再び転生した元神はダンまち世界へ   作:さすらいの旅人

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先週は仕事が忙しくて更新できませんでした。


正邪決戦⑤

 一方、地上では既に勝敗が決しようとしていた。勝利がオラリオ側で、敗北が闇派閥(イヴィルス)と言う形で。

 

 地上に攻め入った深層クラスのモンスター達をローゼとリヴァルが大技を使って一掃し、オッタルが元【ゼウス・ファミリア】幹部のザルドに勝利。この二つによって闇派閥(イヴィルス)側の敗北が決定となっていた。辛うじて生き残ったモンスターも各【ファミリア】が片付け、闇派閥(イヴィルス)に所属する【ファミリア】も撤退行動に移っている。

 

 一通りの状況を把握した総指揮官(フィン・ディムナ)は最後の仕事を実行しようと、単騎で敵側の総指揮官(ヴァレッタ・グレーデ)を討ち取ろうと決行した。判断能力を失う筈の高揚魔法を使ったにも拘わらず、冷静さを保ったまま突撃して次々と敵を殲滅していく光景に、流石のヴァレッタも予想外で恐怖していたとか。

 

 闇派閥(イヴィルス)が敗走している中、氷の結界が張られていた中心地でオッタルとフレイヤが、死ぬ寸前のザルドを見届けようとしている。

 

「ああ……そう言えば……」

 

「どうした、ザルド」

 

 一通り話を終えたと思いきや、ザルドは何かを思い出したように呟いたのをオッタルは聞き逃さなかった。

 

「あの二人……ローゼ・グランドとリヴァル・リヨス・アールヴ……奴等との決着を……つけられなかったのが……残念だ」

 

「それはワタシ達の台詞よ」

 

「こんな事になるなら、先に戦えば良かったな」

 

「「!」」

 

 第三者が発した二人の声に反応したオッタルとフレイヤが振り向くと、長身なドワーフの女性とハイエルフの男性がいた。

 

「お前達は……!」

 

「あら」

 

 オッタルとフレイヤは初対面だが知ってはいた。【フレイヤ・ファミリア】前団長の姪と、【九魔姫(ナイン・ヘル)】の実弟が【ロキ・ファミリア】に保護されている事を。

 

 特に二人はローゼを凝視している。彼女が団長を務めていた若い頃のミア・グランドと瓜二つだから、当時の事を思い出してしまう程だった。

 

「【フレイヤ・ファミリア】の主神フレイヤと現団長のオッタルさん。貴方達の事はミア伯母様から聞いてるわ」

 

「お初にお目にかかる。本来なら礼節を以って接さなければいけないのだが、生憎今は立て込んでいるので省略させて頂く」

 

 言うべき事を言ったローゼとリヴァルは、倒れているザルドへ近付いていく。

 

「全く。いずれ決着を付けようとそっちが言ったのに、約束を果たさず死ぬなんてルール違反よ」

 

「はは……それは、すまなかったな……」

 

「【暴喰】ザルド、剣を扱う私としては貴殿と一対一で戦いたかった」

 

「俺もだ……。出来れば……もっと早く……会いたかったものだ……」

 

 一度しか会ってないにも拘わらず、まるで仲の良い友のような会話をしている。

 

 心残りがありながらも、ザルドは安らかな笑みを浮かべながら目を閉じて――逝くのであった。

 

 男の死を見届けたローゼとリヴァルは黙祷を捧げた後、この場から去ろうとする。

 

「ローゼ、だったわね。ちょっと良いかしら?」

 

「何よ」

 

 フレイヤが引き留めるとローゼは足を止め、少々煩わしそうに彼女を見る。

 

「こんな時に言うのもなんだけど、貴女、私の【ファミリア】に入らない? ミアの姪なら大歓迎よ」

 

「悪いけど、遠慮するわ」

 

 全く興味無いと言わんばかりにローゼはリヴァルを連れて、今度こそ去っていく。

 

「「………………」」

 

 余りにも素っ気なく拒否された事にフレイヤだけでなく、一緒にいるオッタルも呆然とするのであった。

 

 

 

 

 

 

 場所は変わってダンジョン18階層。

 

「お待たせしました」

 

「フリーゼか!」

 

「やっと戻ってきおったか!」

 

「お姉ちゃん!」

 

 骨型モンスターを倒したフリーゼが飛翔術を使って戻ると、リヴェリア達は驚きながらも安堵の声を上げていた。

 

「あの新種モンスターはどうした? それに先程の爆発は一体何だったのだ?」

 

「私がルーン魔術を使って倒した、とだけ言っておきます」

 

「なっ!」

 

 リヴェリアからの問いをフリーゼが簡潔に答えると、質問をした当の本人が驚愕を露わにする。

 

 同時に気になった。未知のモンスターを相手に一体どのようなルーン魔術を使い、此方にも爆風が届く大爆発を起こさせたのかを。

 

 一人の魔導士として問い詰めたい衝動に駆られるハイエルフだが、今は戦闘中である為、如何にか抑え込もうとしている。

 

「それはそうと――アレは随分と変貌しましたね」

 

 フリーゼが向けている視線の先には、少し前まで彼女が戦っていた『神獣の触手(デルピュネ)』がいる。まるで別の存在ではないかと思われるような醜悪な姿となって。

 

「お主が追い詰めた事で此方は何とか戦えたのじゃが、あの再生能力の所為で倒しきれなくてな」

 

「私達では奴の進行を抑え込むのが手一杯だった……!」

 

「ごめんなさい、お姉ちゃん」

 

 簡潔に状況を話すガレスとリヴェリアとは別に、申し訳なさそうにシュンとした表情で謝って来るアイズ。

 

「ふむ……」

 

 状況を理解したフリーゼが金髪幼女の頭を宥めるように撫でながら、チラリと背後の方を見た。

 

 そこには吐血したと思われるアルフィアが、【アストレア・ファミリア】の少女達と攻防を繰り広げており、両者全く譲らない戦いをしている。

 

(あんな状態でよくあそこまで戦えるものだ)

 

 【静寂】のアルフィアが生まれつき『不治の病』を患っており、長時間の戦闘は不可能であることを既に知っている。

 

 先日の戦闘でオーラが急激に低下しただけでなく、取って付けた理由(・・・・・・・・)を述べて退散したのかをフリーゼは疑問を抱いていたが、フィンから話を聞いた事で一気に疑問が解けた。

 

 そしてダンジョン18階層で再会すると、既にオーラの半分近く消耗していた。それを知った時点でフリーゼはアルフィアと再戦する気は失せている為、『神獣の触手(デルピュネ)』や先程戦った骨型モンスターの方へ意識を向けていたのだ。

 

(一先ずアルフィアの方は後回しにして、今のところは――)

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』

 

 すると、『神獣の触手(デルピュネ)』が突然荒れるような雄叫びを上げた。自身を何度も追い詰めたフリーゼを、忌々しい存在として認識している為に。

 

 再び動き出そうとして警戒するリヴェリア達だが――

 

「五月蠅い」

 

『ギャァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!』

 

 煩わしそうに言いながら左手でパチンと指を鳴らした瞬間、無数の光の剣と槍が出現すると同時に射出された。

 

 再生してもダメージを負っている『神獣の触手(デルピュネ)』は躱す暇もないのか、大して防ぐ事なく殆ど身体に突き刺さってしまい、またもや激痛が走って悲鳴を上げてしまう。直後、フリーゼは右手でパチンと鳴らした瞬間、光の剣と槍は光り輝きながら連鎖の大爆発を起こす。

 

『オ………オ……オォォォォ……!』

 

「ほう、まだ再生するか」

 

 身体の所々が抉られるように失いながらも必死に再生する『神獣の触手(デルピュネ)』に感心の声を上げるフリーゼ。

 

「……リヴェリア、先程まで必死に戦っていたワシ等は一体何だったんじゃ?」

 

「言うな、ガレス……!」

 

「お姉ちゃん、本当に凄い……!」

 

 自分達の苦労は一体何だったのかと叫びたい衝動に駆られるガレスとリヴェリアに対し、アイズだけはフリーゼに憧憬の眼差しを送っている。

 

(やはりアレを殺しきるのは体内にある魔石を砕くか、もしくは魔石ごと肉体を消し飛ばすかないようだな)

 

 このまま相手をしてもフリーゼの勝利は変わらないが、如何せん時間が掛かってしまう。彼女としてはもう少し『神獣の触手(デルピュネ)』の相手をしたいところだが、【アストレア・ファミリア】と交戦中のアルフィアが急に標的を変えて邪魔されたら堪ったものではない。

 

(仕方ない。さっさと終わらせるか)

 

 故に少々惜しいが片付けようと結論したフリーゼは、再生中の『神獣の触手(デルピュネ)』に向かってゆっくりと歩く。新たなルーン魔術を使う仕草をしながら。

 

「フリーゼ、一体何をする気だ?」

 

 ルーン魔術を使おうとしてる事を察したリヴェリアが思わず問う。

 

 直後、フリーゼが描いた魔力の文字は『神獣の触手(デルピュネ)』に向かっていく。

 

「今から大サービスでお見せしましょう、リヴェリアさん。ルーン魔術の中でも最高峰である『原初のルーン』の一つを」

 

「な……!」

 

 戸惑いの表情を見せるリヴェリアを余所に、描かれたルーン文字は『神獣の触手(デルピュネ)』の身体に付着した直後に光り出す。

 

『オオオォォォォォオオオオオオオオ!』

 

 自身の身体に妙な物が付いたのを気付いたのか、『神獣の触手(デルピュネ)』が反撃に移ろうと口を大きく開けてブレスを吐こうとする。

 

 しかし――

 

『オオオオ――――ア……ガッ……!』

 

 突如動きが止まったと思いきや、力が抜けたようにそのまま倒れ込んでしまう。

 

 ダメージを受ければ即座に再生する筈のモンスターが、まるで本当に死んでいるようにピクリとも動いていない。

 

「お、おいリヴェリア、一体何が起きたのだ?」

 

「……分からない。今言えるのは、フリーゼのルーン魔術であのモンスターが死んだ、としか……」

 

 状況が呑み込めないガレスとリヴェリアは眼が点になってる中、アイズはフリーゼに近付く。

 

「お姉ちゃん、あのモンスター倒したの?」

 

「ああ」

 

 あっさりと頷くフリーゼに、聞いていたリヴェリアは酷く狼狽していた。

 

 彼女が使ったルーン魔術――『死のルーン』は、対象に絶対的な死を与える原初のルーン。再生能力を持つ『神獣の触手(デルピュネ)』でも、死の刻印を刻まれたら生命活動を強制的に停止させ、そのまま死を齎す事になる。

 

「さて、残りは――」

 

 『神獣の触手(デルピュネ)』が絶命したのを確認したフリーゼは、最後の障害であるアルフィアへと視線を向けると――

 

 

「【祝福の禍根、生誕の呪い、半身喰らいし我が身の原罪(げんざい)】――」

 

 

「アルフィアが詠唱、か」

 

「「ッ!?」」

 

 聞き覚えの無い詠唱をしており、呆然としていたリヴェリアとガレスも途端に反応して振り向いた。




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