再び転生した元神はダンまち世界へ   作:さすらいの旅人

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正邪決戦①

 戦いが始まった。

 

 侵入してくるのはモンスターだけでなく、闇派閥(イヴィルス)の信者も含まれている。特に後者は魔物と違って魔法を放つ者もおり、オラリオを破壊しようとやりたい放題だった。

 

 そんな暴挙は許さないと冒険者達は迎撃するも、各地に配置された『砦』を防衛してる所為もあって思うように戦えない。だがそれでも彼等は悲観する事無く、オラリオを守る為に応戦して意地を見せている。

 

 全く動じずに応戦してる事もあってか、闇派閥(イヴィルス)は切り札の一つを投入した。【ゼウス・ファミリア】の元幹部であるザルドを中央広場(セントラルパーク)へ向かわせ、氷壁で守られている『バベル』を破壊させようと。

 

 指示を受けたザルドはゆっくり前進しながら挑んでくる冒険者達を軽くいなし、都市中に響き渡るほどの宣告をした後、氷壁を壊して『バベル』を守る精鋭の群れを蹴散らそうと―――していたが、それはフィンが仕組んだ『罠』だったと闇派閥(イヴィルス)側は漸く気付いた。

 

 彼の前に立ち塞がっているのは現オラリオ最強、【フレイヤ・ファミリア】の【猛者(おうじゃ)】オッタルのみ。それを認識した直後に砕かれた氷壁を再び『バベル』を覆い、更には魔導士達による結界で包まれた直後、建物に潜んでいた精鋭の冒険者達が突如出現。背後からの強襲に、闇派閥(イヴィルス)は挟撃される事になる。

 

 各地の『砦』を冒険者達が戦っている中、『バベル』からは凄まじい激突音が都市中に響き渡っている。『Lv.6(オッタル)』と『Lv.7(ザルド)』の戦いは、敵味方関係無く戦慄する程のモノである事が嫌でも認識させられていた。

 

 地上は今のところ問題無いのだが、フリーゼは気になる点があった。ザルドと同様の切り札である筈のアルフィアが未だに姿を見せていないのだ。

 

 以前戦った彼女の魔力(オーラ)を捜そうと都市全体を張り巡らせるよう探知するも、全然見つからず仕舞いの結果となっている。となればフィンが予想した通り、アルフィアは地下の『迷宮(ダンジョン)』にいるかもしれないから、地上で迎撃する筈だったガレスとアイズを変更して向かわせたのは正解だろう。

 

 それを証明するように、突如地面が揺れただけでなく、凄まじい魔力も感じた。以前に放った【福音(ゴスペル)】とは比べ物にならないほどの強大な魔力が。

 

 しかし、フリーゼからすれば驚愕するほどのモノではない。確かにこの世界に住まう者からすれば凄いのだが、前々世(おおむかし)の頃に都市どころか世界そのものを簡単に壊せる力を持っていた聖書の神からすれば、『それがどうした?』程度の認識に過ぎないのだから。

 

 加えて【ヘラ・ファミリア】の英雄であれば、この程度はやるだろうとフリーゼは既に予想している。問題は彼女と戦っている【ロキ・ファミリア】や【アストレア・ファミリア】で、果たして無事に生還出来るのかが心配の種であった。

 

 もう少しダンジョンの方を探ってみようと、能力(ちから)を使って範囲を広めた瞬間、突如憎悪とは形容しがたい負のオーラを感じ取った。その発生源は、昨日の夜までずっとフリーゼに引っ付いていた金髪の幼女(アイズ・ヴァレンシュタイン)だと判明する。

 

 このままでは不味いと危惧したのか、今まで待機していたフリーゼは動き始める。ローゼとリヴァルには地上にいる怪物(モンスター)共を始末するよう全力で暴れてこいと命じると、既に戦闘準備を終えている二人はその言葉を待っていたと言わんばかりに部屋から飛び出した。

 

 

 

 

 

 

(憎い、憎い、憎い!)

 

 ダンジョン18階層で幼女は戦っていた。『神の力(アルカナム)』によって引き寄せられた黒い『大最悪(モンスター)』、またの名は『神獣の触手(デルピュネ)』と。

 

 その存在を認識した瞬間、アイズは心の内にあるモノが一気に爆発した。自身の大事な両親を奪った怨敵に対する憎悪を。

 

「【吹き荒れろ(テンペスト)】ッ!!」

 

 アイズは目の前の敵を殺そうと風属性の付与魔法(エンチャント)――『エアリエル』を発動させ――

 

「【暴れ吼えろ(ニゼル)】!!」

 

 同時に黒き風へと変色させ、敵を殺そうと突進して斬撃の嵐を舞い始めた。

 

 一見圧倒しているように思われる状況だが、『神獣の触手(デルピュネ)』は倒れる気配がない。ダメージを負って動きが止まっても、受けた傷は即座に再生しているのだ。

 

「いかんぞ、《デスペレート》に罅が……!」

 

「アイズ、やめろ! このままではお前の身体が砕け散ってしまう!」

 

 ガレスやリヴェリアが止めようとしても、アイズは全然聞く耳を持たなかった。理性を失って憎悪に囚われている今の彼女は、目の前の敵を殺す事しか考えていない。

 

 ただでさえ今は後方にいるアルフィアの相手を【アストレア・ファミリア】だけで戦っている不利な状況なのに、味方(アイズ)が暴走している所為で全く手が付けられなくなっている。

 

 このままではアイズが先に死んでしまう最悪な展開を予想して――

 

「驚いた。まさかあの子に、あれ程の力を秘めていたとは」

 

『ッ!?』

 

 いたところ、突如聞き覚えのある第三者の声を耳にした二人が振り向くと、そこには何故がフリーゼがいた。

 

「フリーゼ! お前、どうして!?」

 

「何故お主が此処におる!?」

 

 女性小人族(パルゥム)の予想外な登場に、リヴェリアとガレスは眼を見開いている。

 

 冒険者でない筈の彼女はダンジョンに関する知識が何一つ無いにも拘わらず、どうやって18階層へ辿り着いたのかは全く分からない。それ以前に、ダンジョンへ向かう筈の『バベル』は魔導士達が施した氷壁の結界で誰も通れない筈なのだが。

 

「今はアイズを抑えるのが先決でしょう」

 

 自分の事など如何でも良いと言い切るフリーゼに、リヴェリアとガレスは納得行かないと言わんばかりの表情だ。

 

 でも確かに彼女の言う通りでもあるので、不本意でありながらも何とか冷静になろうとしている。

 

 因みに彼女の登場に驚いているのは他にもいた。

 

「え? 何か【ロキ・ファミリア】の近くに、見覚えのある小人族(パルゥム)がいるんだけど」

 

「あの小人族(パルゥム)、一体どこから現れた……!?」

 

「何であの女がダンジョン(こんなところ)にいやがるんだよ!?」

 

 『神獣の触手(デルピュネ)』と交戦するアイズの方へ視線を向けていた際、アリーゼやリューやライラだけでなく、他の【アストレア・ファミリア】の眷族達も信じられないように見ていた。

 

 それは当然――

 

「まさか此処で会う事になるとは……」

 

「驚いたな。確かあの小人族(パルゥム)は、報告にあった少女だったか」

 

 アルフィアも似たような反応を示しており、離れた所から眺めている邪神エレボスは思い出したかのように彼女を見ていた。

 

 敵味方問わずに凝視されているフリーゼは全く動じておらず、目の前で巨大な怪物と交戦中の黒き風を纏う暴走幼女へ視線を向けている。

 

「先ずはあの鬱陶しい風を消すか」

 

「!」

 

 そう言ってフリーゼが指で文字を描く動作をする事で、リヴェリアはルーン魔術を使う気だと瞬時に察した。

 

「ふ~っ! ふ~っ!」

 

 すると、『神獣の触手(デルピュネ)』に攻撃し続けていたアイズが一旦距離を取った。

 

 息が上がって身体に大きな負担が掛かっているにも拘わらず、憎悪に囚われている幼女は全く気にせず再度突撃を仕掛けようとする。

 

「ほいっとな」

 

「ッ!?」

 

 フリーゼが片手を向けた瞬間、魔力の文字がアイズに向かっていく。

 

 それは黒き風に防がれて通用しなかったと思いきや、予想外な展開が起きる。張り付いていた魔力の文字が突如光り出した瞬間、アイズを覆っている風も同時に消失してしまったのだ。

 

「おいリヴェリア、何じゃあれは!? あの娘っ子、アイズの魔法を消しおったぞ!」

 

「そんなの言われなくても分かっている!」

 

 魔法を解除させる魔法を初めて見た事でガレスが思わず問うも、リヴェリアはムキになって言い返した。

 

(上手く行って何よりだ)

 

 フリーゼが使ったのは『消散のルーン』と呼ばれる、あらゆる魔法の効果を強制的に解除させるルーン魔術。

 

 この世界の魔法でも通用するのか若干不安を抱きながらも、アイズの付与魔法(エンチャント)を解除したのを成功して内心安堵している。

 

「え? 何で、どうして……!?」

 

 魔法が突然解除された事に困惑するアイズ。

 

 だがそれはほんの僅かで、もう一度発動させれば良いと即座に判断した。

 

「【吹き荒(テンペ)――」

 

「そこまでだ、アイズ」

 

 短文詠唱を口にしてる最中、目の前には本拠地(ホーム)に居る筈のフリーゼがいた。

 

「どいて! あいつ殺せない!」

 

「落ち着け。今の君は身体だけじゃなく、剣も限界寸前だ。ここは一先ず私に任せて――」

 

「邪魔しないで! アレは私が殺さなきゃいけないの!」

 

 フリーゼを煩わしそうに振り払おうとするアイズだが、突如額にベチィンッと凄まじい衝撃が走った。

 

「戯け。君がそんな台詞を吐くのは十年早い」

 

「~~~~~~!!!!」

 

 デコピンの仕草をしているフリーゼが呆れるように言うも、余りの痛さにアイズは額を抑えながら悶えていた。

 

 その光景にリヴェリアやガレスだけでなく、少し離れた所から見ている【アストレア・ファミリア】やアルフィア、エレボスも唖然としている。

 

「……いたいよぉ、フリーゼお姉ちゃん」

 

『!?』

 

 痛みに悶えていた幼女が涙目になりながらフリーゼに訴えていた。

 

 先程まで憎悪に囚われ暴走していた筈なのに、それがアッサリと消失していつものアイズに戻った事でリヴェリア達は驚愕する。

 

「今はそこで大人しく見ていろ」

 

 アイズが元に戻ったのを確認したフリーゼは、怪物の方へ向けてゆっくり歩き始める。

 

 その途中で先日戦った灰髪の女性の姿が目に入るも、敢えて気にしなかった。

 

 アイズの攻撃を受けていた箇所を再生していた『神獣の触手(デルピュネ)』は、それが終えたのか暴れ始めようとする。

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』

 

「……久しぶりに本気出すか」

 

 対峙する巨大な怪物に向かってそう言ったフリーゼは、身に纏っているロングコートを脱いで放り投げた。アイズの近くで地面に付いた瞬間――ドスンッと激突音を鳴らしている。

 

 その瞬間、まるで枷を外したかのように、彼女の全身から金色の魔力らしきものが放出される。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………!」

 

 魔力を放出しているフリーゼが身構えながら叫ぶと、ダンジョン18階層がグラグラと揺れ始める。

 

「ダンジョン全体が揺れているだと!?」

 

「こ、これは、ローゼやリヴァルが見せた時のアレか……!」

 

 困惑するリヴェリアとは別に、ガレスには見覚えがあった。

 

 ローゼとリヴァルが全身から凄まじい魔力を解放した事で、『Lv.7』のザルドと互角に戦っていた事を今でも鮮明に憶えている。

 

「…………………………」

 

 先程まで涙目になっていたアイズだが、途端に大人しくなってフリーゼの姿を凝視していた。

 

「な、何なのあの子は!? さっきから凄い事ばかりしてるんだけど!」

 

「ふざけんなよ、あの女! どんだけ出鱈目な事してやがる!」

 

 信じられないように叫ぶアリーゼやライラだけでなく、他の【アストレア・ファミリア】も困惑しているのは言うまでもなかった。

 

「何だこの地震は!?」

 

「これは一体……!」

 

 アリーゼ達から離れていた場所で戦っていた輝夜とヴィトーだが、急な地震が発生した事で漸くフリーゼの存在に気付く。

 

「……フリーゼの奴、まさか」 

 

 アルフィアだけは他と違って戸惑う様子を見せていないが、何かに気付いた感じだった。

 

「…………いや、一体どう言う事?」

 

 エレボスですら目の前の光景が信じられないみたいで、思わず現実逃避してしまう程であった。

 

 そして――

 

「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 フリーゼが大きな叫びと共に発する突風と衝撃は、周囲を崩壊させてしまうほどだった。

 

「ふぅぅぅぅ………待たせたな。これが(今の)私の全力(フルパワー)だ!」

 

『………オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』

 

 解放したフリーゼの力を間近で見た『神獣の触手(デルピュネ)』は一瞬声を失いかけていたが、自身を鼓舞するように雄叫びを上げていた。

 

 

 

 

 

 

 一方、地上では新たに出現したダンジョン『下層』や『深層』クラスのモンスター達の相手に、冒険者達は苦戦していた。

 

 のだが――

 

「だ、団長! 突然『覆面狩人』が現れて、進撃するモンスターを瞬く間に倒してます!」

 

「ついに彼女達も動いたか!」

 

 ラウルからの吉報を聞いたフィンは、フリーゼ達に感謝しながらも内心申し訳ない気持ちだった。

 

 本当なら冒険者ではない彼女達の力を借りずに勝利したかったのだが、今の状況ではそうも言ってられない。闇派閥(イヴィルス)が新たに用意したモンスター達に苦戦を強いられていた状況であれば猶更に。

 

「ラウル、小柄な『覆面狩人』は今何処にいる?」

 

 フリーゼ達が出撃する条件は正体がバレないよう『覆面狩人』として行動するようにと言ったので、敢えて名前を出さなかった。

 

 三人の中で彼女だけ一番小さいから、正体を知っている【ロキ・ファミリア】は小柄と言われたらフリーゼの事だとすぐに分かる。

 

「そ、それが、どこにもいないんす。今戦っているのは大柄の二人だけで……」

 

「何?」

 

 地上ではローゼとリヴァルしか戦っていない事に、フィンは何故だと疑問を抱く。

 

 アルフィアと互角に戦える筈の彼女が、二人だけに任せているのは到底考えられないのだ。

 

「っ! まさか……!」

 

 フリーゼはダンジョンにいるアルフィアと戦う為に、何らかの方法でダンジョンへ向かったのかもしれない。普通に考えれば絶対あり得ないのだが、そうでなければ今頃はローゼやリヴァルと一緒に地上で戦っている筈なのだ。

 

 だがどちらにしても強力な切り札が動いてくれた以上、何が何でも勝利しなければならない。

 

 フィンはオラリオを守る冒険者としてだけでなく、一人の男として同胞(フリーゼ)に勝利を捧げようと決めているから。




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