再び転生した元神はダンまち世界へ   作:さすらいの旅人

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正邪決戦③

 ローゼとリヴァルが連携技を披露した事でモンスターだけでなく、闇派閥(イヴィルス)の信者達の多くも闘気(オーラ)の海にのまれた後に爆散して散った。

 

 それによって敵味方問わず唖然としてしまうも、すぐに動きが変わった。辛うじて残っている敵を始末しようと蹂躙する【フレイヤ・ファミリア】のアレン・フローメルだけでなく、氷壁の結界で交戦中のオッタルがザルドに勝利の吉報が届く。

 

 流れが完全にオラリオ側に傾いた事で、闇派閥(イヴィルス)は浮き足立つどころか劣勢に陥っていく。その機をフィンが当然見逃す訳が無く、オラリオ冒険者達に巻き返しの指示を出したのは言うまでもない。

 

 因みにローゼとリヴァルだが、いつの間にか忽然と姿を消していた。不利な状況を一気にひっくり返した英雄達がいなくなった事に冒険者達は疑問を抱くも、指揮官(フィン)だけは察し、二人を寄越してくれたフリーゼの厚意を無駄にしないよう奮い立たせていた。

 

 

 

 

 

 

 一方、ダンジョン18階層では熾烈な戦いが繰り広げられていた。

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』

 

「ハッハッハッハ! いいぞ、そう来なくては面白くない!」

 

 『大最悪(モンスター)』こと『神獣の触手(デルピュネ)』の黒い巨体と戦っているのは、人間の中で最も力が劣る小柄な種族『小人族(パルゥム)』の少女。

 

 普通であれば非力な小人族(パルゥム)が一人で巨体モンスターに挑むなど無謀で愚かなのだが、この戦いを目にしている者達は誰一人も微塵に思っていない。全身から魔力を放出して宙に浮いているフリーゼが、負傷した傷を即座に再生する『神獣の触手(デルピュネ)』を楽しそうに見下ろしているという、余りに信じられない光景を目にしている為に。

 

 最初に攻撃を仕掛けたのはフリーゼだった。

 

 突然地面に付いていた筈の足が離れるように身体を浮かばせた直後、彼女の背後から魔力で作成されたと思われる夥しい光の剣と槍が出現させた。何の詠唱も無しに魔法と思わしきモノを発動させた事にリヴェリアは目を見開くも、フリーゼが左手でパチンッと指を鳴らした瞬間、まるで指示を出したかのように無数の光の剣と槍が発射された。突然の強襲に『神獣の触手(デルピュネ)』は応戦するも、如何せん数が多過ぎて防ぎきる事が出来ず、身体の彼方此方に刺さってしまい、激痛が走ってるように大きな悲鳴を上げていた。

 

 初撃が当たったと思いきや、まだ終わらなかった。小人族(パルゥム)の少女が次に右手でパチンッと指を鳴らした直後、それに共鳴するかのように、相手に突き刺さっていた光の剣と槍が制御を失ったかのように光り輝きながら大爆発を起こしたのだ。一本だけでも冒険者を簡単に吹き飛ばせるほどの威力なのに、数十本以上突き刺さっていた魔力の武器が連鎖するように爆発の音をダンジョン18階層全体に響かせていた。

 

 余りの威力に倒したのではないかと思われるが、そんな甘い展開にはならない。連鎖爆発を直撃した『神獣の触手(デルピュネ)』にダメージを与えても、すぐに再生し、あっと言う間に無傷な姿を見せていた。この非常に厄介な能力がある所為で、先程まで戦っていたアイズ達は苦戦を強いられていたのだ。

 

 『神獣の触手(デルピュネ)』の持つ再生能力に、フリーゼも予想外と言わんばかりに驚いていた。大ダメージを与える程の魔法を使ったにも拘わらず無かった事にされるなど、非常に歯痒いだろうと思わざるを得ない。

 

 ――と思いきや、彼女は突然笑みを浮かべながらこう口にする。『面白い。私の技と魔法にどれだけ耐えれるか見せてもらおうじゃないか』と、周囲が震え上がらせるような不穏な台詞を。

 

 その後からはフリーゼの一方的な攻撃が始まった。手から魔力の弾丸や砲撃を放つだけでなく、炎、氷、土、風、雷、光などの属性が備わったルーン魔術の攻撃魔法の数々を披露する事で、リヴェリアは人生の中で一番大きなカルチャーショックを受けていた。自分が使う魔法とは余りにも差があり過ぎると。

 

 当然、『神獣の触手(デルピュネ)』はやられっぱなしでいる訳がない。自身に何度も傷をつける矮小な存在を消そうと、口から出すブレス、爪や尾を使っての攻撃を仕掛けていた。しかし、相手が自由に空を飛べる所為もあって簡単に躱されてしまい、すぐさま反撃されてしまう。

 

「【福音(ゴスペル)】!」

 

「グギャァァァァァァァァァァァァアアッッ!!」

 

 今度はアルフィアの魔法を披露し、凄まじい音の衝撃波が『神獣の触手(デルピュネ)』に襲い掛かって巨体をズタズタに引き裂いていく。

 

「ええ!? 今のって【静寂】の魔法じゃなかった!?」

 

「馬鹿な! 何故彼女があの魔法を!?」

 

「おいおいおい! 一体何なんだよあの同胞は!?」

 

 呆然と見ていたアリーゼやリュー、ライラも含めた【アストレア・ファミリア】も大きく反応するのは無理もなかった。つい先程まで、目の前で戦っていた灰髪の女性が放っていて魔法で何度もやられかけていたのだから。

 

 そして肝心の――

 

「フリーゼ、この私の前で堂々と使うとは良い度胸をしている」

 

 【福音(ゴスペル)】の持ち主であるアルフィアは不機嫌な表情となっていたのは言うまでもなかった。

 

 それと同時に、彼女にとって聞き捨てならない言葉も耳にしていた。

 

久々に全力を出したんだ(・・・・・・・・・・・)! もっと私を楽しませろ!」

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』

 

 その台詞を聞いたアルフィアの機嫌は見る見る内に悪くなっていったのだ。

 

(つまり地上で私と戦っていた時は全力ではなかった、と言う事か)

 

 そう結論した瞬間、アルフィアは静かにブチ切れてしまう。

 

 自分に一撃を当てた事に敬意を表して少しばかり本気で戦ったのに、小人族(パルゥム)の小娘は手を抜いていたなど許せる訳がない。目的を果たす前に(・・・・・・・・)あの生意気な顔を殴らなければ気が済まないほど、今の彼女は酷く荒れていた。

 

「ね、ねぇ……何か【静寂】が怒ってるように見えるんだけど」

 

 アルフィアの凄まじい怒気を肌で感じ取ったのか、アリーゼが若干引き気味になっていた。

 

 他の【アストレア・ファミリア】眷族達も同様であり、向こうは此方に背を向けて隙だらけの筈なのに、誰一人も攻撃を仕掛ける素振りをしていない。

 

 すると、ずっと宙に浮かんでいるフリーゼが地面に着地していた。【福音(ゴスペル)】を受けて再生に少々手間取っている『神獣の触手(デルピュネ)』を見た事で、一旦態勢を整えようとしたのだろう。

 

 直後、アルフィアが動き出す。

 

「【福音(ゴスペル)】」

 

「ッ!」

 

 突然の奇襲魔法にフリーゼが振り向くも、音の衝撃波は彼女に襲い掛かる。

 

「アルフィア、貴様……!」

 

「何故お主が此処へ……!?」

 

「フリーゼお姉ちゃん!」

 

 リヴェリア達も予想外だったのか、【アストレア・ファミリア】と交戦中のアルフィアがいつの間にか此方へ来ていた事に反応が遅れていた。

 

 その中でアイズはすぐにフリーゼの方へ視線を送るも――

 

「いきなり何のつもりですか? こっちはモンスターの相手で立て込んでるのに」

 

「何じゃと!?」

 

 回避不可の魔法を直撃した筈の彼女がノーダメージである事に、初めて見たガレスは思わず驚きの声を発していた。

 

「フリーゼ、今すぐに決着を付けるぞ」

 

「出来れば後にしてもらえませんか。それに貴女も彼方にいる【アストレア・ファミリア】の相手をしてる筈では?」

 

「如何でも良い。今の私は貴様を殴らなければ気が収まらなくてな」

 

「…………はぁっ」

 

 敵とは言え、自分のやりたい事を最優先にする自分勝手(わがまま)なのは【ヘラ・ファミリア】なのかと考えてしまうフリーゼ。

 

「生憎ですが、今の貴女と戦う気はありません」

 

「お前の意思など関係無い。私がやると決めた以上付き合ってもらうぞ」

 

「やれやれ、本当に我儘な人ですね―――ん?」

 

 まだ再生に手間取っている『神獣の触手(デルピュネ)』が完全回復するまで付き合うしかないと諦めるフリーゼだが、突如ダンジョン全体に慟哭が響いた。

 

 この泣き声は明らかにモンスターではなく、ダンジョンから発しているモノだった。

 

 直後、18階層の天井に罅が入り、ナニカが出現しようとしている。

 

「何だ、アレは?」

 

「新手のモンスターか?」

 

「…………………」

 

 それが地面に着地して姿を現したのは、装甲に覆われた紫色の恐竜の化石の様な巨大な外見をしたモンスター。

 

 初めて見るモンスターなのか、リヴェリアとガレス、そしてアルフィアですらも戸惑いの様子を見せていた。

 

 『神獣の触手(デルピュネ)』とは全く異なるモンスターに誰もが警戒してる中、それはクルルと喉を鳴らした瞬間――凄まじい速度でフリーゼに突進して襲い掛かった。




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