再び転生した元神はダンまち世界へ   作:さすらいの旅人

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正邪決戦④

「……エレボス、あのモンスターも貴方が用意したの?」

 

「まさか、俺が用意したのは『神獣の触手(デルピュネ)』だけだ」

 

 フリーゼ達から少し離れた所にて、邪神エレボスは美しい女神と対峙していた。

 

 女神の名はアストレア。背中に流れる長い胡桃色の長髪に星海の如く深い藍色の瞳を持ち、清廉な雰囲気を醸し出した美しい女性で、純白の衣を纏う【アストレア・ファミリア】の主神。

 

 他派閥(ヘルメス)の眷族達を連れてダンジョン18階層へ赴いた彼女は、遠くから戦いを眺めているエレボスを発見し、こうして話していた。

 

 そんな中、突然出現した小人族(パルゥム)の少女が『神獣の触手(デルピュネ)』と戦ってるのを見て二柱(ふたり)は呆然としていたが、更に予期せぬ出来事が起きる。ダンジョンに異変が起きて、その直後に見覚えがない骨型モンスターが出現し、常人では捉えきれない機動力(スピード)で襲い掛かった。

 

 正体不明の骨型モンスターは、フリーゼ以外の冒険者(にんげん)達に興味無いと言わんばかりな様子だった。その証拠に、彼女が咄嗟に下がって斬り裂く爪を躱すと、まるで逃がさんと言わんばかりに一瞬で跳躍して口を大きく開けて喰らおうとする。

 

 立て続けに起きる異常事態(イレギュラー)に周囲は唖然としていたが、数秒もしない内にハッとする。フリーゼが突然現れたモンスターによって引き離されてしまった事でアイズがすぐに追いかけようとするも、そこをリヴェリアが阻止した。一瞬で相手に接近するモンスターなど、アイズが駆け付けたところで殺されてしまうと瞬時に理解したから。加えて『神獣の触手(デルピュネ)』が再生を終えて動こうとしていたから、それに応戦しなければ不味い状況となっている。

 

 因みにアルフィアはフリーゼの後を追おうとする動きを見せるも――

 

「チッ……とんだ邪魔(・・)が入ったか」

 

 ――舌打ちしながらそう言って警戒するリヴェリア達を意にも返さないように、アリーゼ達の相手を再開しようと去っていく。彼女が言った邪魔と言う本当の理由は、今の時点で誰も気付いていない。

 

 

 

 

(コイツ、速い!)

 

 正体不明の骨型モンスターから繰り出す爪や牙、そして長い尾を使っての素早い攻撃を後退しながら躱し続けるフリーゼ。

 

 並の冒険者なら攻撃された事に気付かず絶命してしまう速度である為、もしもアイズやアリーゼ達であれば対応出来ずに殺されているだろう。

 

(だが、それだけだ!)

 

 フリーゼは攻撃を躱しながら、前世(むかし)の頃に戦った強敵やドラゴン達の事を思い出していた。

 

 嘗て聖書の神として、兵藤隆誠として戦っていた時代に比べれば可愛い方の部類になる。パワーやスピードは勿論のこと、テクニックも兼ね備えたドラゴンと何度も戦った事があるから。尤も、ちゃんと修行してなければ殺されていたかもしれないが。

 

 眼前の骨型モンスターの攻撃は確かに脅威なのだが、前世(むかし)知識(きおく)と経験を引き継がれているフリーゼからすれば単なるスピード任せでお粗末なモノに過ぎず、相手の動作や空気の流れを読んで容易に予測出来るから簡単に躱している。

 

「クルルルッ!」

 

 対して骨型モンスターは苛立っていた。目の前の小さき存在に何度も攻撃しても全く当たらない事に。

 

 彼、もしくは彼女は、『母』である迷宮(ダンジョン)から『殺せ』と命じられて忠実に実行している。あらゆる物を斬り裂く爪と機動力を以って対象を仕留めようとしても、それが叶わず徐々に焦り始めていた(・・・・・・・)

 

 執拗に攻撃を仕掛ける骨型モンスターと、流れるように攻撃を躱し続けるフリーゼ。

 

 両者の攻防が数分以上続くも、途端に流れが一気に変わってしまう。

 

「っ! しまった!」

 

 後退しながら躱しているフリーゼだったが、途中で壁にぶつかって動けなくなってしまう。

 

 骨型モンスターは好機と見なしたのか、最速の攻撃を繰り出そうと前足の爪を突き立てた。それが的中したように、爪は小人族(パルゥム)の少女だけでなく壁にも深く突き刺さる。

 

「クルル?」

 

 骨型モンスターは違和感があるかのように首を傾げていた。対象を突き刺したにも拘わらず、肉を貫く感触が一切無かった為に。

 

 直後、眼前にいる筈のフリーゼの姿が徐々に消えていき、爪が深々と壁に刺さる光景となった。

 

「ッ!?」

 

「気付くのが遅かったな!」

 

 貫いたのは単なる残像だったと漸く認識するも、頭上から声が聞こえた骨型モンスターが視線を向けると、そこには手から既に発射寸前の闘気(オーラ)波を放とうとするフリーゼがいた。

 

 爪が壁に深く突き刺さっている所為で身動きが取れないのを見た事で、彼女は一撃で仕留めようと対象に放つ。

 

 骨型モンスターに当たって爆発――しないどころか、全身の装甲殻が光りながら吸収されたように消えた後、放った筈の闘気(オーラ)波がフリーゼに向かっていく。

 

「なっ!? くっ!」

 

 予想外の反射だったのか、フリーゼは焦りながらも片手で自身の闘気(オーラ)波を弾き飛ばした。

 

 ソレが明後日の方向へ飛んでいった数秒後、何処かに着弾して爆発するも、今の彼女は気にしてる余裕などない。

 

(どうやら闘気(オーラ)や魔法による遠距離攻撃を反射出来るようだな)

 

 魔導士にとって相性最悪なモンスターだと分かった事で、相手が自分で良かった事に内心安堵しているフリーゼ。

 

 もしも『神獣の触手(デルピュネ)』の近くで戦っていれば、リヴェリアが援護しようと攻撃魔法を放った瞬間に反射されてしまい、味方に多大な被害が及ぶのが容易に想像出来てしまうから余計に質が悪い。

 

 すると、壁に刺さっていた爪を引き抜いた骨型モンスターは、今度こそ仕留めようと瞬時に跳躍して宙に浮いたままのフリーゼに襲い掛かろうと再び爪を振るう。

 

 今度はさっきと違って動きが止まっているから当たる――

 

「舐めるなっ!」

 

「ッ!?」

 

 と思っていた骨型モンスターだが、突然対象に強く睨まれた事で自身に衝撃が走って地面に叩きつけられてしまった。

 

 バタバタと身悶えながら体勢を立て直し、自分に攻撃したと思われる対象へ視線を向けた瞬間、自身の周囲を囲うような魔力の壁が展開される。

 

「クル?」

 

 まるで『何だこれは?』と言うように自身の周囲を見る骨型モンスター。魔法による攻撃であれば自身の装甲殻によって反射するのだが、今は全く機能していない。

 

 鬱陶しいので壊そうと爪や尾を振るっているのだが、当たっても弾かれてしまう。無理なら体当たりで突破を試みるも、先程と同様に弾かる結果になる始末。

 

「成程。単なる衝撃波や、自分に攻撃する魔法でなければ反射出来ないようだ、な」

 

 魔力の壁――『防壁のルーン』に囚われている骨型モンスターを見て、ゆっくりと降下するフリーゼがそう分析していた。

 

 アレの爪が当たる瞬間、彼女は反撃として目から衝撃波を出し相手を吹っ飛ばす『遠当て』を使ったのだ。その後に骨型モンスターが僅かに悶えていた間、強固に作られた『防壁のルーン』で包囲に成功する。

 

 『防壁のルーン』は本来外からの攻撃を防ぐ手段として使うのだが、フリーゼが術式を改造した事で捕縛用して使えるようにした。因みにこれは地上でアルフィアと戦う際、リヴェリアやアイズが余計な事をしないよう既に使っていた事を補足しておく。

 

「クルルルルッッ!」

 

 結界を壊そうと何度も攻撃や体当たりをしている骨型モンスターだが、罅一つ入ることなく弾かれていた。

 

「無駄だ。その結界は物理攻撃だけでは壊せない(・・・・・・・・・・・・)

 

 フリーゼはそれ以外なら可能だと遠回しに教えるも、捕縛されている対象は全く聞いていないように何度も同じ事を繰り返している。

 

 会話が通じない相手なのは最初から分かっているのか、彼女は次の行動に移ろうとパチンッと指を鳴らした。

 

「ッ!?」

 

 骨型モンスターは覆っている結界が徐々に狭まっている事に気付いたのか、今まで以上に暴れ始めた。それでも結果は変わらず、狭くなってる事で身動きが取れなくなっていく。

 

 その後、結界が浮かび上がって球体となり、地面から離れた事でジタバタと藻掻いている。その間に結界はもう天井近くまで浮いており、フリーゼからかなり離れていた。

 

「お前とはもう少し遊びたいところだが、これ以上相手をしてられない」

 

 そう言いながら彼女はルーン魔術を使おうと指で文字を描く動作をして、出来上がった魔力の文字が浮かんでいる結界に触れた瞬間――大爆発が発生する。

 

 フリーゼが使ったのは『起爆のルーン』で、文字に触れた事で形成された魔力が暴走し爆発させてしまうルーン魔術。本来であれば魔導士が詠唱してるのを妨害する為の術なのだが、今回は魔力の結界である『防壁のルーン』を爆弾代わりに利用する事にした。前世(むかし)の頃に教えて貰ったオーディンが知れば、『ワシのルーン魔術に要らぬ改造をするでない!』と憤慨するだろう。

 

 この大爆発はリヴェリア達にも当然届いているが、此処からかなり離れているから被害はない。尤も、後から一体何があったと問い詰められるかもしれないが。

 

 爆発が収まると何かが落下してきた。それは言うまでもなく骨型モンスターであり、地面に激突してもピクリともしておらず、絶命してるのは一目瞭然だった。

 

「やはり機能しなかった、か……」

 

 爆発を反射出来ず絶命した事に、フリーゼはまるでこうなる事を予想してたかのように呟いた

 

 彼女が使ったルーン魔術は言うまでもなく攻撃魔法の部類なのだが、当てたのは骨型モンスターではなく結界であり、爆発はその結界が引き起こしたのだから、反射させる対象がいない。故に骨型モンスターの魔力反射は一切機能しないまま、凄まじい衝撃と高温による熱風を喰らうしかなかったのだ。

 

 結果として骨型モンスターの全身が罅だらけとなるも、地面に激突した数秒後、灰の塊となっていく。

 

「あれ? 確かコイツ、魔石が初めから無かった気が……」

 

 モンスターは基本的に魔石を失えば灰と化していくの事を知っているのだが、今になってから疑問を抱くフリーゼ。

 

 しかし、骨型モンスターの全身に魔石らしき物は存在しなかった。それなのに一体どうやって身体を維持し続けていたのだろうか。

 

 他とは全く異なる特殊な存在で魔石が無くても動けていたのかもしれない、と言う風にフリーゼはそう結論付ける事にした。今此処で深く考えたところで時間の無駄だと。

 

「……願わくば、お前とはもう一度会いたいものだ。その時は真っ向から相手をすると約束する」

 

 脅威ではなかったとは言え、楽しめる相手をすぐに終わらせた事が不本意だったのか、フリーゼは絶対に叶わないのを承知の上で再会の約束を取り付けた。

 

 やるべき事を終えたのか、彼女は灰の塊に背を向けた瞬間――

 

 

 ――クル……ル……

 

 

「!?」

 

 死んだ筈の骨型モンスターの鳴き声が聞こえたので瞬時に振り向くも、灰の塊が無造作に散らばっていくだけだった。

 

「………気のせいか」

 

 思わず警戒するフリーゼだが、肝心の対象はいない。あるのは霧散した残った僅かな灰が自身を通り過ぎていくだけ。

 

 もしかしたら自分は盛大な何らかのフラグを立ててしまったかもしれないと不安に思いながらも、飛翔術を使ってリヴェリア達が戦っているであろう『神獣の触手(デルピュネ)』の元へ向かうのであった。




問題があるかもしれませんが、反射の穴を突いて勝利するフリーゼでした。

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