『黄昏の館』で世話になる事になったフリーゼ達は、まさかこんな事になるとは思いもしなかった。
オラリオに来たのは失敗だったと内心後悔してしまうフリーゼだが、こうなった以上は諦観するしかなかった。向こうがもし再び仕掛けてくるのであれば、ローゼやリヴァルと一緒にヴァレッタとか言う指揮官を引きずり出してぶちのめしてやろうと思いながら。
部屋をあてがわれ、フリーゼは同性のリーゼと相部屋となる。町で宿を取る時には必ず一緒になるから、そこは全く問題無い。
リヴァルは異性と言う事もあって別部屋なのは当然で、(エルフ達からの要らぬ気遣いにより)幹部用の一人部屋らしい。男性エルフ達が警護をしようと扉の近くで待機する気満々だったが、そこは丁重に断ったとの事だ。
初日から面倒な事になったと思いながらも、フリーゼ達は一夜を過ごすのであった。
☆
翌日の朝。
朝食の時間は団員達が揃って食べる決まりになっており、そこでフィンが食堂に集まった団員達に周知している。
「彼女たち三人は
そう言ながらフィンは次に三人を紹介する。
女性
紹介の中で驚いていたのがリヴァルとローゼだった。副団長リヴェリアの弟と、『豊穣の女主人』の店主ミア・グランドの姪である為に。
特に騒いでいだのはエルフの団員達で、食事が始まって早々一斉にリヴァルの方へ来て臣下の礼を取ろうとしており、それを見ていたリヴェリアが窘めた事で何とか収まる。その所為で暫くは姉弟で行動する事になってしまったが。
様子を見る限り、リヴァルは『黄昏の館』にいる限り窮屈な日々を送りそうだとフリーゼは思った。同時にハイエルフを慕うエルフ達の行動にも呆れながら。
彼だけでなく、ローゼに話し掛けてくる者達もいる。昨日に話したガレスとは別に、中年ドワーフの面々が『身長はともかく、見た目が若い頃のミアにそっくりだ』と非常に懐かしそうな感じで。
フリーゼはオラリオに身内がいないから、二人のように積極的に話しかけてくるものはいないだろうと思いきや――
「少し君と話したい事があるんだけど良いかな、フリーゼさん」
何故か団長のフィンが話しかけてきたから『何で?』と頭の中が疑問符だらけになるのであった。
リヴァルやローゼと同様、種族同士が会話する事に何の問題も無い。
「まさかこの派閥にいる
「まあね」
食事を済ませた後、フリーゼはフィンに
団長自らがそのような事をするなどあり得なく、本来であれば別の者に任せる筈なのだ。女性と言う事も考慮すれば、末端の団員である
しかし、フリーゼは大事な客人として扱っている。もし団員が失礼な態度を取るような真似をすれば、彼女を主と見ているリヴァルの怒りを買う事になるかもしれないから、こうして団長自ら案内役を買って出たのだ。
同時に気になる事もある。昨日に会合した際、ローゼは堅苦しい感じが無くとも、彼女を守るべき主のように慕う節が見受けられるのだ。同じ
今のところ分かっているのは、端整な顔立ちをして、誰にでも礼儀正しい振舞いをする優しい同胞と言うくらいだ。派閥は違うが、自分を狙っていると思われる
自身の後継者となる子供を欲しているフィンからすれば、フリーゼのような同胞に求婚するかもしれないだろう。尤も、まだ会って間もない相手にそんな失礼な事は流石にしない。ゆっくり時間を掛けてから、改めて決めれば良いと。数年後には自身を狙う恋するアマゾネスが現れた事で、判断を誤ってしまったと心の底から後悔してしまう事を知らずに。
一通りの案内を済ませた二人は、休憩も兼ねて中庭に設置されてる長椅子に腰掛けている。
「突然だが、君は『女神フィアナ』について知ってるかい?」
「ええ、一応は」
フィンからの問いに知っていると答えるフリーゼ。
フリーゼは別世界より再転生した存在だから、フィアナの信仰など微塵も無いが、心の支えを失った事で意気消沈する同胞に何とも言えない気持ちだった。以前の世界では多くの人間や天使達から崇拝される存在だったから、自身の死で悲嘆する者達がああなってしまうのは無理もないと同情したほどだ。
とは言え、彼女は落ちぶれた
「あくまで知識として知ってるだけで、大して興味ありません」
「そうか……」
興味無いと言われた事で若干落ち込む様子を見せるフィン。
「それを訊いてくるのは、貴方はフィアナを信仰してるんですか?」
「まぁね。架空の存在だと分かってても、僕たち
向こうからフィアナに対する信仰を問われたので、少々落ち込んでいたフィンはすぐに返答した。
「だけど君も知っての通り、
「――ディムナさんがその旗頭になろうと、【
フリーゼはフィンに関する情報はそれなりに得ていた。
しかし、フリーゼは他と違って羨望の眼差しを送ってはいない。英雄と言う存在は余り好ましくない存在であったから。
(確かにこのフィン・ディムナと言う人物は英雄に相応しいかもしれないけど、
目の前にいる【
「私としては大変素晴らしいと思います。いつか夢が実現すると良いですね」
「はは、ありがとう」
社交辞令だと勿論理解していても、フィンとしては礼儀正しく端整な女性
話して分かった事もあり、この同胞は【
立場など関係無く普通に接してくれるフリーゼの対応に、フィンが個人的に興味を抱くのは当然の流れかもしれない。
いまいちかもしれませんが、先ずはフリーゼとフィンの会話でした。
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