もしもVの知力が0. 1だったら   作:正拳突き

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ようやくここまで来れた。
次回からオリジナルストーリーが書けるぜ。


14 ささやかな幸せ

朝日がバッドランズを照らす、いよいよ作戦実行の時がやってきたのだ。パナム達は丘の上を陣取り、AVが上空を通るのを今か今かと待ちわびていた。

 

「Vさん、パナムさん 来ましたよ!」

 

カツオが指を指す先には確かにAVが1台、ナイトシティの空から出ようとしていた。目立つ様に描かれたカン • タオのロゴは、アフターライフでローグに見せて貰った物と瓜二つであり、ターゲットに違いない事を示している。

 

今まさに目の前を横切るAVにヘルマンが乗っている事を確信したVは、手に持っていたボタンを押す。それと同時にAVの真下にある発電所では大爆発が起きた。

 

「おお、デカい花火だな」

 

Vの言った通り、発電所からは地獄の業火の様な火が建物全体を包み、更には青白い光まで発生していた、この光こそが作戦のキモだ。

 

マイクロ波発電所から発生したEMPはAVの電子機器を完全に使い物にならなくした。修理は不可能、撃ち落とされた鳥の様にAVは高度を落としていく。

 

「ビンゴ!ほらね、やっぱりアタシの作戦は完璧でしょ」

 

「流石だパナム、略して流パナ」

 

「まさか、本当に上手くいくなんて…」

 

作戦の内容は至ってシンプル、発電所を爆破しその際に生じるEMPでAVを落とすというものだ。幸いにも発電所にはドローンや警備ロボットしか居らず、パナムが運転をしVが警備を撃破する間にカツオが爆弾を設置して準備は完了した。

 

「ほら、2人とも乗って!」

 

パナムに急かされたVとカツオは、昨日レイス達から奪い返したソートンに乗り込む。パナムは、2人が乗ったのを確認するとアクセルを全力で踏み、車を発進させた。

 

オーフロード仕様な事もあり、車はバッドランズの道なき道を猛スピードで駆け抜ける。パナムがどうしてこの車を愛車として使っているのか、Vはその理由を身をもって知った。

 

『こちらミッチ、スコーピオン聞こえるか?どうぞ』

 

突然、車のラジオから男の声が聞こえてくる。Vは最初は放送事故かと思ったが、隣のパナムの青ざめた顔で事態が良くない方向に進んでいるのを察した。

 

『こちらスコーピオン ちゃんと聞こえている、これからAVを追う以上』

 

「ミッチ!スコーピオン!聞こえる?アタシよパナムだ!そのAVには近づくな!!カン • タオのAVなんだ!」

 

「知り合いか?」

 

「アルデカルロスの…アタシの家族同然の2人、あのバカ!オープンチャンネルで話したら向こうに丸聞こえじゃない…」

 

「もっととばせ、俺が2人を助ける」

 

Vは刀を手に取る、ここまで自分たちを助けてくれたパナムの家族を死なせる訳には行かない。彼は強い決意で鞘を握り締め、ドアを開けると車の屋根に乗った。

 

「Vさん!いきなりどうしたんですか!?」

 

「こうした方が動きやすいだろ!カツオお前も武器を取れ、いつでも撃てるように準備しろ!」

 

やがてソートンは墜落現場に辿り着いたが、見えたのは地面に埋まったAVと巡回するカン • タオのロボット、そしてバイクの残骸だ。

 

「そんな皆…もう…」

 

「パナム援護してくれ!」

 

Vはそれだけ言うと屋根から飛び降り、何も考えず刀を片手にAVまで全速力で走り出した。

 

『脅威を確認、排除します』

 

「邪魔をするな!!」

 

Vの接近に気付き、銃を構えた警備ロボットを一刀両断する。そのメタリックなボディーの断面からは、配線やオイルの様な物が溢れ落ち、直ぐに活動を停止した。

 

「ミッチ、スコーピオン…どこにいるんだ?」

 

『おいV、ランチャーがお前を狙ってるぞ!』

 

ジョニーの声がする方向へ目を傾けると、今まさにAVに搭載されているミサイルランチャーが、コチラへ向かって発射する瞬間だ。

 

「くそ、間に合え!」

 

刀で斬りかかるには距離があり過ぎる。ならばとVは腰のホルスターにかけていた、ハンドガン リバティでミサイルの発射口を射撃する。幸いにも弾は発射された直後のミサイルに命中し、そのまま爆発したかと思えばランチャーそのものを吹き飛ばした。

 

「助かったぞジョニー」

 

『感謝は後にしろ、来るぞ』

 

ジョニーの言う通り、正面から更に3台のロボットが銃口を向けて来る。しかし、その銃が火を吹く事はなかった。

 

ロボットのうち1台は頭部をスナイパーライフルに風穴を開けられ、残り2台は突如 痙攣し始めたかと思えばそのまま動かなくなった。

 

パナムとカツオが狙撃と、ハッキングにより援護をしてくれたのだ。脅威が去ったVにカツオからコールが入る。

 

『Vさん、敵は今ので最後です。早くヘルマンを拉致ってここから離れましょう!』

 

「だめだ、まだパナムの家族が見つかってない」

 

「もうとっくに死んでますって!早く離れないとカン • タオが_____」

 

「_____動くな」

 

Vの後頭部にライフルが突き付けられる、しかし彼の顔に動揺は無い。何故ならその声は、先ほど無線で聞こえて来たものと同じだったからだ。

 

「スコーピオンだろ?俺はVパナムの友達だ」

 

「パナムの?そうか…」

 

フードをし口元を面頬で隠した男、スコーピオンは突然懐かしい名前を聞き、一瞬目を開くものの直ぐに冷静さを取り戻し銃口を下げた。

 

「すまない、お前が味方か分からなかった。ミッチ、もう出て来て大丈夫だぞ!」

 

スコーピオンが近くの岩に向かって話しかけると、その後ろからややオデコが広がっている中年の男が出て来る。

 

「たくっ死ぬかと思ったぞ」

 

「ミッチ!!スコーピオン!!」

 

パナムが2人を強く抱きしめる。彼女からすれば血は繋がっていなくとも、苦難を乗り越えて来た家族なのだ。その不安はとても言葉で表せるものではなかっただろう。

 

「ねえ、他の人たちは?」

 

「それは…」

 

「俺たち以外の仲間はAVのランチャーで木っ端微塵だ」

 

口籠るミッチに対し、スコーピオンは冷静かつ簡潔に状況を述べる。だが当然、それはパナムからしてみれば到底受け入れられるものではない。

 

「そんな……アタシのせいよ」

 

「なあパナム、お前が気にする必要はない。お前が居なきゃ俺もスコーピオンも死んでたんだ」

 

膝から崩れ落ち、自分の無力さを痛感しているパナムの肩にミッチは優しく触れる。しかしその優しさが逆に彼女の心を強く蝕むのだ。

 

彼らの時間を邪魔しないよう、VはひっそりととAVのドアを開ける。中には上質なスーツを着た金髪メガネの男が気絶していた。

 

「アンダース • ヘルマン…見つけたぞ。悪いパナム、俺たちはそろそろ行かないといけない。また何かあったら電話してくれ」

 

「こっちこそありがとうV、私の家族を助けてくれて」

 

「V 俺とスコーピオンはお前に命を救われた、助けが必要なら俺たちのキャンプに来い。借りは返す」

 

雨降って地固まると言うべきか、ヘルマンを誘拐するだけだった作戦はトラブルに見舞われたものの。結果的にVは、パナムらアルデカルロス達の信頼を獲得した。

 

3人に見送られながらVとカツオは、バイクにヘルマンを乗せその場を離れたのだった。

 

 

 

それから20分後、付近のモーテルに着いたVとカツオは部屋を1つ借り、中にあった椅子にヘルマンを座らせた。

 

「ようやくアンタと話ができるよ、アンダース • ヘルマン」

 

そう言い切ると、Vはヘルマンに被せていた袋を剥ぎ取る。袋の中の酸素濃度が薄くなっていたのか、ヘルマンは涙目でゴボゴボと咳をしながらVに話しかけた。

 

「き、君は誰だ?目的は一体何なんだ?」

 

「単刀直入に言うと、俺の頭の中にはジョニー • シルヴァーハンドがいる。ソイツが俺の身体を乗っ取ろうとしてるんだ、アンタこのチップの開発者なんだろ、何か分からないのか?」

 

「なんだって!どういう事は…君はあの試作品を入れたっていうのか、正気ではない…」

 

「コッチにも色々事情があったんだ、いいから早く見てくれ」

 

ヘルマンはまだ聞きたい事があっただろうが、それでも渋々とVにパーソナルリンクを繋ぎ、彼の身体をスキャンした。

 

「コレは…酷いな」

 

「なにが?」

 

「チップは何が何でも君の身体を乗っ取るだろう、私には何もしてやれない」

 

「嘘だろ…ウッ」

 

その時、Vの視界は強く揺れ動いた。またレリックによる発作が起こったのだ。その後強い吐き気が彼を襲う。V自身も流石に人前で嘔吐をするのは避けたかったが、ヘルマンとパーソナルリンクで物理的に繋がっているため離れられず。

結局、ヘルマンの顔面に思いっ切り胃の中身もぶっかけてしまった。

 

「オッエ!オロロロロ!」

 

吐瀉物を顔面に受けたヘルマンの顔は、見るも無惨な有様となっており、彼の眼鏡はVの朝食により完全に曇ってしまった。

 

「あ、悪い」

 

「い、いや…いいんだ。君の状況はよく分かるからな…」

 

『となると、このコーポ野郎は用済みって訳だな』

 

ジョニーは右手で首を切るジェスチャーをする、彼からすれば何の約にも立たないコーポの人間など、生かす理由は無いという事だろう。

 

「どうする、カツオ?」

 

「え、僕に聞きますか。誰か他に協力者とかいないんですか?」

 

「じゃあタケムラに頼むか」

 

今の今までタケムラの存在を忘れていたVは彼に電話をする。まだ朝早いというのに、僅か1コールでタケムラは電話に出た。

 

『Vどうした?約束の日は明日だぞ』

 

「アンダース • ヘルマンを見つけた、今すぐ来てくれ。場所は送った」

 

『何だと!?待ってろ、直ぐに行く』

 

タケムラはそれだけを言うと直ぐに通話を切ってしまった。Vは愛想のない奴だと思いながらも。ここでタケムラを待つのも面倒くさかったので、後の事はカツオに任せ1人モーテルを出た。

 

部屋を出るとジョニーが腕を組んで空を見ている。その時Vは前々から彼に聞いてみたかった事を思い出し、1人黄昏ているジョニーに話しかける事にした。

 

「なあジョニー、1ついいか?」

 

『なんだよ』

 

「お前の記憶を見たけど、どうしてそこまでアラサカが嫌いなんだ?」

 

『俺だけじゃない。誰もがコーポ共を恨んでいる』

 

 

「そうだけどさ、お前みたいにアラサカタワーを核でぶっ飛ばそうって思う奴らはそういないじゃないか。

なあジョニー…俺思うんだけどさ、別に搾取されたっていいんじゃないか?」

 

『あああん?』

 

途端にジョニーは怒りを露わにし、Vを睨みつけた。次に発する言葉次第では、口論になってもおかしくないピリピリとした空気が2人の間を流れる。

 

「いやさ、搾取されたって飯は食えるし仕事終わりに家に帰った後、二コーラを飲んでプリンを食べる。俺はそういう、ささやかな幸せがあるだけで十分だと思うんだ」

 

Vは落ち着いて持論を述べると、それを黙って聞いていたジョニーは怒りは消えたようだが、今度はどこか哀れんだ様子でVを諭す。

 

『なるほどな…Vよく聞け、俺の時代にもお前みたいな考えの奴は大勢いた。そいつ等は多くを求めず、今の生活が続けばそれでいいって顔をしてたさ』

 

「その人たちはどうなった?」

 

『死んだか、死ぬより辛い目にあったかのどっちかさ。企業って奴はほっとくと増長するからな』

 

「そんな…」

 

『いいか、今を維持するってのはただその場に止まっていればいい訳じゃねえ。その逆で走り続けなけりゃコーポ共はそのささやかな幸せさえも奪っていく。アイツ等の欲には終わりなんてない』

 

ジョニーはいつにも増して、真剣な顔でVに語りかける。サングラス越しに見える透き通った目は、その言葉が嘘やデマカセの類ではなく、まるで実際に見てきたと言わんばかりの真実味を帯びている。

 

その後Vは少し黙り込んだあと、何かを決心した様子で口を開いた。

 

「分かったよジョニー…企業がみんなの幸せを奪うのなら俺が守る。その方が伝説ぽいっしな」

 

『おお、そうか』

 

その翌日、ナイトシティ全体を揺るがす大事件が発生した。謎のサイバーサイコによる襲撃事件は、マックスタックが対処に当たったという。

 




オマケ : カツオ泣く

タケムラ「V、来たぞ…誰だお前は?」

カツオ「あ、ああ!貴方はタケムラ様!あのサブロウ様のボディガードの!!」

タケムラ「貴様、俺を知っているのか?」

カツオ「そりゃもう死んだ僕の父はアラサカの重役でしたから!ペロペロペロ」
  カツオ、渾身の靴舐め

タケムラ「ほお、その年でそれだけの靴舐めが出来るとは大したものだ。俺がその域に達したのは20代の後半だった」

カツオ「ありがとうございます!僕はカツオ • タナカ、今はVさんの舎弟をしてます!!」

タケムラ「正気か?アイツはアラサカから盗みを働いただけではなく、サブロウ様の殺害犯として追われているんだぞ」

カツオ「え?……じ、じゃあ僕も」

タケムラ「残念だが、君の名前もブラックリストに載っただろうな」

カツオ「あ、ああ……ワぁ……ぁ……」

タケムラ「泣くことはないだろ」

ヘルマン「そりゃあ泣きたくもなるだろうな」
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