楽しめるか否か。それが問題だ。   作:ジェバンニ

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PCがぶち壊れて新しいのを買ったり、寒くて書く気が湧かなかったりしたけど私は元気です。

いやあ投稿するたびに新鮮な気持ちになれるって良いことですね!
……ただ単に投稿の度に間が空きすぎるだけという突込みなら受け付けます。待っていてください、今耳栓を用意していますから。


悪巧み

年が明け、しばらくの日数が経過してハッフルパフ対グリフィンドール戦も近くなったある日のこと。

私は忍びの地図を返すために赤毛の双子に接触することにした。

……今後のことを考えると持っておいた方が損はない気がするのだが無断で借りたものではあるし、何より私の小さじ一杯分の良心が咎めなくはなかったので。

事前に地図の秘密を見られたら危険な人物が近くにいないことを確かめた後、彼らに後ろから近づいて声を掛けた。

「こんにちは。お二人さん」

後ろを振り向いた彼らは

「やあ、ゴーストバスターのティアじゃないか!」

「またピープズを苛めるのかい?」

実に失礼なことをのたまってくれた。

あれか?雪像作りの時に私だけちゃっかりフィルチさんのお説教から逃れたことを根に持っているのか?

「人がポルターガイストに日常的に虐待をしているように言わないでくれますか?あれはちょっと実験動物扱いしただけではありませんか」

全くもって心外であるという視線で彼らを睨み付けると何だか微妙な表情になったので無視した。

「それよりもお二方、これが何かご存じありませんか?」

そうやってブツを彼らの前に差し出してみると顕著な反応があった。

「これは……!」

「『忍びの地図』じゃないか!これを何処で?」

案の定驚いてくれた。

「いえ、偶然拾いまして。先ほどから知っている限りの呪文を試しているのですがこれが何なのか一向に分からないのです。先輩方ならご存知かなと思いまして」

嘘八百にも程があるが。

「ああ、それはホグワーツのことがよく分かる地図で」

「抜け道とか近道、それに色々と面白いことが分かるブツなのさ。ティアも結構楽しんで使えたんじゃないか?」

ええ、その通りです。凄まじく便利ですよね!……とか言わない。

「楽しむ……? 何の変哲もない羊皮紙に、持っている人をからかう為の呪文が掛かっているようにしか私には思えないのですが」

あからさまな落胆の表情。

「えー?ティアは本当に知らないのかい?」

「さっき『悪戯完了!』って言っていただろう?」

「そうそう。ちょっと此処からは遠い位置でだけど俺確かに聞いたぜ!」

嘘、聞こえないような位置から唱えたはずなのに!?……という反応ですら私は彼らの前で見せなかった。

「ええと……何のお話なのですか?」

油断がならない双子だよ、本当に。さりげなく二回も引っ掛けに来るとか。

おまけに二人で交互に話すことでこっちのペースを乱しに来るとかなんでこんな駆け引き上手なのだろうか。やっぱり天性のもの?

「本当だったのか……?」

「ああ、簡単に説明するとだな……」

 

少年×2、説明中。

 

「……というわけで便利な代物なんだ」

「はぁ……なるほど」

既に知っては居たが改めて聞くと素晴らしい代物だと思う。

「それで肝心なことなのですが……これの持ち主をお二方はご存知でしょうか?」

「は!?」

「自分で独り占めしようとか思わなかったのか?」

双子は少し驚いていたようだった。まあ、今の説明を聞いたら確かに誰にも言わないで持っていた方が得だって誰だってわかるだろう。だが

「必要ありません。私はこれを『偶然』手に入れただけでそこまで必要なものではないのです」

最大の目的だった必要の部屋の場所も知れたことだし、校内がどんな様子だったかは既に頭に入っている。そう、それでも前よりはましとはいえ迷うのが問題なだけで。もう地図があっても無くてもそこまで変わらないのだ。

「これを持っていたのは俺達なんだけどさ」

「俺達落とすはずが無いんだよね」

「はい? 何故です?」

「俺達これの扱いには充分注意していたから」

「これをただ落とすなんて考えにくいんだよね」

「まあ便利な機能を考えれば当然でしょうね」

それなのに何で失くしてしまったのだろう?ティア、知らない。

「だから誰かが俺達から盗っていったような気がするんだけど」

「その誰かさんが誰かなんてことに心当たりはないか?」

疑わしげに、しかし少し好奇心が籠った視線でこちらを見てくる二人だったが

「いえ、全く」

私が知っているのはあくまで「無断で借りていった誰かさん」なのだ。そもそも盗っていったなら返しに来るほうが変では無いだろうか?

「……そうか、じゃあ本当にティアじゃないのか」

「ええ」

そうして彼らに返却した後でさりげなく用事を思いついて帰ろうとしたところで

「ところでさ」

まだ何か用なのかと思いきや二人は顔を見合わせて

「俺達に気付かれずにこれを手に入れるなんてすごいと思わないかフレッド」

「ああ、マグルの小技に魔法を使わないで欲しいものを手に入れるのがあったはずだけど俺達は未だ身に着けてないよなジョージ」

と何やら悪い顔になっていた。こいつらもしかして……。

「「俺達に教えてくれないか!ティア」」

えー?

「ええと何故そんな物を私が知っていると……?というか先ほどまで私を疑っていたようですがそれはもう良いのですか?」

「まだ疑いは晴れていないし、どうでも良いで済ませて良い内容じゃないが……それよりも重要なのは俺達の役に立つ技術を身に着けるチャンスがあるってことさ!」

「それを身に着けている可能性があるのは俺達も知らないような『ゴーストの撃退法』を知っているティアしかいないと思っていた」

その貪欲な姿勢や良し。咎めるつもりが微塵も無く、あるのは純粋な好奇心と向学心。正直な話、前世でその姿勢さえあればごく若いうちに一角の人物になれたことだろうと思うと少々嫉妬するほどだ。だけど

「確かにある程度そういうことに対する知識があることは認めますがこういったことというのは広めると大変なことになってしまいますからお断りしたく」

そう。拡散させるとそれなりに駄目なのは危険な知識、危険な玩具と相場は決まっているものなのだ。

「今なら先輩二人による学生生活を楽しむための指導付きだぜ?」

「『忍びの地図』も渡す、というのでどうだい?」

は?これから行うことを考えれば持ち主から正当な手続きでそれを譲っていただけるならそれはそれで願ったり叶ったりだが

「あなたたちにとって大切なものなのでは?それにそもそも釣り合わないのでは?」

そう問うと彼等は「うん、やっぱり双子なのだな、君たちは」と思わせてくれる凄まじくにやっとした表情の全く同じ笑みを浮かべていた。

「いやあ、ティアのことだから当然他にも色々知っているだろう?」

……私と彼らの中々に黒い付き合いが始まった瞬間である。

 

そんな程ほどに愉快な日常を過ごしつつ私はそろそろ来るであろう試験に備えていた。

無論どう彼ら三人組の夜の大冒険(健全な意味で)にさりげなく紛れ込むかは考えているのだがこればばかりは全然良いアイデアが思い浮かばない。

下手の考え休むに似たりとは良く言ったものである。

これで「私にいい考えがある!」とキリッとした表情で言うようなら物凄く駄目な気もするが。

というようなことを考えながら廊下を歩いていたある日、ハーマイオニーに呼び止められた。何やら相談したいとのことだがはて……?

「ちょっとこっちに来て!」

という台詞の元で引っ張って行かれたのはハグリッド小屋だった。

あー……ドラゴンだったっけ?

 

扉を開けたらそこは山小屋でした。

うん、自分で言っていて意味が分からない。見た感じが大学生時代に友達と行ったところっぽかったから湧いた感想だ。もっとも此処まで物は無かったような気もするが。

亜熱帯っぽくない室温ということはドラゴンの卵孵化後……?と思ったらやっぱりいた。

見た感想をひとことで言うと

「でかいですね」

そう、ドラゴンの赤ん坊?は想像よりも大きかった。

全長1メートルくらいはありそう、であまり好きになれないグロテスクな容姿。

醜いというか不気味というか。前世で見たクレイアニメを見ている気分にさせられる。

そういえば前世でクレイを使って映したであろう、怪物に咬まれた婆がゾンビ化していく映画があったような気がする。今はもう有名になった監督が撮った映画だが当時何を考えて作ったのかと心の底から問うておきたかったものだ。ゾンビ映画ってあの頃苦手だったし。

「他に感想はないの?」

「いえ……魔法界では赤ん坊でも『ドラゴンは飼っちゃ駄目!』ということを知っているはずなのですが赤ん坊以下の人が居るとは思ってもいませんでした」

私は頭を押さえながら(勿論演技でだが)言ってみた。

「お前さんそれは酷くないか……というかお前さん誰だ?」

髭の男が訝しげにこっちを見てきた。はい、いいえの選択肢があったら確実にいいえを押す場面とか言っちゃいけない。

なおこの部屋の中にハリーとロンもいたのだが良いぞ、もっと言ってやれという顔をしていたことをここに記しておこう。……当然ハグリッドからは見えない位置で。

「申し遅れました。ユースティティア・レストレンジと申します」

胸に手を当てて礼儀正しく答えたのだが

「お前さんが……なるほどダンブルドア先生がおっしゃっておったあの……」

とか不穏当すぎる台詞が聞こえてきたのが凄まじく気になった。

私目を付けられるような問題あることは何もしてないですだよ。

そう、悪いことをしたのは私の今生の両親(+叔父様)であって私ではないのだ。

生まれが生まれなだけに入学直後から目を付けられていたということなのだろうか?それともトロールの時の死の呪文がいけなかったのか?色々と考えなくちゃならないことがあるようだがとりあえず話を進めて貰わないと。

「ところでドラゴンをハグリッドさんが匿っていたようだというのは一目見てわかりましたが……ハーマイオニー、なぜ私をここに連れてきたのです?」

そう、気になっているのはそこだ。どんなつもりで連れてきたのか、そして今がどんな状況なのかが知りたい。卵からドラゴンが孵っているということはチャーリーだっけ?に回収を依頼するはずだった気がするのだが。

さらにどうでも良いけど……私巻き込まれすぎていない?

列車に乗ればハリーと同じコンパートメントになるし、トロールには巻き込まれるし。

まあそのおかげで何とか私の「願い」に近づけそうなのは良いのだけど、4年生になってハリー達が15歳になると物語それ自体もR-15になるのか殺人が解禁されるから正直勘弁してほしいなと思う。さて、話が進まないので続き続き!

「ああ、うん。見ての通りなんだけど……このドラゴンどうにかできないかな、って」

「僕たちもどうにかしたほうが良いとは言ってはいるんだけど」

「全然聞いてくれないんだ。おまけにマルフォイにも見られちゃって」

何だか困った顔で二人が後から続けていた。ハリーとロンも大変そうだな。

しかし私に求められているのは参謀役なのか。まあ、いきなり正解を述べてもあれだし少し遊んでおこう。

「とりあえず思いついたのでそれから試していきます。もしも悪いことをしたならどうします?」

「えと……謝る?」

「さらに悪いことする?」

ハーマイオニーとロンが意見を言ってくれたが、惜しい。後もう一つある。

「悪いことをしたことを隠す?」

「正解」

パチンと指を鳴らして私は答えた。

「でもどうやって隠すのさ。ドラゴンはもっと大きくなるよ?」

まあ、当たり前の反論だろうね。だが

「別に隠すのは何処でも良いのですよね?ちょうどいい隠し場所があるじゃないですか」

「どこよ、それ」

そう言われた私はゆっくりと自分の「お腹」を指し示した。

「まさかドラゴンを食べるの!?」

「ええ、そのまさかです。実は私図書館で面白い本を発見しまして」

取り出した本には『ドラゴンの美味しい料理法 ~煮込みシチューからローストドラゴンまで~ 』と書いてあった。

呆気に取られている三人を他所にハグリッドはそれを鼻で笑ってくれた。

「ふん、確かにドラゴンは血抜きと毒抜きさえ完璧にすればステーキ肉にだってなれるだろうさ。だがダンブルドア先生に言われでもしない限りおれはそんなことはしないぞ」

「ここで残念なお話です」

そういって表紙に書かれた名前を指すと

「ダンブルドア先生!?」

そう、著者はアルバス・ダンブルドア校長先生その人だったのだ。何を考えてこんなものを書いたのか小一時間ほど問い詰めたい。

というかうちの図書館の蔵書は明らかにおかしい。

前に錬金術について調べていたら『不老不死になれるお酒の作り方について』とか『楽しい人体錬成』とか物凄く見覚えのある名前で著されていたし。一体どうなっているのだろうか?

「ダンブルドア先生からのお告げのような気がしませんか?きっとドラゴンを育てて食べると美味しいですよ」

さあさあ、ハグリッドのちょっと良いとこ見てみたい~。そんなことを考えながらドラゴンを見ると何故か怯えていた。私はドラまたではないぞ。

「あいたっ」

他の3人と同じように呆然とした表情だったが一番早く立ち直ったのかハーマイオニーがチョップをくれた。

「たとえダンブルドア先生がそう書いていたとしてもそんな手段を取るわけにはいかないでしょう」

まあ、冗談だけどね。さすがにハグリッドが愛情を込めて育てようとしていたものを食べるのは私も気が引ける。……ゲテモノ食いは私も遠慮したいという本音が9割だが。

「この人数だって一度に全部は食べ切れないからドラゴンを飼っていたことがばれちゃうじゃない!」

そっちか。

「はあ。何処かに捨てられない、食べて証拠隠滅ができないとなると飼えないペットの処分方法としては引き取ってもらうしかないわけですが、私にドラゴンを引き取ってくれる知り合いなんていませんしねぇ」

そう聞いてロンの顔がぱっと輝いた。

「チャーリー。チャーリーに引き取ってもらえば良いんだ!」

「?ああ、汽車の中で話してくれたドラゴンの研究をされているお兄様でしたっけ」

何だっけ。フラーと結婚する人だったっけ?

「誰のこと?」

「ああ、ハーマイオニーは知らなかったっけ。ロンのお兄さんで……」

誰の事だか分かってないハーマイオニーに対してハリーとロンが説明を始めてくれた。全て話し終えた後で

「これで後はマルフォイだけね」

「そうだね」

「はあ……マルフォイ」

「あいつに毒を盛ってしばらく寝てもらうとかどうだろう」

それは酷すぎないだろうか、ロンよ。そしてそれは本気で言っているのかどうか私は理解に苦しむ。マダム・ポンフリーならその程度一晩で治してしまうだろうに。

「後は事故に見せかけて骨を折っちゃうとか」

ハリー、それも過激すぎると思うのだが。……エゲレス人って発想がエゲつない。

「ようは暫くこっちのことに目を向けられないようになっていれば良いのですね?」

「そうだけどティアは何かいい考えがあるの?」

まあ、ここら辺で恩の一つでも売っておいて損はないか。

「ちょっとした良い手が」

後で聞いたら、その時の私はけっこう邪悪そうな笑顔を浮かべていたらしい。

……全くもって失敬な。

 




次回のお話は今回よりは早く投稿するよ!

誤字修正ー。ご指摘感謝であります。

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