再び転生した元神はダンまち世界へ   作:さすらいの旅人

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闇派閥(イヴィルス)との戦闘

 ここで少し時間は少々遡る。

 

 

 

 何処なのか分からない薄暗い空間に、一人の女性が悔しげな表情で舌打ちをしていた。

 

「チッ、今回はフィンの野郎にしてやられたな……」

 

 名はヴァレッタ・グレーデ。ショートカットの髪型で、毛皮付きの長外套(オーバーコート)を羽織っている。

 

 闇派閥(イヴィルス)の女幹部で、【殺帝(アラクニア)】の二つ名を持つ『Lv.5』。同時に参謀役も務めており、ギルドからもブラックリストに乗るほど危険視されている。

 

 今回の戦闘で【ロキ・ファミリア】団長のフィン・ディムナに一杯食わされた事で戦況を不利と判断した瞬間、参加させていた信者達を見捨てて一目散に撤退した。闇派閥(イヴィルス)の信者達など彼女にとっては捨て駒同然であり、自分さえ助かれば問題無いと言う非常に自分勝手な性格をしているが、参謀役のポストに就くほど有能な人材な為に誰も文句は言えない。

 

 相手が一枚上手だったとは言え、それでも忌々しい宿敵(フィン・ディムナ)に敗北した事がヴァレッタにとっては気に食わない。せめて悔しがる顔さえ見せてくれれば多少の溜飲が下がるも、今回は大して痛手を与える事が出来なかったから余計に腹立たしいのだ。

 

「クソがッ! あ~、イライラするぜ。こうなったら――」

 

「ヴァレッタ様!」

 

 そこら辺にいる冒険者でも捕らえて憂さ晴らしでもしようかと考え始めた矢先、一人の信者がヴァレッタに声を掛けた。

 

「オラリオに入って来た外部の中に――」

 

「外部だぁ? 今のアタシは機嫌が悪ィんだ。もし下らねェ内容だったら殺すぞ?」

 

 何をしに来たかと思えば、オラリオの門を通ろうとしている者達の定期報告だった。

 

 闇派閥(イヴィルス)にとっての強敵はオラリオにいる冒険者で、それ以外は単なる有象無象に過ぎない。だがそれでも、闇派閥(イヴィルス)にとって見過ごせない者が現れた場合は早々に手を打っておく必要があるから、ヴァレッタは門側の情報を得る為に間謀を送り込んでいる。

 

 不機嫌なヴァレッタの警告に、信者は怯えながらも数時間前にオラリオの門を通った者の名前と種族を教えた。

 

「フィンと同じ小人族(パルゥム)の方は知らねぇが、残った二人は奴等の親類か」

 

 小人族(パルゥム)のフリーゼ・ウィステは論外だったが、ローゼ・グランドとリヴァル・リヨス・アールヴの名を聞いた事でヴァレッタの耳に留まった。

 

 ドワーフのローゼ・グランドは嘗て【フレイヤ・ファミリア】の団長を務めていたミア・グランドの姪。伯母であるミアは冒険者稼業を引退後、『豊穣の女主人』と言う酒場を開いて切り盛りしている。だがそれでも屈強な実力者である為、闇派閥(イヴィルス)は過去に彼女の店を襲撃するも全て返り討ちと言う悲惨な結果になり、手を出すだけ無駄だと判断して放置している。

 

 ハイエルフのリヴァル・リヨス・アールヴは【ロキ・ファミリア】副団長のリヴェリア・リヨス・アールヴの実弟。その姉が団長のフィンや幹部のガレスと共に『三首領』と称され、闇派閥(イヴィルス)にとって非常に厄介な魔導士と見なしている。同時にハイエルフの彼女に手を上げる事をすれば、他のエルフを敵に回す事になるが、ヴァレッタとしては心底如何でも良いと思っており、その怒りで判断を鈍らせる事が出来るかもしれない。

 

「リヴァルとか言うハイエルフは捕らえろ。残りは邪魔するなら殺せ」

 

「よ、宜しいのですか? ハイエルフに手を出そうものなら、他のエルフ達が黙ってはいないかと」

 

「バァーカ、そうしてくれた方が好都合なんだよ。益してやフィンの所にいる【九魔姫(ナイン・ヘル)】の弟となれば、動きを封じる楔にもなるからな」

 

 ハイエルフはエルフ以上に利用価値があるも、同時に諸刃の剣でもある。

 

 信者の言うように、世界中のエルフからは神以上に崇拝されており、下手に手を出せば全てのエルフを敵に回す事になってしまう。加えて闇派閥(イヴィルス)の中にはエルフもいるから、彼等が余計な事をするのではないかと危惧してしまう。

 

 ヴァレッタも当然理解しているが、そんな程度で怯えるほど闇派閥(イヴィルス)の参謀など務めていない。最も効率良く利用出来る方法を考えるなど、彼女にとっては造作も無いのだから。

 

「奴等に『恩恵(ファルナ)』はあったか?」

 

「一切無かったと【ガネーシャ・ファミリア】が確認済のようです」

 

 オラリオの門番には【ガネーシャ・ファミリア】が行っており、都市に入る際は『神の恩恵(ファルナ)』の有無を確認する決まりになっている。有ると判明したらオラリオに来た動機を尋ね、万が一に危険だと判断した際に彼等が対処しなければならない。

 

 フリーゼ達に『神の恩恵(ファルナ)』が無いとなれば、闇派閥(イヴィルス)側からすれば絶好のカモ同然。恩恵がない一般人など無力な雑魚(ザコ)で、捕えるも殺すも非常に容易い存在。

 

「なら好都合だ。キヒヒヒ……フィンの身内がいれば猶更捕えたかったが、ここはハイエルフだけで我慢しとくか」

 

 嫌らしい笑みを浮かべながらヴァレッタは部隊を送るよう指示した。ハイエルフを確実に捕らえる為、『Lv.2』の信者も数名行かせる事も含めて。

 

 リヴァル達の身内も含めた他の冒険者達がどんなに急いで駆けつけたところで、一般人を捕らえるなど数分も掛からない。そう確信しているヴァレッタは、身体を休ませながら吉報を待つのであった。

 

 

 

 

 

 

 闇派閥(イヴィルス)の信者達が対象の三人を発見し、素早く行動に移っていた。小人族(パルゥム)とドワーフは殺し、ハイエルフを生かして捕えようと。

 

 冒険者と違って『恩恵(ファルナ)』が無い一般人達を始末するなど造作も無いのだが――

 

「ふんっ!」

 

「ぶるぁぁっ!」

 

『ギャァァァァァァァアアアアア!』

 

 相手側が予想外な抵抗を見せるどころか、逆に自分達が蹂躙されていた。

 

 武器を一切持っていない筈のハイエルフの男性とドワーフの女性が、素手だけで襲い掛かる闇派閥(イヴィルス)の信者達を悉く圧倒している。

 

 二人の攻撃は『恩恵(ファルナ)』がある筈の信者達を気絶させるほど重く、余りの威力に吹っ飛んでしまう程だった。

 

「我が主フリーゼ様を殺すなど、この私が断じて許さん!」

 

「ウフフフ……。ボウヤ達、覚悟して挑む事ね」

 

 小人族(パルゥム)を殺すと聞いた瞬間、リヴァルとローゼは先程までの優しそうな表情から一変して戦う顔になっていた。

 

 以前までの二人は『Lv.1』程度の相手でも簡単に倒せるだけの実力だったが、フリーゼと出会った事で激変している。扱えなかった闘気(オーラ)を解放してもらった他、開発した修行用バンドを使って数年以上励んだ結果、『恩恵』がある冒険者を簡単に圧倒出来る実力を得た。今でもバンドを身に付けており、前世(むかし)の実力を取り戻そうと修行を続けている。

 

 襲い掛かっている闇派閥(イヴィルス)の信者達は主に『Lv.1』と『Lv.2』だから、リヴァルとローゼの敵ではない。それを証明するように、二人の一撃で数名が軽く吹っ飛んだのだから。

 

「う~ん、出来れば私も戦いたかったんだけど……」

 

 本当ならリヴァルを守る為にローゼと一緒に迎撃する予定のフリーゼだったが、当の本人が先に動いてしまった所為で出るに出れなかった。

 

 小人族(パルゥム)と言う矮躯な種族に転生した彼女だが、二人と同様に前世(むかし)の知識や能力(ちから)を使って相応の実力者になっている。もし体格差に問題があっても、オーディンから学んだルーン魔術の『変身』を使えば解消される事も補足しておく。

 

「死ねぇ小人族(パルゥム)!」

 

「ん?」

 

 いつの間にか自身の背後を取って刃を振り下ろそうとする信者を、フリーゼが『光の槍』で迎撃しようと――

 

「甘いわ!」

 

「ごはぁ!」

 

 する瞬間、気付いていたリヴァルが一瞬で接近し、闘気(オーラ)を纏っている拳を当てて吹き飛ばした。

 

 闘気(オーラ)を解放した事で『闘拳(とうけん)』と名付け、嘗て使っていた『聖拳(せいけん)』の威力と比べれば劣っているが、全身に纏わせる事も可能な上に使いやすい。それによってリヴァルは元神に対する信仰心が前世(むかし)以上に爆上がりし、フリーゼに絶対の忠誠を誓った程である。

 

「フリーゼ様、お怪我はございませんか!?」

 

「え、ええ……」

 

 自分がやりたかったのにと文句を言いたかったフリーゼだが、リヴァルの善意を無下にしたくなかったので合わせる事にした。

 

「な、何なんだコイツ等は!?」

 

「『恩恵』のない一般人(ザコ)ではなかったのか!?」

 

 リヴァルとローゼが途轍もない実力者だと漸く認識した事で、信者達は話が違うと言わんばかりの反応をしていた。

 

 既に半数以上倒されており、このまま続けたところで全滅してしまうのは容易に想像出来る。

 

「くっ、撤退だ! 撤退しろ!」

 

 始末と捕縛を命じられた部隊の指揮官が、戦闘継続不可だと判断して残った信者達を連れて撤退を命じた。

 

 しかし――

 

「そんな事を許す訳がなかろう、屑共が」

 

「なっ! ぐわぁぁ!」

 

『!?』

 

 第三者の声がした瞬間、空から無数の雷の矢が信者達に襲い掛かる。

 

 魔法と思わしき雷を見た事にフリーゼがリヴァル達を守ろうと防御結界を張ろうとするも、その必要は無いと判断する。命中してるのは闇派閥(イヴィルス)の信者達だけで、自分達に襲い掛かろうとする雷の矢が一本も無かったから。

 

「くっ! 何としても撤退を――がはっ!」

 

「……ク、ククククク……」

 

 指揮官が信者を見捨てて撤退を図ろうとするも、突如襲い掛かった黒の斬撃によって倒れ伏してしまう。

 

「ほう、見事な太刀筋ではないか」

 

「ッ!」

 

 無駄の無い剣筋を見た事で、同じ剣を扱うリヴァルが称賛すると、指揮官を倒した黒妖精(ダークエルフ)が途端に固まっていた。

 

 残った信者達は雷の矢で全て片付いたのを確認したかのように、もう一人の白妖精(ホワイトエルフ)も出現する。

 

「お初にお目にかかります、高貴の御方。このような無作法で姿を晒した事をお詫び申します」

 

 リヴァルの前に立ったホワイトエルフは、初対面でありながらも臣下の礼を取るような振る舞いをしていた。

 

「……お前の名は?」

 

 エルフがハイエルフである自分にそう言う態度を取る事を理解してるリヴァルは、敢えて気にせず何者かを尋ねた。フリーゼとローゼも事情を知っており、内心では『面倒な(エルフ)に捕まったな』と少々気の毒そうに見ている。

 

「はっ。私は【フレイヤ・ファミリア】所属、ヘディン・セルランドと申します。ついでにあそこにいる黒妖精(ダークエルフ)――おいヘグニ、王族の御前だぞ。いつまで固まってる」

 

「……………………」

 

 自己紹介したホワイトエルフ――ヘディンが仲間と思わしきダークエルフに声を掛けるも、不躾な姿で固まってるのを見て苛立ちながら咎めた。

 

「あの緊張しいめ……! 申し訳ありません、奴も私と同じく【フレイヤ・ファミリア】所属のヘグニ・ラグナールです」

 

 ダークエルフ――ヘグニが緊張の余り喋れない事にヘディンが苛立つも、彼に代わって簡易的に紹介した。本拠地(ホーム)に戻ったら絶対にしばき倒すと思いながら。

 

「そうか。私はリヴァル・リヨス・アールヴ。オラリオで冒険者活動をしてるリヴェリア・リヨス・アールヴの実弟だ」

 

「私のような一介のエルフに名乗って頂き、誠に光栄です」

 

 

 ――リヴェリア様、あちらです!

 

 ――分かった、すぐに行く!

 

 

 どこまでも低姿勢な振舞いにリヴァルは内心そろそろ煩わしく思っていると、何処からか新たな声と聞き覚えのある声が耳に入った。

 

 当然ヘディンも聞こえており、すぐに退散しようと行動に移す。

 

「申し訳ありません、リヴァル様。我々の派閥は【ロキ・ファミリア】と対立状態ですので、誠に勝手ながら失礼させて頂きます。ヘグニ、さっさと行くぞ!」

 

 頭を下げながら理由を述べたヘディンは、未だに固まってるヘグニを連れて退散した。

 

 彼等がいなくなったのを確認したリヴァルは、途端に嘆息する。

 

「大変でしたね、リヴァル」

 

「前々から思ってる事だけど、エルフって本当に面倒臭い種族ね」

 

「ははは……」

 

 フリーゼとローゼの言葉に否定出来ないのか、リヴァルが苦笑していると――

 

「リヴァル、無事か!?」

 

「おお、先程聞こえたのはやはり姉上でしたか」

 

 焦った声で駆け付けた姉のリヴェリアが弟に怪我が無いかを確認するのであった。

 

 彼女だけでなく同派閥のエルフ達もいるが、ハイエルフ姉弟のやり取りを邪魔をせず見守っている事を補足する。




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