まだ再開の目処は立たないでので、代わりにオマケだけ
投稿します。
本編とは関係ありません。
オマケ : 気に入らねえ
「頼むよV〜おばあちゃんが死にそうなんだよお〜」
男は今にも泣き出しそうな顔を作り、両手を合わせてVを拝んでいた。場所はワトソン地区の裏通り。頭上では色の欠けた広告ホログラムが明滅し、道路脇に積まれたゴミ袋からは、鼻を突くような腐臭が漂っている。
そんな場所には不釣り合いなほど真剣な顔で、Vは男の話に耳を傾けていた。
「マジか……この前はお母さん、その前は妹……今回はおばあちゃんか……」
「そうそう!俺の家族みんな身体弱くてさ〜頼む……また金貸してくれ!!」
男は何度もうなずくと、すがるようにVの腕を掴む。
「分かった、家族を大事にしろよ」
Vはほとんど迷うことなく、送金操作をした。相手の目が青く光る、通信が完了した合図だ。
「ありがとう!マジで神様!!」
男は満面の笑みを浮かべると、何度も頭を下げながら裏通りの奥へ走り去っていった。その後ろ姿が見えなくなったところで、Vの視界に青白いノイズが走る。
次の瞬間、壁にもたれかかったジョニーが腕を組み、呆れ果てた顔でVを見る。
『今日も今日とてマヌケだな』
「なんだこーねんきか?」
『んなわけねぇだろ。あの野郎が本当だと思ってんのか?』
ジョニーは吐き捨てるように言い、男が消えた方向を顎で示した。
「でも本人はそう言ってたし」
『お前今まで金の管理とかどうしてたんだよ……』
「そういう難しいのは全部ジャッキーがやってくれたからな」
『過保護が……』
ジョニーは小さくつぶやいた。
今はもういない男の名前を聞き、わずかに表情を曇らせる。しかしVは気づかず、空になったニコーラの缶を近くのゴミ箱へ投げた。缶は縁に当たり、地面を転がっていった。
『……じゃあ聞き方を変えてやる。もしあの野郎の話が全部嘘で、お前から借りた金を酒や女に使ってたらどうするんだ?』
「なんでそんなに人を疑うんだよ」
『この街でそんな価値観してたら、命がいくつあっても足りねぇんだよ』
「騙されたとしてもたった3000エディーだぞ?」
『そのエディーの0が、もう1個か2個増えた時もお前は笑ってんだろうな……』
「好きに言えよ」
Vは面倒くさそうに片手を振った
「この身体は俺のものだ。どう使うかは俺の勝手だ」
『馬鹿な上に聞き分けもねぇんだな……』
ジョニーの姿消える。Vは特に気にした様子もなく、地面に落ちた空き缶を拾い直すと、今度こそゴミ箱の中へ放り込んだ。
その夜
『おい』
「……なんだよ?」
Vは毛布から顔だけを出す。部屋の隅に立つジョニーは、いつも通り機嫌が悪そうな顔をしていた。
『酒が飲みたい、タバコもだ。ちょっと身体を貸せ』
「はあ?こんな時間に……」
『今飲まねぇでいつ飲むってんだ』
「………でも俺眠いし……」
『直ぐに済む』
「分かったよ……」
Vはしばらくジョニーを疑うように見ていたが、やがて枕元の薬へ手を伸ばした。
「そうそう、あのVっていう傭兵マジで馬鹿でさ〜嘘つけばいくらでも金借りれる」
数時間前にVから金を借りた男は、薄暗い路地裏で仲間と電話の真っ最中。その手には、Vから借りた金で買ったばかりの高級酒が握られていた。
『お前も悪いことすんな〜』
「俺、弱い奴と馬鹿な奴はマジで嫌いなんだ。ああいう連中から金を騙し取ると、ホント清々する。これぞナイトシティって感じだろ?」
『違いねぇな』
「そんなことより今から女買いに行こうぜ、今日は俺の奢りで」
「俺の混ぜてくれよ」
「え?」
振り返った瞬間、ゴリラアームが男の顔にめり込む。
「ボゲェ!!」
前歯が数本、血とともに宙を舞う。身体はゴミ箱に激突し、中に詰め込まれていた廃棄物を路上へぶちまけた。
「な、なんだよ……お前……」
男は鼻と口から血を流しながら、殴った相手を見上げた。そこに立っていたのは、確かにVだった。
しかし、その目つきも、雰囲気も、普段のVとはまるで違う。
ジョニータバコをくわえると、ゆっくり火をつけた。
「随分と手間取らせやがって、さっきの話は全部聞いてからな」
深く煙を吸い込み、男の顔へ吐きかける。
「いや……それは…エトアノソノ」
ジョニーは男を軽々と持ち上げる。こうなっては子供の様にバタバタと足を振る以外には何も出来はしない。
「お前さっき言ってよな?弱い奴馬鹿な奴は気に食わないって」
「ヒィィィ!ずみばぜん!ずみばぜん!」
男は恐怖のあまり気付かないうちに失禁していた。悪臭に気づいたジョニーは露骨に顔をしかめ、男を地面へ放り捨てる。
「俺も同意見だ」
「へ?」
「俺も弱い奴は見ててムカつく、何も守れねぇからな。馬鹿な奴もだ、性善説だか知らねぇが、騙されてもヘラヘラ笑ってる奴なんざ糞以下だ」
「へへ……そうっすよね?……」
男の顔に、かすかな安堵が浮かんだ。相手が自分と同じ側の人間だと思ったのだろう。
だが、その安堵は1秒と続かなかった。
「だが______」
ジョニーは男の額にリバティの銃口を強く押し付ける。生身であるはずの部分までもが、金属の様に硬直した。
「そんな糞共から金を巻き上げるテメェは……更に気に入らねぇんだだよ……どうせ糞しかない世の中だ。なら、俺はその中でもまだマシな方の糞を残すぜ」
「うわあああ!ごめんなざい、ごめんなざい!!許して!!」
男は情けなく涙を流し、震えながら土下座をする。彼の頭の中には生き残る事以外何も無かった。
「おいおい、それで誠意を見せたつもりか?」
「か、借りたお金は全部返します」
「なんか忘れてねぇか?」
「へ?」
「借りた金には利息が付くもんだぜ」
「そ、そんな!利息は要らないって_____」
「_____先に嘘をついたのはどっちだ?」
ジョニーの目はナイフの様に冷たかった。もはや自分を人間とすら思っていない、返事ははいかYESのみ。それ以外の答えを口にした時、自分はこの世にいない事を否が応でも理解した。
「はい……分かりました……」
「家も車もインプラントも全部没収だ、財産を隠してみろ。そん時はテメェをスカベンジャーに売り渡してやるからな」
「………はい………」
そのままジョニーは男の高級酒を乱暴に奪い取り、コレも利息の一部だと言わんばかりに飲む。
「安酒じゃねぇか」
しかしそれは期待通りの味では無かった。
翌日、Vは頭を抱えながら、ベッドの上で目を覚ました。
口の中には酒とタバコの味が残り、右手の拳には人の血が着いている。
しかし、それよりも気になったのは自身の口座の残高だった。
「ジョニー……俺の金増えてんだけど…」
『見りゃわかるだろ』
「お前……俺の身体で仕事でもしたのか?」
『ちょいとポーカーで勝ったんだよ』
「ポーカーって、こんなに儲かるのか」
『相手が間抜けならな』
「よく分からないけど……ありがとう」
『っへ』
ジョニーは顔を背けた。その口元がほんの僅かに歪んでいたことを、Vは知る由もない。
オッサンのツンデレはちょっと……