再び転生した元神はダンまち世界へ   作:さすらいの旅人

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今回は短いです。


嵐の前の静けさ

 あれから数日。

 

 息を吹き返したオラリオ側とは別に、先の戦いで撤退した闇派閥(イヴィルス)は鳴りを潜めるように静かだった。

 

 しかし、都市を覆う市壁を依然押さえて監視を続けている。もし近付けば即座に爆弾を放り投げており、まるで絶対に牽制するような動きだった。

 

 【ロキ・ファミリア】は当然それを察知しているが、外の動きを気にしている余裕は無かった。闇派閥(イヴィルス)の首魁――邪神エレボスのダンジョンで『あるモノ』を呼び出そうと判明した為に。

 

 もう時間が無いと察したフィンは、全【ファミリア】に伝令を出した。『日付が変わるまでに、戦える者、全てを中央広場(セントラルパーク)に招集しろ』と。

 

 因みにフリーゼ達は眷族でない為に言うまでもなく不参加。元より、初めから行く気など無い他、他の冒険者達に顔を晒せば面倒な事になってしまうから。

 

 中央広場(セントラルパーク)でフィンが大変熱が籠った演説をしている中、その場にいた【アストレア・ファミリア】に所属する女性小人族(パルゥム)が、彼を見た途端に何故か胸がムカムカし始めていた。あの決意した()の中に、自分以外の女がいそうな気がしてならないから。

 

 

 

 

 

 

 

「喰われまいとする獣の咆哮……いいぞ」

 

「相変わらず口が回る小僧(パルゥム)だ」

 

 手入れがされず朽ちている廃教会に二人の男女がいた。

 

 【ゼウス・ファミリア】の元幹部、【暴喰】のザルド。

 

 【ヘラ・ファミリア】の元幹部、【静寂】のアルフィア。

 

 先の戦いで撤退してから、命令が出るまで静かに潜めていた際、突如外から聞こえてきた演説を耳にした事で反応した。

 

 楽しそうに笑みを浮かべるザルド、少々不愉快そうに眉を顰めるアルフィア。

 

 対照的な反応を示す二人だが、どちらも受けて立つつもりでいる。まるで自分達に勝利してみせろと言わんばかりに。

 

「それはそうと、前にお前が戦った相手は相当な実力者らしいな」

 

「………………」

 

 すると、何かを思い出したように言ったザルドに、アルフィアが途端に無言となる。

 

 撤退して合流した際、彼女の姿を見た際に心底驚愕した。頬が腫れ上がり、身に纏っているドレスも少々ボロボロになっていたのだから。

 

 『一体何が起きた!?』と訊きたい衝動に駆られるも、如何にも不機嫌な表情で下手に声を掛ければ容赦無く魔法を放ってくるから、落ち着くまで見守るしかなかった。

 

「次の戦いでまた会えそうか?」

 

「……さぁな」

 

 短く答えたアルフィアは、それ以上何も言わなかった。

 

 本当ならザルドとしてはもう少し訊きたいところだが、下手に刺激して魔法を撃たれたら次の戦いに支障を来たすので、これ以上の追求はしないようにした。

 

 

 

 

 

 

 中央広場(セントラルパーク)での演説が終えた翌日以降、全【ファミリア】は来たるべき決戦に備えての準備を着々と進めている。

 

 【ロキ・ファミリア】も本拠地(ホーム)内では、何処(どこ)彼処(かしこ)も大変慌ただしい。

 

 ある者達は身体を慣らす為に今まで以上の鍛錬を。ある者達は武装や道具(アイテム)の調達を。ある者達は他派閥と連携してダンジョンの偵察を。

 

 皆の誰もが不安な気持ちになっている。次の戦いで例え闇派閥(イヴィルス)に勝っても自分は最後まで生き延びる事が出来るのかと。

 

 しかし、誰一人たりとも顔に出す事はせず、必ず生きて盛大な宴会をしようと決意している。主神ロキが自腹を切って絶対やるからと声高に宣言して、眷族達を元気付けたのだから。

 

 そんな中、フリーゼやローゼも彼等の準備を手伝っていた。主に料理を振る舞っているだけだが、彼女達が作る物は美味しい事もあって、腹が減った時は残さず完食している。因みにギルド本部で総指揮を執っているフィンは、フリーゼの料理が食べれない事に内心愚痴っているみたいだが。

 

 日が刻々と迫り、決戦開始まであと僅か。

 

 

 

 

 準備が整った【ロキ・ファミリア】がそれぞれ配置に付いていた。

 

 今回の決戦でリヴェリアとガレス、そしてアイズが【アストレア・ファミリア】と一緒にダンジョンへ行く事になっている。そこにいる『大最悪(モンスター)』を倒す為に編成されたのだ。

 

「さて、どうなる事やら……」

 

 フリーゼは部屋の一室にある窓から外を眺めていた。

 

 本当なら彼女も戦いに参加したかったのだが、フィンから本拠地(ホーム)で待機するように言われたのだ。ローゼやリヴァルも同様に。

 

 策士の面も持つ【勇者(ブレイバー)】であれば、フリーゼ達が『Lv.7』のザルドやアルフィアと戦えるのなら戦力に加えてもおかしくないのだが、今回は敢えてそうしなかった。【恩恵(ファルナ)】を授かっていない一般人だからと、言う理由で。

 

 今の状況で参加させないのは愚の骨頂かもしれないが、最初から彼女達を頼りにしては冒険者としてのプライドが許さない。フィンだけでなく、リヴェリアやガレスも同様に。

 

 だがそれでも、万が一に向こうが強力な手札を出して不利な状況になれば、フリーゼ達が出撃する手筈になっている。その際には『覆面狩人』の姿になるのが条件となっているが。

 

「ねぇフリーゼちゃん、本当にワタシ達は待機で良いの?」

 

「我々としては、すぐにでも前線へ赴きたいのですが」

 

 部屋にはフリーゼだけでなく、ローゼとリヴァルも一緒にいた。

 

 二人は今か今かと言わんばかりで、既に戦える状態になっている。

 

「お気持ちは理解出来ますが、今は冒険者達の戦いを見守りましょう」

 

 二人を宥めるように言うフリーゼだが、恐らく自分達も戦う事になるだろうと内心予想していた。悪辣な手段を平気で行う闇派閥(イヴィルス)の事だから、必死に戦う冒険者達を絶望させる為の切り札(ジョーカー)を必ず持っている筈だと。

 

 直後、(とき)の声がオラリオ中に響き渡った。それに呼応するように、オラリオを覆っている市壁の都市門が爆発し、大量のモンスターが雪崩れ込んでくる。

 

 冒険者達と闇派閥(イヴィルス)の決戦が、ついに始まろうとする。




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