暗い部屋の中、幾つもあるモニターの一つに映る光景を眺めながらある男は嗤う。
「見なよドクター。僕たちの傑作が頑張ってるよ」
幾つものチューブに繋がれ椅子に座る男は映画でも観ているかのように、炎に包まれた保須市を舞台に激突する二人を見て、傍にいる老人に話しかける。
「死柄木の奴が実戦で使うと言った時は焦ったぞ。アレはまだ最終調整どころか【個性】も定着しきっていないんだぞ」
「そうだね。あの時から
モニターでは紅い炎を纏う少年と、蒼い炎を放つ異形が炎をぶつけ合い戦っている。
まるで自分こそが本物であると証明し合うように……
「雄英襲撃を返り討ちにした生徒がいると弔に聞いた時はその子に興味を持ったけど……体育祭を見て確信したねあの時の子供だって。流石の僕も同じ轍は踏まないさ……今なお僕の体を蝕む炎をもう一度食らう気にはならないよ」
「……【超再生】でも定期的に交換せんと因子が焼け爛れて使い物にならんからのう」
お陰で自身の研究が遅れたとドクターは愚痴を吐く。
「彼の【個性】は特別なんだよ。
「雄英にも同じような【個性】はいたと思うが?あの黒いのとは違うのか?」
「あれとは違う……彼の【個性】は彼を主と認めたから力を貸しているだけで、相応しくない者ならばすぐに焼かれるだろうね……
男はスーツの袖を捲りドクターに左腕を晒す。その腕は炭化したかのように黒く焦げており、所々にヒビが入り紅く光っている。
忌々しく腕を睨む男だったが、それに反応したのか左腕から煙が立ち肉が焦げる臭いが鼻を刺激する。
「見ただろう。【超再生】を持つ僕でさえこの有様さ……だからこそ自分の力にするのではなく、銃や刃物のように武器として使うようにしたわけさ」
「さあ君は君の【個性】に勝てるかな」
モニターに映る少年に……巨悪は邪悪な笑みを浮かべるのだった。
「炎の放出、元から強い身体能力を変身でさらに強化……そして傷の再生」
保須市に現れた脳無を対処するために、人気のない場所まで移動していた俺様を襲った謎の脳無は、他の個体と違い強かった。
蒼炎による不意打ちを脳無を盾にして防いだ俺様だったが、蒼炎の脳無の追撃に防戦一方だった。
「その【個性】の数々……俺様に対する挑発か」
脳無の攻撃の隙をついてダメージを与えても直ぐに再生するその様子は不愉快だが俺様に似ていた。
「貴様ら脳無は俺様と違い痛覚もないんだろう……俺様の敵は俺様とは皮肉なものだな」
紅い炎の俺様と蒼い炎の脳無。火力勝負では向こうに分があるのは明白だった。
更に【フェニックス】の制御がここにきて狂い始めた。今までこんなことはなかったのだが、目の前の脳無を認識するや否や、瞳が焼ける痛みと共に炎の出力が意図せず上がった。
「此奴が何者か知らんがこのままでは街に被害が出てしまう」
昨日助けた迷子の子供、荷物を持った老人、俺様を応援するために駆けつけたファンたち、俺様の後ろにある街の中にまだいるであろう人たちが脳裏をよぎり、この脳無をここで止める理由が更にできた。
「ヒーローとして戦うとはこういうことか」
ヒーローは守るものが多い。誰かが言った言葉を俺様は今実感する。
俺様は街に被害を出さないように戦わなければいけない。それは敵の攻撃を抑えるだけでなく、自分の攻撃にも適応される。
「ただでさえ威力が高い炎を使うんだ。こんな所で易々と使えてたまるか!」
脳無の上を飛びながら蒼炎を回避するが体が思うように動かない、何かに引っ張られるように飛行が安定しない。
「さっきから何をしている!【貴様】は俺様のものだ!」
瞳が焼ける痛みに耐えながら【フェニックス】に呼びかける。
此奴が見せる情報からこの脳無は【個性】が定着しきっていないことは理解した。現に炎を出す度に体が焦げ崩れている。
普段の調子ならここまで苦戦するはずがない、奴には明確な弱点があり戦い方も熟知している。なら原因は【此奴】しかない。
理性を失ったかのように暴れる【フェニックス】を俺様は必死に呼びかける。
「【貴様】がなぜ怒っているかなど俺様にはどうでもいい!!目の前に助けなければならん民がいる!!王の【個性】であるなら感情に飲まれるな!!!」
【フェニックス】の怒りを発散させるかのように上空に向けて炎を放つ。体に纏う炎が全て放出され変身が解ける。
「……【貴様】の力が必要なんだ……一緒に戦ってくれ」
ゆっくりと落ちる俺様は【フェニックス】に語りかける。体育祭で俺様に力を貸した【此奴】と今度は一緒に戦おうと俺様の本心を伝える。
「【お前】の怒りも思いも全て背負ってやる!だから彼奴を止めるぞ!二人で!!」
『キシャー!!!』
俺様の体が炎に包まれる。
全身がフェニックスに変わり脳無目掛けて上昇する。
“炎鳥・射紅流”
足に溜めた炎を一点に放出し今までとは比べ物にならない程速くなった。
この土壇場で赫灼熱拳を会得したのだ。
エンデヴァーと比べたらお粗末なものだが、それでも昨日の俺様より遥かに強くなった実感が湧く。
『脳無……貴様はここで終わりだ』
紅い流星のように飛んだ俺様は、脳無を街に被害がでない高さまで運んでいく。
脳無もこれはまずいと本能で理解したのか暴れる続けるが、俺様に触れた瞬間体を纏う炎が腕や足を焼き炭化させる。
「ここまで来ればいいな」
変身を解くと脳無は勢いに乗って夜空に投げ出される。翼を折り曲げ砲身をつくる俺様に合わせて、奴も両手の掌を胸の前で合わせ蒼炎を溜める。
「脳無!一ついいことを教えてやろう」
「真似事だけでは俺様は倒せんぞ」
“炎鳥・炎鳳”
蒼炎を呑み込み紅い炎が脳無を包み込む。
俺様の放った炎が夜空を照らし、日が昇ったかのように明るくなる。
炎の放出を止めると黒焦げになった脳無は羽を失い落下していく。
俺様は【フェニックス】が暴れた理由を探るため回収しようとするが、目の前の空間が歪む。
「すまないね。この子は僕たちのモノだ」
身の毛もよだつような恐怖が俺様を体に纏わりつき動きを止めてしまう。
謎の声はそのまま黒焦げになった脳無を歪んだ空間の中に取り込み消えてしまった。
「……今のは」
脳無を倒したはいいが、その体は何者かに奪われてしまった。
先程の脳無と比べ物にならない程怒る【フェニックス】を落ち着かせながら、優先順位を考え俺様は目に映る個性因子を頼りにエンデヴァーと合流するのだった。
「やはり負けてしまったか」
ドクターはやれやれと脳無の体を解剖し次の個体に活かすためにデータを集め始める。
「確かに負けてしまった。だけどこれは意味のある敗北だよ」
無数にある彼の【個性】が複製された
まるで次は俺だと主張するかのように輝く【個性】を見て巨悪は器を強化するようドクターに指示を出す。
「ドクター……どうやら僕は運がいいらしい」
輝き続ける【個性】の入った容器を手に取り、じっくりと観察する。
「
劇場版を入れるかどうかアンケート取ります。
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やってくれ必要だろう
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本編だけで大丈夫
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