もしもVの知力が0. 1だったら   作:正拳突き

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もう…ゴールしてもいいよね。


23 オルトに謝れ

午後11時になろうかという深夜、Vたちはノースオークにあるケリーの豪邸を訪れていた。

ノースオークの丘の上に建つその家は、外から見ればセンスの良い豪邸だ。

だが、一歩足を踏み入れた瞬間に、その印象は盛大に裏切られることになる。

 

床には服と空き瓶とピザの箱が散乱し、ソファの上には謎の雑誌としょうもない物が山積みとなっていて、テーブルの上には誰がいつ飲みかけたのか分からないグラスがいくつも転がっている。

 

思わずローグが顔をしかめた。

 

「なんだいここは……でっかいゴミ箱かと思ったよ」

 

ケリーは不機嫌そうに肩をすくめながら言返す。

 

「文句があるんなら帰れよ。俺はジョニーに用があるんだからな」

 

ここに来るまで、ジョニーとオルトが好き放題言い合っていたが、Vには半分も理解できていない。とにかく今は、この場で話をつけるしかない。

 

「たく……分かったよ。お前ら、とりあえず座りな。最初から全部話してやるよ」

 

ローグはため息をつきながらも、空いているイスを引き寄せて腰かける。ケリーはVとローグの目の前に立ち、腕を組んだまま不機嫌そうにしている。

 

 

【挿絵表示】

 

 

Vはジョニーのアドバイスを受けつつ、レリックのこと、ジョニーのこと、この先自分に降りかかる危険をできるだけ順序立てて説明していった。

 

ひと通り話し終えると、部屋全体が重たい空気に包まれる。そんな状況で最初に口を開いたのはローグだった。

 

「ジョニーがあんたの中にいるって話……本当だったのかい」

 

ローグの声は、驚きというよりも安堵というべきだろうか。長い付き合いの女は、半世紀経とうが男の匂いを嗅ぎ分けるらしい。

 

だがその隣でケリーが腕を組み、じろりとVを睨む。

 

「俺はまだ信じてねぇけどな…。ホントは全部ウソで、その左腕のリアルスキン引っ剥がしたら、下から銀の腕が出てきたりしないよな」

 

ローグは一応納得した様子だったが、ケリーはまだ半信半疑なのがありありと分かった。

 

その時______

 

『いいや。彼の言っていることは正確だ』

 

不意に、ケリーの家のスピーカーからオルトの声が響いた。高級オーディオから流れるのは、本来ならケリーかSAMURAIの曲のはずだが、今は電子の亡霊の声が響き渡る。

 

「おい、人んちのスピーカーに勝手に入り込むなよ!」

 

ケリーが慌てて天井を見上げ抗議をするも、オルトはそんもの気にも留めず、淡々と続けた。

 

『お前たちがVの言葉を信用できないというのなら、私が証拠を見せよう』

 

ローグが片眉を上げる。

 

「はん、証拠ってどうやって見せるつもりだい?」

 

『記憶だ』

 

「記憶ぅ?」

 

ケリーが思わず聞き返す。

 

『V、いまこの家のテレビを掌握した。そこにパーソナルリンクを繋げ』

 

「おい、俺の家をどこまで荒らす気だよ……」

 

「いいぞ」

 

Vはテレビ前まで歩いていき、腕の端子を迷いなくテレビに挿し込んだ。

 

パーソナルリンクを通じてレリックにアクセスしたオルトは、ジョニーの記憶痕跡の中から、とある過去の光景を呼び出す。

画面が一瞬ノイズに染まり、やがて古い映像作品のようなざらついた質感の映像が映し出された。

 

それは2013年。まだジョニーがロッカーボーイとして活躍していた頃の記憶だ。

 

______だが、その中のジョニーは、かなり酷い男だった。

 

ライブを終え、オルトとの情事も済ませた後。汗と酒と煙草の匂いが混じった空気の中で、2人の会話は徐々にトゲを帯びていき、やがて激しい口論に変わる。

言い合いがこじれたその時、ジョニーはオルトの首を掴み低い声で言い放った。

 

「それで俺を理解した気になったってのか、ああん?」

 

全員が思わず顔をしかめる。

 

その後何をするのかと思えば、今度は離れようとする彼女に縋りつく始末だ。

そのときの殺し文句がこれである。

 

「ブースターが切れちまった……買ってきてくれ」

「明日もライブをやるんだ……来たきゃ来いよ」

 

自分から突き放しておいて、結局縋りつく。みみっちいというか、身体だけ大きくなった子どものような妙な幼さをまとった男だった。

 

誰も言葉を挟まないまま、記憶の映像は進む。

 

やがて映像は切り替わる。薄暗い路地、オルトが何者かに押さえつけられ、車へと引きずり込まれていく。

彼女の叫び声は次の瞬間、ドアの閉まる音にかき消された。

 

続いて映るのは、ローグの顔だ。トンプソンという記者を連れたジョニーが、息を切らしながら彼女の元へ飛び込んでくる。口論とも作戦会議ともつかないやり取りのあと、仲間たちが次々と武装して立ち上がる。

 

その次のカットでは、もうアラサカタワーの中だった。

 

銃声 爆発 悲鳴 画面の中のジョニーは、煙と火花の中を、歯を食いしばりながら突き進んでいく、ただひたすら上へ上へと。

 

しかし結果として、オルトを救い出すことはできず、眠るような彼女の肉体だけが残され、その意識はサイバー空間に置き去りにされたままだった。

 

テレビの画面が黒くなり、部屋の中に静寂が落ちる。

それを破ったのは、Vの率直すぎる1言だった。

 

「お前、いくらなんでもクズすぎるだろ」

 

ローグが苦笑混じりに鼻を鳴らす。

 

「アンタがクソ野郎だってのは前々から知ってはいたがね……こうして改まって見せられると、さすがに堪えるよ」

 

「悪い……コイツは俺でも擁護できねぇよ、ジョニー」

 

『どいつもこいつも、人の記憶を覗き見て勝手なこと言いやがって……俺を慰めてくれるやつはいねぇのかよ』

 

Vにしか聞こえない声で、ジョニーが不満たっぷりに叫ぶ。Vはため息をひとつついて、正直な感想を口にした。

 

「俺だってこんなこと言いたくねぇけどさ……いいところが1つも見つからないんだよな」

 

『どこがだ? 俺は奴らに捕まったオルトを命がけで助けに行ってやったんだぞ。それでもまだ俺をクズって言うのか?』

 

ジョニーの声には苛立ちと、本気の後悔が混ざっている。だがVは容赦しない。

 

「そもそもお前が最初からオルトを大事にしてれば、こんなことにはなってないだろ……。なんかお前の優しさってさ、DVした後だけ急に優しくなるヤツみたいでキモいんだよな……」

 

ローグが「ふん」と笑い、ケリーも「それな」と言いたげに頷く。

 

『ああ!? ……クソッ……じゃあ俺にどうしろっていうんだよ』

 

声を荒げるジョニーに対し、Vはあっさりと答えた。

 

「まずはオルトに謝れよ」

 

ローグもその案に乗る。

 

「そりゃいいね。ついでにアタシにも、三股かけてた件をちゃんと謝ってほしいもんだね」

 

ケリーもすかさず続いた。

 

「ああ、それなら俺のギターの弦盗んだことも謝れよ!」

 

『クッソ……。あー、オルト……その、なんだ……今まで……いや、守れなくてすまなかった』

 

Vの目の前でジョニーが頭を下げる。少しだけ、ジョニーの声が震えているように感じた。たとえオルトからの返事はなくても、この不器用な一言だけはきっと彼女にも届いている_____と彼は信じていた。

 

「よし、その調子でローグとケリーにも謝れ」

 

『バカ言うんじゃねぇ! この俺が頭下げてやったんだ。珍しいもん見れただろ、それで満足しろ』

 

ローグがじろりとVを見る。

 

「で、ジョニーはアタシらに謝ったのかい?」

 

「ああ、お前らが許してくれるなら靴でも舐めるって言ってるぞ」

 

『V! この野郎……適当なこと言いやがって!』

 

ジョニーが怒りのままに、Vの肩をつかもうと手を伸ばす。もちろんその手がVに触れることはないし、ローグとケリーには何も見えていない。

 

ローグはそんな事情など露ほども知らないまま、目を細めて笑った。

 

「まさかジョニーにそこまで言わせるなんてね……」

 

ケリーも感心したように頷く。

 

「すげぇな、お前」

 

改めてVを見直したような目で見る2人の顔はとても満足そうだ。

 

『お前ら、信じてんじゃねぇよ! これが50年ぶりに蘇った死者への仕打ちか!』

 

ジョニーの抗議は、残念ながら誰にも届かない。そんな中、場の空気をぶち壊すように、ケリーの家のインターホンが鳴り響いた。

 

「誰だよ、こんな時間に?」

 

「俺が出てやるよ!」

 

玄関まで歩き、ドアを開けたVの視界に飛び込んできたのは_____

 

「ハロ〜、V……。俺からの電話やメールを散々無視した挙句、テレビにまで出演するとはな……ずいぶんと楽しそうじゃないか……!」

 

そこにいたのは、鬼だった。少なくともVの目には、怒りの形相でこちらを睨みつける“鬼”にしか見えない。

 

「あ……た、タケムラ……」

 

タケムラの背後には、夜のノースオークの静けさが広がっている。その静けさと、鬼の発する圧とのギャップが余計に恐ろしい。

 

実はVのもとには、タケムラから何度もメールが届いていた。曰く「会わせたい人間がいる。至急来てほしい」と。

 

しかしVはそれを完全に無視し、今日まで好き勝手に暮らしてきた。

 

理由は単純だ。まず、面倒くさかった。

それから、サブロウの護衛だったタケムラには気をつけろと、ジョニーから何度も何度も念を押されていたからである。

 

Vは心の中で頭を抱えた。それでもせめて断りのメールくらいは入れておくべきだったと。

報•連•相は大人としての基本である。そうすれば少なくとも、こんな修羅の形相は避けられたかもしれない。

 

「V……貴様には、ちょっとばかし説教が必要なようだな……」

 

タケムラの声は低く、静かで、それでいて一切逆らえない迫力があった。

 

「はは……勘弁してくれないか?」

 

Vは引きつった笑顔を浮かべてみせるが、タケムラは容赦しない。

 

「ダメだ。座れ」

 

数秒後。玄関には、正座させられたVの姿があった。その前に腕を組んで立つタケムラは、まるで頑固な教師か軍の教官のようだ。

 

こうしてVは、玄関に正座させられたまま、タケムラによる説教のフルコースを受けることになった。仕事の責任、連絡の大切さ、信頼とは何か、約束とは何か……普段なら右から左へ抜けていきそうな言葉が、このときばかりは妙に胸に突き刺さる。

 

そして彼がようやく解放されたのは、窓の外が白み始める翌朝の5時であった。

 




予告編 

ソングバード「V?聞こえてる?」

V「あんた誰だ?」

ソングバード『あなたに、新合衆国大統領ロザリンド • マイヤーズの救出と保護を依頼したい』

V「これが国家権力の力あああ!!」

ソングバード「あああ!テメー!何してんだ!」

リード「V…お前は一体何者なんだ?」

オルト『あの小娘はそうとう危険なヤカラに目をつけられているようだな』

ジョニー『おい、ありゃマジでやべえぞ!!』

ソミ「あなたに私の気持ちが分かるの!?」

V「分かるわけないだろ」

カツオ「Vさん、この自己中クソ女をコンクリートに詰めて海に沈めてやりましょうよ」

マイヤーズ「貴様はそんな女のために世界を敵に回すつもりか?」

V「お前を…ぶん殴る」


『もしもVの知力が0.1だったら』ACT-4 バカと新合衆国の野望 俺たちがその気になりゃ大統領だってぶっ飛ばせる!!

もう1話か2話か後にACT-5を始めます。これは予告ですが、途中で内容を変えるかもしれないんで、あんま当てにしないで下さい。
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