オラリオに入る前の検問で、少しばかり問題が起きていた。
と言っても、諍いに関するものではない。フリーゼに同行している二人を見た門番達が戸惑いの様子を見せていたのだ。
ローゼは門番をしている中年男性の数名から、『……何で若いミアがいるんだ?』と不思議そうに凝視していた。向こうの反応に彼女は何か心当たりがあるかのように苦笑しており、『ワタシはあの人の姪ですわ』と言った瞬間に絶叫が響き渡る。
リヴァルは検問に入る前から、周囲の女性達から熱い視線を送られていた。それとは別に、門番のエルフがリヴァルの正体に気付いて即座に頭を垂れそうになるも、それを止めさせるのに少々時間を要する事になった。
因みにフリーゼは二人と違って、簡単な質問をされただけで全く問題無かったと補足しておく。
三人の素性を一通りの確認を終えた後、一人の門番から真顔で警告される。『現在この都市は
リヴァルが教えてくれた通り、やはり今のオラリオは治安が相当悪いのだとフリーゼは改めて認識した。
聞けば聞くほど、
天罰を下したい衝動に駆られるも、それをやってはいけないと自制する。
加えて
ローゼとリヴァルが身内に会いに行ってる際、フリーゼは宿を取るので別行動をしようと提案するも――
「何言ってるのよ。一緒に行くに決まってるじゃない」
「ローゼの言う通りです、フリーゼ様。御身だけで行動するのは大変危険です」
☆
「ったく。来るなら手紙の一つくらい寄越したらどうだい」
「あら、いつでも来いと言ったのは伯母様でしょう」
訪れた酒場『豊穣の女主人』の店内にて、ローゼは店主である伯母のミア・グランドと再会した。
今はまだ営業時間じゃないが、身内が来たと言う事で、夕方からの営業に備えての仕込み作業を一時中断。その所為もあってか、厨房の方からウェイトレス達がチラチラと覗き見している。
因みに店に入る前に
「で、今はそこの
ローゼと話していたミアが、フリーゼとリヴァルの方へ視線を移しながら問う。
「ええ、ワタシが最も頼りになる二人よ」
「初めまして、フリーゼと申します」
「リヴァル・リヨス・アールヴです」
自己紹介する二人に、突然ピクリと反応するミア。
「アールヴ……。ひょっとしてお前さん、ハイエルフなのかい?」
「はい。お察しの通り、私は【ロキ・ファミリア】の副団長、リヴェリア・リヨス・アールヴの弟です」
「やっぱりか。道理で顔立ちや髪の色が似てる訳だ」
改めてリヴェリアの身内だと答えるリヴァルに、ミアは納得の表情となっていく。
「貴女は姉上と交流があるのですか?」
「あるも何も、お前さんの姉も含めた【ロキ・ファミリア】が此処で宴会しに来てるよ」
「ほう、それは興味深い」
森に住んでいた頃の姉は知ってるが、冒険者としての顔を知らないリヴァルは、色々情報が聞けそうだと笑みを浮かべる。
そんな彼の心情とは別に、ミアはフリーゼに問おうとする。
「
「いえ、いませんよ」
否定するフリーゼは本当にいない。彼女の両親はオラリオから遠く離れた田舎町に住んでおり、更には
血縁ではないが、その田舎町には弟みたいな存在がいる。真っ白な髪をして、絵本に描かれてる英雄に憧れている純真な年下の男の子が。半年前に帰郷した時は、凄い勢いで飛びついてきたのは鮮明に憶えてる。一緒に暮らしている祖父(として振舞っている老神)が羨ましそうに見てるが、そこは敢えて気にしないでおく。
その後にローゼがミアに旅先であった話をするつもりだったが、一旦中断となってしまう。今夜の営業に向けての準備中だからと言う理由で。
積もる話は店が開いた時にしてくれと、いつの間にか夕食を此処で食べる事が決定となって予約されるのであった。
☆
「あのドワーフの女将さん、ちゃっかりしてる上に強引な人ですね」
「流石はローゼの伯母、と言うべきでしょうか」
数時間後に『豊穣の女主人』で夕食を取るのが決定したフリーゼ達は、次に【ロキ・ファミリア】の
しかし、ローゼは残る事になった。あの店は大変人気があっても人手が全く足りなくて、非常に忙しい毎日を送っているから姪も手伝って欲しいと。
遠くから来たばかりの身内を働かせるのは流石にどうかと思うが、ローゼは既に予想していたかのように了承し、ミアの後ろを付いて行った。本人が嫌でないのであればと、フリーゼ達は一旦店を後にして今に至る。
「フリーゼ様、あれが【ロキ・ファミリア】の
「うーん、どう見ても館ではなく城だと思うんだが……」
二人は貰った地図を頼りに目的地である『黄昏の館』に辿り着く。
フリーゼの言う通り、目の前にある建物が名前とは裏腹に城そのモノだった。一瞬来る場所を間違えたのかと思ってしまうほどに。
何度地図を確認しても、あの城が『黄昏の館』である事に間違いないのは確かなので、リヴァルが代表して門の前に佇んでいる者達に声を掛ける。
「失礼。貴方達は【ロキ・ファミリア】の眷族で相違ないかな?」
「そうだが、何の用だ」
リヴァルに声を掛けられた門番の男性は訝るように見ている。
だがそれとは別に、もう一人いる門番の女性は、リヴァルの方を見た途端に固まっていた。彼女はエルフだから、と言えば理解出来るだろう。
「突然訪れて申し訳ない。
「はぁ? 副団長に弟だと? いくらエルフだからって、そんな与太話で通す訳には――」
「リヴェリア様ですね! すぐにお取次ぎしますので少々お待ち下さい!」
怪しい人物だと思った門番の男性が追い返そうとするが、門番の女性がすぐに了承するのであった。
「お、おい待てアリシア! お前、何を勝手に……!」
「無礼者!
予想通りと言うべきか、門番の女性エルフ――アリシアはリヴァルがハイエルフだと気付いていた。
ハイエルフを追い返すなど無礼千万と言わんばかりに鬼気迫る表情になってる所為か、男性の方は既にたじろいでいる。
門前でちょっとした一悶着が起きるも、エルフがいたお陰で取次ぐ事が出来て、『黄昏の館』に入る事が出来たフリーゼとリヴァルであった。
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