もしもVの知力が0. 1だったら   作:正拳突き

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前回のアンケートに回答してくれてありがとうございます。
とりあえず、アルデガルドス編は一旦終わりにして、次回からまたVに暴れてもらいます。


19 残された時間で

アルデガルドスのキャンプは、とても静かな夜に包まれていた。

焚き火の明かりが木をパチパチと鳴らし、周囲に優しい光を照らす。

 

その炎の手前で、カツオはパナムが作った料理を食べていた。

質より量の合成食材により作られた、味気のない物だが数日ぶりの温かい食事を取ったカツオは、涙と鼻水を垂れ流しながら口いっぱいに頬張る。

 

「う、うう…美味い。こんなに庶民の飯を美味いと思ったのは初めてだ…」

 

「そんなに焦んなくても誰も取ったりしないから」

 

「そうだぞカツオ、ゆっくり食え」

 

「はひぃ…ありがどうございまずぅ!」

 

その顔はどこか情けなく、けれども心から幸せそうな顔だった。

 

「それとカツオ、食べながらでいいんだけど」

 

「どうひまひた(どうしました)?」

 

「あの時、お前がパナムを呼んでくれなかったらヤバかったよ。ありがとな」

 

「本当にその通りですよ。これに懲りたら2度とあんな真似はしないで下さいね」

 

「ああ、次は議会に殴り込むんじゃなくて、政治家の家に直接お邪魔すればいいだろ?」

 

「何も分かってませんよね!?」

 

Vが阿呆を晒し、カツオがツッコむ。やっといつもの日常が帰って来たと安心した時だった。

 

「いや、ちゃんと分かってって…あれ?」

 

Vが苦しそうに胸を抑えうずくまる。

忘れてはいけない、死神はいつだって身構えてない時に来る事を。

 

「V!」

「Vさん!」

 

Vはそのまま意識を失った、最後に聞こえたのは自分を呼ぶ仲間の声だった。

 

 

 

 

 

目覚めた時、Vは最初にこのキャンプに来た時と同じ様にベッドの上だった。しかし、今回は身体を鎖で縛られてはいない。

 

「気がついた、大丈夫なの?」

 

「パナム…俺は生きてるのか?」

 

「ねえV、アンタちょっとおかしいよ…何があったのか教えて」

 

「ジョニー • シルヴァーハンドって男が俺の頭の中にいて…近いうちに俺はそいつに身体を乗っ取られるらしい」

 

「なにそれ、意味わかんないよ!」

 

パナムが強く声を荒げる。その顔には怒りと悲しみ、本人ですら制御できない強い感情が溢れていた。

 

「仕事でアラサカからチップを盗んだ時に、それを俺に入れたら取れなくなっちゃって。

それで気が付いたら、俺は死にかけで」

 

「そんな……」

 

その時テントの外で会話を聞いていたソウルが、慌てて飛び込んでくる。

 

「V!そりゃ本当か!?」

 

「ああ、この前パナムと一緒にヘルマンを拐ったのも、アイツがこのチップを作ったからなんだが…ダメだったよ」

 

「何故もっと早く言わなかった!お前は俺たちの家族なんだぞ!」

 

ソウルの怒鳴り声もまた、怒りと悲しみが合わさっている。

ここ数日共に暮らしただけだが、彼もまたVを心の底から仲間だと思っていたのだ。

 

「いやぁ~つい忘れてて」

 

「そんな大事なこと忘れんな!!」

 

パナムは唇を強く噛み、震える声で尋ねる。

 

「V…それでアンタが助かる方法は見つかったの?」

 

「いや、今探してるところだ」

 

「なんでそんなに落ち着いてられんの?早くしないと死ぬんだよ!」

 

「落ち着けよパナム、焦ってもなんも良くはならい。なら落ち着こうぜ」

 

Vは深くあくびをすると続けて話す。

 

「あ〜眠い。もうひと眠りするか…」

 

「それは落ち着き過ぎでしょ!!」

 

「よすんだパナム、Vの言う通り焦っても状況は好転しない。

心配するなV、さっきも言ったがお前がなんと思おうがお前はもうアルデガルドスの家族だ。

…お前の命は俺たちが必ず助ける」

 

単純な言葉だが、それに秘められた想いは計り知れない。

Vでさえ、真顔でそれを受け止めた。

 

「ありがとう、でも俺はひとまず街に帰るよ。まだやり残したことがあるからな」

 

ベッドから起き上がると、Vは荷物を持ち外へと歩き出す。

だが、その肩にそっと触れる手があった。

 

「Vちょっと待って」

 

パナムだった。

彼女の指先は意外にも震えていて、必死に何かを押さえ込んでいるのが伝わってくる。

 

「どうした?」

 

「V…アタシは…」

 

言いかけて、パナムは首を横に振った。

一切の迷いのない強い目でコチラを見る。

 

「いや、オドオドするのは性に合わないからこの際ハッキリと言うよ。アンタ、アタシと付き合ってよ」

 

その瞬間、外の焚き火の音が聞こえるくらいに、テントの中が静まり返った。

ソウルとカツオは目を丸くし、ジョニーも僅かに驚いたものの、直ぐ口笛を吹き、勇気を出した女へ賛辞を送る。

 

Vはポカンとた顔で尋ねた。

 

「付き合うって…恋人的なアレか?」

 

「それしかないでしょ、それで返事は?」

 

パナムの声は強気だが、目だけはウルウルと揺れていた。

Vはそんな彼女を見てにやりと笑う。

 

「そりゃ当然okだろ、さっきも言ったけどパナムは顔も尻も性格も最高の女だからな」

 

「V!」

 

パナムが勢いよく胸元に飛び込んで来る。

その抱擁は痛いくらいに強く、決して離さないと暗に示しているようだ。

 

Vは照れ隠しの様に小さく笑い、彼女の背中に手を回す。

 

「パナム、お前この状況で告白なんてするか?ムードもクソもないな」

 

「うっさい、アタシはやると決めたらやる女なの」

 

『なるほどな…もしこれから友達以上、恋人未満の男女を見つけたら、どちらか片方を余命僅かにすりゃいいわけか』

 

ジョニーは相変わらず皮肉を言うが、その声色はどこか優しかった。

 

「シルヴァーハンドが中にいるって話、本当だったんだ…」

 

今までVをただのサイバーサイコ擬きとしか思っていたなかったカツオは、彼への認識を改めることになった。

 

 

 

アルデガルドスのキャンプから遠ざかり、砂漠の夜風を切り裂く様にバイクは走る。

パナムの大胆な告白の余韻がまだ残っていて、Vはどこか浮かれた顔をしていた。

Vにしがみつくカツオは、パナムやソウルの温かい見送りの言葉を思い出しながら、口を開く。

 

「Vさん本当に良かったんですか、パナムさん達と一緒にいた方がいいんじゃ?」

 

「まあ…そうだけどさ、街でやりたい事ことが沢山あるし、会いたくなったら会いに行けばいいだろ」

 

「まあVさんがそれでいいなら僕は何も言いませんけどね」

 

「そうそう______あれ、ジュディから電話だ」

 

Vが意識を向けると、視界の端にジュディの顔が現れた。

 

「よおジュディ、どうした?」

 

『V…今すぐ私の家に来て、エヴリンが…』

 

「エヴリンがどうした?…まさか死んだのか!」

 

『いえ、寧ろ超元気なんだけど…元気過ぎるから問題っていうか…とにかく来て!』

 

「分かったすぐに行く」

 

Vはジュディとの電話を切ると、バイクの後ろに乗っていたカツオに話しかける。

 

「カツオ、今すぐジュディの家に行くぞ!」

 

「誰の家ですか?」

 

「行けば分かる」

 

Vはアクセルを強く掴み、ジャッキーのアーチに出せる最高速度で高速道路を突き進む。

途中渋滞に巻き込まれたが、バイクの機動力を最大限に利用し、一切スピードを落とさずに車の隙間を走り抜けた。

 

「いやあああ!やめて下さい、Vさん!!」

 

「ハハッ――気持ちいいだろお、カツオ」

 

「アンタこんな生活してたら、ジョニーに身体乗っ取られる前に死ぬぞ!」

 

カツオの悲鳴が夜空へ吸い込まれていく。

Vは一切意に返さず、ナイトシティへと向かった。

 

 

ナイトシティの中心部に入ると、ネオンの光が路地の汚れた壁に反射し、生温い悪臭が鼻をかすめた。

人と機械と、ゴミと排気ガスが混ざった匂いだ。

 

ジュディのアパートの前に車を止め、Vは建物を見上げる。

 

「ここに来るのも久しぶりだな」

 

「落書きだらけですね…なんというか、家賃安そう」

 

「人の家にそういうこと言ったら失礼だろ」

 

Vとカツオは階段を上がり、ドアの横のインターホンを鳴らした。

程なくして金属の擦れる音と共にドアが開く。

 

「V、待ってた…えーっとその人は?」

 

顔を出したジュディは殆ど寝てないのか、目の下には隈が出来ていた。

彼女はVの後ろにいたカツオに気づくと、少し警戒した様子で目を細める。

 

「コイツはカツオ、俺の舎弟だ」

 

「よ、よろしくお願いします…」

 

「そう入って」

 

疲れの滲んだ声で促され、2人は部屋へ踏み入れた。

 

「それで、エヴリンはどうしたんだ?」

 

「エヴは______」

 

「______マーマー、お腹すいた〜」

 

ジュディとの会話を遮る様に、部屋の奥から甲高い声が響いた。

 

ドタドタという音とで走って来たのは間違いなく、エヴリン • パーカーその人なのだが。

彼女はまるで幼子が着る様な白いフワフワのワンピースに、クマの刺繍を付け、髪にもリボンを付けていた。

 

「ごめんね〜ママちょっとこのお兄さんとお話があるから、ちょっとだけ待っててね」

 

「待つってどれくらい?」

 

「すぐに終わるから、いい子にしてたらア◯パ◯マ◯チョコあげるから。ね?」

 

「チョコちゅき!エヴいい子にする」

 

エヴリンは満面の笑みでスキップをしながら、部屋の奥へと消えて行く。

その姿はかつてリジーズ • バーでの妖艶な魅力を持つ、謎めいた女だった彼女とは別人だった。

 

「えっと…エヴリンはどうしたんだ?」

 

Vのキョトンとした質問に、ジュディは重いため息をつき、椅子を指さした。

 

「座って、全部話すから」

 

Vとカツオが腰を下ろすと、ジュデイはゆっくりと説明を始める。

 

「まず…あなたがクラウドから彼女を助けてくれた時、エヴリンは酷いトラウマを抱えていたの…話せないくらいには」

 

「ああ、確かに人形みたいだったな」

 

「全部ウッドマンとかいうハゲのせい、だからソイツに関する記憶だけ消そうとしたら_____」

 

ジュディはチラリと振り返り、後ろでおままごとをしているエヴリンに視線を向けた。

 

「間違えて、他の記憶まで消しちゃって…彼女は“今3歳まで”の記憶しかない状態なの」

 

「嘘だろ…」

 

「あのぉジュディさん、記憶のバックアップとかは取ってないんですか?」

 

「実はバックアップの方も間違えて…消しちゃって…」

 

「ええ…」

 

カツオだけではない、流石のVですらエヴリンに同情をした。なにせこれから彼女は3歳児として、人生をやり直さなくてはいけないのだから。




オマケ : ジュデイ ママ〜

エヴリン「エヴお腹すいたー」

ジュディ「ごめんね、今晩ごはん作るからちょっと待っててね」

V「俺も腹減ったな、一緒に食べていいか?」

ジュディ「勿論、2人とも食べていって♪」

エヴリン「まてない」

ジュディ「え?」

エヴリン「お腹空いた!もう待てない!」

ジュディ「で、でも他に食べられるものなんて…」

エヴリン「じゃあママのおっぱい飲む」

ジュディ「ちょっとなに言って/// あっ、ダメそんなとこ吸わないで//// か、感じちゃう♡」

V「ジュディにおっぱいは出せないだろ」(真顔)

カツオ「もし僕がこんなんになったら…いっそ殺してほしいなぁ」

ジョニー『コイツわざと記憶消したんじゃないよな』




あとがき
エヴリンは強い女だがら、身体はそのままに中身3歳からでも大丈夫だよな。
やっぱり2次創作なら、原作では死んだキャラを生かしたいよね。

ジャッキー…アイツは、まあいい奴だったよ。

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