もしもVの知力が0. 1だったら   作:正拳突き

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17 髭面の天使

血の様な錆びた鉄の匂いが鼻をかすめる。まぶたを開いたとき、天井は布地だった。

薄い光が差し、外では風が砂を巻き上げている音がする。

 

どうやら、自分は気絶していたらしい。

 

「あれ、ここは?」

 

「おはよう、ここはアタシたちのキャンプよ」

 

その声を聞いた時、胸の内側がふっとゆるんだ。安心したような、あるべき場所に帰ってきたような、そんな感覚。

 

顔を横に向けると、そこにはパナムが座っていた。

 

「おはようパナム、なあどうして俺はベッドに縛りつけられているんだ?」

 

Vがそう言うのも無理はない。

手足どころではない、身体全体に分厚い鎖が幾重にも巻かれている。

まるでいつ暴れるのか分からない、猛獣を抑え込んでいるかのようだった。

 

「それについては俺が話そう」

 

Vの疑問に答えたのは、パナムの後ろで腕を組み訝しげにコチラを見ていた髭面の男だ。

 

「アイツ誰だ?」

 

「彼はソウル、ここのリーダー」

 

なるほど、とVは思った。

バッドランズを駆け抜ける者たちを束ねる、威厳を感じさせる顔つきだ。

 

「パナムがお前を連れて来た時、サイバーサイコだと疑った奴がいてな。聞けばホルトを殺して、マックスタックともやり合ったっていうじゃないか」

 

「そんな急に褒められると〜」

 

すかさず口元がゆるむが、ソウルは眉一つ動かさない。

 

「褒めてないぞ。まあ、会話もキチンと出来ることだし、拘束は外そう」

 

ソウルが軽く合図をすると、パナムはためらいなく鎖を掴み、工具でそれを断ち切っていく。

金属が弾ける音が、砂混じりの風に溶けた。

 

「アタシの言った通りだったでしょ、Vはサイコなんかじゃないって」

 

「ああ、俺もその点にはホットしている。だがまだお前を完全に信用したわけじゃないからな」

 

「どういう意味だ?」

 

「寝ている間にお前の身体を調べさせてもらった。随分とぶっ飛んだクロームを入れているんだな」

 

Vは本気で不思議そうにまばたきをする。そして、自分の身体を何度も眺めるが、これと言って思い当たりがない。

 

「俺そんなの入れてたか?」

 

「とぼけるな、チアンT社製の旧式サンデヴィスタンだ」

 

「ソウル、それって何だっけ?アタシも名前は聞いたことはあるけど…」

 

ソウルはあごに手を当て、2人に淡々と説明する。

 

「コイツは曰く付きでな。装着者の意思で、内部のリミッターが簡単に解除できてしまう」

 

途端にパナムの顔が青ざめる、彼女も状況を察したようだ。

 

「そして、それを試した奴らは軒並みサイバーサイコシスを発症。サイコ共が街中で暴れ出して、世間からはチアンT社へ大バッシング、同社は問題の製品を販売禁止、自主回収に至ったという訳だ」

 

「それじゃあ…Vもサイコに?」

 

震える声で質問をするパナムだったが、それに対するソウルの返答は拍子抜けなものだった。

 

「俺もそう思って全身くまなく調べたんだが、一向に兆候がみられなかった。お前一体なんなんだ?…」

 

「腕のいいリパーがいるからな」

 

Vはふっと鼻を鳴らし、胸を張った。綺麗なまでのドヤ顔である。ソウルとパナムはほぼ同時に、小さくため息をついた。

 

ひとまず場が落ち着いたその瞬間、

テントの隅で、古いラジオが小さくノイズを吐く。

 

『続いて、昨夜のナイトシティ議会が襲撃され、ウェルドン・ホルト市長が暗殺された事件ですが──』

 

その場の全員がラジオにちらりと視線を向ける。Vは自分の活躍が報道されるのを、待ってましたと言わんばかりの顔だ。

 

『NCPDによりますと容疑者とみられるサイバーサイコは、マックタックにより殺害されたとのことです』

 

「え、俺死んだのか?」

 

「だったら今ここにいるアンタは幽霊だとでもいうの?」

 

パナムが軽くVの頬を指でつく、ハリと弾力のある肌がぷにっと凹んだ。

 

「なるほどな、NCPDからしてみればホルトを殺されてマックスタックを出動させたのに犯人を取り逃したとなれば、とんだ赤っ恥だ」

 

「だがら、Vを殺したことにして、これ以上自分たちに批判が来ない様にしてるってこと?ホント腐ってるね」

 

「とはいっても、NCPDは裏でVのことを追っているのは間違いない。何時までのこのキャンプに匿っていたら、俺たちまでもが危険に晒される」

 

風が砂を引っ掻く音が、妙に静かに聞こえた。パナムが唇を歪める。

 

「ソウル、何いってんの!Vがいなきゃミッチもスコーピオンだって____」

 

「_____恩人であっても事情が事情だ、2、3日したら出て行ってもらうぞ」

 

「ああ、それでいい」

 

「V!」

 

静かに受け入れるVに対し、パナムの声は感情的だ。怒り、悲しみ、切なさ、様々な気持ちが入り混じった声がテントを突き抜ける。

 

「これでいいんだよ、パナム。アンタは俺の命を助けてくれた、これで貸し借りはゼロだ」

 

パナムは黙り込み、拳を強く握る。Vは立ち上がり、軽く背筋を伸ばすとソウルへ話しかけた。

 

「でもソウル、俺としては少しはアンタたちにお礼をしたいんだ。今からでもいいから、何か仕事を手伝わせてくれないか?」

 

ソウルが腕を組み、暫しの沈黙が後に口を開く。

 

「…まあ、出ていく前に仕事を手伝ってくれるって言うなら話は別だ。助かるのは事実だしな」

 

パナムはほっと息をつく、Vはいつもの調子で軽く笑った。

 

「任せてくれよ。働くのは得意だ」

 

こうして、Vは“出ていくまでの数日”という名目で、キャンプに残ることとなった。

 

 

 

 

二日後、灼熱の太陽が地面をフライパンの様に熱する午後。

 

「お前いくらなんでも働き過ぎだろ」

 

「いきなりどうしたんだよ?」

 

キャンプ内でVは刀についた血を、まるで埃でも払うかのように気軽に拭いていた。

 

ソウルは思わず額を押さえるこの男は自覚がないのが一番タチが悪い。

 

キャンプに来てまだ たった2日 だというのに、レイスの拠点へ1人で突撃し、そこにいた敵をまとめて撫で斬りにしたついでに捕まっていた捕虜まで救い出した。

 

部下が仕事の最中にコーポと揉めたと聞けば、様子を見に行ったどころか敵を全員気絶させて帰ってきた。

 

そして極めつけは──

レイスの幹部から、ソウルへ直接電話がかかってきたことだ。

 

『どうかあの化け物を寄越さないでくれ……言う通りにしたら儲けの何割かは上納するから……』

 

声は震え息は乱れている、あれは泣いていた。降伏というより 助命嘆願 だ。

 

圧倒的武力とは、存在を示しただけで交渉をこちらの有利に傾ける。ソウルはその時、心の底から理解した。

2077年にもなって、未だに核兵器が廃絶されない理由を。

 

これ程までのVの活躍ぶりは、ソウルに彼を手放すのが惜しいと思わせるには、十分過ぎた。

 

「なあV、お前アルデガルドスに入らないか?」

 

「なんでそうなるんだよ…最初はとっとと出で行ってくれって感じだっただろ」

 

ソウルは胸に手を当て、わざとらしく天を仰ぐ。

 

「誰がそんな酷いことを。最低な奴もいたもんだな、なあスコーピオン!」

 

「お前が1番始めに言い出したことだろ」

 

スコーピオンは冷静かつ、端的にツッコミを入れた。ソウルはまた舞台役者の様なわざとらしい声で叫ぶ。

 

「あ〜そうだったな、こりゃ1本取られた!!」

 

「「「 ハハハハハ!!! 」」」

 

ソウルとスコーピオンの漫才を聞いていた物達が途端に笑い出す。ソウルにとって最も重要な事は、家族の命を守る事であり、その為であれば道化にでもなる。

 

それだけVを仲間に引き込みたいという気持ちの表れでもあった。

 

「それに、パナムから聞いたがお前は元ノーマッドなんだろ。やっぱりクランが恋しくならないのか?」

 

「俺のクランはバラバラになったし、今は自由気ままに傭兵をしてるんだ。そっとしといてくれよ」

 

「水臭いこというなって、まあ今はお前の意思を尊重するが、アルデガルドスはいつだって歓迎するからな」

 

それは 表向きの言葉 だった。本音は何としてでもVを仲間に引き込む。ただし、今ここで押したら逆効果だと判断しただけだ。

 

本命は自分ではない。ソウルは決意するとパナムのテントへと向かった。

 

 

「という訳だ、何でもいいからVを引き込んでくれ」

 

「なんでそういうことになるの?」

 

「お前はVと1番付き合いも長いし、何よりVは命を助けてもらったていう借りがある。お前が強く言えば断れないはずだ」

 

ソウル言い方が気に入らなかったのか、パナムはむっと口を尖らせ、若干ではあるが軽蔑したという目を彼に向ける。

 

「アタシはそんな邪な気持ちでVを助けたんじゃないって。ただアイツが、ミッチとスコーピオンを助けてくれたからで」

 

「その割にはVは寝込んでいる間、ずっと側で見守っていたじゃないか」

 

「いきなり何言うの!」

 

パナムが大きく声を荒げる、しかしそれが怒りから来るものでは無いことはソウルにも理解できた。

 

「自分に正直になれ、Vに惹かれてるんだろ?アイツが俺たちの家族になれば毎日会えるんだ、お前にだって悪い話じゃない」

 

「いや、Vは気が合う友達で…確かにアイツが殺されそうになってんのを見た時は、結構動揺したけど…」

 

顔を地面に向け、しおらしくなったパナムへソウルは怒涛の口撃を浴びせる。

 

「ほら見ろ、やっぱり恋してるじゃないか!」

 

「ああもううるさい!なんでオッサンって何でも感でも恋だとか愛だとかに結びつけるの?別にいいじゃん友達でも」

 

「死ぬまでそう自分に言い聞かせるつもりか」

 

「え?」

 

突然、雰囲気をガラリと変え真面目な表情を出したソウルにパナムは戸惑いの顔を隠せない。テントの中の空気が僅かだが、ひんやりとした。

 

「Vもお前も、いつ死んでもおかしくない仕事をしてるんだ。何かあった時に、あの時素直に自分の気持ちを伝えていれば、と後悔しても遅いんだぞ」

 

パナムは言い返そうと口を開くが、言葉が出てこない。

 

「ソウル…」

 

「俺が言いたいことは全て伝えた。後どうするかはパナム、お前の自由だ」

 

「ちょっと待ってよ。アタシ、どうしたら______」

 

「_____ソレはお前が決めることだ。まあ、俺から1つアドバイスをするとしたら、先ずはデートにでも行けばいい」

 

「デート?」

 

「そうだ、別にキスをしろとかって言ってるんじゃない。2人で少し遠出して、景色を楽しんだ後に帰る。それも立派なデートだ。

その上で、ゆっくりと自分の気持ちを整理すればいい」

 

言われてみればそれは、確かに難しいことではない。

パナムはベッドに座ったまま、目をつぶり深呼吸をすると数秒後、ゆっくりと目を開けた。

 

「分かったよ、1回Vをデートに誘ってみる」

 

「その意気だ、楽しんでこい」

 

パナムは立ち上がる。いつもの歩き方だが、足取りは少しだけ軽るかった。

 

「ありがとうソウル、やっぱりアンタは頼りになるね」

 

「役に立てて何よりだ」

 

パナムがテントから出ていく、布が揺れて外の光が差し込んだ。

そして 一人になった瞬間、ソウルは拳を握りしめて小さくガッツポーズをした。

 

(やった、やったぞ!あの感じは絶対に好意がある!パナムはまだ自分でも気付いていないが、俺は恋の波動をビンビンに感じたぞ!!)

 

大人とは汚い生き物だ。自分の目的を達成する為なら、若者の恋心さえも利用してしまう。

髭面のキューピッド、ソウルによる微妙な距離感の2人をくっつける計画は続く。




オマケ : だ◯ご三兄弟

これはVがミッチと一緒に、レイス狩りに行った時のこと。

ミッチ「レイスの奴ら建物に閉じこもって籠城しやがったぞ」

V「それがどうしたんだ、正面から突っ込めばいいだろ?」

ミッチ「そうしたいのは山々だが、アイツ等がどんな罠を仕掛けてるのか分からないからな…」

ミッチ「戦わせずに連中を降伏させられればいいんだが…」

V「なら俺に任せろ」

ミッチ「どうするつもりだ?」

V「先ずは建物の周辺に転がってる死体から、生首を取る」

ミッチ「え?」

V「そんでこの生首を重ねて串刺しにすれば…」

V「できた!!」


【挿絵表示】

※読者への負担を軽減するために、画質を落としています。

V「こうすればアイツ等もビビり上がって降参するだろ」

ミッチ「…」

V「あ、白旗上げてる。やったなミッチー、俺たちの勝利だ!」

ミッチ「あ、ああ…」
   (コイツだけは怒らせないようにしよう)



あとがき

キャラ崩壊のタグも入れるか。
かっこいいソウルが見たい皆様は星ルートをプレイして下さい。

さあ一緒に、アルデガルドス!!
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