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惑星ダスト。
宇宙中のゴミが流れ着き、集められ、押し込められる“宇宙のゴミ捨て場”だ。
目の前に広がるのは山脈のようなガラクタの山。
スクラップになった戦艦の外板、折れたビーム砲身、誰も覚えていない企業ロゴの入ったコンテナ、朽ちた植民地ドームの骨組み――金属とプラスチックと合成樹脂の墓場。
それでも、生ごみの匂いがないのが、わずかな救いだった。
腐敗臭の代わりに、乾いた鉄とオゾンと油の匂い。鼻につくが、まだ人のいる戦場よりマシだ。
「……相変わらず景気のいい星だな」
レオはガラクタの斜面を踏みしめながら呟く。
足元で、正体不明の機械部品がギシ、と嫌な音を立てた。
その横で、コブラが肩をぐるりと回し、いつもの調子で腕を振り上げる。
「よーし! はりきっていくぞー――」
次の瞬間、ふらり、と身体が傾いた。
「おっとっとっと……うおっ!」
そのままガラクタの山にダイブするように突っ込み、
スクラップ・ドラム缶と折れたアンテナを巻き込んで、派手なガシャーンという音が響いた。
「……」
「……」
レオとホークは、同時に肩をすくめる。
「ダメだなこりゃ」
「ホークの薬、やっぱりキツすぎたんじゃないか?」
「効き目はある。まだ立って喋れてるだろう」
「立ってもいないし、喋れてもないっすけどねぇ、今の」
レオはコブラの襟首を掴んでずるずると引きずり起こし、ホークは崩れたガラクタの上を淡々と点検しながらつぶやく。
コブラは額に擦り傷を作りながら、片手をひらひら振った。
「だいじょーぶだ、問題ない……世界がちょっと二重に見えてるだけだ」
「それを問題って言うんだよ」
レオはため息をつき、コブラの肩をぽん、と叩く。
「あんたは今日はおとなしくしててくれ。
俺たちで探してくる」
「おいおい、主役を置いていくなよ……」
「主役は体調管理から、ってやつだ」
タートル号の外側に張った簡易デッキには、ハンモックが二つ吊ってある。
レオとホークは、そのうち一つにコブラを半ば強引に寝かせた。
銀河一の海賊のはずの男が、今は毛布を胸まで引き上げられた風邪っぴきにしか見えない。
「ドミニクには“ちゃんと寝てた”って報告しとくから、安心してくれ」
「あいつにチクるのはやめろ……」
「じゃ、寝て治せ。文句はそれからだ」
コブラがなにか言い返そうと口を開いたが、
ホークが用意した保温マグのスポーツドリンクを口に押し当てると、
しぶしぶごくりと飲み込んだ。
レオとホークは視線を交わし、タートル号の傍らに積んでおいた装備へ向かう。
乾いた河床を利用して作られた人工の「川」が、廃棄物の谷間を縫うように続いている。
そこを遡上していくためのゴムボートが、一艇。
表面にはあちこちパッチが当ててあり、最低限のモーターと予備バッテリーが積まれている。
「じゃ、行くか」
レオがボートを押し出しながら言う。
「目標は、第4の戦士候補と、ついでに使えそうな“お宝”だ」
「どっちがついでか、怪しいものだな」
ホークは無表情のままボートに乗り込み、ライフルのストラップを肩に掛け直す。
タートル号のハッチから、コブラの声が飛んできた。
「おーい、子供たち! あんまり派手にやって、ドミンゴ伯爵の雷を呼ぶなよー!」
「むしろ雷はこっちから落としに行く予定だよ!」
レオは振り返らずに片手を挙げて応え、エンジンを起動させる。
ゴムボートは、ガラクタの山々の谷間を流れる人工河川を静かに遡上していく。
左右の岸には、撃ち捨てられた戦車、破片になった宇宙港のゲート、
意味の分からない巨大モニュメントの頭部だけが転がっている。
惑星ダスト――宇宙のゴミ捨て場の奥へ。
レオとホークは、金属の渓谷を抜けて、まだ見ぬ戦場へと進んでいった。
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