再び転生した元神はダンまち世界へ   作:さすらいの旅人

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動き出したフリーゼ達③

「一体何を言っている。私は貴様のような小娘など知らん」

 

「知らない、ですか」

 

 眉を顰めながらも知らないと言い切ったアルフィアに、フリーゼは全く気にしていない。まるで既に予想していた返答だったかのように。

 

 端から見れば単なる人違いと言う遣り取りなのだが、実際は違う。嘗て二人はある村で互いに姿を目にしているのだ。

 

 それは半年前、ローゼやリヴァルと一緒に帰郷した時だった。

 

 家族に顔を合わせた後、可愛い弟分の男の子に会って、遊び相手になりながらも旅の話をしていた。遊び疲れた男の子は眠ってしまった為、フリーゼが思わず苦笑するも、おんぶして家に連れて行こうとした瞬間に途轍もない殺気をぶつけられた。

 

 突然の事にフリーゼは瞬時に警戒し、殺気を放った者が誰かを探っていた所、少し離れた所に見知らぬ長い灰髪の女性を遠目で発見する。向こうも気付かれたと察知したのか、すぐに気配を消してあっと言う間に退散してしまい、弟分を背負っていた所為もあって追跡出来なかった。

 

 眠っている弟分を家に運んでベッドで寝かせた後、彼の祖父(として振舞っている老神)に殺気を放った女性の特徴を教えたところ――

 

『アルフィアの奴め、村に来たなら挨拶ぐらいすればよかろうに……』

 

 呆れた感じで嘆息しながら灰髪の女性をアルフィアと名を口にしていた。

 

 フリーゼは詳細を訊ねるも、彼は言葉を濁すだけ。その後に『お主がどれだけ成長したかを確かめて良いかの?』とセクハラ行為を働こうとしたので、これ以上無駄だと悟った彼女は股間を蹴り上げた後に退散している。その際、片方の玉が潰れてしまったみたいなので治療済と補足しておく。

 

 今までアルフィアと言う女性は一体何者なのかと今まで不明だったところ、それは漸く判明した。【ロキ・ファミリア】から得た情報で、彼女は嘗ての最強派閥【ヘラ・ファミリア】に所属し、【静寂】の二つ名を持つ『Lv.7』で派閥内でも異端な実力者だと。

 

 そんな英傑が闇派閥(イヴィルス)に加担している理由は不明だが、フリーゼとしては既に如何でも良くなっている。どんな理由があれ、平然と人を殺そうとする組織に入った以上は容赦無く叩きのめすと決めているから。

 

「知らないのであれば、私がこの場で貴女を倒すとしましょう」

 

「何?」

 

「「ッ!」」

 

 大胆な発言をするフリーゼに、アルフィアだけでなく、聞いていたアイズとリヴェリアも驚愕した。

 

「何を言っているフリーゼ! 冒険者でないお前が奴に勝てる訳無いだろう!」

 

「お姉ちゃん、私も一緒に戦う!」

 

 止めようとするリヴェリアと、加勢しようとするアイズ。

 

 こうなる事を予想していたのか、フリーゼは焦ることなく指をパチンッと鳴らした瞬間、結界らしき光の膜が二人を覆う。

 

「なっ、これは……!」

 

「何これ?」

 

「お二人は其処で見てて下さい」

 

 彼女達を覆っている光の膜の正体は、フリーゼがルーン魔術で発動させた『防壁のルーン』。『癒しのルーン』で傷を癒してる最中、いつでも発動出来るよう事前に施していた。

 

 包まれてる結界を突破しようとする二人だが、リヴェリアは勿論のこと、アイズが剣で攻撃してもビクともしない。

 

(あんな動作だけで、私の結界魔法(ヴィア・シルヘイム)と似た魔法を一瞬で展開させただと!?)

 

 リヴェリアは即座にルーン魔術によるものだと即座に見抜く。

 

 本来であれば魔法を発動するには詠唱を必要とするのだが、フリーゼは魔導士の常識を大きく覆している。指で文字を描いた動作をしただけで魔法を発動させるなど、一体誰が想像出来るだろうか。

 

 しかし魔導士からすれば理想の姿であり、喉から手が出るほど欲しい技術でもある。大して時間を掛ける事無く魔法を使えるのであれば、前衛で戦う冒険者達の手助けが一気に速まる。もしこの場に指揮官(フィン)がいたら、フリーゼを是非とも勧誘(スカウト)するだろう。

 

 リヴェリアとしても、ルーン魔術を間近で見た所為か、こんな状況でありながらも学びたい気持ちで一杯になっている。同時に今まで手紙でやり取りをしていたにも拘わらず、ずっと秘匿していた(リヴァル)に後で説教(はなし)をしなければならないと。

 

 『防壁のルーン』に包まれて身動きが取れないのを確認したフリーゼは、再びアルフィアの方へと視線を向けて対峙する。

 

「小娘、戯言は大概にしろ。冒険者でないお前が私を倒せると本気で思っているのか?」

 

「でなければ、こうして貴女と対峙していません」

 

「……一度だけしか言わぬ。私の気が変わらない内に、この場から疾く失せよ」

 

 ふざけた発言をすれば相手が誰であろうと容赦無く攻撃するアルフィアが、珍しくも温情を見せるように通告だけに留めた。

 

 彼女としてはフリーゼが生意気な小娘であっても殺したくない。村にいるあの子(・・・)を悲しませてしまう、と言う理由をザルドが知れば驚愕する事になるかもしれないから、胸の内に収めている。

 

「その余裕な表情をこれから私に思いっきり殴られた後、どうなるか楽しみですね」

 

 フリーゼはそう言いながら、突如身に纏っているロングコートを脱ぐと、ローゼやリヴァルと似た戦闘服をアルフィア達に見せる。

 

 直後、片手で持っているロングコートを軽く放り投げ、それが地面に付いた瞬間――ドスンッと激突音を鳴らしていた。

 

「お前、まさか……」

 

 アルフィアが信じられないように凝視するも、当の本人は気にせずに構え――

 

「ぐっ!」

 

「「ッ!?」」

 

 一瞬でアルフィアに接近して拳で頬を殴った。

 

 突然の衝撃と痛みに困惑するアルフィアが軽く吹っ飛ばされる中、結界に包まれているリヴェリアとアイズは大きく目を見開いている。

 

「先ずは一発」

 

 先制攻撃(あいさつ)に成功した事で、してやったりと言わんばかりの表情で地面に着地するフリーゼ。

 

 彼女もローゼやリヴァルと同様、前世(むかし)の実力を取り戻そうと修行している。その一環として闘気(オーラ)制御(コントロール)をしようと、普段から身に纏うコートに重りを施して動きを制限させているのだ。他にも手足に着けるバンドもあるのだが、今回は既に外していると補足しておく。

 

 重りを外した事でローゼは身体が軽くなっただけでなく、制限されていた闘気(オーラ)も爆発的に開放された。前世(むかし)に比べればまだまだ劣るとは言え、今の世界で換算すれば『Lv.7』以上の冒険者を余裕で戦える実力者と言ったところだろう。尤も、例え彼女がそれを知ったところで満足せず、ローゼやリヴァルと同様更に高みを目指しているから修行を怠ったりしない。

 

「如何ですか? 冒険者でない小人族(パルゥム)の小娘に殴られた気分は」

 

「………私がこんな無様な姿を晒すなど、一体いつ以来だろうか」

 

 仰向けに倒れていたアルフィアがゆっくり起き上がると、頬は少し腫れて口からも少し血が流れていた。

 

「小娘、一撃当てた事を褒めてやろう」

 

 立ち上がったアルフィアは笑みを浮かべながらフリーゼに称賛の言葉を浴びせ――

 

「その度胸と覚悟に免じて、お前に英雄の作法を教えてやろう……!」

 

 同時に全身から途轍もない怒りと殺気をぶつけていた。

 

「それは有難い。是非ともご教授願います」

 

 下級冒険者であれば完全に呑まれるどころか気絶してもおかしくないのだが、それを直撃している筈のフリーゼは涼しい顔で流している。

 

「よく言った、小娘。簡単に音を上げるなよ」

 

「其方こそ。教えてる途中で倒れないで下さいね、おばさん(・・・・)

 

「……どうやら目上に対する作法も教える必要がありそうだ」

 

 呼び方が気に障ったのか、更に殺気を高めるアルフィア。

 

 直後、彼女は意趣返しをするかのようにフリーゼに接近して、魔力の籠った拳骨を振り下ろし――

 

「おっと! 瞬時に魔力付きの拳骨(パンチ)とは凄いですね……!」

 

「っ!?」

 

 当たるかと思いきや、フリーゼは即座に反応するように片手で受け止めた事で、普段から閉じている筈のオッドアイが大きく見開く。

 

 相当な威力である事を証明するかのように、彼女が立っている地面には大きな衝撃が走って罅が入っている。

 

「この……!」

 

 攻撃を防がれた事にアルフィアは一瞬動揺していたが、直ぐにもう片方の拳に魔力を込めて振り下ろした。

 

 が、先程と同じくフリーゼがまたしても受け止めた事で、両者共に膠着状態となる。

 

「どうしました? まさかこの程度で終わりじゃないですよね?」

 

「ッ! 調子に乗るな、小娘が……!」

 

 アルフィアはすぐに振り払って再度拳骨(パンチ)を繰り出したいのだが、フリーゼに掴まれている所為で次の行動に移す事が出来なかった。

 

 その瞬間、両者は全身から魔力らしきモノを放出し、周囲を吹く飛ばすほどの突風が吹き荒れていた。

 

「……わ、私は一体、何を見せられているんだ……?」

 

「フリーゼお姉ちゃん、凄い……」

 

 一方、『防壁のルーン』に包まれている二人は思った事を口にしていた。

 

 冒険者でない筈のフリーゼが『Lv.7』のアルフィアに一撃当てただけでなく、力比べをする光景を見た事で自分の眼が可笑しくなっているのかと混乱しているリヴェリア。

 

 いつも美味しいご飯(特にジャガ丸くん)を作ってくれる人が、実はとんでもなく強い人だったと知って驚くアイズ。

 

 オラリオに住まう者からすれば当然の反応であり、同時に非常識な展開でもある事は言うまでもなかった。




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