それでも十分豪勢な夕食を食べた帰りの彼女を二人で捕まえることに成功したからだ。

何時もみたいにハッフルパフ生の取り巻きが居たならともかく、クリスマスでほとんどの生徒が帰ってしまって一人きりになったティアを連行するくらいは僕たちにだって簡単だった。

「は、放してください。何なのですか!?」

両手を僕たちに挟み込まれてマートルのトイレに辿り着いたティアは何故自分が此処に連れてこられたのか分かっていない様子だ。

「君に聞きたいことがあるんだ」

「マルフォイが君の従弟だってこと、どうして話してくれなかったの?」

僕とハリーにはそう、これから彼女に色々と訊かなきゃいけないことがある。ちなみにマートルはティアを見た瞬間に逃げ出していた。……ティアは彼女に何をしたんだろう?

「どうして貴方たちはそのことを知っているのですか?」

そこで僕たちが今日、そして今まで何をやっていたのかを全て話すことした。

彼女の質問の答えを得たティアは暫く黙っていた。そしてその後で

「逆に問いますがもし貴方がマルフォイの従姉だったら、それを得意げに言いふらしたりするのですか?」

恐ろしいことを言ってくれた。そんな怖い冗談は止して欲しい。

「まさか」

「僕なら自殺しているね」

ハリーと僕の返事に暫く詰まっていたようだったけど

「決して悪い男の子では無いのですけどね……まあ、分かってくれたようで何よりです」

彼女は何故か悲しそうな様子でそう答えたのだった。

「僕たちだってあいつが悪い奴じゃないってことは分かっているよ」

勿論さ。

「そうそう、ただ単にあいつが鼻持ちならない奴だって知っているだけさ!」

それって同じことなのでは……と言う小さい呟きが聞こえたけど、暫くして彼女はその蒼い瞳でこっちに向き直った。

「それより私も貴方たちに言いたいことがあります」

「何?」

もしかして継承者に関する話なんだろうか?

「あの……あまり若い内から特殊な趣味はどうかと思います」

「え?」

……ティアは何に付いて言っているんだろう?

「ほら、お二人とも去年以来すっかり女子トイレに入るのが好きになってしまったようですから」

「違う、間違っているってティア!」

ハリーが必死に否定している。僕だって同じ気持ちだ。

「僕たちは必要だから足を踏み入れただけだよ!何でティアの中でそんなことになっているの!?」

僕の必死な言い訳に対して、しかしそれでも

「本来の使用用途なら男子トイレだけで済むはずなのですけどね……」

疑わしい、と言った感じでティアに見られた。正直身に覚えが無いのにそういう目をされると罪の無い男の子の一人として傷つく。

「トロールが来たから!去年はトロールが来たから女子トイレに入ったんじゃないか」

ティアだって覚えているはずだ。忘れていないよね?

「必死になるところがまた怪しいのですが」

……もう何言っても無駄な気がした。黙り込んだ僕を見て

「ロン、勿論半分くらいは冗談ですよ」

ああ、冗談だったんだね。良かった……って洒落になってないよ!

「ちなみにもう半分は?」

「本気で必要ある度に男子が女子トイレに入るようだったらそっちの方が問題な気がします」

あまりにもあんまりな言い様だけど傍から見ていたらそうなのかな?

「ああ、うん。確かに」

ハリーも頷いていたし、多分そうなんだろう。

「まあ、冗談は置いておいて此処からが本題です」

真面目な表情でティアがこっちを見て来た。

でも油断できない。ティアは何か真面目な顔で冗談を言ったりとんでもないことをしたりするからだ。

スキャバーズを大きくした時も、賢者の石を守りに行く時に口から火を噴いた時も、マルフォイの筆跡を真似た時も、僕にシュールストレミング味のキスした時も。

ハーマイオニーは「彼女は私たちが知らない色々なことを知っているだけよ」とか言っていたけど、魔法界生まれでマグル生まれの子が知らないことを知っているっていうのは魔法界特有のことだけのはずだと思う。魔法界生まれの子の中でも、ごく一般的な暮らしをしてきた僕が知らないことばかり知っているのは、今のところ継承者が誰なのかを除けば最大の謎だ。

「貴方たちはどうしてスリザリンの継承者を捕まえようとしているんですか?正直な話ホグワーツの先生方は優秀です。私たちの出る幕なんて無いのではないですか?」

これまた常識的な意見が出てきたな。それは確かにそうかもしれないけど……。

「僕は自分が関係あるのに放っておいたたままでいることなんてできない」

「ハリー!」

こんな本音を言葉にされるのは初めてかもしれない。

「君だってもしも自分が悪くないのに疑われていたら嫌になるだろう。僕は、ただ誰がこんなことをやっているのか知りたいし、止めたいと思っている。だから君がもしもマルフォイから何か聞いていて、知っていることがあるんだったら教えてほしい」

少しの間ティアは黙っていたけど

「私が知っていることはそう多くは無いですよ」

そうして彼女の知る限りのことを話してくれた。

 

全て話し終えた彼女は

「もう既に危ない橋は渡り終えたし、手詰まりなのでしょう。これ以上規則破りとかしちゃだめです。ロン、貴方も言われたはずですよ。

確か『今度ちょっとでも規則を破ってごらん。わたしたちがおまえをすぐ家に引っ張って帰ります』でしたよね?」

一字一句覚えていることよりも僕にはもっと気になることがあった。それは

「止めてよ。何で僕のママの声で話すんだよ」

「ほら、貴方宛てに情熱的な手紙が来た時に一度聞いたことありましたし」

ティアって本当に得体がしれない。

「話してくれてありがとう。最後に一つだけティアに聞いておきたいことがあるんだ」

何だろう?

「ティア、君はスリザリンの継承者に手助けをしたいと思っているの?」

何時になくハリーと、それからティアの二人が真面目な表情になっていた。

「いいえ。何でそういう意見が出て来たのか分からないですが私自身が継承者と言うことは無いですし、純血主義に染まったことは今まで一度もありませんから」

「それ、本当に信用していいんだね?」

僕の言葉に

「勿論です。私は差別とマグル生まれが大嫌いですから」

「……」

「……」

「ああ、間違えました。差別と純血主義が嫌いの間違いです」

胡乱な目付きになってしまうような回答の後で彼女はこう言ったけど……。

「なら君はどうして自分で継承者を捕まえようって思わないんだよ?」

「質問が一つだけじゃないじゃないですか。サービスで応えておくと怖いからですよ」

何気ないように、本当にさり気ないように様子だったけど、それはこの女子トイレで響いた彼女の真摯な声で紡がれていた。

「関わり方を間違えれば、自分が追われていることを知られれば継承者に容易く殺されてしまうかもしれない。それなのに向かっていくことなんて私にはできません」

彼女が見せてくれた、抱いているだろう恐怖は本物だったように僕には思えた。もう話すことは何もない、と言った感じで女子トイレを出て行こうとしたティアに

「マルフォイがそうじゃないって分かった以上、僕たちにできることはもうない。スリザリンの継承者を追うことはしないから、せめてハーマイオニーに会いに行ってくれないかな。彼女は凄く君に会いたがっている」

そのハリーの言葉を聞いたティアは、暫く考える様子を見せた後で

「……危険が無いならば良いでしょう。とりあえず今すぐにハーマイオニーに会わせてください」

と一言静かに述べた。

 




寒くなくなってきたので冬眠から起きました。

私の確認ミスやら何やらの間違いは当分直せそうにないので気長にその点は待っていただけると幸いです><

更新もなるべく早めに……やっていけるといいなぁ(希望)。

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