「携帯が圏外だ。情報関係はすべて遮断されちまったらしい」
「マジかよ……」
「エレベーターも反応ないよ」
「マジかよぉぉ」
「爆発物が設置されただけで警備システムが厳戒モードになるなんて……」
警報が鳴り響きロビーの防火シャッターが全て閉じてしまい、俺様たちはこのタワーから脱出するためにエレベーター等確認していたが全て駄目だった。
「落ち着け!今俺様が“視ている”」
ロビー以外の場所がどうなっているのか確認するために、俺様は“王の瞳”を発動しタワー全体の様子を確認する。
俺様の“王の瞳”は壁をすり抜けてサーモグラフィーのような感じで、個性因子とその持ち主の輪郭を捉えることが出来る。
ロビーということもあり、エレベーターの近くにタワーの案内板があるので、ある程度の場所も特定することが出来る。
「メリッサ!パーティー会場に武装した集団が複数名いる……タワー上層階にもだ!」
「タワー上層階……もしかしたら警備システムが占拠されたのかも」
「やべぇよどうすんだよ!!」
「……緑谷、オールマイト含めたプロヒーローと思われる者達は会場の一般人を人質にされて拘束されている」
「そんな」
「終わりだぁ……」
オールマイトも身動きできない状況に峰田は絶望するが、まだ緑谷は諦めていないようだ。
「飯田くん、パーティー会場に行こう」
「なるほどな」
緑谷がパーティー会場に行くことを飯田に提案し、俺様がその意図を理解する。
「ここでじっとしていたら、どのみちテロリストに見つかるだろうな」
俺様はロビーに設置された監視カメラを指差し、状況を説明する。
「まだここに人が来る気配も動きもない。ならオールマイトに状況を説明して判断を仰ぐしかないだろう……緑谷、耳郎危険だが会場に行ってくれるか?」
「うん!僕は大丈夫」
「ウチも行けるよ」
「頼む!残った俺様たちはここで待機、オールマイトの指示を聞き今後の動きを考えるぞ。轟、敵は銃で武装している広範囲に壁が作れるお前は周りを警戒してくれ」
「あぁ」
「峰田、お前の【モギモギ】なら戦闘も無傷で終わらせられる頼りにしてるぞ」
「ふざけんなよ!敵だぞ!銃持ってるんだぞ!」
「あまりこういうのは好きじゃないんだがな……峰田ここを無事に乗り越えたら、俺様の知り合いを紹介しよう」
「詳しく」
適にビビる峰田に耳打ちしてやる気を出させる。
ビビりまくっていた峰田は動きを止め、真剣な顔で話に食いついた。
「……タイプは」
「大きいものから小さいものまで、明るい子も大人しめな子も要望があるなら応えよう」
「……マジで」
「マジだ」
……
…………
………………
「うぉぉぉぉ!!オイラやるぜ!!」
峰田がやる気を出した。
「ん?」
(本当に紹介するの?)
「約束だからな」
「ん」
(そんなに女の子の知り合いがいるんだ)
「……別に紹介するのが女性とは一言も言ってないぞ」
実際、紹介しようと思っているのはトレーニングで利用していたジムで世話になったマッチョたちだ。
「うわ」
「ナチュラルに引くんじゃない」
峰田がテンションを上げはしゃいでいる裏で、俺様は唯に詰められていた。
俺様の汚いやり口に唯がドン引くが、今は緊急事態なので大目に見て欲しい。
「メリッサさんどうにか会場まで行けませんか?」
「非常階段を使えば、近くには行けるわ」
「案内お願いします」
緑谷たちはメリッサに案内をしてもらい、会場の方へ向かっていった。
俺様は“王の瞳”でテロリスト集団の動きを確認し続けるのだった。
「緑谷が戻ってくる前に今の状況を整理しようと思う。八百万、紙とペンを貰えるか」
「わかりましたわ」
緑谷たちが会場に向かった後、俺様たちは周りを警戒しながら待機している。
俺様は自分たちの置かれている状況を整理するために、八百万から紙とペンをもらい、タワーの全体像を書く。
「今、俺様がいるのがここだな、そしてテロリストはこのパーティー会場と上層階のシステムの制御室と思われる場所にいる」
「なるほどな」
「今のところは安全だが、時間が経てばここも危なくなるかもな」
「マジかよ!」
「テロリストが警備システムを掌握したのだから、このタワーの監視カメラの映像もあっちに流れてるんだ。今のところ連中に動きがないということは、考えられる可能性は二つある」
俺様は指を二本立て、説明する。
「一つ、ここのセキュリティはタルタロス並だ連中もまだ完全に掌握できていない。そして二つ目、他に優先するものがあり、まだ子供な俺様たちは放置で大丈夫と考えている」
「……」
「何を黙っているんだ」
「いや、鳳って普段の態度から想像つかねぇけどこういう時、すげぇ頼りになんなって」
俺様が説明し終えると、皆黙ってしまう。疑問に思った俺様に上鳴が皆の言葉を代弁するかのように口を開いた。
なんて返そうか考えているとこちらに向かってくる足音が聞こえる。
「大変だよ皆!」
緑谷たちが戻って来たようだ。
慌てて戻ってきたからか、息が荒い緑谷を落ち着かせてオールマイトからの指示を聞く。
やはりテロリストがタワーを占拠し、警備システムを掌握して島にいる全員が人質となった。
「オールマイトは逃げろって言ったけど……」
「俺は雄英校教師であるオールマイトの言葉に従い、ここから脱出することを提案する」
「飯田さんの意見に賛同しますわ。私たちはまだ学生、ヒーロー免許もないのに、敵と戦うわけには……」
緑谷から伝えられたオールマイトの言葉に、飯田と八百万は従うことを提案する。
上鳴や峰田もそれに賛成するような素振りを見せる。
「脱出してヒーロー呼ぼうぜ」
上鳴は提案するが、思考していたメリッサが待ったをかける。
「脱出は困難だと思う。ここはタルタロスと同じレベル防災設計で建てられてるから」
「じゃあ待つしか」
「上鳴、それでいいわけ?」
「どういう意味だよ」
「救けに行こうとか思わないの?」
上鳴の態度に耳郎が声を上げる。
緑谷とともに直接現場を見てきたからか、救けたい耳郎の言葉に峰田が再びパニックになりかけ、収集がつかなくなる。
俺様は手を鳴らし、この空気を変えるために口を開く。
「救ける、脱出どちらも間違ってはいないがこれ以上、長々と話している時間はない。さっきも言ったがシステムを完全に掌握されれば、脱出することも救けることも出来なくなる」
「今、俺様たちが取れる行動は三つだ」
「まずはここから脱出すること、ヒーロー免許を持たん俺様たちが会敵せずここから離れることができる、ただし島の人々が人質になっている状況からタワーから出たとしても助けを呼べるかは分からない」
「次に可能な限り戦闘を避け制御室に向かい、システムを奪還する。もちろん動くことでこちらに気づかれるかもしれないし、会敵した場合怪我ではすまない可能性がある。だが、システムを解除すれば人質を解放できオールマイトが動くことが出来る」
「最後はここに留まり奇跡を祈ることだ。以上三つを挙げたがお前たちはどうする」
俺様は選択肢を提示しその長所と短所を述べ、どうするか皆に問う。
「……」
「……」
「……」
「救けたい……」
沈黙が続くなか緑谷がポツリとつぶやく。
麗日が心配そうに緑谷に声をかけるが、真剣な顔で考えこんでいた緑谷はもう一度ハッキリと救たいと言った。
「……緑谷、本気だな」
「うん!」
「メリッサ、システムの奪還は可能か?」
緑谷の目を見て俺様はこのタワーについて詳しいメリッサに質問する。
「えぇ……敵がシステムを掌握しているなら、認証プロテクトやパスワードは解除されてるはずよ。それなら私たちでもシステムの再変更ができる」
「でも敵にあったらどうすんだよ」
「敵の動きなら俺様が逐一把握出来る」
「ウチも索敵は得意だよ」
徐々に可能性が見えてきたことで、救ける方針に傾き始める。
緑谷は真剣な顔で飯田を見つめる。
「……これ以上、無理だと判断したら引き返す。その条件が飲めるなら俺も折れよう」
「そういことであれば私も」
「だったらオレも!」
「ん!」
(私も救けたい)
飯田が決断したことで八百万、上鳴、唯も救けに行く意志を固める。
「やるよ!やってやるよ!皆救けるぞ!!」
そんな皆を見て峰田も叫びながら行くことを宣言する。
「メリッサはここで待っていた方がいい」
「私も行くわ」
俺様が提案するがメリッサはキッパリと断り、自分がついて行くメリットを話す。
「この中に警備システムの設定変更ができる人いる?」
「……鳳」
メリッサの質問に峰田がこちらを見るが、俺様は首を横に振る。
「流石に初見でここのシステムを弄るのは無理だ」
「……最上階に行くまでは足手まといになるけど……私にもみんなを守らせて」
「……わかった。お前たち皆を救けに行くぞ!」
「「「「「おう!/ええ!」」」」」
俺様たちの意思が一つになり行動を開始した。