再び転生した元神はダンまち世界へ   作:さすらいの旅人

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今回はフライング投稿です。


正邪決戦⑥

「【(みそぎ)はなく。浄化はなく。救いはなく。鳴り響く天の音色こそ私の罪】」

 

 

「この呪文……そして、この魔力の総量! 間違いない、アルフィア最後の『魔法』!」

 

海の覇王(リヴァイアサン)に止めを刺した、必殺(アレ)か!? あやつ、この階層ごとワシ等を吹き飛ばす気か!?」

 

 リヴェリアとガレスの台詞を聞いたフリーゼは、アルフィアが広範囲な威力の魔法を放とうとしてるのを察した。

 

 それは戦っている【アストレア・ファミリア】も同様で、詠唱を阻止しようと一斉攻撃を仕掛けるも、アルフィアはまるで意にも介さないように躱し続けている。しかも反撃まで行っており、まるで隙が無いと言わんばかりだ。

 

(あれが戦闘や機動を行いながら魔法を発動させる高等技術――『並行詠唱』、か)

 

 初めて見る『並行詠唱』を興味深く観察しているフリーゼ。

 

 彼女も魔導士の真似事をしているが、これまで一度も詠唱をしたことが無い。何せルーン魔術は詠唱を必要とせず、指で魔力の文字を描いて発動させているだけだから。尤も、ルーン文字の理解だけでなく相応の知識が必要とされるため、ルーン魔術は決して簡単なものでない事を補足しておく。

 

 それはそうと、詠唱する際にアルフィアから発する魔力が尋常ではない。ガレスの言った通り、今いるダンジョン18階層を吹き飛ばしてしまうのは確かだった。

 

「【神々の喇叭(らっぱ)、精霊の竪琴(たてごと)、光の旋律、すなわち罪禍の烙印】【箱庭に愛されし我が運命(いのち)よ――砕け散れ。私は貴様(おまえ)を憎んでいる】!」

 

「何故だ、アルフィア……どうして破滅に突き進む! どうして世界を壊す! それほどの力を持っていながら、一体どうして!」

 

 本当に何もかも吹き飛ばそうとする元英雄の行動に、リヴェリアが思わず叫んだ。嘗て世界を救おうとしていたのに、何故真逆の行動をしているのかと。

 

 その叫びは当然アルフィアも聞こえている筈だが、当の本人は詠唱を続けている。

 

「【代償はここに。罪の証をもって万物(すべて)(めっ)す】――【哭け、(せい)(しょう)(ろう)】!」

 

 詠唱が完了したのか、アルフィアの頭上からに灰銀の巨大な『鐘』が顕現される。

 

(成程、これは確かに不味い……!)

 

 『鐘』となって極限に凝縮されている魔力の塊を見たフリーゼは、確かにこの周囲を簡単に吹き飛ばせる威力だと改めて理解した。

 

「【ジェノス・アンジェラス】」

 

 アルフィアが魔法名を口にした瞬間、『鐘』が爆砕すると同時に周囲一帯を全滅させる『滅界の咆哮』が解き放たれる。

 

「【魂の(アタラ)――」

 

「―――待ってたぜぇ、てめえの『必殺』!」

 

 以前に見た魔法をルーン魔術で再現しようとしていたフリーゼだったが、桃色髪の女性小人族(パルゥム)が丸みを帯びた『盾』を構えた事で、極大の咆哮を相殺する事となった。

 

「なっ――私の『魔法無効化(シレンティウム・エデン)』!? 何故!?」

 

 流石のアルフィアも予想外だったのか、今までの平静から一変して驚愕の表情を見せていた。

 

 得意気な表情をしている同胞の少女がネタ晴らしをする気だったので、フリーゼは周囲に気付かれる事なく発動仕掛けていたルーン魔術を強制解除している。

 

「なに言ってんだ、しっかりもらいに行ってやったじゃねえか」

 

「っ!」

 

 途中から参戦したフリーゼは何の事を言ってるのか全く分からないが、アルフィアは心当たりがあったみたいで何かを思い出していた。

 

 その後に桃色髪の女性小人族(パルゥム)――ライラは『盾』についての詳細を語った。嘗て大伸(ゼウス)が魔法効果を盗み取る効果を持つ盾――『魔除けの大盾(アイギス)』について。

 

(やはりこの世界は、嘗て聖書の神(わたし)の知る神々と同様の伝承があるようだ、な)

 

 二度目の転生をした聖書の神は、この世界に自身が知る神々の名を聞いた時に驚くも、旅を通じて全くの別神であると判明した。伝承通りであっても、性格だけでなく、何故か性別も異なってる神々もいたから。因みにオラリオで世話になってるロキが男神じゃなく女神と知った際、彼女だけでなくローゼやリヴァルも内心驚いていたとか。

 

 そんな如何でも良い事を考えているのとは別に、【アストレア・ファミリア】が見逃さないと言わんばかりに反撃を仕掛ける。

 

 必殺級の魔法を行使した反動で動けないのか、アルフィアは彼女達が放つ渾身の一撃や魔法を受けざるを得なかった。

 

 そして――

 

「………お前達の、勝ちだ」

 

 初めてダメージを負ったアルフィアは更に吐血しながらも、自身の敗北を認めた。

 

「まったく、わずらわしい、雑音どもめ……よくも………よくぞ………(わたし)を、打ち破った……」

 

 【アストレア・ファミリア】に称賛の言葉を述べたアルフィアは、用が済んだと言わんばかりにある方向へと脚を動かす。

 

「……フリーゼ、貴様も既に……用は済んだはずだ。決着を……つけるぞ」

 

「この状況でまだ拘るんですね、貴女は……」

 

 既に瀕死の身でありながらも再戦を求めようとする灰髪の魔女に、フリーゼは驚きを通り越して呆れるしかなかった。

 

 リヴェリア達や【アストレア・ファミリア】も彼女の執念に驚きながらも、敢えて手を出さずに見守っている。あの状態で戦っても、フリーゼの勝利は揺るがないと確信していたから。アイズだけは助太刀するように行こうとするも、母親(ママ)によって阻止されてるのを補足しておく。

 

「そんな状態で戦えるとは思えませんが」

 

「五月蠅い……! 私がやると……言った以上……やるぞ……!」

 

「……はぁっ。仕方ありませんね」

 

 このまま捕縛したところで無駄だと分かったのか、フリーゼはアルフィアの要求を呑む事にした。

 

 未だに余力を残してるフリーゼ、瀕死状態のアルフィア。どちらが勝つのかなど予想するまでもない。

 

 ――のだが、此処で予想外な状況が起きてしまう。

 

 フリーゼが懐から何かを出した後、それをアルフィアに向けて放り投げる。

 

「なんだ……これは……豆?」

 

「それを食べて下さい。毒ではありませんから」

 

 手で受け取ったアルフィアが見たのは緑色の豆らしき物で、フリーゼは食べるように促した。

 

「…………………」

 

 本当なら要らぬ世話だと投げ捨てるアルフィアだが、相手がフリーゼだからなのか、珍しくも素直に受け入れて食べようとする。

 

 小さな豆をポリポリと咀嚼してゴクリと飲み込んだ数秒後――

 

「ッ!? か、身体が……!」

 

 先程まで瀕死状態だった筈のアルフィアが、忽ちに精気を取り戻したかのような表情になっていく。

 

 それを見たリヴェリア達が驚愕しながらも、その内の一人がフリーゼに声をかけた。

 

「お、おい、フリーゼって言ったな。アンタ、あの女に一体何を食わせた?」

 

「私が作った特製の回復用アイテムだ。傷や体力、ついでに魔力も完全に近い状態まで回復する事が出来る」

 

「………………………ふっっっっざけんなぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!!」

 

 フリーゼが密かに作った回復用アイテム――『神豆(しんず)』の効果を軽く教えると、目が点になっていた同胞の少女が一気に駆け寄りながら胸倉を掴んでくる。

 

「おいコラてめぇぇぇえええ! あたし等が命懸けでやっと勝ったってのに、その苦労を無駄にさせんじゃねぇぇ!!」

 

 同胞の少女――ライラの叫びは【アストレア・ファミリア】を代表するモノだった。

 

「ええっ!? ちょっ、本当に回復してるの!?」

 

「何と言う事を……!」

 

 彼女だけでなく、赤髪の少女や金髪のエルフ、他の眷族達からも抗議の視線をフリーゼに向けていた。

 

「フリーゼ! アルフィアを回復させるなど一体何を考えている!?」

 

「何をやっとるんじゃお主は!」

 

「お姉ちゃん、そんな凄いアイテム持ってるんだ」

 

 それは当然、リヴェリアとガレスも許容できないと言わんばかりに猛抗議していた。アイズだけは全く見当違いな事を言ってるが、一切誰も突っ込まれない。

 

 敵に塩を送るとは言え、明らかに度が過ぎてる為に彼女達がそうなるのは無理もない。

 

 しかし、当の本人は――

 

「大丈夫ですよ、ちゃんと責任は取りますから。なので取り敢えず―――放せ」

 

「っ!」

 

 簡単に聞き流した後、胸倉を掴んでいる同胞に少々威圧を込めて言うと、恐怖を感じたライラが思わず手を放した。

 

 フリーゼはゆっくりと歩き、回復したアルフィアと対峙する。

 

「では、あの時の続きをしましょうか」

 

「……フリーゼ、一体何を考えている? 私を回復させるなど、正気とは思えぬな」

 

「大した理由はありません。死にかけの貴女に勝っても何の意味もないので、いっそのことフェアで戦おうと思ったまでです」

 

「余計な真似を。お前は私を倒す最大の機会を不意にしたのを後悔することになるぞ」

 

「そうならない事を祈りますよ」

 

 まるで世間話みたいに会話をする二人。

 

 余りにも場違いな光景にガレスと【アストレア・ファミリア】は困惑している。

 

 すると、フリーゼがアルフィアに与えた豆を取り出して、今度は自身が食べて飲み込んだ瞬間、全身から闘気(オーラ)を放出させた。

 

「さて、これでお互いに回復しました。これが最後の戦いになるなら、派手にやりましょうか」

 

「………いいだろう。ふんっ!」

 

 不服な表情を見せるアルフィアは思考を切り替えた途端、全身に気合いを入れるように声を発すると、全身から凄まじい魔力を放出させていた。

 

 フリーゼは勿論の事、リヴェリア達も声を失っている。

 

「これは驚きました。ソレはいつから出来るようになったんですか?」

 

「地上でお前と戦った後だ。それに私は一度見た動きを模倣出来る性質でな。益してやお前が出来る事を、私に出来ぬ道理はない」

 

「……簡単に模倣出来るものじゃないのですが」

 

 アルフィアが『災禍の怪物』と謳われるほど才能に満ち溢れた傑物とは聞いていたが、前世(むかし)の頃に会得した技術を簡単に模倣された事にフリーゼは内心驚愕している。

 

 ローゼやリヴァルですら闘気(オーラ)を習得させる事から始めて出来るようになったと言うのに、目の前の相手は魔力で応用して再現させるなど、一体誰が想像しただろうか。

 

「まぁ良いでしょう。歯応えのある相手が厄介になるほど、私としても倒しがいがある……!」

 

「その生意気な口を二度と叩けなくしてやろう」

 

 互いに全身からオーラを放出するフリーゼとアルフィアは――

 

「「【福音(ゴスペル)】」」

 

 片はルーン魔術を、片は超短文詠唱の魔法を行使するも、同時に同様の魔法名を口にして再戦を開始した。

 

 両者が放った音の衝撃波は激突した瞬間、互角の威力と証明するように相殺されてしまう。

 

 そして――

 

「「はぁぁぁぁぁぁ!」」

 

 一瞬で接近した二人は闘気(オーラ)、もしくは魔力を込めた拳をぶつけた事で、ダンジョンに衝撃と音を響き渡らせた。




途中からオリジナル話として、フリーゼとアルフィアの再戦と言う流れにしました。

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