「いいか先ずお前達にやってもらうのは
1、メイルストロームからフラットヘッドを回収する
2、今回の依頼主エブリン • パーカーと会う事だ…分かったな?ミスターV」
「勿論だデクス、早速メイルストロームをボコって来る」
「俺が話している間寝てたのか?」
何かとんでもない勘違いをしているVにツッコんでいるのは、ナイトシティのフィクサー デクスター • デショーンである。恰幅のいい体格に金色に装飾された義手と、立派な顎髭。いかにもヤンチャという言葉が似合う彼だが、意外にもその原動は理性的であった。
デクスは内心後悔していた。ここのところツキ悪い、今回の仕事で必要な道具をメイルストロームから購入しようとしたら、代金を払った相手は失踪し最近勢いのあるルーキーを指名し会ってみたら脳みそが入っているかどうか怪しいほどのバカがやって来たのだ。
だが自分にはどうしようもない、既にメイルストロームに金は払っている以上ここで降りれば自分は信用と金の両方を失う。景気づけとして葉巻の煙を大量に吸って吐き出すと、彼はガシっとVの肩を掴んだ。
「よく聞け、フラットヘッドを代金はブリックに支払い済みだ。お前たちが金を出す必要はない、何かあればミリテクのレメディス • スタウトという女を利用しろいいな?」
「勿論だ、大船に乗ったつもりでいてくれ」
「ちょっと待て…凡人として平穏でつまらない一生を過ごすか、栄誉の死を迎え伝説になるか…お前ならどっちを選ぶ?」
キリッとした顔でリムジンを降りようとするVに、いつものお決まりのセリフを放つ。デクスは初めて会う傭兵にはいつも同じ事を言う、何故ならこの質問に対する回答で相手のだいたいの度量が分かるからだ。
「何で回答が2つしかないんだ?俺はアダム • スマッシャーみたいな生きる伝説になるんだ」
一切迷いなく答えたVはそのままリムジンを降りてしまった。
(大丈夫なのか…)
デクスは少し胃が痛くなった。
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「クソっ私を殺せるものなら殺してみろ!ミリテクが…お前やその家族を殺すぞ!!」
レメディス• スタウトは人生最大のピンチに直面していた。元はと言えばミリテクの兵器が満載のトラックをメイルストロームに襲撃されトラックごと全てを奪われた。それだけならまだ降格程度ですんだのだろうが、よりによって彼女にはスパイの容疑がかけられてしまったのだ。
もしこのまま盗まれた物や犯人すら捕まえられなければ確実に自分は拷問された後に殺される。今まで悲惨な最期を遂げた同僚を数多く見てきたレメディスは冷静さを失っていた。そして冷静でないが故に今命を失いかけている。
自分を陥れた真犯人を血眼で探している最中に突然知らない男から
『あんたがピンチなのは知ってる、助けてやるよ』
と電話があった。明らかに罠としか思えないので部下を連れて待ち合わせ場所に来たら、自分よりも10才は若い男が1人いるだけ。ならばこのコイツを捕まえて知っている事を洗いざらい吐かせようとしたが、部下たちは一瞬で切り捨てられ最後の頼みの綱であった軍用ドローンすらもスクラップにされてしまった。
そうして自分は首元に刃を押し付けられ、目の前の男に生殺与奪の権を完全に握られてしまったというわけだ。
「アンタ何か勘違いしてるだろ…俺は助けてやるって言ったのに突然お前らが襲って来たんじゃないか?コレってセイトウボウエーってやつだよな?」
Vは何が何だか分からなった。デクスからこの女が利用出来ると聞いたので彼女と取引をしようと電話をし、待ち合わせ場所に来たら突然取り巻きの連中に襲われた。それで反撃をしたらまるで自分が最初に手を出した様な口ぶり、Vが分かったのはこの女は礼儀を知らないなという事だけだ。
「本当に私を助けると?」
「ああ」
そういうとVはレメディスの首に押し付けていた刀を鞘にしまいこんだ。冷や汗がタラリと頬を垂れる、彼女は緊張を悟られない為にもタバコを口にくわえ火をつけた。
「何が望みだ?」
「フラットヘッドが欲しい。それ以外は全部アンタにやるよ、何ならメイルストロームの連中も全員始末してもいい」
Vは自分が置かれている現状を一通りスタウトに話した。すると彼女の顔に少し余裕が産まれた。
「なるほど…ではメイルストロームから支払いを催促されたらコレで払え。そうすればフラットヘッドはお前にやる」
スタウトはエディーが入ったデータチップをVに渡した、だが当然善意からの行動ではない。この中には連中の位置を特定する他、あらゆる機材を破壊するウイルスが入っている。
(こんな物を奴らのアジトで使えば確実に殺されるだろうな…)
罪悪感が無いと言えば嘘になるが、コレも全ては自分が助かるためだ。ナイトシティでは騙される方が悪い、この何も知らない男も数多くある犠牲の1つになるだけだ。
「おい、もし生きてもう一度会えたら私を抱いてもいいぞ」
「ほんとか?チョーやる気出て来た!」
小さくなっていく男の背中にタバコの煙を吹きかける。レメディスの胸は少しだけ締め付けられた。
「というわけでレメディスからもらった金をフラットヘッドを買い直すぞ!」
「えらく気合が入ってんなあ、しっかし使うのがおしいな。ちょっとくらい貰ってもいいんじゃねーか?」
「ダメだ、コレでブツを買って帰る」
データチップに触れたジャッキーの手を勢い良く跳ね除ける。彼は色んな意味でやる気に溢れていた。そうして2人は取引相手が待つ工場へと歩き出した。
メイルストロームはナイトシティのギャングの中でも最もイカれている集団も言ってもいい。なにせ通行人を突然拉致っては無理やりサイバーウェアを入れ込んだり、噂では麻酔なしで手術をするとも言われている連中だ。
だがVとジャッキーの2人が出会ったダム • ダムという男は案外話の分かる男だった。
「このフラットヘッドは最高の代物だ!何に使うかは知らないが間違いなく期待通りの働きをするぜ!!」
「まじかよ?ホント凄いなコレ!」
ダム•ダムのセールストークに完全に乗せられているVをよそ目に、ジャッキーは冷静に辺りを見回す。自分達の周りには5人、そして全員が銃を所持している、戦闘になれば非常に危険だ。
だからこそジャッキーにとっての最善策は戦闘にならない事、そして出来る事ならミリテクの女から貰った金を使わない事である。
(コーポがタダでフラットヘッドをくれる訳ねーからな…絶対何か企んでる決まってる)
「あー話してるとこ悪いんだがよ、俺たちは依頼主にソレを届けなきゃいけないんだ。代金はブリックに支払い済みだしもう帰っていいよな?」
かなり危ない橋を渡っている自覚はあるが、勝算が無いわけでもない。最近先代のボスであるブリックを倒したメイルストローム屈指のイカレ野郎のロイスではなく、ダム•ダムであれば自分と同じく戦闘を避けるはずだろうと。
「おうそうかじゃあもう二度と来んなよ、ウチじゃあリピーターは好かれねぇからな」
ジャッキーは安堵する、恐怖に打ち勝った自分へのご褒美に帰ったらミスティと一緒にアイスを食べながら家で映画を観ようと決めた。
「ブリックなんて奴いるか?いねぇよなあ!!」
だが現実とは非常であるものかな、突然奥の部屋から190センチはあるであろう大男が野太い声で乱入して来た。頭蓋骨どころか脳にまで達しているのではないかと思う程巨大な顔面のクロームに、ブリックへの敵対心。間違いなくロイスである。
「ブリックは関係ねぇ、俺にもう一度払え」
「そう言うと思ってコッチはエディーを持ってきたぜ」
ロイスの恐喝に対し待ってましたと言わんばかりにVはレメディスから貰ったチップを差し出す。ロイスはソレをゆっくりと受け取ると生身の口元をニヤけさせた。
「なんだよ、そんなすんなり出しちまっていいのか?」
「ああ、レメディスがソレで払えって言ったからな!」
「あ?」 「は?」 「おいV!」
ロイス、ダム • ダム、ジャッキー、その他のメイルストロームの取り巻きまで口をポカンと開け思考が止まる。先ほどまでうるさかった部屋には静寂が訪れた。
ジャッキーは忘れていた、Vに嘘や駆引きといった心理戦のたぐいは一切出来ないという事を。
「おいレメディスってミリテクのレメディス • スタウトのことか?」
「他に誰がいるんだよ?ここに来る前に彼女にあったら代金はコレで払えって言って俺にくれたんだよ」
ロイスは自分が持っているチップを見る。自分達を必死で探している女が用意したチップなんて100%罠に決まっている。
「テメェ舐めてんのか!こんな危ねえもん渡しやがって!」
ロイスのクロームの目は先ほどたは比べものにならない程赤黒く光っている。地獄の業火の如き輝きは彼の怒りを強く表していた。それと同時にダム • ダムや取り巻きまでもが2人に銃を向ける、八方塞がりとはまさしくこの事だ。
「とにかく、そのチップでフラットヘッドを買わせてくれ」
「この状況でよくそんなことが言えたな?お前たちはもう生きてここから出られねぇよ」
ロイスはVの額にハンドガン向ける。そこには一切の慈悲や冗談もない、彼の心にあるのは自分たちを嵌めようとした男達への憎悪だけだ。
「じゃあお前たちは俺らの敵ってわけだな」
「当たり前だろ本当にバカだな」
最初は捕まえて情報を吐かせようと考えていたロイスだが、ソレは辞めることにした。こんなバカが大した情報を持っているとは思えない。ならば今すぐ殺そうと引き金を引いたのだが____
「____遅いぞ」
突然視界が転がり落ちる、さっきまであのバカを見ていたのに今は地面しか見えない。
「敵は全員斬り殺す」
Vが言い切った次の瞬間、ロイスが聞こえたのは銃声と肉と金属が斬られる音、その時初めて彼は自分の首が斬り落とされた事に気付いたのだ。最も気付いたところでもう遅い、胴体と別れを迎えた頭に出来る事などただ死を待つだけであった。
「たく、何でミリテクの女のことを話しちまうだよ!」
ジャッキーは次々と襲いかかってくるメイルストロームを撃ち殺しながらVにツッコミを入れる。Vの行動を把握しきれなかった自分にもいくらかは責任はあるが、毎回こんな調子では命がいくつあっても足りやしない。
「悪いつい浮かれてて」
Vは少ししょぼくれた様子でジャッキーに謝罪をする。そこには先ほどまでフラットヘッドについて熱く語りあったダム • ダムを斬ってしまった事への後悔もあった。
「起きちまったことは仕方がねぇ!今はここを切り抜けるぞ!」
「了解チューマ!!」
戦闘スタイルはいつもと変わらない、Vが刀で敵に突撃しジャッキーが後方から2丁拳銃による射撃で援護をする。メイルストロームは迫り来るVを殺そうとすればジャッキーに阻まれ、逆にジャッキーを狙撃やハッキングで排除しようとしてもVに一瞬でバラバラ二される。
更にはボスであるロイスやブリックが殺され、参謀のダム • ダム
までもが死んだ事で彼らは一切統率が取れず1人ずつ確実に仕留められていった。
そうして成すすべもなく追い詰められた後、メイルストロームは敗走しジャッキーとVは無事勝利したのであった。
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「私は代金は銃弾ではなくエディーで払えと言ったはずだが…どうしてこうなった?」
レメディスは困惑した表情でVに質問する。死んだと思っていた男から電話が来て
『終わったぞ、連中は逃げたし盗まれた武器も全部ここにある』
という連絡があり来てみればそこにあるのは死体だらけ。そもそも自分が渡したチップを使用した痕跡もない、つまりこの男はフラットヘッドを買う金がありながら何故か連中と正面衝突をしたという訳だ。
全くもって意味が分からない。
「そんなのはどうでもいいだろ、それよりホラ何か忘れてないか?」
Vはワクワクした顔でレメディスに尋ねる、彼と最後に話した内容を思い出した彼女はそっと耳打ちをした。
「明日の18時にモーテルに来い…住所はメールで送った…」
過程は兎も角結果的には自分は助けられたのだ。なら褒美の1つや2つくれてやっても構わない。ソレにこの男はまだ利用が出来そうだ、様々な感情が入り混じった言葉にVの脳を強く刺激された。
「楽しみにしてる」
「あーレメディスだったか?最初の約束通りフラットヘッドは貰っていくぜ」
「構わん、ソレは紛失扱いにしてある」
だと助かるぜと言うと、ジャッキーはVの手を取りそそくさと離れた。今日は映画という気分ではない、ミスティと一緒にハーブを吸って落ち着こうと。フラットヘッドはVがデクスに渡すというのでジャッキーはローンで買ったバイクに乗り、街を駆け抜けた。
オマケ:ブリック死す
ブリック「おい助けてくれ!」
ジャッキー「コイツ、ブリックじゃねーか!こんなとこに閉じ込められてたのか」
V「助けるって言ってもどうしたらいいんだ?」
ブリック「よし、まずこの扉のパスワードがどこかにメモしてあるはずだ!ソレを探してくれ」
V「分かった」
ブリック「それとそのスイッチは絶対に押すなよ!ソレを押すと俺は______」
V「_____OK!」 ボチ
ブリック「爆発すr」 ドッカーン!!!
ジャッキー「何で押すなった言ってたのに押したんだよ!?」
V「知らないのか?押すなっていうのは日本語で押せって意味だ」
ジャッキー「フリじゃねーよ」