キングオブキングな俺様のヒーローアカデミア   作:松田ゐふ

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本編・第1部
第1話


 始まりは中国、発光する赤子が産まれそれに呼応するように世界中で、特殊な力を持つ症例が次々に報告された。

 持つ者と持たざる者、両者の溝は深まりこの超常に適応できず時代は停滞した。

 混沌とした時代が到来し、世界は持つ者が奪い、犯し、殺す魔境と化した。希望も願いもない世界に一筋の光が差し込む、彼らは持つ者であったが、見返りを求めず、我が身を顧みずに戦い平和をもたらした。

 彼らはやがてこう呼ばれるようになる。

 

“ヒーロー”

 

 世界総人口の約八割が、なんらかの特異体質《個性》を持って生まれてくる時代。

《個性》を悪用する(ヴィラン)に対し、職業としてのヒーローが存在する現代。

 

 これは俺様が

 

 “キングオブキング(王の中の王)

 

 になるまでの物語だ。

 


 

 幼い頃、俺様の周りにいた友人や幼なじみはヒーローに憧れた。

 皆がヒーローごっこや発現した個性がどんなものか自慢している中、俺様“鳳火鳥(おおとりひいと)”は物語の王に憧れた。

 その日から俺様は王になるための道を突き進んだ。

 まずは学問、王たるもの頭が良くなければ務まらない。

 それにただ勉強できるだけではいけない、自らの国をより良くするためには柔軟な思考を身につけ、どんな状況でも対応できるように知識をつけた。

 次に運動、王は強くなければ務まらない。

 知恵はあっても力がなければ、その座を奪われるかもしれない、ならば謀反を企てる気も起きない程、圧倒的に強くなるしかない。

 【個性】が発現した現代で、失われつつあった格闘技や武道、サッカーにバスケ、新体操やパルクール等ありとあらゆる競技に参加しその全てで1番になった。

 他にも、音楽、美術、演技、芸事、スピーチ、コミニケーション、奉仕活動、王に必要なものは何かを考え、俺は全てを選んだ。取捨選択をせず文字通り全てを極めることにした。肉体の限界を迎え倒れたことも一度や二度ではなかった。その度に親が悲しみ、幼なじみは心配したが、俺様は止まらなかった。憧れた存在になるために、考えつく限りの努力をした。

 中学に上がると両親は、俺様の無茶を止めることはしなくなった。逆に幼なじみは触発されたのか、俺様の特訓についてくるようになった。

 そんなこんなで、王なるために特訓をしていたら、中学生の3年間は驚く程に早く過ぎていった。

 

 そして今、俺様は新たな道を極めるために、ここに来た。

 


 

「ここが雄英か……俺様の城にふさわしいな」

 

「ん」

(何言ってるの)

「決まっているだろう……俺様の新たな伝説が始まるんだ。王の母校としてこれ以上相応しいものはないだろう」

 

「ん?」

(緊張しないの?)

「逆に聞くが、この程度で俺様が緊張すると思うか。俺様がここに来た!その時点で合格は決まったようなものだ。お前も俺様との特訓で強くなった、自信を持つがいい」

 

「ね」

(そうだよね、ありがとう)

「当然のことをしたまでだ。なんせ俺様は……王になるべくして生まれた男!……だからな」

 

《国立雄英高校》数多のヒーローを輩出した日本最難関の高校。これから俺様と幼なじみの小大唯(こだいゆい)が目指しているヒーロー科の入試がまもなく始まろうとしていた。

 

「どけデク!!」

 

 俺様たちが校舎に入ろうとした時、後ろの方から怒鳴り声が響いた。振り向くと、不良がオドオドした男子に凄んでいた。

 

「ん」

(怖いね。ああいう人も受験受けるんだ)

「確かに態度は悪いが、彼奴の目に宿っている執念は本物だ。もしかしたら首席になるかもな」

 

「ん?」

(本気で言ってる?)

「俺様がここにいなければの話だがな」

 

「ん!」

(すぐそういうこと言う!)

「当然だろう!俺様は全てにおいて1番になる男だ。いくら彼奴が強かろうが、俺様には及ばない」

 

「おい!」

 

 唯と話しながら、試験会場まで進んでいると後ろから俺様を呼ぶ声がした。

 声の主は、件の不良だった。不良は不敬にも俺様を睨みつけ、殺意ともとれる怒りをぶつけていた。

 周りの受験生は喧嘩が始まるのかと足早にこの場から立ち去って行った。

 

「この俺様になにか用か?」

 

「お前、1番がどうとか言ったな」

 

「それがどうした?俺様は当然の事実を言ったまでだ」

 

「違ぇわ!!1番になるのはお前じゃねぇ……この俺なんだよ!」

 

 不良は距離を詰め俺様の胸ぐらを掴み自分が1番だと主張する。

 

「威勢がいいな!気に入った、お前名前は?」

 

「誰がお前に教えるかよ!」

 

「そうか……俺様は鳳火鳥!王になるべくして生まれた男だ!俺様は名乗ったぞ」

 

「ッチ……爆豪勝己だ」

 

 不良……爆豪は渋々といった感じで名前を名乗る。それにしても、此奴に宿っている絶対的な執念は並大抵のものではないな。自分の中に絶対評価がありブレることがない。それに未来の王である俺様に臆さない度胸もある。まぁ性格に難はあるが、それを差し引いても評価に値する。

 

「かっちゃん!?喧嘩はダメだよ!」

 

「あ゙ぁ゙!!」

 

 先程、爆豪に凄まれていた男子が慌ててこちらに向かってきた。かっちゃん……おそらく爆豪のあだ名だろう、此奴をそんな風に呼べるということは2人は友人なのだろう。それにしては爆豪の態度がかなり刺々しいが、まぁ俺様が気にすることじゃないな。

 

「安心しろ、俺様たちは喧嘩していたわけではない」

 

「そ、そうなんだ」

 

「ん」

(どこからどう見ても喧嘩だったよ)

「唯、余計なことは言わなくていい」

 

 壁にかけてある時計に目をやると集合時間が迫っていた。主役は遅れてくるものというが、そのせいで試験が受けられませんとなってはカッコがつかない。

 

「俺様たちはもう行くぞ」

 

「待ちやがれ!まだ話は終わってねぇぞ!」

 

 唯にアイコンタクトをとり、試験会場に向かおうとするも、爆豪が呼び止める。

 

「話もなにも、最初から俺様が1番であると決まっている!」

 

「ふざけんじゃねぇ!」

 

「ならばこの試験で証明して見せろ!」

 

「あ゙?」

 

「俺様の成績を1つでも超えていたならば、お前が1番だと認めてやろう!それとも、怖気付いて俺様に許しを乞うか?」

 

「上等だ!二度と王なんざ名乗れねぇくらい点差つけたるわ!!」

 

 なるほど……此奴(爆豪)の扱いがわかってきた。

 俺様の挑発に乗った爆豪は啖呵を切り、試験会場に向かっていった。

 

「お前も行ったらどうだ?」

 

「え?あ、うん!そ、そうだね。君も試験頑張ってね」

 

 何が起きたのか分からず、その場で固まっていた男子も慌てながら俺様たちを後にした。

 

「ここに来て良かった」

 

「ん?」

(いきなりどうしたの?)

「俺様がより高みに至るための踏み台がいたからな」

 

「んん」

(言い方悪いよ)

「……俺様たちも会場に行くぞ」

 

「……ん」

(……わかった)

 


 

『今日は俺のライヴにようこそー!!!エヴィバディセイヘイ!!!』

 

「「「「「……」」」」」

 

 筆記試験を終えた俺様たちは、実技試験の説明会場に来ていた。日本最高峰のヒーロー科の実技試験のため会場内の空気は、受験生たちの緊張によって非常に張り詰めたものになっていた……プレゼント・マイク(喧しい奴)が壇上に上がるまで。

 プレゼント・マイクは壇上に上がると、TPOを無視したハイテンションでコールアンドレスポンスを要求した。まぁ俺様を含めて誰も返さなかったがな。

 

『こいつぁシヴィー!!!受験生のリスナー!実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!!アーユーレディー!?』

 

「「「「「……」」」」」

 

 強いな。

 つい先程、受験生たちから総スカンを喰らったはずなのにまた同じことを繰り返している。まぁそれくらい心が強くなければ、ヒーローもラジオDJも務まらないのだろう。

 

 試験内容は、極めて単純だった。市街地を模した演習場に配置された多数の仮想敵(かそうヴィラン)を行動不能にすることで、攻略難易度に応じたポイントが与えられるというもの。

 当然だが、他の受験生に攻撃する等のヒーローらしからぬ行為は禁止だ。

 雄英の試験がどんなものかと思えば、簡単なものだな。これならば教師とのタイマンの方がまだいい経験になるのだが……苦情やらで難しいのだろう。

 それにしても、ただ仮想敵を行動不能にするだけでいいのだろうか?それだと攻撃手段を持たない【個性】が不利になるだろう。試験に向けて鍛えていなかったと言われればそれまでだが、どこか引っかかる。

 

「質問よろしいでしょうか!?」

 

 俺様が考えにふけっていると、前方の座席に座る眼鏡の男子生徒が、質問していた。

 プリントに記載された仮想敵の数は4体だが、さっきの概要では3種と言っていた。

 その後、最高峰の痴態だとか、爆豪に絡まれていた男子を大勢の前で注意するなど余計なことも言っていた。

 

『4種目の仮想敵は0ポイントだ!いわゆるおじゃま虫!スーパーマ〇オのドッ〇ンみたいなもんだ!』

 

「なるほど、避けて通るステージギミックみたいなもんか」

 

「ゲームみたいだな」

 

 プレゼント・マイクの補足説明により、この実技試験がより一層、受験生の中で点取りゲームという認識になりつつあった。

 

「ん?」

(難しい顔してどうしたの?)

「……この試験、ただ点を稼ぐだけじゃないんだろうな」

 

「ん!?」

(そうなの!?)

「敵的行為は当然として、仮想敵を行動不能にすることで点を稼ぐ形式、0P仮想敵から意図的に逃げるように促す説明、この試験を個人戦と認識させているようでな……考えすぎと言われても仕方がないが、一応気にとめてくれ」

 

「ん」

(わかった)

『なにか質問があるリスナーはもういないか!?』

 

 隣に座る唯にこの試験の違和感を説明していると、プレゼント・マイクから質問があるかどうか聞かれる。

 この試験の違和感と同時にもう1つ気になっていたことがあるので、俺様は挙手をする。

 

『OK!受験番号3150くん!お便りナイスだぜ!』

 

「仮にだが、試験中に演習場内の仮想敵が全て行動不能になった場合はどうなる?その時点で試験が終了するのか、それとも追加で仮想敵が配置されるのか聞きたい」

 

 俺様の態度に周りの受験生はザワつくが無視し、プレゼント・マイクを見つめる。

 プレゼント・マイクはほんの一瞬ポカンとしたが、流石はプロすぐに気を取り直し、俺様の質問に答える。

 

『その場合は試験が続行できるように追加で仮想敵が配置されるから安心しろよ!』

 

「そうか……感謝する」

 

 俺様はそう言い席に着く、質問はこれで最後だったようで事前に知らされていた演習場への案内が開始される。

 俺様も係に誘導されバスに乗り、演習場へと向かうのだった。

 


 

 演習場に着くと、その広さに少し驚いた。市街地を模したと言っていたが、そのまんまだ。ビルが立ち並ぶ都会の街並みを完全再現していた。

 受験生たちが試験開始まで、精神統一やストレッチをする中で俺様はスタート地点となるゲートから離れ、受験生の最後尾に向かった。

 

『はいスタート』

 

 プレゼント・マイクが気の抜けた声でスタートの合図を出す。俺様は【個性】を発動し、両腕を燃え盛る翼に変え空高く飛び立つ。

 他の受験生が動揺し動けないでいる間に、演習場を一周して中央に留まる。

 

『どうしたぁ!?試験は既に始まってるぞ!!!実戦にカウントはねぇよ!!!走れ走れ走れぇ!!!』

 

 試験開始の合図から数秒後、慌てた受験生たちがごった返しながら演習場に入ってくる。

 だがもう遅い、俺様は既に準備を整えている。

 演習場の上空には俺様がわざと散らした炎の羽がヒラヒラと舞っている。

 

「刮目せよ!これが王の実力だ!!」

 

 

火鳥・鋭弓矢(ヒート・スワロー)

 

 上空を舞う羽が勢いよく、仮想敵に突き刺さる。演習場に配置された全ての仮想敵を撃ち抜き次々に機能を停止させる。

 

『は?』

 

 プレゼント・マイクの声が演習場内に響く。

 

鳳火鳥・個性:フェニックス

試験開始から約10秒、250P獲得。

 

 試験は始まったばかりだ。




小大唯のセリフの下をコピペしてみてください。
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