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俺は、レオ・ゴルドン……に転生した者だ。
ここはSF世界でライオンっぽい頭の異星人って事になるかな。
女性は肌も露わなハイレグorボディスーツがデフォルトで皆セクシーダイナマイトな世界で素晴らしい。
……問題は、主人公がコブラだって事だ。
あいつに関わったら敵でも味方でも大体死ぬ。
男でも女でも友達でも…友達は登場前に死ぬ時もある。
ああ、でも20tの金塊は欲しい。
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外は酷い吹雪だ。
この渡し場から船が出られず5時間も閉じ込められている。
カゲロウ山に登るなら、嵐の中を出発しなければならない。
渡し船の船長であるジェロニモにカゲロウ山が目的である事を告げれば船は出して貰えるが、ここは正確な場所を知る事が出来るコブラの到着を待つべきだろう。
死亡フラグに負けない為に幾つか手は打ってある。
正常性バイアスで俺は大丈夫だと思い込んでるだけかもしれないが……。
「……そろそろ、か」
俺の呟きに応えるように勢い良く扉が開いた。
雪と風が勢い良く吹き込んでくる。
「いやあーお揃いで。ジョンソンだ」
葉巻を咥えた金髪にやけ面の三枚目。筒型バッグを担いでいる。
赤いボディスーツの上に黒い毛皮の上着。
主人公のお出ましだ。
「しかし、汚いところだなあ。酷いぜ。入って大丈夫かい。俺は破傷風の注射はしてないんだ」
「あんたみたいな大物から見たら汚いだろうぜ。海賊…コブラ!」
コブラはにやけたまま自然体だ。
しかし、渡し場の空気は凍り付き、次いで殺気が噴き上がる。
コブラは渡し場の空気を気にした風も無く、俺を見て言った。
「なんだぁ。誰かと思ったらレオ・ゴルドンじゃないか。どうだい、一杯」
「あんたと仲良くするのは死神とダンスを踊るようで気が向かないぜ」
どうせバラされるなら、こっちからバラした方が良い。
殺し屋時代に何度か顔を合わせているので、俺の顔を向こうは知っている。
「あんた顔を変えたって聞いてたが、本当に変えたんだな」
「人気者は辛いぜ」
コブラは肩を竦めて見せる。
旧知の仲のような雰囲気を醸し出した俺の後ろから驚愕の声が上がった。
「レオ・ゴルドン!あの殺し屋のゴルドンですって!」
叫んだのは夢の国の某ネズミを怖くしたようなシルエットの被り物を被ったボディスーツの姉ちゃんだ。
ええぇクレイジーマウス姉弟よ。
お前たち本当に俺が探検家だと思ってたのか?
「クレイジーマウス姉弟。姉のデイジーは爆弾作り。弟のバッキーは金庫破り。……そっちはイカサマ師のラッキー・ジャック」
コブラの軽口は続く。
「オールスターキャストだな。みんないつ刑務所から出てきたんだぁ」
「コブラ、顔を変えていやがったんだな!忘れちゃいねぇぜ。俺の左目を撃ちぬいた奴のこたぁ」
「イカサマカードを使って貧乏人から金を巻き上げるような奴はそんな目にあうのさ」
痛みを思い出して頭に血が上ったラッキー・ジャックにコブラは愛嬌たっぷりにウィンクしてみせる。
「うるせぇ!くたばれ!」
次の瞬間、懐から得物であるカードを取り出す前にラッキー・ジャックは眉間をコブラのパイソン77マグナムに撃ちぬかれていた。
地球人が片手どころか両手でも反動を持て余す強装弾を眉間に喰らったラッキー・ジャックの後頭部は弾け飛んで、脳漿を渡し場にぶちまけた。
……早撃ちでコブラに勝てる筈もないのに。
「な、なんと言う事を…! なにも殺さなくとも」
黙っていれば良いものをセバスチャン神父が口を挟みだす。
「気にするな。死んで当然の奴だ」
「死んで当然…!それを決められるのは神だけです」
「俺は神さんの手を省いてやってるのさ」
葉巻を咥えたコブラの軽口にセバスチャン神父は喰ってかかる。
「冒涜だ!神への冒涜だ。貴方は悪魔に魅入られている!!」
「だろうな…!」
見てられない。
俺の454カスールカスタムオートマチックが火を噴いた。
現実では454カスール弾を安定動作させられるオートマチックは存在しない。かの『HELLSING』に登場する架空の銃であると言えば良く伝わるだろうか。
13mm爆裂徹甲弾がセバスチャン神父の特殊合金製の頭蓋殻を撃ち抜いて柔らかな脳みそを渡し場にぶちまけた。
「おいおい、神父を……」
「神父じゃねぇよ。この星じゃ名の知れたテロリストだ」
「……ほらよ。こんな戦闘用サイボーグの腕をつけた神父がいるか」
神父の死体の脇に屈みこんで、袖に隠されていた蛇腹状の腕を掴み上げる。
「人を狂犬みたいに見るんじゃねぇよ。俺たちを殺そうとコソコソしてやがったから、返り討ちにする機会を窺っていたのさ」
「俺たちを…どうして?」
惚けたように呟くバッキーに向けて肩を竦めてみせる。
「さあね、と言いたいが理解ってんだろ?金塊を得る為にライバルを消そうとしてたんだ」
ラッキー・ジャックと神父が倒れた渡し場に、重苦しい沈黙が降りた。
熱い血の匂いと硝煙の煙が混じり合い、外の吹雪と一緒に流れ込む。
だが、誰も息を呑む音さえ立てられなかった。
「……で、次は誰だ?」
俺は銃口を払ってホルスターに収める。
この世界じゃ油断した奴から死ぬ。
殺しのプロの矜持なんて大層なもんより、今はただ生き残ることだけが大事だった。
コブラは笑った。
「ははっ! 退屈しない旅になりそうだ」
奴は平然とカウンターに腰を下ろし、葉巻に火を付ける。
死人を前にしても眉ひとつ動かさない――いや、むしろ楽しんでる。
こいつと同じ場に居ること自体が、一番の死亡フラグだ。
デイジーとバッキーは互いに顔を見合わせていた。
怯えと興奮と、そしてちょっとした好奇心が入り混じった目。
「レオ・ゴルドンとコブラ……こりゃ、ヤバい旅になりそうだね」
爆弾魔の姉が舌なめずりをした。
弟の方は青ざめていたが、目の奥にギラついた光を隠しきれていない。
「へっ、面白ぇ。オールスターキャストだな」
俺は皮肉を込めて笑った。
渡し場にいる全員が、心の中で同じ問いを抱いていた。
――20tの金塊に辿り着けるのは、いったい誰だ?
続くかな?