再び転生した元神はダンまち世界へ   作:さすらいの旅人

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とびっきりの(前世(むかし)の)最強対(嘗ての)最強

「せいっ!」

 

「小癪な……!」

 

 フリーゼがアルフィアが放った両の拳を掴んだ事で膠着状態が続くも、それはあっと言う間に終わり、二人が咄嗟に力を抜いて後退して距離を取った。

 

 相手の動きを伺う為に観察するかと思いきや、二人は相手目掛けて跳躍し、拳を繰り出した。どちらも相当な力があるかを証明するように、互いの拳が激突した瞬間、途轍もない衝撃音を鳴り響かせる。

 

 ぶつかり合ってるのは拳だけでなく、肘や膝、足も含まれており、ソレ等が当たる度に突風が吹き荒れる。

 

 しかし、それだけではなかった。

 

「ぜ、全然見えない……」

 

「これは最早冒険者の戦いではないぞ……!」

 

 『Lv.3(アイズ)』だけでなく、『Lv.5(リヴェリア)』の目でも負えない程の高速移動をしながら戦っているのだ。

 

 アルフィアは白兵戦の腕前も優秀であり、動くに適してない筈のドレスを着ていても凄まじい身のこなしを見せ、徒手空拳だけであらゆる相手を蹂躙する。近接格闘戦が得意な魔導士など普通はあり得ないのだが、『才能』に愛されている彼女だからこそ可能な芸当なのだ。

 

 にも拘わらず、冒険者でないどころか【恩恵(ファルナ)】すら持っていない筈のフリーゼは、『Lv.7(アルフィア)』と互角以上の戦いを繰り広げている。その時点で既におかしいのだが、今の状況で誰も突っ込める者はいない。

 

「貴女は魔導士の筈なのに格闘戦も出来るなんて、詐欺にも程がありますよ! 【ヘラ・ファミリア】と言うのは化物揃いの派閥だったのですか!?」

 

「否定せぬが、小娘にだけは言われたくない!」

 

 両手両足を使って高速戦闘を繰り広げながら思った事を口にするフリーゼとアルフィア。

 

(強い。だがこの程度(・・・・)の相手に苦戦するようでは、前世(むかし)に比べたら未だ程遠い、な)

 

 今世(いま)でも前世(むかし)の知識を大きく活用して修行に励み、ある程度の実力を取り戻したフリーゼだが、前世(むかし)と比べて更に弱くなっていると痛感した。

 

 男だった頃の兵藤隆誠と比べて、女に再転生した現在ではパワーが相当落ちているどころか、小人族(パルゥム)になった事で身体も小さくなっている。成人しても120(セルチ)以上が限界で、只人(ヒューマン)の幼子と全く変わらない。

 

 小人族(パルゥム)は他の種族と比べて手先が器用で視力に長けているが、身体能力に関しては圧倒的に低い。格闘戦を好んでいるフリーゼからすれば致命的であり、長身のローゼやリヴァルなど相手にならないと思うだろう。

 

 しかし、彼女は最弱な種族に再転生しても嘆いたりしなかった。体格に問題があっても、それを補う為の手段を身に付ければ問題無いと。

 

 その結果、『Lv.7』のアルフィアと戦える実力を身に着けていた。それでも充分に凄いのだが、前世(むかし)の記憶を引き継いでいる彼女にとっては、前世(むかし)の実力を基準にしているから、今の強さに満足する訳がない。

 

半年前(あのとき)は小娘が私の殺気に気付くなどあり得ないと思っていたが、これ程の実力(ちから)、一体どうやって身に付けたというのだ?)

 

 戦いながら冷静に観察するアルフィアだが、フリーゼの実力に驚くばかりだった。益してや、自分と格闘戦が出来る小人族(パルゥム)など生まれて初めての経験であり、嘗て所属していた【ヘラ・ファミリア】の眷族にもいない。

 

 同時に解せなかった。こんなに強いのであれば今のオラリオ最強と宣っているオッタルを蹴落とし、彼女が君臨している筈なのだ。

 

(後でエレボスに問い詰めるとしよう)

 

 オラリオの現状を教えてくれた協力者――エレボスがフリーゼの事を自分やザルドに黙っていたのかどうか訊かなければならない。これでもし伏せていたなど答えた瞬間、神相手でも容赦無く制裁を下そうとしている。

 

 すると、アルフィアはフリーゼの攻撃を躱しながら後退し――

 

「【福音(ゴスペル)】」

 

「ッ!」

 

 超短文詠唱で魔法を繰り出した。

 

 鳴り響く『鐘』の音と同時に不可視の衝撃波がフリーゼに襲い掛かる瞬間、彼女の全身から闘気(オーラ)を放出した後――何事も無く無傷でやり過ごした。

 

「何だと?」

 

「危ない危ない。まともに受ければ(ただ)では済まなかったでしょうね」

 

 超短文詠唱の魔法でありながら圧倒的破壊力を持つ筈の攻撃魔法を受けた筈なのに、傷一つすら受けていないフリーゼを見た事で、流石のアルフィアも驚きを隠せなかった。それは当然、『防壁のルーン』で守られているアイズとリヴェリアも同様に。

 

 フリーゼが闘気(オーラ)を全身に纏うように放出すれば、攻撃や魔法を防げる強固な鎧にもなる。身を挺してアイズを守った時にも、それのお陰でダメージを負わなかったのだ。

 

「お返しです。【福音(ゴスペル)】」

 

「ッ!?」

 

 フリーゼが文字を描く動作をした直後、予想外な魔法名を口にした。

 

 発動したと証明するように、美しい『鐘』の音が鳴り響きながら、純然たる轟音が衝撃の塊となってアルフィアに襲い掛かろうとする。

 

「【魂の平静(アタラクシア)】」

 

 驚愕するアルフィアは冷静な心を失わず、相手が放つ魔法を『無効化』する希少魔法――【魂の平静(アタラクシア)】を発動させた。

 

 フリーゼと違って、襲い掛かっていた音の塊は途端に途絶えてしまい、無傷のアルフィアが佇んでいる。

 

(あの小娘、何故私の魔法を……!?)

 

「魔法を無効化する魔法、ですか」

 

 魔導士からすれば天敵なのにも拘わらず、フリーゼは微塵も動揺していなかった。それどころか大変興味深そうな表情をしている。

 

 逆にアルフィアは驚愕の連続だった。自身に攻撃を当てただけでなく、格闘戦もこなし、【福音(ゴスペル)】を防ぐばかりか、自身の魔法を再現するように放つなど一体誰が想像出来るだろうか。

 

 普通なら余りの情報量に処理が追い付かず混乱してもおかしくないのだが、彼女は何とか理性を保ち続けている。

 

「ならばコレなら如何ですか?」

 

「無駄だ。今の私に魔法は通用せん」

 

 【魂の平静(アタラクシア)】を展開してるアルフィアは、何とか心に余裕が出来ていた。

 

 新たな魔法を発動させようと、フリーゼが指で文字を描く動作をせず、何故か人差し指と中指を揃えている。その直後にクンッと天に突き出した瞬間――

 

「ッ!」

 

 アルフィアが立っている地面の周囲が突如光り、大爆発が起きた。

 

 それは魔法やルーン魔術でなく、フリーゼが前世(むかし)の頃に嵌っていたアニメ『ドラグ・ソボール』の敵キャラが使っていた技を闘気(オーラ)で発動させた。『ジャイアントバースト』と呼ばれる技で、中指と人差し指をクンッと上方に突き出し、相手のいる位置に大爆発を起こさせる一種の大技でもある。

 

 今の彼女であれば自身の周囲を軽く吹き飛ばす威力を放てるのだが、街中と言う事もあって、アルフィアの周囲にだけ留めていた。本来の威力とは異なるが、それでも不意を突かせる事が出来て、ある程度ダメージを与えた筈だと予測している。相手が並みの冒険者であればの話だが。

 

「全く、私をここまで驚かせたのはお前が初めてだぞ」

 

(やはり通用しなかった、か)

 

 煙が晴れると、爆心地から少々離れた場所にアルフィアがいた。

 

 フリーゼが『ジャイアントバースト』を発動する寸前、咄嗟に超速移動をして爆発を逃れていたのだ。尤も、流石に無傷ではなかったようで、黒いロングドレスが所々焦げている。

 

「よくもまぁ、そんな服装で躱しましたね。思わずムッと来ましたよ」

 

「それは此方の台詞だ」

 

 不機嫌そうな表情で言うフリーゼに、アルフィアも似たように言い返した。

 

 再び戦いを始めようとする直前、何処かから民衆の叫び声が響き始める。

 

 フリーゼとアルフィアは戦いに集中していた所為で気付かなかったが、【アストレア・ファミリア】が反撃に移った事で、闇派閥(イヴィルス)の暴走を止めていた。

 

 それを察知したように、アルフィアから放っていた殺気が徐々に霧散していく。

 

「……興が削がれた。フリーゼ(・・・・)、お前との決着は次の機会にしよう」

 

「なっ……」

 

 思わぬ行動を見せられたフリーゼが一瞬遅れてしまった所為で、アルフィアの撤退を見逃してしまう。

 

 彼女が姿を消した後、オラリオは途端に息を吹き返したような歓声が広まっていく。

 

 アルフィアとの決着を付けれなかった事にフリーゼは眉を顰めるも、そんな事を気にする余裕など無くなるのであった。

 

「フリーゼ! どういう事か説明してもらうぞ!」

 

「お姉ちゃん、私をお姉ちゃんみたいに強くしてほしい!」

 

 『防壁のルーン』を解除した瞬間、フリーゼを問い詰めようとするリヴェリアと、弟子入りを求めるアイズを何とかしなければならなかった為に。




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