紛れも無く奴に会いたくない   作:ぶーく・ぶくぶく

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3日逃げ切ったら罪はチョー消し!
連載再開!連載再開!3日の掟良いね!
海賊ギルドも何も言えないわはは。




黄金の扉


 

 

/*/ ガロン星・極軌道観測台 /*/

 

 

ガロン星は太陽を中心に楕円軌道を描いて回っている――はずだった。地球の六十倍もの大きさを持つこの星の上に立ちながら、俺はそれを実感する。だが、事態は異常だ。

 

二週間前、トポロ教授がこの星の古代史を発見した。長年に渡る研究の末に判明したのは、ガロン星が単なる自然天体ではなく、古代ガロン人によって作り上げられた人工の星だということ。巨大な重力推進機が内蔵され、星自体を動かすことができる……まさに文字通り「動く星」だったのだ。

 

それから一か月前、何が起きたのか――このガロン星は、軌道を外し、太陽系の中心を目指して直進し始めた。もしこのまま太陽と衝突すれば、太陽系そのものが滅亡する。地球も、火星も、俺たちの基地も、全部消えちまうんだ。

 

「……頭おかしいんじゃねぇか……」思わず口に出す。いや、頭がおかしいのは俺じゃない。こんな状況を放置している奴ら、癒着まみれの銀河パトロールだ。あいつらが動かんせいで、俺たちが命をかけて守らなきゃならねぇんだ。

 

教授が震える声で呟く。

「……このままじゃ……手遅れになる……」

 

いや、手遅れにさせるわけにはいかねぇ。俺たちは今ここにいる。俺が指揮を取る。クリスマスの夜に鍵が届くその瞬間まで、ここで全員を守り抜く。宇宙船も、古代ガロン人の居住システムも、トラップも、全て俺の手で安全網として張り巡らせてやる。

 

ガロン星の表面に立ち、巨大な影を作る建造物を見上げる。瓦礫や砂塵の間に潜む危険も、俺の目の前では次々に無力化される。ここにいる全員――教授もデイジーも火星穴居人も――俺が守る。星が太陽に衝突する前に、俺たちは動く。

 

「……絶対に、太陽系を守る」拳を握りしめ、俺は呟いた。ガロン星が直進を続ける空の下、俺の決意だけが揺るがない。

 

 

/*/

 

 

「うわぁぁぁぁぁっ!」

 

宙に吊られた海賊の悲鳴が響き渡る。くくり罠にかかり、身体が揺れるのを見て、俺は冷静に呼吸を整えた。別の場所では小規模な爆発音が連続し、怒号と悲鳴が入り混じる。デイジーの仕掛けたブービートラップの威力は凄まじく、生存者はほとんどいない。

 

俺は影に身を潜め、トポロ教授の背後に回り込みながら454カスールカスタムオートマチックを握る。銃口から13mm爆裂徹甲弾が放たれるたび、遮蔽物を貫通して海賊たちを次々と倒す感覚に、心の中で小さく震える興奮を覚えた。

 

「レオ!ここは発掘現場だ!戦場じゃないぞ!」教授の怒声が背後から響く。

 

「教授、無事でいてくれ。こっちは研究どころじゃねぇんだ」俺は低く呟き、次の標的を狙った。

 

その瞬間、デイジーが姿を現した。世界一有名なネズミのマスコットのようなマスクをかぶり、全身を包む黒光りのボディスーツ。柔軟に瓦礫や爆発物を避けながら、ブービートラップを自在に操る姿は、戦場の女神そのものだった。

 

「準備はできてるわ、レオ!」彼女の声は明るく、どこか軽やかだ。

 

俺とデイジーの連携は即座に噛み合った。彼女は足元に仕掛けられた小型爆発物を遠隔で作動させ、海賊を誘い込む。罠が炸裂するたび、金属片や瓦礫が宙を舞い、敵の動きを封じていく。俺は冷静に狙いを定め、454カスール弾を撃ち込む。壁越し、障害物越しに撃ち抜かれた弾丸が敵の胸を貫き、戦闘員たちは次々に倒れていった。

 

「……これで十分だな」俺は短く息を吐き、教授の前に回り込む。

 

「教授、しっかり掴まってくれ!」

 

教授は震えながらも俺の指示に従い、身を預ける。デイジーは教授の横にぴたりと寄り、マスク越しに冷静な視線を送っていた。

 

「ふふ、これで侵入者はほぼ壊滅ね」デイジーは軽やかに笑い、最後の爆薬を遠隔操作で残党に送り込む。足元が吹き飛ぶのを確認し、もはや反撃は不可能だと分かった。

 

瓦礫と煙の中、俺は教授を守り、デイジーとともに無傷で戦場を抜ける。周囲には、デイジーの巧妙な罠と俺の圧倒的火力が残した痕跡だけが、海賊ギルドの侵攻の爪痕として刻まれていた。

 

「……ふぅ」俺は胸元の銃を軽く拭いながら息を整える。

 

「教授、大丈夫か?」

 

「ええ……大丈夫じゃ……お前たちは……」教授の声は震えていたが、安堵が混じるのを俺は感じた。

 

デイジーはマスクの下で小さく笑い、肩をすくめた。

「心配しなくても、あたしたち二人がいれば、そう簡単にはやられないわ」

 

俺はその笑顔に少しだけ安心し、胸の奥で戦闘の緊張が少しずつ解けていくのを感じた。

 

ガロン星の古代遺跡――太陽系の命運をかけた戦いは、俺とデイジーのコンビネーションによって、どうにか第一幕を乗り切ったのだった。

 

 

/*/

 

 

瓦礫と煙が立ち込める発掘現場。海賊ギルドの侵攻はデイジーの巧妙なブービートラップと俺の銃撃で壊滅した――が、現場はめちゃくちゃだ。倒れた装置、砕けた岩盤、焦げた壁面……研究資料も一部は損傷している。

 

「……発掘現場を荒らし過ぎじゃ」教授の声が、震え混じりに響く。腰に手を当て、散乱した資料と瓦礫を見渡してため息をつく。

 

俺は片手で教授の肩を軽く叩き、肩越しに現場を見回す。

「……あいつらに言っとけよ、教授。俺たちは護衛してるだけだ。敵が来たら、こうするしかねぇんだ」

 

教授は眉をひそめ、反論はしない。小さく頷くだけだ。

「……しかし、こんなことなら、最初から銀河パトロールに護衛を頼めばよかったのではないか」

 

俺は鼻で笑った。

「大体な、癒着してる奴ら頭おかしくねぇか? ガロン星が太陽に突っ込んだら、太陽系が壊滅するんだぞ。それを知りつつ、銀河パトロールの本部壊滅させて混乱させるにも限度ってもんがあるだろうが。なんで俺たちが命かけて守んなきゃならねぇんだ、まったく」

 

デイジーはマスクの下で小さく笑みを浮かべ、両手を腰に当てる。

「でも、こういうのも悪くないわね。刺激的で、あたしたちの腕試しにもなるし」

 

俺は肩越しに現場を見回し、瓦礫に埋もれた資料や装置をざっと確認する。

「……ま、次の目的地は地下動力室だ。ここで余計な被害は出せねぇ。教授、しっかりついてこい」

 

教授は深く息を吐き、両手で資料を抱え直す。

「……そうもいかん。鍵が届くまではわし等は何も出来ん」

 

「それまで防衛戦を続けるのか!?」俺は天を仰ぎ、瓦礫の間から漏れる光と、焦げた岩盤の匂いを鼻で感じる。戦闘の余韻がまだ消えていない。

 

デイジーは肩を軽くすくめ、瓦礫の影に潜む微かな動きを警戒しながら、低く囁いた。

「ま、動かせるのはあんたしかいないんだから仕方ないわね。私たちが守る。教授は余計なことせず、後ろで安全を確保しといて」

 

俺は拳を握りしめ、瓦礫の隙間から漏れる光を睨みつける。

「……よし、ここからは俺たち次第だ。鍵が届くまで、絶対に守り抜く」

 

発掘現場には静寂と戦闘の痕跡が混じり、瓦礫と煙がまだ立ち込めていた。地下動力室への道は、さらに危険と謎が待ち受けている。だが、俺とデイジー、そして教授は、それぞれの覚悟を胸に、次の局面に向かって歩き出す――戦いはまだ終わっていないのだ。

 

 

/*/

 

 

瓦礫と砂塵に包まれた発掘現場から離れ、俺たちは人工星・ガロン星の表面にある適当な建造物の陰に身を潜めることにした。古代ガロン人が使っていた居住システム――空調や防御機構、内部の動力系統――を復旧させるため、俺は宇宙船から電源を引き込む。軽くハックしてスイッチを入れると、埃まみれだったコンソールがうなりを上げて光を取り戻す。

 

「よし……これで、最低限の生活と防御が可能だ」俺は宇宙船の電源ケーブルを巧みに配線し、建造物内部の古代ガロン人システムを起動させた。居住空間は微かな照明と空調が復活し、長期滞在にも耐えられる環境になっている。

 

デイジーはマスク越しに興味深そうに観察する。

「なかなか、快適じゃない。でも退屈しなさそうね」

 

俺は手早く周囲を見回し、建造物の入口や隠れた通路にトラップを仕掛けていく。地雷やセンサー、音響起爆装置――敵が近づけばすぐに警告が出るよう、手際よく設置した。瓦礫と古代ガロン人の残骸を利用して、自然なカモフラージュも施す。

 

「教授、火星穴居人たちもここで待機してくれ。安全が確保できるまでは動かすな」俺は指示を出す。教授は資料を抱えつつ、慎重に居住スペースに収まる。人夫たちは指示通り、警戒態勢を整えながらも休息をとる。

 

宇宙船の中ではシールドが展開され、外部からの視認はほぼ不可能。建造物の内部と外周には俺が仕掛けた数々のトラップが張り巡らされており、誰かが侵入しようとしても、容易には近づけない構造になっている。

 

焚き火の代わりに宇宙船の小型ヒーターを作動させ、暖を取りながら周囲を見渡す。俺の目には、瓦礫に埋もれた発掘現場とは違う、人工星の冷たい空気と静寂が映る。

 

「……これでクリスマスの夜まで、ここで身を潜めつつ、鍵が届くのを待てる」拳を握りしめながら俺は小さくつぶやく。教授もデイジーも、火星穴居人たちも、全員が俺の計画に従い、安全な空間に身を隠す。

 

外の風景には、人工星の無機質な建造物と砂塵が広がる。だが俺の手元には宇宙船、復旧した古代ガロン人の居住システム、そして張り巡らせたトラップ。誰も侵入できぬ安全地帯を確保した俺は、冷静に次の局面――クリスマスの夜、地下動力室の鍵が届く瞬間――を待つのだった。

 

 

 

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