再び転生した元神はダンまち世界へ   作:さすらいの旅人

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豊穣の女主人

 時刻は夕方となり、ローゼの伯母が経営している酒場の営業時間がそろそろ始まりそうだったので、フリーゼとリヴァルはそのまま『豊穣の女主人』に向かう。

 

 着いて早々、既に客の半数が席についていた。開始して間もなく客がいるというのは、それだけ人気がある店なのだろう。

 

 店に来るとは言っても席の予約はしてないので、何処か空いてる席に座ろうとしていたが――

 

「いらっしゃいフリーゼちゃん、リヴァル。席は既に確保してるから、そこに座って頂戴」

 

 店の作業服を身に纏っているローゼが二人を出迎えて席に案内するのであった。

 

「店の手伝いをするとは聞いてますが、ウェイトレスとしてですか?」

 

「そうなのよ。本当なら調理の方をやりたかったんだけど、今日は凄く忙しいからウェイトレスをやれって伯母様が、ね」

 

「その割には随分と似合ってるではないか」

 

 フリーゼの問いにローゼが諦めるように嘆息するも、ウェイトレスとして申し分ない振舞いをしているのを見たリヴァルが揶揄うように言う。

 

 実際にリヴァルの言う通りだった。ローゼはドワーフでありながらも長身で端整な顔立ちをしてる女性だから、他のウェイトレスと比べても決して見劣りしていない。既に彼女に見惚れている客達の何人かが、気になるようにチラチラと視線を送っているのが丸分かりだった。

 

 因みに前世(むかし)を知る二人としては、他の客達と同様の目では見れない。彼女が嘗て筋骨隆々な男性(オカマ)だった頃を知っている為、つい男だった時の姿を想像してしまうから。

 

「そんな事より、注文は決まってるかしら?」

 

 客の数が増えてきたからか、ローゼは早く注文するよう促してきた。

 

 フリーゼとリヴァルは取り敢えずと言った感じで、アルコール度数の低い果実酒と、その酒に合う料理を数品頼んだ。

 

「すぐに用意するから待っててね」

 

 注文内容を一通り聞いたローゼはメモを取って確認した後、仕事に専念しようと二人から離れた。

 

「一時間も経たない内に、もう満席状態ですね」

 

「それだけこの店が人気なのでしょう」

 

「と言うか、よく見たら客の殆ど男性のような気が……」

 

 フリーゼがそう言いながら店の周囲を見てる通り、客の男女比率が大きく偏っている。数値で表すのであれば7:3と言ったところだろう。

 

 客の中にはエルフも混じっており、リヴァルが視界に入った途端に目を見開いているがいても、当の本人は全く気にしていない。

 

「は~い、先ずは果実酒をご用意しました~」

 

 満席状態で客が騒ぎ始めようとしてる中、声を掛けてくる薄鈍色の髪と瞳をしたウェイトレスがいた。二人が注文した果実酒を運びながら。

 

「おお、これは(かたじけな)い。フリーゼ様、どうぞ」

 

「ありがとう」

 

 ウェイトレスから二つのグラスを受け取ったリヴァルは、片方をフリーゼに渡してきた。

 

「……………」

 

 二人のやり取りを見たウェイトレスは、興味深そうな感じでジッと見ていた。

 

 それに気付いたフリーゼが、彼女の方へ視線を向ける。

 

「何か?」

 

「あ、すいません。ちょっと珍しい光景だなぁと思いまして。決して差別してる訳ではないんですが、小人族(パルゥム)に恭しく振舞うエルフは初めて見たので、つい……」

 

 ウェイトレスの発言に、フリーゼは確かにと内心思った。彼女の言う通り、同胞以外の相手を恭しい態度を取るエルフは皆無に等しいだろう。益してや王族妖精(ハイエルフ)小人族(パルゥム)に恭しいなど普通に考えてあり得ないから、珍しがって凝視するのは無理もない。

 

「でも、エルフさんがそうするの、何だか分かる気がします。貴女は普通の小人族(パルゥム)とは何か違う感じがして――」

 

「ちょっとシルちゃん、何サボってるの」

 

 さり気なくフリーゼの隣に座ろうとするウェイトレスに、料理を運んでいるローゼが注意した。

 

「あ、ローゼさん。私は別にサボっていた訳では……!」

 

「だったら出来た料理を運んでくれないかしら?」

 

「は、は~い」

 

 ローゼがちょっと恐い笑顔をしてる事で、ウェイトレスは分が悪いと判断したのか、そそくさと持ち場へ戻っていく。

 

「御免なさいね、本当はワタシが持ってくるつもりだったんだけど、シルちゃんが急に持ってっちゃって」

 

 そう言いながら注文した料理を二人の前に置く。

 

 美味しそうな料理だと思いながらも、フリーゼがローゼに訊ねようとする。

 

「ローゼさん、さっきのウェイトレスなんですが……」

 

「あら、もしかしてシルちゃんの事が気になる?」

 

「別にそう言う訳では無いんですが……」

 

 フリーゼが料理を運びながら可愛らしい笑顔で振りまいているシルをジッと見ていた。その姿に見惚れる(男性)客達が少々だらしない顔になってるのは如何でも良いが。

 

 警戒するような目になってる事に気付いたのか、リヴァルも思わずシルの方へ視線を向ける。

 

「珍しいですね。フリーゼ様があのような娘を気にかけるとは」

 

「リヴァル、あのシルと言うウェイトレスは普通の人間に見えますか?」

 

「は?」

 

 突然の問いに困惑顔になるリヴァル。

 

 フリーゼも自分がおかしな事を訊いているのは勿論理解している。けれど、シルを初めて見た時から妙な疑問を抱いてるから、思わずリヴァルに変なことを訊いてしまった。

 

(ワタシは人間にしか見えないけど、フリーゼちゃんがそう言うって事は……)

 

 ローゼがミアから店を手伝ってもらうよう頼まれた際、『豊穣の女主人』にいる従業員は一通り紹介されている。

 

 その紹介には当然シルも含まれていたが――

 

『ローゼ。オラリオに長居する気が無ければ、あの娘には極力関わらない方が身の為だよ』

 

 変な忠告をしてくる伯母に疑問を抱くも、フリーゼが何かを感じ取った事に納得した。

 

(もしかしたら、ずっと此処を見張ってる連中と何か関係あるかもしれないわね)

 

 ローゼが店の準備を手伝っている際、外から常人を遥かに上回る複数のオーラを感じ取っていた。恐らくオラリオの冒険者かもしれないが、仕掛る様子が一切ないので無視すれば良いと敢えて放置している。

 

 しかし、それらはあくまで自身の勝手な推測に過ぎない。下手に今此処でフリーゼに教えれば余計に警戒してしまうかもしれないので、ある程度確証を得てから話そうと自己完結する事にした。

 

「フリーゼちゃん、変なこと言ってないで、料理が冷める前に食べた方が良いわよ」

 

「あ、そうでしたね」

 

 一先ずは店の食事に集中させようと、ローゼは気にしないよう振舞う事にした。

 

 

 

 

 

 

「ふふふ。あのフリーゼさんって言う小人族(パルゥム)、ひょっとしたら私の正体に勘付いたかもしれませんね」

 

「何をブツクサ言ってるんですか?」

 

「あら、アレンさん。盗み聞きとは感心しませんね」

 

「……それはそうとシル様、あの小人族(パルゥム)の小娘はどうしますか? 消すのであれば直ぐにでも――」

 

「絶対に手を出さないで下さい。良いですね?」

 

「……承知しました」

 

(あくまで私の勘ですけど、フリーゼさんだけでなく、ミア母さんの姪さんとあのハイエルフさんも、アレンさんより強い気がするんですよね)




今回はシルとの出会いでした。

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