もしもVの知力が0. 1だったら   作:正拳突き

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実際ネタ抜きにしてもギャングを狩るのって、いい金策なんですよね。

武器が高値で売れるし、ストレス発散にもなるので。


10 ナイトシティのやべーやつ

クラウドから窮地を脱しジュディーのアパートへと辿り着いたV達であるが、状況は芳しくはない。  

 

「エブ!エブリン!お願い…起きて」

 

ジュディはエブリンの手を握り必死に声を呼ぶが、当の本人に返事は無い。意識の無い文字通りの人形だ。

 

「ごめん、俺がもっと早くクラウドに行ってればこんなことには」

 

「いいの、もう2度と会えないと思ってたから…絶対に彼女の意識を目覚めさせてみせる。その時にはあなたに連絡するから」

 

『とは言っても振り出しに戻ったからな、これからどうするんだ?』

 

ジョニーの質問にVは何も返事が出来ない。エブリンに会えば自分達にチップの強奪を依頼した人物も、その外し方だって分かると思っていた。しかし、実際には何1つとして進展はなくただいたずらに時間を浪費しただけだった。

 

「マジでどうしよ…」

 

ジュディのアパートの屋上で二コーラを飲みながらVは考える。だがいくら考えようと何も浮かばず、雲が流れて行くだけだ。

 

「ジョニー、何か思いつかないか?」

 

『俺に分かると思うか?アラサカ監獄に50年も閉じ込められてたんだぞ。それよりも脳みそをフル回転して、過去のことを思いだせ。何か手がかりがあるはずだ』

 

「う〜〜〜ん………あ!」

 

その時Vに電流が走る、初めてエブリンやジュディとリジーズ · バーで会った時、ジャッキーとエブリンが言っていた言葉を。

 

「このヨリノブが電話してる奴は誰だ?」

 

「アンダース·ヘルマン、レリックの開発者よ」

 

ジャッキーが自分の代わりにBDを見ていた時、確かにそんな質問をしていたのだ。

 

「ああ!思い出した!ヘルマルだよヘルマン!ヤツを探せば何とかなるかも。来い、ジャッキー!!」

 

Vが今は亡き親友の名を呼ぶと1台のバイクが走って来た。これこそジャッキーがローンで買ったバイク、アーチである。

この前参加したジャッキーのお葬式でママ・ウェルズからこのバイクを貰い、以前の持ち主の名前をつけた。

 

コレに乗っている限り、親友が見ていてくれる様な気がするからだ。

 

 

Vがバイクでやって来たのは、ナイトシティの中でも指折りの傭兵達が集うバーアフターライフである。酒、仕事、人の3つを探したければここに行けというのは、誰もが知っている常識である。無論、入れればの話であるが。

 

「クレア久しぶりだな、ローグに会わせてくれ」 

 

店で最初に声をかけたのアフターライフのバーテンダー、クレアだ。傭兵のたまり場で働いてるだけはあり、彼女の射撃の腕はピカイチだと噂されている。

 

「よく来たわね。ローグは今電話中よ、終わるまで待った方が____」

 

「_____ありがとうクレア」

 

そんなクレアの忠告を完全に無視し、Vは奥にいるアフターライフの女王にしてナイトシティ最高のフィクサー、ローグの前に立った。

 

「悪いね、ちょっと切らせもらうよ」

 

誰かと通話中であったのだろうか、ローグは通話を切ると目の前にいる無礼な男を上目遣いで睨みつけた。

 

「なんだい、アタシの顔に面白いもんでもついてるのかい?」

 

「だいぶ老けたな」

 

『おいV!』

 

Vは決して悪口として言ったわけではない。ただジョニーの記憶で見た50年前のローグと比べて老けたと言いたかったのだ。しかしそれを言っていいのは、彼女と50年来の友人くらいなものだ。

 

事情を知らない者からすれば宣戦布告と取られてもおかしくはない。

 

「そりゃアタシだっていい年さ、でもねアンタみたいな若造に舐められるほど、安い女じゃないよ」

 

『クッソ このバカが』

 

ジョニーが頭を抱え、自分が入り込んだ男の知力の低さを嘆く。先ほどまで活気づいていた酒場の空気はお通夜の様に冷え込んでいる。ローグ·アメンディアレスという、この街で1番喧嘩を売ってはいけない人物に堂々とツバを吐いたのだ。

 

一触即発の空気に周りで飲んでいた傭兵だけではなく、クレアまでもがオドオドとした様子でコチラを見ていた。

 

「ああ悪い、怒らせるつもりはなかったんだ。ジョニーと一緒にアラサカタワーを吹き飛ばした時よりは老けたなって意味で」

 

「なんで20そこらのガキが、その頃のアタシを知ってるんだい?」

 

「俺の頭の中にジョニーがいるからな」

 

『V…もう喋るな』

 

これまでジョニーを始め、イカれた男を大勢見てきたローグであるが、この様なホラを聞かされるのは初めてだ。

そして何より彼女はつまらない冗談が嫌いだ。

 

「喧嘩売りに来たのかい?」

 

『今すぐ謝れ、下手な嘘言って悪かったなってな』

 

ローグは目を細め、若干であるが声が低くなっている。彼女を知る人でなくても分かる、コレは堪忍袋の緒が切れる寸前である事が。

 

「何でそんなキレるんだよ、本当に俺の中にジョニーがいるんだって、話すこともできるんだぜ」

 

「だったらそのジョニーは今なんて言ってる?」

 

「今すぐアンタに謝れって言ってるよ、俺は何にも嘘言ってないのに自分勝手な奴だよな」

 

「はあ?」

 

Vのあまりにも支離滅裂な言葉に百戦錬磨のローグも首を傾げた。ただのバカなら今までも大勢見てきたが、目の前の男にはバカなだけではなく、まともな部分もある様に見える。

しかも演技や冗談で言っている雰囲気は感じられず、まるでコインの表裏の様に混じり合っているようだ。 

 

ローグはこのバカの話を信じた訳ではないが、それでも何か薄っすらとだが可能性に近いのものを熟練フィクサー直感で感じ取った。

 

「…まあいいさ、アタシだってそんな小さい事でキレるほど器は小さくはない。それで何か用があって来たんだろ?」

 

「ああ、えーと何しに来たんだっけ?」

 

途端に2人の話を聞いていた全員がずっこける、最初はローグ相手にこんな態度を取れる大物かと思っていたが、この男は単に馬鹿なだけだ。

 

ローグも先ほどまでの自分の直感がおかしかったのか、本当に年を取ったのかとため息をつく。

 

『アンダース・ヘルマンを探してるんだろ』

 

「そうだ、アンダース・ヘルマンを探してる。アンタなら見つけられるだろ?」

 

「人探しか、出来なくはないけど1つ条件があるよ」

 

「何でもする」

 

Vは即答する、この思い切りの良さは見習いたいものだとその場の全員が心の中で思った。

 

「ターゲットは武器の密売人、普段はヴァレンティーノズに武器を売ってたんだけど…粗悪品を売ってたのがバレて今連中の倉庫でお灸を据えられてるらしい」

 

「らしいって、何で分かったんだ?」

 

「ソイツの女房のとこに奴らから連絡があったのさ『旦那を返して欲しければ今まで不当に搾取した金を返せ』てね…でも、女の方は男よりは賢かったてことさ」

 

「?」

(どういう意味だ?)

 

『ギャングが律儀に約束を守る訳がねえ、金を渡せば旦那もろとも殺されるって分かってたからローグに依頼したって事だ』

 

ジョニーは呆れた顔で何も分かっていないVに説明する。もし彼に実態があれば、今日だけでも10回は頭を引っ叩いていただろう。

 

「なるほど、じゃあその旦那を救えばいいんだな」

 

「簡単に言うね…ターゲットは連中のアジトに監禁状態、敵はアタシの見立てじゃ20人はいる。当然、騒ぎが起これば向こうは増援を送ってくるさ、くれぐれも静かにやるんだよ」

 

「任せろ、静かにするのは得意だからな」

 

『どの口が言ってんだ』

 

Vは1回ペコっとお辞儀をすると意気揚々と店駆け抜けて行く。トラブルの元凶が消えたこともあり、店内には再び活気が戻った。

 

「あんなのに依頼して大丈夫なの?」

 

クレアの質問に対しローグの顔は涼しいものだ。

 

「アイツの噂は聞いている、ギャング狩りのV…通りを歩くギャングを次々と襲い、報復に来た奴らも返り討ちにした戦闘狂。少なくとも実力は間違いない」

 

「頭の方はお粗末だったけど」

 

「アタシもアイツくらいの年には、あれ程じゃないけど考え無しにバカやったものさ」

 

「ジョニーと?」

 

「ああ」

 

先程のVの言った言葉が今でも、歯の間に挟まったカスの様にいつまでも彼女の中に残り続ける。

 

   『俺の頭の中にジョニーがいるからな』

 

「まさかね」

 

ローグは煙草に火を付けると煙を人工肺に取り込む。あの男の話与太話を信じた者など誰もいない、いきなり50年前のテロリストが頭の中にいるだと言われて信じる方がおかしい。

 

だがコレの勘なのか、それとも老化による衰えなのかローグだけはあの真っ直ぐな目を嘘とは思えなかった。

 

 

 

 

 

ヴァレンティーノズに入ってもうそれなりに時間が経つ。人の命が埃よりも軽いナイトシティじゃあ、もう中堅と言っても差し支えない。

 

「今日もアチーな、仕事が終わったらビール飲もうぜ!」

 

「いいぜキンキンに冷やしてくれよ!!」

 

チューマからの誘いに僕は自分でも少し驚くくらい、大きな声で返事をした。ビールか…昔の僕なら下品な酒と言って飲まなかったろうに、今じゃ仕事終わりのビールくらいしか楽しみがないなんて…。

 

あの時、親も金も全てを失い途方に暮れていた僕はここに逃げ込んだ。あっていいはずがない、本当なら僕はコイツ等を顎で使う様なアラサカの重役になっていたはずなのに、

 

こんな生活は1日でも早く辞めてやる。少しでも上に上がって、金を貯めてこのゴミ溜めから抜け出す、今僕を動かしているのはその決意だけだ。

 

でも僕は忘れていた、人生ってのは大きく変わる日が何度かある。一度目はパパが殺された日、そして二度目は____

 

「敵襲だ!」

 

仲間が叫ぶと前からボロい車が猛スピードどこっちへ突っ込んで来る。

 

「な!」

 

間一髪で自分は避けられたが、僕の後ろで談笑をしていた2人組はそうはいかなかった。車は2人を跳ね飛ばすと、そのまま倉庫の方へと一切速度を落とさずに走る。

 

何が目的なのか検討も付かない。ここはヴァレンティーノズのナワバリだぞ!そんなところに車1台で特攻なんて正気の沙汰じゃない。

 

車が倉庫に入る直前、運転席から刀を持った男が1人だけ飛び降りる。次の瞬間、倉庫の中から大爆発を起きた爆風は壁を吹き飛ばし、凄まじい轟音が鳴り響く。その光ときたら…まるで小さい太陽が現れたかの様だった。

 

「がは!」

 

爆風で僕の身体は、ものすごい勢いで地面に叩きつけられる。肋骨が折れたんだろうか、息をする度に胸に痛みが走って上手く呼吸が出来ない。

 

(コイツ、車に爆弾を積んでたのか!)

 

恐らく奴の計画は爆弾を満載した車で突っ込み、起爆させる直前で脱出し敵を一網打尽にするつもりだったんだ。

 

自分で考えても何だがイカれてるのか?そんな事すれば騒ぎになるなんて誰でも分かるだろう。もっとスマートにやろうとは思わないのか?

行動力のあるバカってのはコレだから嫌いなんだ。

僕は痛みに耐えながら這いつくばる事しか出来なかった。

 

 

 

「いやー派手に吹っ飛んだなジョニー」

 

『全く…ローグは静かにやれって言ったよな?』

 

Vの猪突猛進ぶりにジョニーは、あの世に行ったジャッキーに同情の念を送る。こんな奴とコンビを組んでお前もさぞかし苦労しただろうなと。

 

「ああ静かにするさ、ここに居る奴らを全員殺してな」

 

「敵襲だ!殺せ!!奴を生きて返すな!」

 

爆破に巻き込まれなかった連中が一斉に襲いかかる、あの特攻で半分近く死んだだろうがそれでも10人以上は残っている。

 

「いいね、この程度で全滅されたらつまらないからな」

 

Vは刀で近くに走ってくる男の腕と首を切り飛ばし、後ろの2人から放たれる銃弾をサンデヴィスタンによって倍速した身体で、左右にジグザグに前進して避けながら目にも止まらぬ速度で斬りつける。

 

「糞、ちょこまかと!」

 

今度はスマートライフルを所持した敵がコチラへ発砲する。ロックしたターゲットを弾が自動追尾するこの弾は避けられない。ならばと目前にまで迫った弾を紙一重で刀で防ぎに、持ち主へと送り返す。弾き返された銃弾は頭に命中し命を奪った。

 

Vは現在、両手、両足をクロームにし生身の時より倍近い機動力を得ている。それが更にサンデヴィスタンによって2倍になるのだ、単純計算では彼の速度は通常の4倍と言っても過言ではない。

 

それが空中ダッシュと二段ジャンによって、3次元的かつ、不規則に動き回るのだ。その姿は時代劇の剣豪の如く迫り来る敵を斬りつけては、全身に彼らの血を浴びる。

 

もはやそこいらのギャングでは歯が立たない。気付けばあれだけいたヴァレンティーノズは全員地面へと倒れていた。

 

「何だよ…もう終わりか?」

 

『これ以上何を期待してるんだ、増援が来る前にターゲットを連れて逃げろ』

 

「は…やく、来てくれ…私たちじゃ…敵わな、い…」

 

Vが声の方向を見ると、死にかけの女が最後の力を使い通信で仲間を呼んでいた。手足を切断された断面からは血がドバドバを流れ出ており、もう助からないのに最後まで自分の仕事を全うするとは見上げた根性の持ち主である。

 

「あ、ひらめいた」

 

Vは早速その女の首を切断すると、生首を持ち上げる。スマホ等といった外部の端末を利用しない通信の場合、主に目のインプラントによって通信を行う。

つまり、通信中の相手の首を切断すればその時連絡をしていた相手と一時的にではあるが、話す事も可能なのだ。

 

『頼む返事をしてくれ!敵は何人だ!』

 

「よお、俺はV今お前らの仲間を殺した傭兵だ」

 

『なんだキサマは!?』

 

「俺が誰かなんてどうでもいいだろ、それよりも早く増援を送ってくれよまだまだ殺し足りないんだ」

 

実際この場にいた敵の半分は最初の特攻で吹き飛んでしまったのだ。コレなら始めから刀で突撃しとけば良かったとVは後悔していた。

 

『マジで何なんだキサマは!?』

 

通信相手の男は、人生最大のツッコミを上げる。狂った者が多いのこの街においても、ここまでイカれている人物には会った事がないのだろう。

 

用が済んだVは手に持っていた首を地面に投げ捨てた。

 

「よし、コレでもう少し待てばまだ戦えるな!」

 

『V…お前…自分がここに来た理由を覚えるのか?』

 

「ヴァレンティーノズをボコりに来たんだろ?」

 

『はぁ〜〜』

 

ジョニーは特大のため息をつき、呆然とする。この男は1度に2つ以上の事を覚えられないのかと本気で落ち込みつつあった。

 

その時、ゴソゴソと何かが地面を這いずる音が聞こえる。Vが何だと見てみれば青髪の青年がひっそりと、匍匐前進でこの場から離れようとしている。

 

「ん?お前もしかしてまだ生きてる?」

 

「ひい!すいません、どうか命だけは助けて下さい!」

 

青年は武器を捨て両手を上げると服従のポーズを取った。威厳も誇りの欠片も無い、弱者が何とか生きながら得ようとする最後の足掻きだ。

 

『殺せ、この手の奴は背を向けた瞬間に撃ってくるぞ』

 

「でもなあ、いつも殺してばかりじゃ飽きるしたまには生かしてもいいだろ。お前名前は何て言うんだ?」

 

「はっはい!自分カツオ・タナカと申します!!いい命を助けて下されば何でもします!チ◯コだってしゃぶりますから!」

 

「俺そういう趣味はないんだけどな…」

 

本当にそういう趣味の無いVは首を横に振り、苦笑いを浮かべる。

 

『おい、こんな茶番いつまで続ける気だ!?とっとと殺せ!』

 

「ちょっと待てよジョニー、じゃあこのコインを投げて表が出たら殺す。裏が出たら生かすってのはどうだ?」

 

その狂気的な提案にカツオは顔を強く歪める。助かったかと思っていたが、以前彼の命は危機的な状況である事に変わりない。

 

「そんな、僕の命を何だと思ってるんですか!」

 

『何だよちょっと続きが気になってきたな』

 

ジョニーは先ほどは打って変わり、にやけ面で座り込む。単なる同情で助けるのは気乗りしないが、こういう催しであれば問題ないという事だろう。

 

「それじゃあ投げるぞ〜」

 

「イヤア!神様お願いします、ギャング辞めますから!何でもしますから裏を出して下さい!!」

 

Vの投げたコインは高く空へと舞い上がった。父親の死をキッカケに人生が真っ逆さまに転落した男、カツオの命運が今日決まる。




オマケ: 50年前の古傷

アフターライフ内

ローグ「そりゃホントかい?」

手下A『はい、爆弾を積んだ車で突っ込みヴァレンティーノズを吹き飛ばしたと』

ローグ「アイツみたいにブッ飛んだ奴だね…」

手下A『アイツ?』

ローグ「独り言さ、気にしないでいい。それじゃあ切るよ」

  (V『俺の頭にジョニーがいるんだ』)

ローグ「何考えてんだい…アタシも焼きが回ったのかね」

コインの向きは?

  • 表(カツオ死す)
  • 裏(カツオ生還)
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