楽しめるか否か。それが問題だ。   作:ジェバンニ

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原作に対する愛は失っていないがその愛に私の執筆スキルが追い付いていないことが問題だ……。
何が言いたいかっていうと執筆スピードについては広い心で待っていただけると幸いだということです。


一日の流れ

「親愛なるテッド叔父様、ドロメダ叔母様へ

 

お元気ですか? 入学した日はお手紙を出せずにすみませんでした。汽車の旅に組み分けにと色々あったものでしたから女子寮の自室に着いた時にはすっかりくたびれ果てていたのです。その他にもホグワーツでの暮らしに慣れるのにこんなに長く掛かってしまいました。手紙を出すのが遅れたのにはそういうわけがあったのです。ご容赦ください。

 

私が選ばれた寮ですが組み分け帽子が名前を告げたのはドーラやテッド叔父様と一緒のハッフルパフでした。この寮に入ってから一応私の在る程度の素姓を知りつつも仲良くしてくださる方ばかりなので助かっています。学生生活は新たに出来た良き友人たちのおかげで実りあるものとなっている気がいたします。

それと前から言っていたように誕生日プレゼントとして寮生活初日から『日刊予言者新聞』を読めるようにしてくださってありがとうございます。

また何かありましたら連絡させていただきます。何も無くてもしますけど。

 

ティア」

 

羽ペンを置き、私はドーラへの手紙を書き始めた。

 

「ドーラへ

 

私も無事ハッフルパフ生になれました!

組み分け帽子がどの寮に入るかを決めるかということは一年生の誰も知りませんでした。きっと新入生に秘密にしているのは長年ホグワーツに通った人、卒業した人達の伝統なのでしょうね。

 

そうそう9月1日の汽車の中で驚くべき人に逢いました。生き残った男の子、ハリー・ポッター君です。見たところ私達とさほど変わらない普通の男の子のようでしたが彼を見ていると複雑です。

何せ彼がいなければ私は叔父様や叔母様、それからドーラと一緒に暮らすこともなかったはずなのですから。

聞いたところどうも彼は私と同じで叔母一家と暮らしているそうなのです。違う寮に分かれた為彼がどうしているかは存じませんが授業初日に全校生徒に注目されていたと聞きました。無理もありませんね。

 

それともう一人の従兄殿とお会いしました。私は彼の父親を見たことが無いのですが彼ドラコ・マルフォイと同じような感じなのでしょうか?つまり……頭髪は無事なのか?ということです。将来の為に毛生え薬を送って差し上げるべきなのかもしれません。

そういえば授業初日の朝早く『何故スリザリンに来なかったのか』という怒りの手紙を貰いました。一応授業の空いている時間に理由を純血主義の問題点も含めて手紙にしたためて送ったのですがその二時間後には返事が返ってきたのには驚きました。彼は随分とまめなのですね。所謂文通相手としてなら長い付き合いが始まるのかもしれません。では今日はこれくらいで。

 

ティア」

 

肩をコキコキと鳴らしながら私は呟いた。

「無邪気な子供の振る舞いは疲れます……」

と。

 

思い起こせば今日も今日とてハードだった。

朝起きて朝食を食べ、教科書を揃えてさあ授業……と順調にはならなかった。

どの授業も遅刻こそしなかったが道に迷いまくっていたからだ。沢山階段があったこともそうだが基本的に私は目的地に辿り着くのが非常に困難なのだ。前世でも方向音痴には定評があったものだと懐かしい気持ちになる。

プレイしていたオンラインゲームでもキャラにピンク色の衣装を身に着けさせていたのだが良く迷っては敵対的なモンスの群れに突っ込んでいた。そしてそれから脱出する為にマップ上を縦横無尽に走り回った挙句他プレイヤーに付けられた渾名が「ピンクの悪魔」だった。私は別に食い意地は張っていないと言うのに。せめて目立たないよう黒い衣装を付けると今度は「黒い悪魔」呼ばわりされる始末。ゴキブリ扱いとかその当時は死にたかった。……いやまあ一度死んだ身じゃあそうは言えないのだけど。

加えて何が嫌かって今日は初っ端から飛行訓練の授業があったのだ。何が問題かってそれは私が飛ぶことを嫌っていることなのだ。

2、3メートルならどうということはない。5、6メートルも平気だ。でもスキー場のリフトの高さくらいになると怖くて飛べない。一度ドーラに連れられて渡り鳥が飛ぶような高さを飛ばされたことがあるのだがその後で二度と箒では飛ばないと誓ったものだ(結局また乗せられたけど)。だって飛んでいる最中にふと下を見ると落ちたら絶対に助からない高度なんだよ?気絶こそしなかったけど落ちないかどうかが心配で楽しむどころじゃない。箒の柄を掴んでいるだけで精一杯だ。

箒は慣れている人なら「上がれ!」と言えば一発で上がる。初日の私、スーザン、アーニー・マクミランの三人はそうだった。ハンナは二、三度失敗して手元に引き寄せた。

そしてジャスティンはと言えば何故か箒に打たれていた。……何があったのだろう?

箒の握りなど確かめ、在る程度慣れたら自由時間となった後で私はと言えば飛ばずに地に足を付けたままだった。マグル生まれの子ならいざ知らず魔法族の家の子にとっては自転車と同じようなものなのだろう。箒に乗ることなど特に珍しくも無いのだ。

 

その次が魔法薬学の授業だった。

自分ではそのつもりはなかったが隣に座っていたエロイーズの話では私の眼はずっとキラキラしっ放しだったらしい。

ほんの少し楽しみだっただけなのだがこれではジャスティンのことをミーハーと言えないな。本人に面と向かって言ったことは無いけど。

まあスネイプ先生が私を見て少し引いていた理由は分かった。自分の授業でそんな反応が返ってくればそれは不気味に思うだろうな。

授業初日には注目を浴びたせいか原作のハリーと同じやり取りをさせられてしまった。

別に珍しい話ではないと言うかそもそもイギリス人と言うのは基本的に嫌味な奴らで本人に知識や学術の心得がある奴ほど(後は性格が悪いかどうかで決まるが)他人に意見があるか知識があるかどうかを気にする連中ではあるのだ。大学中に知り合った紅茶野郎に私が文学を専攻していると知られると「『黒澤明』監督の『蜘蛛の巣城』についてどう思う?」など聞かれ、答えられないと馬鹿にするようなことを言われたものだ。ああ、今の私はあいつと同じ紅茶淑女だったな。ちっ……。

話を戻すとまあ答えだけは知っていたので答えたが

「フン、少しは知識があるようだが態度が悪いな。ハッフルパフは一点減点」

と言われる羽目になってしまった。なおエロイーズから眼のキラキラが悪かったんじゃない?と指摘されて以来、私は眼のハイライトを消してこの授業に臨むようにしている。減点され過ぎて他の寮生からの評判が悪くなっても堪らないし。

その後さらに私に対してスネイプ先生が引いていたのは気のせいだと思いたい。

 

昼食(屋敷しもべ妖精が作っているせいかホグワーツの食事は別名嘔吐ミールと呼ばれる英国製オートミールでさえも美味なのだ)の後で魔法史の授業。

ゴーストのビンズ先生の授業で魔法死ぬ。教科書通りに読む退屈な授業の受け方のコツを教えておくと、最初に先生が読みだした後に直ぐ寝ること第一に重要なことだ。第二に最後の方に起き出して何処まで読み終わったかチェックする。第三に宿題の範囲を聞いたら教科書を読みレポートを仕上げることが肝要だそうだ。全て我がハッフルパフ寮の上級生からの正しい教えである。この授業に関しては睡眠時間と割り切れ、だと。昼食の後は教師のラリホーマにご注意くださいとは良く言ったものだ。

 

最後にあったのは変身術の授業。何よりもこの授業が一番疲れる。マッチを針に変えることくらい出来なくは無いのだがまだ100パーセント成功するほどの腕前ではないし精度にも問題が無くは無いのだ。一つ変えるのにも今の私では途方も無いほどのイメージ力が必要となる。

まあ授業では習った後の自習時間の間に変えれば良いだけだから時間を掛ければ絶対にマグゴナガル先生から点は貰えるから楽と言えば楽なのだけど。

 

夕食の少し前にはミセス・ノリスの姿を探し回るのが私の小さな日課になっていた。他の生徒は気に入らないと言うがこの眼の出ているキモ可愛さが堪らない。頭を撫で撫で、喉をゴロゴロしてやると実に気持よさそうな顔をしていた。動物全般が大好きな私だが一番好きなのはこの動物だ。そう、猫に罪は無いのだ……。

しかし後で確認してみたところミセス・ノリスはドーラが一年生の頃から今の姿のままで管理人のフィルチ氏の側に居たらしい。女性、というか雌にこんなことを言うのも何だがこの猫は一体幾つなのだろう?もう尻尾が二つに分かれていても私は驚かないぞ。

 

夕食の後の毎日の楽しみであるデザートを終え、寮ごとに違う日の夜に行う天文学の授業に備える。

星の一つ一つを見つけ、「ルーモス 光よ!」と唱えたままの魔法効果の継続した杖を立てながら羊皮紙にシニストラ先生の語ることを記述して行くのは魔法学校ならではの楽しみだと言えるだろう。ジャスティンを含むマグル生まれの人たちは座学の中ではこの授業を最も楽しみにしていたように思う。なお私は授業の中でシリウスやベラトリックスという名前を聞いて凄まじく微妙な気分になった。

 

その後はシャワーを浴びルームメイトとおしゃべりをして消灯時間になったら寝るというのが私たちのスタイルだった。

ちなみに私が言いだしたことだが金曜日の夜は基本的に紅茶とお菓子ありで眠くなるまでおしゃべりを楽しんでいたりする。

やっぱりイギリスの全寮制の女子寮なら夜にお茶会をしないと行けないと思うのだ。

そのルームメイト達だが、ハッフルパフ生は印象に残って無いとか言って済まなかった。今は反省している。

ハンナはおっとりしていてまさにハッフルパフを体現しているかのような子だった。誠実で努力家。スーザンは私の好きだった児童文学に出て来る某長女さんのようにしっかりものだった。おしゃべりをしている時は基本的にまとめ役で、眼鏡とか掛ければ似合うような委員長気質とでも言うべきか。なお二人は私の中で友人Aと友人Bとして分類されている。……別に軽く扱っているつもりは無い。ただ単純にファミリーネームのイニシャルがアボットとボーンズでそうだったと言うだけで。

なお在学中を通して一番の親友といえるのはエロイーズだった。この人はとにかく人が良い。積極的に他人に手を貸すし、困っている人を放っておくと言うことが無い。ただ唯一の欠点と言えるのはお菓子を大量に食べ過ぎることだった。カレーは飲み物と言った人が昔いたがその砂糖菓子は夕食の時の御代わり自由なカボチャジュースでは無いのだよ?

 

他にも小さいフリットウィック先生に癒されたり、スネイプ先生にシャンプー使えと念じたり、城から見える景色を楽しんだりしながら日々を平和に過ごして行った。

その時の私にはこれから私がハリーを中心とする原作における数々の騒動に巻き込まれることになるとは知る由も無かったのだ。

 

やがて忘れられないハロウィーンが始まる。

 




ある程度の展開は何か予想できそうな感じでござる。嫌でござる。絶対に読者の期待をいい意味で裏切りたいでござる。

※ちょっとだけ修正。

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