15 ナイトシティ議会襲撃事件
2077年の政治は完全に腐敗しきっている。
この巨大な都市を支配するのは、メガコーポと彼らに飼い慣らされたナイトシティ議会という名の飾り物だ。議会は、貧困地区の住民やストリートキッズの悲鳴には耳を貸さず、アラサカやミリテクといった巨大企業の利益を最優先する法案を、裏金と豪華な接待と引き換えに可決するだけの場所と化していた。
夜の闇に包まれたナイトシティ議会ビルの厳重な正面ゲート。周囲には、サイバーウェアを取り付けた警備員が硬い壁を築いている。
議会というよりも、要塞と呼ぶべきこの場所にVは何食わぬ顔でゲートの正面に立ち、両手をポケットに入れたまま、警備員に向かって軽快に話しかけた。
「なあ、ちょっと用があるんだ。入れてくれないか?」
「なんだ貴様!止まれ、止まらないと撃つぞ!!」
「頼むよ、さっさと終わらせたいんだ」
Vは、急かすようにさらに一歩踏み出した。その一歩が、警備員たちの警戒心を沸点に押し上げる。
「敵だ!正面門に武装した男がいる!奴の姿は_____」
ズドン
警備員の身体が宙に浮き、音もなく地面に崩れ落ちる。Vが手にしているのは、成人男性の腕1本の長さに匹敵するダブルバレルショットガンだ。
「安心しろ、非殺傷弾だ死にはしない」
警報が建物中に鳴り響く。Vはそのまま、正面門から議会ロビーへと一気に突入した。
彼がロビーに辿り着くまでに気絶させた警備員は25人程。それでも蜂の巣を突いた様に、増援の警備員が四方八方から殺到してくる。
しかしVに抜かりはない。
彼はここに来る前、ヴィクターの診療所でサイバーウェアをアップグレードし、更にはサンデヴィスタンを今までのダイナラー製よりも、遥かに高性能な物を取り付けた。
普通の人間なら、まずサイバーサイコを発症しているところだが、少なくとも彼には手の震えや幻覚といった初期症状は見られない。それがレリックのお陰か、それともVの精神が元々サイコに近しいせいなのかはヴィクターにも分からなかった。
「クソッ増援はまだ来ないのか!」
「奴をこの先に行かせるな、何としても食い止めるんだ!」
残った2人の警備達は、互いに背中を寄せ合い迫りくる襲撃者に備えているが、それは無駄な足掻きだった。
「お疲れ、もう寝ていいぞ」
Vのゴリラアームが唸りを上げ、重い打撃音が二度、立て続けに響く。最後の2人は抵抗する暇もなくそのパンチを受け、床に崩れ落ちた。
Vが扉を開けると、そこは小さめの体育館ほどの大きさのホールだった。40人程の議員達が突然の侵入者に驚き、席から腰を浮かせる。その内装は、床や壁は磨き上げられた大理石、天井には巨大なシャンデリアが吊るされており、議会というよりも宮殿の様な見た目であった。
『随分と豪勢な作りじゃないか、コレを作る金の1割でも予算に組み込んどけば大勢の人間を救えただろうによ』
頭の中で、ジョニーが皮肉げに呟く。
Vはジョニーの言葉を無視し、キロシで室内の人間をスキャンし、ターゲットを探す。一番奥の、最も豪華な椅子に座る男の顔が赤くハイライトされた。最近 前任のルシアス • ラインが死去し消去法で市長になった男、ホルトだ。
「よお、テレビで見たよお前の顔」
Vは怯えて腰を抜かしているホルトの前に立ち、無感情に声をかけた。ホルトは恐怖と屈辱に顔を歪ませ、権威を振り絞るように叫ぶ。
「なんだ貴様は!私を誰だと思っている!?私は______」
「______そんなのはどうでもいい」
Vはホルトの首を刀で勢いよく切り飛ばした、ホルトの首は豪華な演説台の上に鈍い音を立てて転がった。
Vは刀の血を払い、死体となったホルト市長と、床に転がるその首を見下ろしていた。
議会は恐怖に満ちた静寂に包まれている。残った議員たちは壁際に張り付くか、机の下で震えているだけだ。
Vがこの場を去ろうとした、その時。
「待ってくれ」
凛とした、しかし緊張を隠せない声がVを引き留める。Vが振り向くと、そこには他の議員とは違い、恐怖に震えながらもVを真っ直ぐに見つめる男が1人立っていた。
「アンタは?」
「私はジェファーソン • ペラレス…君がたった今命を奪ったホルトとは、今度の市長選で対決する予定だった男だ」
「ならよかったな、コレでアンタはトーセン出来る」
「人が死んだというのに…喜ぶ事なんて出来ない。ホルトは企業から多額の賄賂を受け取っていたし、決して聖人ではないがここまでの仕打ちを受ける必要があったのか?」
Vは刀の切っ先をジェファーソンに向け、猿程度の脳みそで導き出したシンプルな結論を語りだす。
「さあな。でも俺なりに考えてみたんだが、本当はアラサカとかミリテクみたいな企業が好き勝手してたら、アンタ達政治家が止めなくちゃいけないだろ。でもその政治家が企業から金を貰って奴らの言いなりになる」
Vはそこで言葉を切り、画期的なアイデアを思いついたとでも言うように目を輝かせた。
「だったらさ、企業から金を貰ってる政治家を全員殺したらいいんじゃね?って思ったんだ」
「それは極論だ!そんな事をしたって汚職は無くならない、もっと平和的に解決する方法があるはずだ!!」
「俺には思いつかなかった」
Vはきっぱりと言い切った。その悪びれない態度に、ジェファーソンは天を仰ぎ、深い溜息をついた。
「そうか…君の様な知能が著しく低い人間は、暴力でしか現状の変更ができないんだね。かわいそうに…」
『おい、火の玉ストレート過ぎるだろ』
ジョニーが呆れたように呟く。Vはジェファーソンの言葉の意味が半分も理解できなかったが、馬鹿にされたことだけは察した。
「…あまりインテリアな言葉を使うなよ、意味が分からないぞ」
2人の間には知力という、決して超えられない壁があった。故に分かり合う事は不可能だ。しかし、Vはこの状況で自分に話しかける彼の勇気は認めていた。
彼は刀を鞘に戻すと、ジェファーソンに話しかける。
「あんたは他の政治家とは違う感じがする…仮にあんたが悪いことしたとしても殺すのは1番最後にしとくよ」
それはVなりの最大限の敬意の表れだ。ジェファーソンはまだ話したい事がある様子だったが、結局はVが議会を去っていく背中を見送るしかなかった。
Vは静まり返った議会を後にし、正面ゲートから堂々と出てきた。ゲートの外では、少しボロいSUVがけたたましいアイドリング音を立てて待機している。
Vが助手席に乗り込むと同時に、運転席のカツオがヒステリックな声を上げた
「カツオ、早く出せ!」
「いやホントになんて事したんですか!?」
カツオはサイドミラーで、議会から響き渡る警報とパニックの様子を伺いながら、車を急発進させる。
「ホルトをぶっ殺しただけだ」
「ホルトはNCPD寄りの政治家だったんですよお!こんなことして、タダで済むと思ってるんですか!!」
カツオが泣き叫ぶように言う。その言葉を裏付けるように、車のすぐ後ろには、NCPDのドローンや車両が凄まじい勢いで増えていく。
『確かに、今まで見たことないくらいにはサツがキレてやがる』
その時、カツオがバックミラーと上空に映る影に気づき、言葉にならない奇声を上げた。
「のあーー!あのAVマックスタックじゃないですか!どうするですか、サイバーサイコ認定されちゃいましたよ!!」
Vが振り返ると、ビルの谷間を縫って、重装甲のAVが猛烈な速度で追走し、真後ろ数メートルまで迫っていた。強力なサーチライトが車内を白く照らし出す。
「キーキー騒がなくても聞こえてる、それに伝説になるんだったらアイツ等はいずれ超えなくちゃいけないと思ってたんだ」
Vはカツオのパニックなど意に返さず、嬉しそうに口の端を吊り上げた。
「まさか…戦う気ですか?マックスタックと?作戦は?」
カツオが絶望的な表情で問いかける。
「そんなの必要か?俺は今朝ヴィクに新しいインプラントと、最強のサンデヴィスタンをツケで入れてもらったんだ。多分勝てる。まあ、仮に作戦名を言うなら…」
Vはカツオに白い歯を見せサムズアップをする。
「敵に突っ込んで、後は野となれ山となれ作戦ってとこだな」
その言葉を聞いたカツオはあまりのショックに脳がパンクし、全身の力が抜けたように深く息を吐き出した
「そうですか、死んでください」
「心配するな、俺は生きて帰ってくるから。お前は逃げることだけ考えてろ」
Vはそう言い残し、走行中の車のドアを蹴破るようにして車道に飛び降りた。
アスファルトに完璧に着地したVは、後方から迫り、部隊を展開させようとするマックスタックのAVを、一人真っ直ぐに見据えた。
オマケ : 俺は認めない
V「なあヴィク、俺っていつまで借金し続けないといけないんだ?」
ヴィク「まずは節制をしろ、お前さんは稼いでもその分だけ使うから残らないんだよ」
V「でも新しいクロームは欲しいし…そうだ!なあヴィク!このリボ払いってのを使えば_____」
ヴィク「_____駄目だ」
V「え?」
ヴィク「俺にもプライドがある、リボ払いでインプラントを売るような真似はしない」
V「マジかよ…あっじゃあこの残クレなら」
ヴィク「いい加減にしろ!!残クレもリボもウチじゃあ禁止だ!!!」
ジョニー『こいつ、本当にナイトシティの住人か?』
この後ツケで払った
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あとがき
唐突ですが【愛と誠】っていう歌がエッジランナーズと凄く合ってるなと思いました。
誰かMAD作って