再び転生した元神はダンまち世界へ   作:さすらいの旅人

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オラリオにいる身内に会いに行こう②

 アリシアと言う女性エルフのお陰で『黄昏の館』に入る事が出来たフリーゼとリヴァルは、非常に恭しい態度を取っているエルフ達によって応接室へ案内された。

 

 神聖視している王族(ハイエルフ)が『黄昏の館』に来たと周知された事で、多くのエルフ達が挙って名乗りを上げたのだ。余りの勢いにフリーゼだけでなく、【ロキ・ファミリア】の眷族達も呆れるように見ていたのは言うまでもない。因みにリヴァルはもう慣れているのか、敢えて指摘せずされるがままだった。

 

 応接室へ案内されて数分後、目的の人物が現れる。

 

「っ! ……久しぶりだな、リヴァル」

 

「そうですね。姉上とお会いするのは里を出て以来でしょうか」

 

 入って来た人物――リヴェリア・リヨス・アールヴは、ハイエルフとしての立ち振る舞いなど気にする事なく久しぶりにあった弟に再会の抱擁をしていた。

 

 ハイエルフの姉弟は里を飛び出してから二十年以上会っていない。だが、会ってなくても手紙でのやり取りはしており、互いの状況を簡単に記している。

 

 因みに数年前(せんじつ)の手紙で、今まで一人旅をしていたリヴァルが女性小人族(パルゥム)を主として忠誠の誓いを立てたと知った際、リヴェリアは大層驚いていたとか。

 

 それはそうと、前世(むかし)の頃に家族愛を大事にしているフリーゼとしては二人の邪魔をしたくないが、本題に入らせる為に態と咳払いをしようとする。

 

「んんっ。再会に水を差して申し訳ありませんが、そう言う事は私がいない所でやって頂きたいです」

 

「あっ……す、すまない」

 

「これは失礼致しました、フリーゼ様」

 

 フリーゼの台詞にリヴェリアはハッとしながら離れると、リヴァルも大変申し訳なさそうに謝罪していた。

 

 弟が同行している女性小人族(パルゥム)を敬称で呼んでいる事に疑問を抱くも、それは後で聞こうとソファに座って対面する。

 

「こほんっ。申し訳ない、私とした事が礼を欠いてしまった」

 

 そう言いながらリヴェリアは、対面しているフリーゼに自己紹介から始めようとする。

 

「私はリヴァルの実姉リヴェリア・リヨス・アールヴだ。【ロキ・ファミリア】の副団長を務めている」

 

「初めまして、フリーゼ・ウィステと申します。どうか私の事はフリーゼとお呼び下さい」

 

 倣って自己紹介をするフリーゼに、ピクリと反応するハイエルフの姉。

 

「お前が以前リヴァルの手紙に書いてあった、忠誠を誓った主とやらか」

 

「……貴女の弟君がどのように記したかは存じませんが、恐らく私で間違いないかと」

 

「そう畏まらなくていい。私もリヴァルと同様の接し方をしてくれると助かる」

 

 リヴェリアは自身がハイエルフでも他種族相手に恭しい態度を取って欲しくない為、普段の接し方をして欲しいと言ってきた。

 

 彼女の心情はフリーゼも理解していると同時に、この世界のエルフは非常に面倒な種族だと頭を悩ませている。数ヵ月前には小人族(パルゥム)の主を侮辱したエルフがいて、激怒しそうになったリヴァルをローゼと一緒に宥めるのが一番大変だったと補足しておく。

 

「ではなるべくそうします。けど初めて会ったばかりなので、暫くは『リヴェリアさん』とお呼びしますので」

 

「ああ、分かった」

 

 互いに接し方と呼び方を確認したところで、リヴェリアは一番気になっている事を尋ねる。

 

「フリーゼ。弟がお前を主と見なしているそうだが、一体どう言う経緯でそうなったのだ?」

 

「それについては以前に記した手紙で知っている筈ですが」

 

 リヴァルが代わりに答えるも、如何せん信じられないみたいな表情になるリヴェリア。

 

 フリーゼとしては彼がどんな風に書いたのかは気になるが、それは後で聞いておくことにした。

 

「内容が内容だけに余り実感が湧かなくてな。そう言えば『未知の魔法』とも書いてあったが、出来れば具体的に教えて欲しい」

 

「………姉上、もしやその魔法を知りたいだけなのでは?」

 

 リヴァルは知っている。姉のリヴェリアが里を飛び出したのは、未知の世界を知る為である事を。

 

 文化や価値観は勿論のこと、特に知りたいのは魔法。冒険者になり、魔導士として活動する彼女は魔法の知識に関して人一倍貪欲になっている。可能であれば自分も使えるようになりたいと願うほどに。

 

「何の事だ。私は姉として、弟が主と見なしている者が本当に相応しいのかどうか聞いているだけなのだが」

 

 尤もな言い分かもしれないが、リヴァルとしては白々しい言い訳にしか聞こえなかった。

 

「私の魔法ですか。別に構いませんが、その代わりとして、リヴェリアさんが扱う魔法を簡易的に教えて下さるのでしたら」

 

「ふむ、等価交換か」

 

 無償で教える気が無いフリーゼに、リヴェリアは当然の要求だと内心頷いている。

 

 同時に応接室に来たのが自分だけで良かったと安堵していた。もし此処に他のエルフがいれば絶対面倒な事になっていたと。

 

 フリーゼがリヴェリアに等価交換を求めた瞬間、激昂したエルフが『小人族(パルゥム)如きがリヴェリア様に無礼極まりない!』等と捲し立てるのが容易に想像出来る。そうなれば折角向こうから教えてもらえる未知の魔法が聞けず仕舞いになるどころか、リヴァルも酷く不快になって、彼女を連れて本拠地(ホーム)を出て行くだろう。

 

「ではそれで手を打とう。言い出したのは私だから、先に此方の魔法について教えておく」

 

「そう言って頂けると助かります」

 

「あの、フリーゼ様……」

 

 リヴェリアとフリーゼが交渉成立として済ませようとするも、主の隣に座っているリヴァルが恐る恐ると言った感じで呼び止めた。

 

「いくら私の身内でも、フリーゼ様が扱う魔法を不用意にお教えしない方が宜しいかと」

 

「問題ありませんよ。此方も簡易的な情報しか教えませんから」

 

「いえ、そうではなくてですね。姉上は魔法について何でも知りたがる性格なので、その後には何かあれば根掘り葉掘り訊いてくるかと――」

 

「ほう? リヴァル、お前が私をそんな風に見ていたとは心外だな。どうやら少し見ない間に随分生意気になったようだ」

 

 遠回しに止めた方が良いと教えるリヴァルだが、リヴェリアが聞き捨てならないと言わんばかりに弟を睨む。

 

 鋭い眼光を光らせる姉に、弟は失言だったと内心焦り出す。

 

「いやいや姉上、私は別に貶したつもりでは……!」

 

「ならば後で私の部屋でジックリ話し合おうじゃないか。良いな?」

 

「………は、はい」

 

 リヴァルは姉に逆らえないのか、渋々と頷くしかなかった。

 

 前世(むかし)リヴァル(ヴァスコ)を知るフリーゼ(リューセー)からすれば意外な光景だが、転生した今世(いま)では随分仲の良い姉弟だなぁと微笑んでしまいそうになる。彼を慕っていた前世(むかし)の教会信者達からすれば卒倒ものだが。

 

「よし、では私の魔法だが――」

 

 互いの魔法を教える事になった為、先ずはリヴェリアから説明を始めようとする。

 

 フリーゼはこの世界で扱われる魔法については一通り知っている。最初から使える魔法特化種族のエルフとは別に、主神より『神の恩恵(ファルナ)』を与えられた後に会得可能である事を。

 

 とは言え、そんな簡単に会得できる物ではない。度重なる戦闘経験を積んで【ステイタス】更新の際に会得、もしくは貴重品の『魔導書(グリモア)』と言うアイテムで強制発現させる、と言う二通りの方法しかない。

 

 リヴェリアは魔法特化種族の上位である王族妖精(ハイエルフ)だからか、魔導書(グリモア)を使わずとも魔法を発現させていた。だがそれとは別に、本来三つまでしか覚えれない魔法に工夫を凝らした事で、攻撃・回復・防御の合計九種類の魔法を扱える事に成功。故に彼女は【九魔姫(ナイン・ヘル)】の二つ名を与えられ、自他共に認めるオラリオ最強の魔導士として知れ渡る。

 

「――とまあ、簡易的だが私の扱う魔法についてはこんなところだ」

 

「ふむふむ、成程」

 

 魔導士についての他、自身が扱う魔法については此処までと説明を終えるリヴェリア。

 

 本来であれば簡単に教えられない内容ばかりだが、向こうが扱う魔法を教えてくれる以上はある程度妥協しなければならない。これでもし向こうがいい加減な事を言えば、身内が主と認めている人物であっても簡単には許さないつもりでいる。

 

 この世界についての魔法を簡単に訊いたフリーゼは、前世(むかし)の魔法とは異なると改めて理解した。

 

 リヴェリアの説明の中には、詠唱する事で魔法が発動すると言っていた。その時点で冒険者が扱う魔法の殆どが詠唱式で、強力であればあるほど発動させるのに時間が掛かると聞いて、魔導士は利点と欠点がハッキリして少々難儀な所がありそうだ。

 

 詠唱式の魔法だと判明した時点で、フリーゼは少々後悔している。これから自分が教える魔法は、リヴェリアが教えた魔法の常識を大きく覆してしまう為に。

 

 向こうが等価交換に応じてくれたのだから、勉強代だと割り切ってフリーゼは腹を括る事にした。

 

「では今度は、其方が扱う魔法を教えてもらおうか」

 

「分かりました。私が教える魔法、正確には『ルーン魔術』と呼ばれるモノでして」

 

(主よ、北欧のオーディン殿から学んだ魔術を姉上に教える気だったのですか)

 

 フリーゼが前世(むかし)の頃に学んだルーン魔術の概要を教える事に、リヴァルは少しばかり不味いのではないかと内心危惧する。

 

 その不安が的中したように、ルーン魔術の概要の一つである『詠唱は不要』と言う事を教えると――

 

「術式を理解していれば詠唱せずに発動出来るだと!? フリーゼ、出来ればもう少し詳しく教えてくれないか!」

 

 初めて聞く未知の魔法と分かったのか、リヴェリアは物凄い勢いで喰いついてきた。

 

 それどころか、ルーン魔術は『神の恩恵(ファルナ)』が無くても、魔力と知識があれば習得可能と聞いた事で詳細を訊き出そうとしている。

 

「申し訳ありませんけど、私が教えられるのは此処までになります。お互い簡易的な情報のみ公開すると承諾した筈ですが」

 

「ぐっ……た、確かにそうなのだが……」

 

(はぁっ、やはりこうなったか)

 

 是非ともルーン魔術を知りたい教わりたいと、姉の知的好奇心が疼いているのが丸分かりである事に内心嘆息するリヴァル。

 

 すると、リヴェリアが突然弟の方へ視線を向ける。

 

「確認するがリヴァル、お前はルーン魔術とやらをフリーゼから教わっているのか? 更には使えるのか?」

 

 二十年以上経っても全く変わっていない事に弟が少々呆れている中、リヴェリアは突然質問してきた。

 

「え、えっと……」

 

 リヴァルはこの世界の扱う魔法は使い勝手が良くないと前世(むかし)と比較した事で、今もフリーゼからルーン魔術を教わっている。それは当然、この場にいないローゼも含めて。

 

 教わっている二人は未だに原初のルーンを扱えないが、戦闘だけでなく旅の最中でも便利に扱えるほど使いこなしており、最早欠かせないモノとなっている程だ。

 

 自分もルーン魔術を使えると答えた瞬間、リヴェリアは即座に弟を自身の部屋に連れて根掘り葉掘り問い質すだろう。そうなる事を既に想像してるから、リヴァルは返答に困っている。

 

 この場を切り抜けるにはどうすれば良いのかと必死に考えている中、応接室にある扉が突然開く。

 

「た、大変っす、リヴェリアさん! 緊急要請っす!」

 

 入って来たのは黒髪が逆立った少年で、余程慌てているのか、フリーゼとリヴァルを気にしてる余裕が無かった。

 

「なんだ、ラウル。騒々しい。今は取り込み中だぞ」

 

「も、申し訳ないっす! でもまたアイズさんが脱走……ゲフンゲフン! もとい、また一人でダンジョンに行ってしまいまして!」

 

「なに? あの利かん坊め、また懲りずに行ったか……!」

 

 アイズと言う名前を聞いた事で、リヴェリアはこんな時にと思いながらも、この場は一旦ルーン魔術について訊き出すのを諦めざるを得なかった。

 

「すまない、二人とも。折角訪ねてきたところ申し訳ないが、急な用事が出来てしまった」

 

 そう言って話は打ち切りとなってしまうも――

 

「そうだ、リヴァル。まだ宿を取っていないなら、フリーゼと一緒に此処で泊まっても構わないぞ」

 

「お気遣いに感謝しますが、もう既に宿は確保していますのでお気になさらず」

 

 さり気なく引き留めようとするリヴェリアだったが、リヴァルは既に宿を取っていると嘘を吐いて何とか事無きを得た。

 

 

 

 

「貴方のお姉さんは魔法に関して随分積極的でしたね」

 

「見苦しい姿をお見せして申し訳ありません。ですが、元はと言えばフリーゼ様がルーン魔術について触れなければ、あんな事にはならなかったかと」

 

「……はい、私も悪かったです。さて、それはそうとローゼがいる『豊穣の女主人』に行きましょう。着いた頃には営業の時間でしょうし」

 

「おお、そうですな。では参りましょう」

 

 二人はそう言って、まるで逃げるように『黄昏の館』を後にするのであった。




~フリーゼとリヴァルがいなくなった後~

リヴェリア「全く、アイズが余計な事をしなければ……!」

???「どうしたんだい、リヴェリア。随分お冠だね」

???「何か遭ったのか?」

リヴェリア「フィンにガレスか。お前達が戻ってきたと言う事は、ヴァレッタを捕らえたのか?」

フィン「残念ながら逃げられてしまったよ」

ガレス「フィンが来たと勘付いたのか、闇派閥(イヴィルス)の信者を捨て駒にして逃走に専念しおったわ」

リヴェリア「相変わらず不愉快な事をしてるようだな」

フィン「ま、ヴァレッタのそう言う事は今に始まった訳じゃないけどね。ところで話を戻すけど、君の方も何か遭ったのかい?」

リヴェリア「大した事じゃない。旅をしてる弟と同行者が此処へ来てな」

ガレス「お主の弟じゃと? ほほう、それは初耳じゃな」

フィン「僕も挨拶したかったけど、どうやら間が悪かったようだね。それに同行者と言ってたけど、一体何者なんだい?」

リヴェリア「小人族(パルゥム)の娘だ。経緯は不明だが、弟がその娘を主と慕っているらしい」

ガレス「何じゃ? その娘っ子はフィンみたいな小生意気な奴なのか?」

フィン「ガレス、後で僕とじっくり話し合おうか。それで、その小人族(パルゥム)の女性は――」

リヴェリア「お前に教えると面倒な事になりそうだから、これ以上は黙秘させてもらう」



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