「せいっ!」
「小癪な……!」
フリーゼがアルフィアが放った両の拳を掴んだ事で膠着状態が続くも、それはあっと言う間に終わり、二人が咄嗟に力を抜いて後退して距離を取った。
相手の動きを伺う為に観察するかと思いきや、二人は相手目掛けて跳躍し、拳を繰り出した。どちらも相当な力があるかを証明するように、互いの拳が激突した瞬間、途轍もない衝撃音を鳴り響かせる。
ぶつかり合ってるのは拳だけでなく、肘や膝、足も含まれており、ソレ等が当たる度に突風が吹き荒れる。
しかし、それだけではなかった。
「ぜ、全然見えない……」
「これは最早冒険者の戦いではないぞ……!」
『
アルフィアは白兵戦の腕前も優秀であり、動くに適してない筈のドレスを着ていても凄まじい身のこなしを見せ、徒手空拳だけであらゆる相手を蹂躙する。近接格闘戦が得意な魔導士など普通はあり得ないのだが、『才能』に愛されている彼女だからこそ可能な芸当なのだ。
にも拘わらず、冒険者でないどころか【
「貴女は魔導士の筈なのに格闘戦も出来るなんて、詐欺にも程がありますよ! 【ヘラ・ファミリア】と言うのは化物揃いの派閥だったのですか!?」
「否定せぬが、小娘にだけは言われたくない!」
両手両足を使って高速戦闘を繰り広げながら思った事を口にするフリーゼとアルフィア。
(強い。だが
男だった頃の兵藤隆誠と比べて、女に再転生した現在ではパワーが相当落ちているどころか、
しかし、彼女は最弱な種族に再転生しても嘆いたりしなかった。体格に問題があっても、それを補う為の手段を身に付ければ問題無いと。
その結果、『Lv.7』のアルフィアと戦える実力を身に着けていた。それでも充分に凄いのだが、
(
戦いながら冷静に観察するアルフィアだが、フリーゼの実力に驚くばかりだった。益してや、自分と格闘戦が出来る
同時に解せなかった。こんなに強いのであれば今のオラリオ最強と宣っているオッタルを蹴落とし、彼女が君臨している筈なのだ。
(後でエレボスに問い詰めるとしよう)
オラリオの現状を教えてくれた協力者――エレボスがフリーゼの事を自分やザルドに黙っていたのかどうか訊かなければならない。これでもし伏せていたなど答えた瞬間、神相手でも容赦無く制裁を下そうとしている。
すると、アルフィアはフリーゼの攻撃を躱しながら後退し――
「【
「ッ!」
超短文詠唱で魔法を繰り出した。
鳴り響く『鐘』の音と同時に不可視の衝撃波がフリーゼに襲い掛かる瞬間、彼女の全身から
「何だと?」
「危ない危ない。まともに受ければ
超短文詠唱の魔法でありながら圧倒的破壊力を持つ筈の攻撃魔法を受けた筈なのに、傷一つすら受けていないフリーゼを見た事で、流石のアルフィアも驚きを隠せなかった。それは当然、『防壁のルーン』で守られているアイズとリヴェリアも同様に。
フリーゼが
「お返しです。【
「ッ!?」
フリーゼが文字を描く動作をした直後、予想外な魔法名を口にした。
発動したと証明するように、美しい『鐘』の音が鳴り響きながら、純然たる轟音が衝撃の塊となってアルフィアに襲い掛かろうとする。
「【
驚愕するアルフィアは冷静な心を失わず、相手が放つ魔法を『無効化』する希少魔法――【
フリーゼと違って、襲い掛かっていた音の塊は途端に途絶えてしまい、無傷のアルフィアが佇んでいる。
(あの小娘、何故私の魔法を……!?)
「魔法を無効化する魔法、ですか」
魔導士からすれば天敵なのにも拘わらず、フリーゼは微塵も動揺していなかった。それどころか大変興味深そうな表情をしている。
逆にアルフィアは驚愕の連続だった。自身に攻撃を当てただけでなく、格闘戦もこなし、【
普通なら余りの情報量に処理が追い付かず混乱してもおかしくないのだが、彼女は何とか理性を保ち続けている。
「ならばコレなら如何ですか?」
「無駄だ。今の私に魔法は通用せん」
【
新たな魔法を発動させようと、フリーゼが指で文字を描く動作をせず、何故か人差し指と中指を揃えている。その直後にクンッと天に突き出した瞬間――
「ッ!」
アルフィアが立っている地面の周囲が突如光り、大爆発が起きた。
それは魔法やルーン魔術でなく、フリーゼが
今の彼女であれば自身の周囲を軽く吹き飛ばす威力を放てるのだが、街中と言う事もあって、アルフィアの周囲にだけ留めていた。本来の威力とは異なるが、それでも不意を突かせる事が出来て、ある程度ダメージを与えた筈だと予測している。相手が並みの冒険者であればの話だが。
「全く、私をここまで驚かせたのはお前が初めてだぞ」
(やはり通用しなかった、か)
煙が晴れると、爆心地から少々離れた場所にアルフィアがいた。
フリーゼが『ジャイアントバースト』を発動する寸前、咄嗟に超速移動をして爆発を逃れていたのだ。尤も、流石に無傷ではなかったようで、黒いロングドレスが所々焦げている。
「よくもまぁ、そんな服装で躱しましたね。思わずムッと来ましたよ」
「それは此方の台詞だ」
不機嫌そうな表情で言うフリーゼに、アルフィアも似たように言い返した。
再び戦いを始めようとする直前、何処かから民衆の叫び声が響き始める。
フリーゼとアルフィアは戦いに集中していた所為で気付かなかったが、【アストレア・ファミリア】が反撃に移った事で、
それを察知したように、アルフィアから放っていた殺気が徐々に霧散していく。
「……興が削がれた。
「なっ……」
思わぬ行動を見せられたフリーゼが一瞬遅れてしまった所為で、アルフィアの撤退を見逃してしまう。
彼女が姿を消した後、オラリオは途端に息を吹き返したような歓声が広まっていく。
アルフィアとの決着を付けれなかった事にフリーゼは眉を顰めるも、そんな事を気にする余裕など無くなるのであった。
「フリーゼ! どういう事か説明してもらうぞ!」
「お姉ちゃん、私をお姉ちゃんみたいに強くしてほしい!」
『防壁のルーン』を解除した瞬間、フリーゼを問い詰めようとするリヴェリアと、弟子入りを求めるアイズを何とかしなければならなかった為に。
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