戦いが始まった。
侵入してくるのはモンスターだけでなく、
そんな暴挙は許さないと冒険者達は迎撃するも、各地に配置された『砦』を防衛してる所為もあって思うように戦えない。だがそれでも彼等は悲観する事無く、オラリオを守る為に応戦して意地を見せている。
全く動じずに応戦してる事もあってか、
指示を受けたザルドはゆっくり前進しながら挑んでくる冒険者達を軽くいなし、都市中に響き渡るほどの宣告をした後、氷壁を壊して『バベル』を守る精鋭の群れを蹴散らそうと―――していたが、それはフィンが仕組んだ『罠』だったと
彼の前に立ち塞がっているのは現オラリオ最強、【フレイヤ・ファミリア】の【
各地の『砦』を冒険者達が戦っている中、『バベル』からは凄まじい激突音が都市中に響き渡っている。『
地上は今のところ問題無いのだが、フリーゼは気になる点があった。ザルドと同様の切り札である筈のアルフィアが未だに姿を見せていないのだ。
以前戦った彼女の
それを証明するように、突如地面が揺れただけでなく、凄まじい魔力も感じた。以前に放った【
しかし、フリーゼからすれば驚愕するほどのモノではない。確かにこの世界に住まう者からすれば凄いのだが、
加えて【ヘラ・ファミリア】の英雄であれば、この程度はやるだろうとフリーゼは既に予想している。問題は彼女と戦っている【ロキ・ファミリア】や【アストレア・ファミリア】で、果たして無事に生還出来るのかが心配の種であった。
もう少しダンジョンの方を探ってみようと、
このままでは不味いと危惧したのか、今まで待機していたフリーゼは動き始める。ローゼとリヴァルには地上にいる
☆
(憎い、憎い、憎い!)
ダンジョン18階層で幼女は戦っていた。『
その存在を認識した瞬間、アイズは心の内にあるモノが一気に爆発した。自身の大事な両親を奪った怨敵に対する憎悪を。
「【
アイズは目の前の敵を殺そうと風属性の
「【
同時に黒き風へと変色させ、敵を殺そうと突進して斬撃の嵐を舞い始めた。
一見圧倒しているように思われる状況だが、『
「いかんぞ、《デスペレート》に罅が……!」
「アイズ、やめろ! このままではお前の身体が砕け散ってしまう!」
ガレスやリヴェリアが止めようとしても、アイズは全然聞く耳を持たなかった。理性を失って憎悪に囚われている今の彼女は、目の前の敵を殺す事しか考えていない。
ただでさえ今は後方にいるアルフィアの相手を【アストレア・ファミリア】だけで戦っている不利な状況なのに、
このままではアイズが先に死んでしまう最悪な展開を予想して――
「驚いた。まさかあの子に、あれ程の力を秘めていたとは」
『ッ!?』
いたところ、突如聞き覚えのある第三者の声を耳にした二人が振り向くと、そこには何故がフリーゼがいた。
「フリーゼ! お前、どうして!?」
「何故お主が此処におる!?」
女性
冒険者でない筈の彼女はダンジョンに関する知識が何一つ無いにも拘わらず、どうやって18階層へ辿り着いたのかは全く分からない。それ以前に、ダンジョンへ向かう筈の『バベル』は魔導士達が施した氷壁の結界で誰も通れない筈なのだが。
「今はアイズを抑えるのが先決でしょう」
自分の事など如何でも良いと言い切るフリーゼに、リヴェリアとガレスは納得行かないと言わんばかりの表情だ。
でも確かに彼女の言う通りでもあるので、不本意でありながらも何とか冷静になろうとしている。
因みに彼女の登場に驚いているのは他にもいた。
「え? 何か【ロキ・ファミリア】の近くに、見覚えのある
「あの
「何であの女が
『
それは当然――
「まさか此処で会う事になるとは……」
「驚いたな。確かあの
アルフィアも似たような反応を示しており、離れた所から眺めている邪神エレボスは思い出したかのように彼女を見ていた。
敵味方問わずに凝視されているフリーゼは全く動じておらず、目の前で巨大な怪物と交戦中の黒き風を纏う暴走幼女へ視線を向けている。
「先ずはあの鬱陶しい風を消すか」
「!」
そう言ってフリーゼが指で文字を描く動作をする事で、リヴェリアはルーン魔術を使う気だと瞬時に察した。
「ふ~っ! ふ~っ!」
すると、『
息が上がって身体に大きな負担が掛かっているにも拘わらず、憎悪に囚われている幼女は全く気にせず再度突撃を仕掛けようとする。
「ほいっとな」
「ッ!?」
フリーゼが片手を向けた瞬間、魔力の文字がアイズに向かっていく。
それは黒き風に防がれて通用しなかったと思いきや、予想外な展開が起きる。張り付いていた魔力の文字が突如光り出した瞬間、アイズを覆っている風も同時に消失してしまったのだ。
「おいリヴェリア、何じゃあれは!? あの娘っ子、アイズの魔法を消しおったぞ!」
「そんなの言われなくても分かっている!」
魔法を解除させる魔法を初めて見た事でガレスが思わず問うも、リヴェリアはムキになって言い返した。
(上手く行って何よりだ)
フリーゼが使ったのは『消散のルーン』と呼ばれる、あらゆる魔法の効果を強制的に解除させるルーン魔術。
この世界の魔法でも通用するのか若干不安を抱きながらも、アイズの
「え? 何で、どうして……!?」
魔法が突然解除された事に困惑するアイズ。
だがそれはほんの僅かで、もう一度発動させれば良いと即座に判断した。
「【
「そこまでだ、アイズ」
短文詠唱を口にしてる最中、目の前には
「どいて! あいつ殺せない!」
「落ち着け。今の君は身体だけじゃなく、剣も限界寸前だ。ここは一先ず私に任せて――」
「邪魔しないで! アレは私が殺さなきゃいけないの!」
フリーゼを煩わしそうに振り払おうとするアイズだが、突如額にベチィンッと凄まじい衝撃が走った。
「戯け。君がそんな台詞を吐くのは十年早い」
「~~~~~~!!!!」
デコピンの仕草をしているフリーゼが呆れるように言うも、余りの痛さにアイズは額を抑えながら悶えていた。
その光景にリヴェリアやガレスだけでなく、少し離れた所から見ている【アストレア・ファミリア】やアルフィア、エレボスも唖然としている。
「……いたいよぉ、フリーゼお姉ちゃん」
『!?』
痛みに悶えていた幼女が涙目になりながらフリーゼに訴えていた。
先程まで憎悪に囚われ暴走していた筈なのに、それがアッサリと消失していつものアイズに戻った事でリヴェリア達は驚愕する。
「今はそこで大人しく見ていろ」
アイズが元に戻ったのを確認したフリーゼは、怪物の方へ向けてゆっくり歩き始める。
その途中で先日戦った灰髪の女性の姿が目に入るも、敢えて気にしなかった。
アイズの攻撃を受けていた箇所を再生していた『
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』
「……久しぶりに本気出すか」
対峙する巨大な怪物に向かってそう言ったフリーゼは、身に纏っているロングコートを脱いで放り投げた。アイズの近くで地面に付いた瞬間――ドスンッと激突音を鳴らしている。
その瞬間、まるで枷を外したかのように、彼女の全身から金色の魔力らしきものが放出される。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………!」
魔力を放出しているフリーゼが身構えながら叫ぶと、ダンジョン18階層がグラグラと揺れ始める。
「ダンジョン全体が揺れているだと!?」
「こ、これは、ローゼやリヴァルが見せた時のアレか……!」
困惑するリヴェリアとは別に、ガレスには見覚えがあった。
ローゼとリヴァルが全身から凄まじい魔力を解放した事で、『Lv.7』のザルドと互角に戦っていた事を今でも鮮明に憶えている。
「…………………………」
先程まで涙目になっていたアイズだが、途端に大人しくなってフリーゼの姿を凝視していた。
「な、何なのあの子は!? さっきから凄い事ばかりしてるんだけど!」
「ふざけんなよ、あの女! どんだけ出鱈目な事してやがる!」
信じられないように叫ぶアリーゼやライラだけでなく、他の【アストレア・ファミリア】も困惑しているのは言うまでもなかった。
「何だこの地震は!?」
「これは一体……!」
アリーゼ達から離れていた場所で戦っていた輝夜とヴィトーだが、急な地震が発生した事で漸くフリーゼの存在に気付く。
「……フリーゼの奴、まさか」
アルフィアだけは他と違って戸惑う様子を見せていないが、何かに気付いた感じだった。
「…………いや、一体どう言う事?」
エレボスですら目の前の光景が信じられないみたいで、思わず現実逃避してしまう程であった。
そして――
「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
フリーゼが大きな叫びと共に発する突風と衝撃は、周囲を崩壊させてしまうほどだった。
「ふぅぅぅぅ………待たせたな。これが(今の)私の
『………オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』
解放したフリーゼの力を間近で見た『
☆
一方、地上では新たに出現したダンジョン『下層』や『深層』クラスのモンスター達の相手に、冒険者達は苦戦していた。
のだが――
「だ、団長! 突然『覆面狩人』が現れて、進撃するモンスターを瞬く間に倒してます!」
「ついに彼女達も動いたか!」
ラウルからの吉報を聞いたフィンは、フリーゼ達に感謝しながらも内心申し訳ない気持ちだった。
本当なら冒険者ではない彼女達の力を借りずに勝利したかったのだが、今の状況ではそうも言ってられない。
「ラウル、小柄な『覆面狩人』は今何処にいる?」
フリーゼ達が出撃する条件は正体がバレないよう『覆面狩人』として行動するようにと言ったので、敢えて名前を出さなかった。
三人の中で彼女だけ一番小さいから、正体を知っている【ロキ・ファミリア】は小柄と言われたらフリーゼの事だとすぐに分かる。
「そ、それが、どこにもいないんす。今戦っているのは大柄の二人だけで……」
「何?」
地上ではローゼとリヴァルしか戦っていない事に、フィンは何故だと疑問を抱く。
アルフィアと互角に戦える筈の彼女が、二人だけに任せているのは到底考えられないのだ。
「っ! まさか……!」
フリーゼはダンジョンにいるアルフィアと戦う為に、何らかの方法でダンジョンへ向かったのかもしれない。普通に考えれば絶対あり得ないのだが、そうでなければ今頃はローゼやリヴァルと一緒に地上で戦っている筈なのだ。
だがどちらにしても強力な切り札が動いてくれた以上、何が何でも勝利しなければならない。
フィンはオラリオを守る冒険者としてだけでなく、一人の男として
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