「今すぐに演習場Aにロボットを配置しろ!」
「待機させてる分じゃすぐに足りなくなります!」
「他の演習場の待機してるロボも動かせ!」
巨大なモニターがある司令室のような場所で、雄英の教師たちは慌ただしく動いていた。
原因は受験生の1人である少年だった。
彼は、スタートの合図とともに上空に飛び、【個性】を用いた範囲攻撃で全て破壊したのだ。しかも、ロボの爆発等の二次被害が発生しないように心臓部のみを破壊し機能を停止させている。
規格外、そう表わす他ないだろう。ここ数年の受験生と比べても頭一つ抜けている。
「相澤くんから見て、彼はどう思う?」
慌ただしく動いている教師たちから、少し離れてモニターを見ていた相澤と呼ばれた男性教員は、声のする方に顔を向けると、スーツを着た二足歩行のネズミのような生物がいた。彼はここ雄英高校の校長を長年務めている人物だ。
「そうですね。マイクの合図にしっかりと対応できており、飛行を用いた機動力、一瞬で演習場内の仮想敵の位置と急所を把握する情報力、最小限の労力で急所を狙ったとはいえ一撃で敵を撃破する戦闘力、どれをとっても優秀です」
「相澤くんがそこまで言うとはね」
「合理的に判断したまでです。性格や態度に難はありますが、プロになればそれが彼のキャラクターとして受け入れられるでしょう……ただ」
「ただ?」
「真価が問われるのはこれからです」
相澤がモニターに目を向けると、一段落した教師の1人がボタンを押す。
轟音とともに全ての演習場に巨大な仮想敵が現れゆっくりと街を破壊していく。
「……徐々にではあるが、仮想敵が出てきたな」
試験開始と同時に全ての仮想敵を行動不能にした俺様は、ビルの屋上で他の受験生たちの動向を見守っていた。
ある者は諦め地面に座り込む、またある者は目の前の光景に絶望せず演習場内を走り回る。
「……彼奴もいいな」
俺様の視線の先には紫の髪をした男子が、演習場内を走り、残っている仮想敵を探していた。
「さて……俺様も動くとするか」
右腕を翼に変化させ大きく振る。ヒラヒラと翼から羽が抜け落ちるが地面に着かず空中をフワフワと浮かんでいる。
“
仮想敵との戦闘に集中するあまり、後ろから来た新手に気づいていない受験生を、フォローするようにロボの足元に俺様の羽が勢いよく突き刺さる。
地面に羽が突き刺さったことで生じた衝撃で、後ろの仮想敵に気づいた受験生は【個性】を使い2体のロボを破壊した。
「次はあちらだな」
先程と同じように、ピンチに陥った受験生をフォローするように残りの試験に取り組んでいると、演習場の一角から轟音とともに巨大な仮想敵が出現した。
「あれがドッ〇ンか。……オニ〇スドンの間違いじゃないのか?」
「なんだよアイツ!」
「逃げろ!」
「ロボいねぇし!ヤバいやつはいるし!なんなんだよ!!」
0p敵の登場により、演習場は一気にパニックになる。
助けを求める者、逃げ惑う者、恐怖に動けなくなる者、混沌という他ないだろう。
「ん?彼奴は」
先程、仮想敵を探し回っていた紫髪の男子が、怪我をしたであろう足を押さえている受験生を庇うように、巨大仮想敵を立ち塞がっていた。かすかに震えているが、受験生が逃げる時間を1秒でも稼ごうと、その場を動こうとしない。
「……面白い」
俺様は屋上から飛び降る。高所から勢いよく落下しながら【個性】で全身を火の鳥に変化させる。落下速度をそのまま利用し、巨大仮想敵に向けて飛び立つ。
“
速度を乗せた俺様の嘴が巨大仮想敵に突き刺さり、装甲を破壊しながら、巨体を突き進む。俺様の体に纏った炎が巨大仮想敵を焼き尽くしていく。
「まだ、動くのか?」
ここまで破壊しているが、巨大仮想敵はその足を止めない。俺様は両腕以外の変化を解き、翼を器用に折り曲げ筒のように胸の中心にもっていく。俺様の現時点での最高火力が周りの建物や、受験生を巻き込まないよう攻撃範囲を絞り炎を一点に集中させる。
“
圧縮された炎が巨大仮想敵の頭を目掛けて一直線に放たれる。炎の熱によって鉄は溶け、その形を歪めていく。ガシャンと派手な音を立てて仮想敵が傾いたのを確認し、俺様は炎を消す。
「俺様の攻撃に一度は耐えるとは、機械だからと侮っていたぞ。この俺様に炎鳯を使わせたんだ、誇るがいい」
胸の装甲に開けた穴から外に出た俺様は周りを確認する。どうやら怪我をした受験生と紫髪の男子は無事のようだ。
「怪我は無いか?」
「あぁ」
「なら良い。さて次はお前だな」
足を抑えている受験生に近づき炎で患部を焼く。
「なにしてんだ!」
「見ていろ」
紫髪の男子は俺様の行動に、驚き掴みかかるが、軽くいなし治療を続ける。俺様の【個性】は少し特殊で通常の炎とは別に、自身の体力を消費して他人の怪我を癒す炎が出せる。数秒もすると受験生の顔から苦悶の表情が和らいでいく。そこまで酷い怪我ではなかったようで俺様の消費も少ない。
『終~了~!!!』
そうこうしているうちに、プレゼント・マイクの声が演習場に響く。
「よし、足はどうだ?」
「お、おう!痛みが引いて動かしてもなんともねぇよ」
「念の為に保健室によるか、医者に診て貰え」
受験生にそう言うと、俺様はゲートに向かう。それにしてもあの巨大仮想敵を倒しても0ポイントなのはおかしいのではないか?誰かを守るために行動した彼奴も俺様も、骨折り損のなんとやらだ。……いやまさかそういう事か。冷静に考えるとヒーローを目指す若者を育てる機関が、この行動を無駄だと言うはずがない。
「フハハハハ!」
「うおっ!?」
「ん?ついてきたのか?」
「あぁ、お礼言いたくて」
ずっと引っかかっていた疑問の答えが見つかり、上機嫌だった俺様に驚いた紫髪の男子は恥ずかしいのか、少し照れていた。
「礼など必要ない。俺様はあの巨大仮想敵が気に食わなかっただけだ」
「それでも俺たちは、アンタに助けられた。必要がなくても言わせてくれ!」
「ならば、受け取ろう」
「お、おう」
俺様は此奴が気に入った。たとえ力がなくても誰かを守ろうとするその心意気。やろうと思ってできるものでもないそれを此奴はいとも簡単にしてみせた。
「俺様は鳳火鳥、王になる男だ」
「え?あ、あぁ俺は
「こちらこそお前に感謝する。お前のおかげで疑問が解けたからな」
「ん?」
「いずれ分かる。ではまた会おう」
俺様は演習場を後にし、清々しい気持ちで試験を終えることがでた。教師たちにも俺様の派手な活躍をアピールできただろう。爆豪との勝負にも負けることはないし、帰りに唯を連れて豪遊するのも悪くない。
「世界よ見ていろ。ここから俺様の伝説が始まるんだ。俺様が王になる日を心して待て」
空を見上げ俺様は改めて世界に宣言する。必ず王になると。
劇場版を入れるかどうかアンケート取ります。
-
やってくれ必要だろう
-
本編だけで大丈夫
-
どちらでもいいよ