再び転生した元神はダンまち世界へ   作:さすらいの旅人

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最悪な状況

 三日後。ついに『掃討作戦』が始まろうとする。

 

 オラリオはこれまで闇派閥(イヴィルス)の暴挙に散々苦しめられていたが、この日を以って漸く反撃に移ろうと、【ロキ・ファミリア】も含めた多くの派閥が拠点を制圧しようと一斉に動き出す。

 

 敵の拠点は三か所。一つ目は【ロキ・ファミリア】、二つ目は【フレイヤ・ファミリア】、三つ目は【ガネーシャ・ファミリア】と【アストレア・ファミリア】が時間になったら一斉に動いて制圧する手筈になっている。

 

 そんな中、フリーゼ達は言うまでもなく『黄昏の館』におり、フィン達が闇派閥(イヴィルス)を打倒して帰ってきたらプチ宴会をする約束をした。フリーゼとローゼが食事を作った後にウェイトレスの格好となり、リヴァルがウェイターとして振舞うと。因みにロキが一番楽しみにしていることを補足しておく。

 

 本拠地(ホーム)に待機している眷族達は『団長達なら間違いなく勝利する』と確信してるのか、一部の中には既に気が緩んでいる。

 

 その彼等とは逆に、フリーゼやローゼは全く安心などしていなかった。それどころか寧ろ嫌な予感がすると。リヴァルも同様で、制圧に向かった(リヴェリア)の心配をしている程だ。

 

 本当なら今すぐに駆け付けたい三人だが、冒険者でない為に一先ずは見守ろうと己を戒めている。

 

 『黄昏の館』内の空気が段々と先勝ムードになっているところ、それは一気に霧散する事になった。外から急に大きな爆発音がした事で誰もが慌てふためているのだから。

 

 

 

「これは……!」

 

 ロキやその眷族達が一体何事かと状況確認している最中、調理中だったフリーゼは即座に厨房から飛び出し、飛翔術を使ってオラリオ全体を俯瞰していた。

 

 空中で浮遊している彼女が見下ろしている視線の先には、惨状と言う単語で言い表せない光景だった。

 

 都市の至る所で爆発が起きている中、闇派閥(イヴィルス)の信者達が冒険者だけでなく、逃げ惑う民衆も手に掛けている。殺す事で快楽を得ている者達の姿を目にした事で、フリーゼは思わず怒りの感情で溢れてしまい、神の能力(ちから)を解放して闇派閥(イヴィルス)の連中を皆殺しにしようかと思った矢先――

 

「落ち着きなさい、フリーゼちゃん!」

 

「フリーゼ様、どうか冷静に!」

 

 飛翔術を使って駆け付けたローゼとリヴァルが即座に止めた。

 

 怒りに呑まれていたフリーゼは神の能力(ちから)を解放する寸前のところ、必死な形相で自分を窘める二人を見た事で途端に落ち着いていく。

 

「………申し訳ない。私とした事が感情的になってしまいました」

 

 自分を止めてくれた二人に感謝すると同時に謝罪するフリーゼ。後先考えずに行動するなど元神としてはあってはならない事だと自己嫌悪してしまいそうになる。

 

「気にしないで。フリーゼちゃんが怒るのは無理もないわ」

 

「ローゼの言う通りです」

 

 冷静に言ってるローゼとリヴァルだが、先程まで怒りに満ちていた。

 

 しかしフリーゼから発せられる途轍もないオーラを感じ取った瞬間、一気に冷静になって彼女の怒りを宥める事を最優先したのだ。

 

「一先ず降りましょう。こんなところ誰かに見られたら面倒なことになるわ」

 

 ローゼの台詞に頷いたフリーゼ達が降下している最中、『黄昏の館』にいる者達は慌ただしくも、戦場にいるフィン達の救援に駆け付けようと準備をしている。

 

 その後、更に予想外な展開が起きようとする。

 

 嘗て二大最強派閥(ゼウスとヘラ)に所属していた二人――【暴喰】のザルドと【静寂】のアルフィアが現れた事で最悪な状況へ進む。

 

 更には神々の一斉送還による光の柱が立て続けに起こり、恩恵を失って無力化した冒険者達が闇派閥(イヴィルス)によって殺戮の惨劇が一層と広がっていく。

 

 そして絶望を送ろうと、闇派閥(イヴィルス)の首魁と思われる邪神エレボスが高々と『絶対悪』を宣言。

 

 これによってオラリオ側は大敗を喫する事になり、闇派閥(イヴィルス)の士気が更に高まり、オラリオに住まう者達を更に絶望させようと躍起になる。

 

 

 

 

 

 

「ローゼさん、あのお二人は?」

 

「かなり重傷だったけど、取り敢えずワタシの方で治療はしておいたわ」

 

 大敗した翌日。【ロキ・ファミリア】の三首領の二人であるリヴェリアとガレスが重傷の報せが入った際、フリーゼはローゼに治療するよう頼んだ。

 

 その際には要請を受けた二大医療派閥(ミアハとディアンケヒト)の眷族達がいて一悶着起きようとするも、ローゼが前世(むかし)の頃に培った医療技術を披露した事で一気に静まった。その中でディアンケヒトの眷族と思われる銀髪の少女が大変興味深そうに見ていて、治療が終わった後には色々質問していたとか。

 

「本当は暫く療養すべきなんだけど――」 

 

「姉上とガレス殿は、居ても立っても居られないと言って再び前線へ向かいました」

 

 ローゼの言葉を繋ぐように、リヴァルは呆れた感じで二人が既に『黄昏の館』から飛び出している事を付け加えた。

 

「まぁ、今の状況を考えればそうせざるを得ないでしょうね」

 

 オラリオが大敗した事で闇派閥(イヴィルス)が益々図に乗って襲撃する事を考えれば、あの二人が無理をしてでも前線へ向かうのは仕方ないと言えよう。

 

「ところでフリーゼちゃん、あの子(・・・)はどうしたの?」

 

「戦いに参加させるといって、あの団長さんが連れて行きました」

 

「正気なのですか!? いくら緊急事態とは言え、あの幼子までも巻き込むなど……!」

 

 ローゼからの問いにフリーゼが答えると、それに大きく反応したのはリヴァルだった。

 

 幼子――アイズ・ヴァレンシュタインが冒険者とは言え、九歳の女の子を戦場に参加させるなど正気の沙汰ではない。

 

「私も最初は反対しましたが、『既に『手札』を温存できる段階は過ぎた上に、今は少しでも戦力が欲しい』そうです」

 

「「……………」」

 

 フィンの言い分を知ったローゼとリヴァルは何も言えなくなった。

 

 確かに今は闇派閥(イヴィルス)の襲撃を防衛する為の戦力が欲しいのが現状だ。それが上級冒険者となれば猶更に。

 

 アイズは既に『Lv.3』に至ってる第二級冒険者だから、端から見れば大事な戦力と見られてもおかしくない。

 

 あんな幼子を血生臭い戦場に立たせるなど、フリーゼとしては参加して欲しくなかった。しかし、冒険者ではない彼女がどんなに人道的な理由で反対したところで、あの冷静な同胞(パルゥム)は絶対に意見を変えたりしないだろう。

 

「だから私も考えを改めました。このまま冒険者達(かれら)に任せていても、私達は一生オラリオから出られなくなってしまうと」

 

「ッ! フリーゼちゃん、まさか……」

 

「ついに動かれるのですか?」

 

 フリーゼが決意したかのような言い方をしたことで、彼女の意図に気付いたローゼとリヴァルは途端に表情を引き締めた。

 

「ええ。もうこれ以上付き合いきれませんから、いっそのこと打って出ましょう。と言うより……調子に乗ってる闇派閥(クソども)をぶっ飛ばしたくてウズウズしてるんですよねぇ……!」

 

(あ、これ昨日からずっと怒ってるわ)

 

(あのフリーゼ様をここまで怒らせるとは……)

 

 言ってる最中に思わず怒気を漏らすフリーゼを見たローゼとリヴァルは、闇派閥(イヴィルス)に相当頭に来ていると悟ってしまう。

 

 だけど、二人は一切止めようとしない。それどころか参加する気満々だったから。

 

 そして三人が突如姿を消した事で、『黄昏の館』に待機している【ロキ・ファミリア】の眷族達(特にエルフ)が大騒ぎになってしまうのは無理もなかった。




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